女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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伝説の武器編 後編 ドキッ! 男だらけの試練の迷宮

vs 迷宮の守護者

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(おほん、えーそれでは話を戻します)
「はいっ」

 ひとしきり盛り上がって落ち着くと、ソフィアはようやく本題へと移った。
 ティナも声のみでどこにいるかはわからない女神に対して真剣な表情を作り、話を聞く体勢に入る。

 ちなみにジンは途中から二人を落ち着かせることを諦め、静観を決め込んで適当な場所に座り込んでいた。
 レイナルドは最初から我関せずの姿勢で台座の横辺りに立ち尽くしている。
 女神まで出て来たのでは、後は戦闘くらいしか自分の出番はないと思っているのかもしれない。

 三者三様に聞く姿勢を整えたのをどこからか確認したのか、女神の声が聞こえてきた。

(まず最初に言っておきますが、その剣の柄は私がいいと言うまでは触れないように。それを手に取ると試練が始まってしまいますので)
「えっ……はい!」

 そろそろ触れてみたいなとうずうずしていたので、少し残念と言った様子のティナである。
 しかしそこで何かに気付いたようにハッとしてから口を開く。

「もしかしてそれって、逆に触りなさいということですか?」
(違います)

 割ときっぱりと否定されてしまい、やはり肩を落とすティナ。
 また一つせきばらいをしてからソフィアの説明が再開される。

(まずはその剣の柄の使い方を説明します。ティナちゃんは『ゆうしゃのつるぎ』を使えますね?)
「ゆうしゃのつるぎ?」

 どうやらすっかり仲良しになったらしく、ティナちゃん、と親し気に呼んでしまっているソフィア。
 ティナは何じゃそりゃ、と言わんばかりに人差し指を顎に当てて考え込む。

(最初は光のナイフみたいな感じだったあれです)
「あっ!」

 そう短く叫んで胸の前に手を持ってくると、ティナは「ゆうしゃのつるぎ」を発動した。
 スキル発現時よりも明らかに大きく、立派に剣と呼べる代物になっているそれを少し上に掲げながら口を開く。

「もしかしてこれのことですか?」
(それです。それがゆうしゃのつるぎというスキルです)
「そうだったんだ……」

 ティナは「ゆうしゃのつるぎ」のことを、いつでも取り出せる便利なナイフくらいにしか思っていなかったので、ツギノ町からミツメへと行く道中でパンを切り分けて以来はフォースへの馬車の中でエアに見せる時くらいしか使っていない。
 改めてじっくりと、ただひたすらに「ゆうしゃのつるぎ」を見つめるティナ。
 感傷に浸る間をあげるかのように時間をおいてから、ソフィアは説明を続ける。

(わかりやすく言えば、その剣の柄はゆうしゃのつるぎを強化するための補助アイテムのようなものです。それを持ったまま発動することで、つるぎはより強力なものとなります。「しん・ゆうしゃのつるぎ」とでも呼びましょうか)
「なんだかすごいですね……」

 まだ使ったことがなくて今いち実感がわかないせいか、ティナはまるで他人事のような感想を漏らした。

(それと。この際に今まで覚えたスキルやこれから覚えるスキルについても説明しておきましょう)

 そうして、ソフィアからティナへの勇者専用スキルに関する説明が行われた。
 横でそれを聞きながら、レイナルドは終始驚きっぱなしの様子だ。
 わかってはいたものの、やはり目の前の少女が本当に勇者であると突きつけられれば感慨もひとしおなのだろうか。

 一方でジンは言えば、スキルの具体的な内容以外は大体知っていることなので、へ~とかほ~とか適当に驚いたふりをしている。
 あまりの拙さに、その演技を聞いたソフィアが「ジン君には打ち明け話みたいな話はしない方が良さそうですね……」と思ったのは、誰も知る由のないことなのであった。

 そんな感じで大体必要な事項の通達が終わったかというところで、改めてソフィアが口を開く。

(それでは一通り説明も終わりましたし、お待ちかねの試練に移りましょう!)
「い、いよいよですか」

 試練という言葉を耳にして、ティナは少しばかり身体を強張らせる。

(そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。つまるところ、実際にスキルを使ってみましょう、という訓練のようなものですから)
「それでもやっぱり緊張します」
(ふふっ、そんな姿も肉食獣に怯える草食動物のようで可愛いですじゅるり)
「今よだれの出る音がしませんでしたか?」

 ちなみに一部の別世界では有名な話だが、ソフィアはほぼおっさんである。とにかく美少女が大好き。
 数日前に人間の姿でジンとティナの前に現れたのも、同じ背丈で存分にティナの感触や匂いを楽しみたかっただけだったりする。

