奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

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27 帝都クラレシュール

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途中何度か宿場町でメニュットを入れ替えて、馬車は四昼夜走り続けた。
馬車は大河の畔に辿り着き、僕等はここでやっと馬車から降ろしてもらえた。
海の様な大河の中に帝都クラレシュールは浮かんでいた。

帝都へは、河原に作られた巨大な船着き場から渡し船で渡る。
帝都の中心には、天に向かって延びる青く輝く尖塔が聳え立ち、その尖塔の中腹から、まるで裾を広げたドレスのスカートの様に、七色の帯を周囲に投げ広げた様な独特のデザインの屋根が周囲に伸びている。

船着き場は、帝城で起こっている危機とは無関係に、多くの荷や人が行き交い賑わっている。
僕らが船着き場に並んでいる小船に乗り込むと、船は自動的に静かに動き始めた。

「わー、凄い」
「魔術なのよ、ほら、船の先端に魔珠が填まっているでしょ、あの珠が人の動きを判断して船を動かしているのよ」
「どんな術式を使ってるんですか」
「秘密らしいわ」

船は都の中に張り巡らされて複雑な水路を通り、帝城を囲む堀に入って停まった。
都の印象は陶器の町。
様々なデザインの陶器の置物の様な建物が、陳列されているかの様に整然と並んでいるのだ。

本屋は本の形をしているし、仕立屋は服の形をしている。
薬屋は瓶の形をしており、武器屋は地面に突き刺さった斧の形をしている。
判り易くて良いのだが、全てが鮮やかな色で彩られており、なんだか落ち着かない。

堀に設けられた階段を上ると、迎えの兵と神官が並んで待っていた。
案内されて帝城の正門を潜ろうとしたら、門に填められ魔珠が大きな音で警報を発して、僕の目の前で門の扉を閉じてしまった。
何故か僕だけ取り残されている、ファーレやミューア達四人も、ミントさんや出迎えの兵や神官も、皆扉の向こうへ行ってしまった。
魔珠が僕を怪しい人物と判断したのだろう。
確かに僕は異世界人なので怪しいと言えば一番怪しいのかも知れない、そもそも首から下げているプレートは他人の物だ。

仕方が無いので、踵を返して帰ろうとしたら、通用扉から飛び出して来たミントさんが凄い勢いで足に縋り付いて来た。

「帰らないで下さい!私が神官長様に叱られます」

結局僕も通用扉を潜って入ったのだが、魔珠はずっと警報を鳴らし続けていた。
七つの門が有って、僕は全部の扉示させ、全部の魔珠の警報を発動させた。
気の毒な守備兵達が、門の警報を停止するために走り回っている。

「オークだしね」
「うん、オークだもんね」
「迷惑だよねー」

通された場所は、皇帝の執務エリアにある作戦本部室。
通常は他国との争いが勃発した時に、皇帝の御前で会議を行う部屋なのだそうだが、今回はそれに匹敵する事態と判断して、この部屋が使われているらしい。

作戦卓には断面図と平面図が並べて広げられており、五層の研究所の四層までが異世界の生き物に占領されており、最上部層の中程で攻防を繰り広げている様子だった。

紹介された軍の将軍も、聖神殿の神官長も頬がこけ、目の下に隅を作っていた。
御前会議なので当然皇帝が上座から見守っているが、テオやミューアやファーレと同い年位の少女で、可哀そうに、玉座の上で熟睡している。

僕の到着を待っていた様で、作戦参謀から直ぐに地下への突入隊のレクチャーが始まった。

宙を泳ぐ魚の化け物は、何故か人の肩より上には飛べない様なので、頭上に穴が開いて無い限り、頭上から襲われる心配ない。
そこで提案されたのが、兵士が円陣を組んで魔術師囲み、魔術師が中から円陣の回りに結界を張って周囲の霊を排除し、じわじわ進む陣形だ。

魚の化け物は孤立している人間を集中的攻撃する性質を持っており、この性質を逆手に取って、一人だけ少し前に立たせて化け物の標的とし、左右斜め後ろに立った者が、左右から襲い掛かる化け物を始末して行く三人の連携体制が構築され、この三人を後ろから治療する神官が二人、結界を張る魔術師が一人の計六人一組の体制が確立された。
治療の神官は結界の歪みを抜けて来た霊の退治役も兼ねている。
この六人のユニットを正面、右方向、左方向、後ろに配置し、二十四人が菱型を作って突入する隊形が、スタンダードであり、生還率が高いベストな隊形となっていた。

ただこの隊形の練習してみて納得したのだが、この手法は、結界に問題を抱えていた。
そもそも結界は空間に固定して使う物なので、結界を移動させる術式は存在しない。
なので魔術師達は、現実的な対処方法として数歩毎に結界を張り直している。
そして隊の移動速度が速くなると結界の構築が徐々に遅れて来る。
ただ、移動速度を落せば化け物も霊もどんどん寄って来るので安易に速度も落とせず、ある一定以上の速さは必要なのだ。

構築の遅れの影響をまともに受けるのは先頭に立つ兵、結界を踏み越えて霊に襲われてしまうのだ。
先頭の兵から崩れ、食堂のあるフロアまで辿り着けないのはこのあたりが原因で、僕にお呼びが掛かったのも、このあたりの要因なのだろう。

地下一階のまだ占領されていないフロアで陣形を整え、二十四人が一丸となって、楔を打ち込む様に、霊と化け物の群れの中に飛び込んで行った。
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