奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

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26 帝都へ

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ミューアが魔力の尽きるまで治療してくれた様で、大きな傷は塞がっている。
鵺も必死だった様で、何ヶ所も鎖のTシャツの背中が突き破られていたのだ。
かなり危ない状態だったようで、身体に全然力が入らない。

狼煙を上げて、シルベニアの守備隊に助けを請う。
シルベニアの外塀の上に有る望楼から見える筈だ。

「僕を放置して逃げても良かったんだぞ」
「オークは金蔓だしさー、僕等にも将来設計があるから死なれると困るんだよねー」
「そうよ、自分一人の身体と思われちゃ困るのよねー」
「だからね、だからね、もう無茶しないの!うわー」

四人に泣かれてしまった。
空がオレンジ色に染まり始めた頃、やっと守備隊が駆け付けて来た。

倉庫は最初っから存在しなかった。
単に撲を誘き出す罠だったのだ。
ミトラス商会に調べが入り、グルガ男爵からの指示だったことが判明した。
魔獣を他領に送り込む行為は、一昔前なら戦争になるほど危険な行為で、シルバ公爵からグルガ男爵の領地有る地方を差配するケイロニア公爵に処罰の申し入れが為された。

ミトラス商会は最初、グルガ男爵から脅迫されて仕方なく協力したと説明していたが、調べが進むにつれて同じ穴のムジナであることが判明した。
ミトラス商会の会長はグルガ男爵がまだ傭兵だった時の仲間で、肉の安売りで財を成した人物だった。
グルガ男爵はその肉の供給元だったらしく、利益を互いに分け合い、片方は男爵に地位に登り詰め、片方は大商会の会長に伸上がった、そんな関係だったらしい。
肉の入手先は、大量に、しかも容易に肉が手に入る場所、グルガ男爵の職場、戦場だったらしい。
この話には、勿論箝口令が布かれた。

僕の身体が回復したら、前にも増してファーレが大量に仕事を引き受けて来た。
もう男爵から逃げ回る必要が無くなったので、家が欲しいと言い出したのだ。
ブラックな日々を想定したのだが、身体が物凄く軽く感じ、一件当たりに要する時間が短くなったので、以前よりも楽に感じるくらいだった。

鵺を倒してから二月程経った時だった。
神官長から呼び出しがあって神殿に出向くと、神官長と一緒に若い神官が俺を待っていた。

「紹介するわ、オークさん。この子は帝都の聖神殿から派遣されたミントよ」
「初めてお目に掛かります。私聖神殿主任神官のミントと申します。本日は聖神官様の命を受けてこちらに参りました。命はオーク様に帝都に来て頂ける様お願いしろとの事です。理由はこれからご説明いたしますが、秘事故、くれぐれもご内聞に願います」

クルシュ皇国は圧倒的な魔法力を背景に周辺国を統合した国である。
今も魔法開発には力を注いでおり、帝城内には皇帝直属の魔法研究部隊と魔法研究所が設置されている。
情報が外部に漏れない様、研究所は帝城の地下深くに設置されており、人の出入りも二重、三重にチェックされていた筈だった。

ところが二月前、何処からか侵入した不審者が研究所の食堂に現れ、食堂のど真ん中に異界に通じる穴を開けてしまったのだ。
人の指で開けたくらいの小さな穴だったが、その穴を通って悪霊が現れ、食堂に居た研究者を襲い始めた。

不審者は守備兵に殴り殺され、研究所の保安責任者は、食堂に結界を張って霊を閉じ込めた後、研究所所属の神官達に霊を祓わせつつ、呪符を使って穴を塞ごうとした。
ところがその時には、異界との穴は腿の太さ程に広がっており、穴を潜って宙を泳ぐウツボの様な鋭い歯をした魚が現れたのだ。
魚は食堂の石の扉を食い破り、食堂に結界を張っていた術者を襲い始めた。
ここに至って、対処し切れなくなった保安責任者は、はじめて帝城の守備隊と聖神殿に緊急事態を通報した。

数千人の術者が呼ばれて地下研究所全体に結界を張って、霊が地上に抜けるのを防いでいる。
守備兵二中隊が交代で、結界を抜けて来る魚の化け物と戦っている。
数千人の神官が、結界を食い破って来る悪霊を祓っている。
それでも事態は絶望的で、研究所の中の悪霊がどんどん増えて結界を圧迫し、魚の化け物も増えて研究所の外壁を食い破りつつあった。

穴を塞がなければ、破綻は時間の問題という結論は直ぐに導かれ、決死隊が組織された。
だが、霊と魚の化け物が混合した敵は非常に手強く、兵士は霊に襲われて倒れ、神官は異界の生き物に食い殺される状態となり、穴を塞ぐどころか、食堂にすら辿り着けない状態となっていた。

そんな時、魔霊も倒して鵺も倒す、オールラウンドな僕の噂が聖神殿に入ったらしい。
そして万が一、今この状況が民に洩れたら、帝都の民五千万人がパニックになって多数の死者がでるので、ミントさんが直接依頼を伝えに来たらしい。

仕方が無いから了承する。
情況を聞いていると、事態はどんどん悪い方へ転がって行き、異世界の魚と霊が、この世界を占領するのも時間の問題に思えたのだ。
宿に戻って四人に帝都へ行く事だけを話す。
四人は、帝都に行けると大喜びだった。
急いで身支度を整えると、シルベニアでの暮らしが長かった分、荷馬車一杯分の荷物が溜まっていた。

聖神殿が用意してくれた、メニュットと言う足の速い大鹿が曳く馬車に乗り込むと、四人はさすがに異常な事態に気が付く。
事態を説明すると、四人の顔は緊張で強張った。
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