(何のことでしょうか? あと、試練が終わったら奥の部屋に続く扉が開きますから、ティナちゃん一人で来るようにうふふ)
「えっ? はっはい、わかりました」

 思いもよらぬ呼び出しに戸惑いながらも、ティナは何とか返事をした。すると、少しの間を空けてからやや声を張り上げてソフィアが宣言する。

(それでは試練を始めてください)
「はいっ。ジン君、師匠、準備はいい?」
「はい」
「おう」

 二人からの返事を確認すると、ティナは剣の柄を手に取って台座から外した。
 すると部屋全体が大きく震動し始め、全員が一瞬だけたたらを踏む。そして天井から岩が雨あられのように降り注ぎ、それらは徐々に守護者の形をとっていく。
 
 しかしこれまで迷宮内で遭遇した守護者とは大きさが異なる。
 
 石のみで組み上げられた巨躯からは温度というものを感じ取ることが出来ず、無機質な双眸は何を思うでもなくこちらを見つめていた。
 巨大な守護者が完成すると、今度は部屋の奥左右に一つずつ空いている穴からぞろぞろと守護者が出てきた。

 こちらは先程まで迷宮内で見ていた守護者と大きさは変わらないが、数が尋常ではない。それらを見てジンはなるほどと、心の中でつぶやいてから口を開く。

「俺とレイナルドで小さいのを相手するから、ティナはでかいのを頼む!」
「はい!」

 ティナはジンの方をしっかりと見据えてうなずいた。そしてジンとレイナルドは一斉に駆け出し、守護者の大群に向かっていく。
 二人の背中を見送りながら、ティナもまた巨大な守護者と対峙し剣の柄を自分の前に掲げた。

 そのままスキルを発動すると、剣の柄からは通常の「ゆうしゃのつるぎ」よりも大きな光の刃が出現した。
 これまで色の無いただの光で構成されていたそれは、今は朱色に染まり、燃えるようにうごめいている。

 「ゆうしゃのつるぎ」あるいは「しん・ゆうしゃのつるぎ」に反応するように出来ているのか、巨大な守護者はティナを見据えたまま、自身の脇を通ったジンとレイナルドには見向きもしない。

 そして戦闘が始まった。
 部屋の北西側ではジンが適度に攻撃を貰いながら、時折うめき声もあげて苦戦するふりをしつつ敵を倒していく。
 数少ないアピールの機会に、隙あらばちらちらとティナの方を振り返っていた。

 一方で部屋の北東側ではレイナルドが奮戦しているが、こちらはさすがにジンほどの余裕はないようだ。
 ティナもレイナルドも普通に倒していたのでわかりづらいとはいえ、元々守護者はそんなに弱いモンスターではない。
 余裕を持って対応できるのは、せいぜいが三体までといったところだろうか。
 次第に、レイナルドからはぬおおとかぐおおといった声が上がり始める。必然、ジンのようにティナの様子を窺う余裕などあるはずもなかった。

 そして部屋の中央ではティナと巨大な守護者のにらみ合いが続く。
 ジンのアピールもむなしくティナは全くそちらを見てはいなかったのだが、それは興味がないとか心配ではないといった理由からではない。

 ――――そばにいてくれるだけで強くなれるから。

 迷宮の守護者のこうげき。ティナにわずかなダメージ。

 ――――ちょっとしたことで怒っちゃって、ごめんね。

 攻撃を防御されてしまったので、巨大な守護者はその腕を引いた。するとティナは再度つるぎを高く掲げて瞑目する。

 ――――だからこれからもどうか、そばにいてね。

 すると「しん・ゆうしゃのつるぎ」が、より一層その輝きを増した。
 刀身はまるでティナの胸の内から溢れ出る勇気を灯したかのように赤々と燃え盛り、無限にその長さを伸ばしていく。
 やがてそれが部屋の天井まで達しようかというほどになった頃。
 ティナは巨大化した「しん・ゆうしゃのつるぎ」を立てたまま腕を身の内側に引くと、次の瞬間、全力でそれを横なぎに払った。

「やあっ!」

 ジンとレイナルドのいくらか上を通過した、勇気に煌めく聖なる炎は、迷宮の守護者の巨躯を二つに切り離した。

「ヴオオオォォォ……」

 二つになった迷宮の守護者はそれぞれが光の粒子となり、空気に溶けていった。

 勇者専用スキル「ティナスラッシュ」。
 「ティナ」の部分には当代勇者の名前が入る。

 使用者の精神に呼応して巨大化する聖なる刃。それを最大限にまで伸ばし、悪しき者を切り裂く必殺の一閃。

 ここでいう「精神」とMPは別物だが、刃が巨大になればなるほどMPの消費は激しくなる。
 迷宮の守護者が消えた瞬間、ティナはその場にへたり込んでしまった。
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