奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

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3 働く

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翌朝、まだ暗い内から周囲の人間が動き始めた。
木札を帳場に返却し、宿前で店を広げていた露店で、コップ一杯銅貨十枚の粥を買う。

宿から町中に向かう人の波に乗って歩く。
向かった先は町の表通りで、荷車が一杯並んでいた。
前を歩く男の後を付いて行く。
荷車の前に立っている男にプレートを示し、荷車に乗り込んで行く。
僕もどきどきしたが、骸骨から拝借したプレートを男に差し出したら荷車に乗せて貰えた。

全員が立ったままの満員電車状態で荷車に揺られること約二時間、荷車は目的地に着いた。
伐採された森の中で、枝打ちされた丸太が転がっている。

仕事はその丸太の積み込みだった。
荷車を五台連結して、その上に丸太を積み上げて行く作業だ。
丸太の下に棒を差し入れ丸太を浮かす、そこに縄を差し入れ、両端を担いで丸太を持ち上げるのだ。
片側十五人、三十人一組で一本の丸太を持ち上げる。
荷車に乗せる際は、最後部に置かれた階段を登って荷車や丸太の上を移動する。
縄が肩に食い込み、作業が終わった時には、肩に血が滲んで、腿がパンパンに張っていた。
日本での僕ならば、最初の一時間でギブアップしていただろう。
僕には目標がある、昨日見た少女の白い腿やお尻を思い浮かべながら、根性を絞り出した。

その場で銀貨四枚が渡され、そこで解散。
荷車には丸太が積んであるので歩いて帰れということらしい。

この世界の人間は歩き慣れているのだろうか、やけに歩くのが早い。
僕も必死に付いて行く、取り残されたら野犬や魔獣の餌にされるので命掛けだ。
頑張っているのだが、周囲が段々歩みの遅い年寄りだらけになって来る、悲しい事にそれでも僕は取り残されそうだった。

「○×△□△○○!」

森の中から野犬ならぬ野鼠の群れが襲って来た。
野鼠と言ってもカピパラくらいの大きさがあり、白い前歯は鋭く大きい。
狂った様にひたすら杖で鼠を杖で叩き捲った。
毛皮が厚くて硬いので、簡単には倒せない。
痛みに気が遠くなりそうになりながら、少女を抱くまでは絶対に死ねない、ただその執念だけが気力を繋ぎ留めたた。
先行していた屈強な連中が鼠退治に戻って来た。
勝てないと悟ったのか、鼠達が退いて行き、僕はその場にへたり込んだ。
足下には五匹の鼠の死体が転がっており、親切な周囲の年寄り達が捌いてくれた。
僕は撲自身の血と鼠の返り血で全身血塗れになっていた。

杖に縋って、足を引き摺りながら何とか町に辿り着く。
ステータスを確認したら、生命力が2まで減少しており、改めてぎりぎりの状態だったことを認識した。
木の脛当てに咬み跡が無数に刻まれていたので、昨晩思いつきで購入していなかったら、この世界の僕の人生は終わっていただろう。

門の外側に立ち並ぶバラックの商店には、買取を行っている店もある。
年寄り達から毛皮と肉を受け取って、冒険者が犬や鼠の死体を担いで並んでいる買取の店の列に加わる。
全身血塗れの僕は、周囲からだいぶ退かれていたが、店の親父は顔を引き攣らせつつ、銀貨十枚で引き取ってくれた。

簡素なテントが立ち並ぶ一画、怪我人達がそのテントに向かって歩いて行く。
見ていると、金を支払ってそのテントに入り、怪我が治ってそのテントから出て来る。
中から叫び声が聞こえるのは少々気になったが、治療所と見当を付け、僕もそのテントに向かった。
思ったよりも安価で、銅貨五十枚で全身の傷や筋肉の張りを癒してくれた。
綺麗に傷口が塞がるのだが、傷口に指を突っ込まれて掻き混ぜられている様な凄い痛みがあり、僕も叫び声を上げてしまった。
たぶん、傷を付けられた時の痛みの三倍増だろう、これが全身にある傷十数ヶ所で繰り返される。
隣のテントからは女性冒険者の色っぽい悲鳴が聞こえて来た。

陽は暮れて来たが、店に灯が点り始めたので少し見て回ることにした。
店に点されている灯は、あのバックに入っている角砂糖大の軽石と同じだった。
あの軽石が発光しているのだ。
たぶんこの世界の魔道具なのだろう。

今日、はらわたを食い千切られて死んだ爺さんがいた。
幸い僕は服が破れる程度済んだが、もし腹を千切られたら町まで帰ってこれなかっただろう。
腹を護る防具が必要だ。
それと今日は杖を背中に背負って作業を行ったのだが、少々邪魔で、何度も転びそうになった。
転んで丸太の下敷きになったら、たぶん助からないだろう。
もう少し短い得物も欲しい。

色々な店を物色し、中古の木琴の様な胴巻きとバットの様な棍棒を買った。
百十センチを超える俺の腹回りに合う胴巻きがなかなか見付からずに苦労した。
銀貨六枚で売って貰い、布の服の上下をおまけで付けてくれた。

夕食は少々奮発して、バラックの商店街で銅貨四十枚の定食を食い、宿は昨日と同じ場所に泊まった。

収入 銀貨十四枚
出費 銀貨八枚
残金 銀貨十三枚、銅貨九十六枚

目標まであと金貨九枚、銀貨八十七枚

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