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16 古都シルベニア
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背には四人分の荷物が積み上がっているのだが、ピーは健気にも、なんとか頑張って僕達に遅れず付いて来ている。
「ピー、あんたは荷物持ちとして買ったんだからね、神官見習いである私達の荷物を持ちなさい」
「私達と違ってあんたは男なんだから、力仕事は当然なのよ」
「オークを見習いなよ、あの荷物の上に僕等を乗っけて走れるんだからさー」
ピーの服を買うのを拒んだ時の説明とはずいぶん違うのだが、三人は荷物を全てピーに背負わせている。
ピーが素直に従っているので、僕も少しピーに頑張らせている。
一週間の駅馬車の旅を終え、朝靄の中、身体を伸ばしてから撲等は歩き始めたばかりだ。
今回の旅行先は、この国第二の都市、古都シルベニア。
王都より歴史の古い町だそうで、由緒ある建物が多く、観光都市にもなっている。
朝靄に霞む町並みも、石造りで背の高い建物が多く、壁に施された浮彫が重厚で美しい。
今回はサイコロで決めた訳じゃ無い。
たまたまフッチの町へ来ていたシルベニアのお偉いさんが、観光協会の人から撲達の話を聞き付けて依頼があったのだ。
古都では魑魅魍魎の類の話が多く、悪霊祓いの専門家を捜していたらしいのだ。
僕は自信家じゃない、むしろ自分が一番信用できないと思っている。
詠唱や祓術のスキルが増えたくらいで舞い上がるほど、能天気でもない。
だから、勿論僕はゾンビ討伐で飯を食っているが、悪霊払いの専門家とは思っていない。
死体を殴って、力技で霊を身体から追い出しているだけだ。
霊の行き先なんて知ったこっちゃないし、要するに、その場凌ぎのやっつけ仕事なのだ。
なので丁重にお断りしようと思った。
「いえ、ありがたいお、ウック」
「喜んでお受けします。ただし、シルベニアまでの往復の交通費、現地での宿泊費と食事、勿論神殿外での宿泊ですよ、これらすべての御負担はそちら様で宜しいですよね。勿論危険手当は別途請求させて頂きますよ」
なのに、僕をつっけんどに押し退けて、ファーレが依頼を勝手に受けてしまったのだ。
「ファーレ、ゾンビ以外の悪霊の倒し方なんて知らないぞ」
「大丈夫よ、私が知ってるから」
「えっ!?何で今まで」
僕は後に続ける”黙ったいたんだ”という科白を飲み込んだ。
良く考えれば、ファーレの属性は祈だし、スキルは刻書だった。
学者の家系の彼女なのだから、この辺の知識が有っても可笑しく無い。
それにこの科白を口に出したら、”あんた私に何時聞いたの、何日何時何分何秒、言ってごらんさいよ”っと怒られるのが目に見えている。
「ファーレ、教えて下さい。お願いします」
「ふっ、ふっ、ふっ。なら土下座して先生とお呼びなさい」
「はい先生、宜しくお願いします」
基本的な方法は二通り有った。
一つは魔砂と呼ばれる特殊な砂で魔法陣を描き、悪霊を魔法陣の中に誘き寄せて祓う方法。
もう一つは憑代として木偶を用意し、木偶の中に入った悪霊を刻印札の炎で焙って、無害化してから空に放つ方法だ。
「一長一短があるのよねー、魔法陣なら直径五ツト(五百メートル)あるから、誘き寄せるのも適当だし、接近戦にならないんだけど、木偶だと霊体を刻印札で攻撃して追い込む必要があるから、ガチガチの接近戦になるのよねー」
「なら、魔法陣の方が良さそうじゃないか、危険も少ないし」
「馬鹿ねー、魔砂で直径五ツトの魔法陣を描くのよ。場所を借りる必要も有るし、魔砂だけで金貨十枚必要なのよ。ちょっと失敗したら大赤字よ」
「依頼主の負担にすれば良いじゃないか」
「何回失敗するかも解らないのよ、そんなリスクを代りに負う依頼主なんていないわよ」
「なるほど、魔法陣を小さくできないのか」
「無理、効力も小さくなるから。資金力が必要なのよ。観客呼んで興業化するのが主流らしいわよ、田舎者のポット出じゃ、客が集まらないから無理らしいけど」
基本的にはゾンビ退治も同じ手法の様で、フッチの町では、資金は有るが狭い排水路では魔法陣が描けずに困っていたらしい。
だから、僕のような狭い場所での肉弾戦タイプは、尚更ありがたかったのだろう。
地方都市に悪霊祓いが少ない理由とシルベニアのお偉いさんが僕に声を掛けた理由が少し解って来たような気がする。
だが念の為に聞いておく。
「ファーレ、木偶を使う人って多いのか」
「うん、多いわよ。基本的には悪霊祓いって一攫千金を狙った貧乏人が多いから当然ね。でもねー、消耗が凄く激しいらしくてさー、人手が全然足りないんだって。あっ、オークなら大丈夫よ、接近戦得意だから、たぶん。私大きな都って始めてなの、流行の服も欲しいし楽しみだわー」
四人分の荷物を背負って、ピーが頑張って歩いている。
背中から見ると荷物が歩いている様だ、あれ?知らない間に追い抜かれていた。
角を曲がると、中央広場の向こうに、シルベニア中央大神殿の大屋根が見えて来た。
うー、行きたくない、僕の足取りはピー以上に重い。
なんか、お腹が少し痛くなって来た。
「ピー、あんたは荷物持ちとして買ったんだからね、神官見習いである私達の荷物を持ちなさい」
「私達と違ってあんたは男なんだから、力仕事は当然なのよ」
「オークを見習いなよ、あの荷物の上に僕等を乗っけて走れるんだからさー」
ピーの服を買うのを拒んだ時の説明とはずいぶん違うのだが、三人は荷物を全てピーに背負わせている。
ピーが素直に従っているので、僕も少しピーに頑張らせている。
一週間の駅馬車の旅を終え、朝靄の中、身体を伸ばしてから撲等は歩き始めたばかりだ。
今回の旅行先は、この国第二の都市、古都シルベニア。
王都より歴史の古い町だそうで、由緒ある建物が多く、観光都市にもなっている。
朝靄に霞む町並みも、石造りで背の高い建物が多く、壁に施された浮彫が重厚で美しい。
今回はサイコロで決めた訳じゃ無い。
たまたまフッチの町へ来ていたシルベニアのお偉いさんが、観光協会の人から撲達の話を聞き付けて依頼があったのだ。
古都では魑魅魍魎の類の話が多く、悪霊祓いの専門家を捜していたらしいのだ。
僕は自信家じゃない、むしろ自分が一番信用できないと思っている。
詠唱や祓術のスキルが増えたくらいで舞い上がるほど、能天気でもない。
だから、勿論僕はゾンビ討伐で飯を食っているが、悪霊払いの専門家とは思っていない。
死体を殴って、力技で霊を身体から追い出しているだけだ。
霊の行き先なんて知ったこっちゃないし、要するに、その場凌ぎのやっつけ仕事なのだ。
なので丁重にお断りしようと思った。
「いえ、ありがたいお、ウック」
「喜んでお受けします。ただし、シルベニアまでの往復の交通費、現地での宿泊費と食事、勿論神殿外での宿泊ですよ、これらすべての御負担はそちら様で宜しいですよね。勿論危険手当は別途請求させて頂きますよ」
なのに、僕をつっけんどに押し退けて、ファーレが依頼を勝手に受けてしまったのだ。
「ファーレ、ゾンビ以外の悪霊の倒し方なんて知らないぞ」
「大丈夫よ、私が知ってるから」
「えっ!?何で今まで」
僕は後に続ける”黙ったいたんだ”という科白を飲み込んだ。
良く考えれば、ファーレの属性は祈だし、スキルは刻書だった。
学者の家系の彼女なのだから、この辺の知識が有っても可笑しく無い。
それにこの科白を口に出したら、”あんた私に何時聞いたの、何日何時何分何秒、言ってごらんさいよ”っと怒られるのが目に見えている。
「ファーレ、教えて下さい。お願いします」
「ふっ、ふっ、ふっ。なら土下座して先生とお呼びなさい」
「はい先生、宜しくお願いします」
基本的な方法は二通り有った。
一つは魔砂と呼ばれる特殊な砂で魔法陣を描き、悪霊を魔法陣の中に誘き寄せて祓う方法。
もう一つは憑代として木偶を用意し、木偶の中に入った悪霊を刻印札の炎で焙って、無害化してから空に放つ方法だ。
「一長一短があるのよねー、魔法陣なら直径五ツト(五百メートル)あるから、誘き寄せるのも適当だし、接近戦にならないんだけど、木偶だと霊体を刻印札で攻撃して追い込む必要があるから、ガチガチの接近戦になるのよねー」
「なら、魔法陣の方が良さそうじゃないか、危険も少ないし」
「馬鹿ねー、魔砂で直径五ツトの魔法陣を描くのよ。場所を借りる必要も有るし、魔砂だけで金貨十枚必要なのよ。ちょっと失敗したら大赤字よ」
「依頼主の負担にすれば良いじゃないか」
「何回失敗するかも解らないのよ、そんなリスクを代りに負う依頼主なんていないわよ」
「なるほど、魔法陣を小さくできないのか」
「無理、効力も小さくなるから。資金力が必要なのよ。観客呼んで興業化するのが主流らしいわよ、田舎者のポット出じゃ、客が集まらないから無理らしいけど」
基本的にはゾンビ退治も同じ手法の様で、フッチの町では、資金は有るが狭い排水路では魔法陣が描けずに困っていたらしい。
だから、僕のような狭い場所での肉弾戦タイプは、尚更ありがたかったのだろう。
地方都市に悪霊祓いが少ない理由とシルベニアのお偉いさんが僕に声を掛けた理由が少し解って来たような気がする。
だが念の為に聞いておく。
「ファーレ、木偶を使う人って多いのか」
「うん、多いわよ。基本的には悪霊祓いって一攫千金を狙った貧乏人が多いから当然ね。でもねー、消耗が凄く激しいらしくてさー、人手が全然足りないんだって。あっ、オークなら大丈夫よ、接近戦得意だから、たぶん。私大きな都って始めてなの、流行の服も欲しいし楽しみだわー」
四人分の荷物を背負って、ピーが頑張って歩いている。
背中から見ると荷物が歩いている様だ、あれ?知らない間に追い抜かれていた。
角を曲がると、中央広場の向こうに、シルベニア中央大神殿の大屋根が見えて来た。
うー、行きたくない、僕の足取りはピー以上に重い。
なんか、お腹が少し痛くなって来た。
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