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28 地下へ
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僕のユニットのメンバーは、左後ろがシュタイゲルという名の剣士で軍の中隊長、二十代前半の青い髪の美男子で、肩幅が広く、この世界の人間にしては珍しく体格が良かった。
装備はミスリル銀のフルアーマーに大盾、盾で防御しながら隙を見て片手剣で攻撃する、典型的な壁タイプだ。
右後ろがシトラスという短槍使い、金色の長い髪を首の後ろで縛っている二十歳前後の貴公子で、コートの様な形の、キラキラ光るスケールアーマーを羽織っている。
親衛隊の中隊長で公爵家の二男、こちらは攻撃重視の騎士タイプだ。
「オーク殿宜しく頼む、そちらのチャラ男は役に立たんから、敵は俺の方へ流してくれ」
「何を言い出すやら。オークさん、その男は盾の後ろに隠れるだけが取り柄の卑怯者です。単に敵を後ろに流すだけの迷惑な男ですから、無視して下さい。化け物は私の方に回して頂ければ私が屠ります」
「相変わらず口は達者だな。その口でメリッサを誑かしたか」
「はっ、はっ、はっ。単にあなたより私の方が魅力的だっただけですよ。今回無事帰れたら、たっぷりと可愛がってあげますよ」
「メッ、メリッサはそんな女じゃない。馬鹿にするな。直ぐに目が覚めて俺の所に戻って来る」
「どうでしょうね、あははははは。処女だったかどうか教えてあげましょうか」
「貴様」
神官はミントさんとカシスさん、二人とも二十歳前後なのだが、実力は聖神殿で一、二を争っているそうで、二人の互いを見る目は何故か険しい。
「足を引っ張らないでよ、ミント」
「何馬鹿な事言ってんのカシス、シルベニアへの派遣で私の方が上なのははっきりしたでしょ」
「何言ってるのよ、私が乗り物に弱かっただけじゃない」
「本当にそれだけだと思っているの、おほほほほ」
魔術師は、魔術師部隊が自信を持って送り込んだ実力者の筈なのだが。
「オークさん、この仕事が終わったら、一緒にお食事をしましょう」
僕の手を握って目をキラキラさせているのはゲルゴノート君、十代半ば過ぎの男の子、の筈だ。
ピンク色の丈の短い魔道師服を纏い、花が一杯乗ったピンク色の魔術師帽を被っている。
花束で囲んだ短杖を持ち、その恰好が物凄く良く似合っている。
魔道師服の裾から伸びる白くて細い足といい、知らなければ少女にしか見えない。
「ねえ、人選が間違ってるんじゃないの」
「揉めるようなら、途中で捨てて行きましょう」
それと言い忘れたが、僕の背中にはおまけと言おうかお荷物と言おうか、煩いのが二つ貼り付いている。
一緒に行くと、テオとミューアとファーレがごねて、ごねて、ごねて、ごねたので仕方なくミューアとファーレを鎖のリックに入れて背負って来たのだ。
ミューアはいざという時の為の治療役、ファーレは詠唱を覚えたので結界役として連れて来た。
テオはピーと一緒に地上からの連絡役をしてくれと言い包め、何とか説得した。
「テオ、ピーにドアの向こう側の映像を送らせてくれ」
”うん、解った。ピーやって”
”はい”
だがこれが大いに役立っている。
目の前にドアの向こうで戦っている兵士達の姿が浮かび上がった。
呼吸を整えてドアを開け、僕達は走り出した。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
ーーーーー
聖神殿主任神官ミント
何故神殿がオークさんの召喚に拘ったのか納得しました。
シュタイゲルもシトラスもカシスもノートも、全員が唖然としているのが伝わって来ます。
炎を纏った拳や足が一閃するだけで、魚の化け物が千切れ飛んで行くのです。
魚の皮は硬く弾力性があり刃が通り難い。
だから宙を泳ぐ魚を切ったり、刺したりする離れ技は、千年に一人と言われている天才であるシュタイゲルとシトラスにしか出来ないのです。
それだって、五回に一回程度なのですが、オークさんの拳が一閃すると、一度に三、四匹の魚の化け物が千切れ飛んで行くのです。
生命力の強い化け物なのですが、頭を打ち抜かれては一溜りもありません。
無造作に拳を振っている様に見えて実に正確なのです。
それだけではありません、足が結界の至近距離を通過すると、風圧で結界が消し飛んでしまいます。
ただ、結界の近くに居た霊も、一緒にごっそり風圧で吹き飛んで消滅するので、結界を修復する間に侵入する心配はありません。
ノートが必死です、大天才と呼ばれている彼の、こんな余裕の無い姿は初めて見ました。
基本的にシュタイゲルもシトラスもカシスも私も暇です。
走りながら、オークさんの背中で串焼きを食べているミューアちゃんとファーレちゃんを眺めています。
串焼きが美味しそう・・・あれ?。
オークさんの背中のリックに入っている二人がまるで揺れていません。
オークさんはまだまだ余裕が有るといくことなのでしょうか。
ーーーーー
予想していたよりも魚の化け物は脆かった。
霊も低級悪霊程度で、炎で煽ると簡単に消滅した。
まあ、出だしはこんな物なのだろう。
「こらファーレ、汁を零すなよ」
「ごめん、拭いとく」
僕等は大幅に予想よりも早く下のフロアに降りることが出来た。
装備はミスリル銀のフルアーマーに大盾、盾で防御しながら隙を見て片手剣で攻撃する、典型的な壁タイプだ。
右後ろがシトラスという短槍使い、金色の長い髪を首の後ろで縛っている二十歳前後の貴公子で、コートの様な形の、キラキラ光るスケールアーマーを羽織っている。
親衛隊の中隊長で公爵家の二男、こちらは攻撃重視の騎士タイプだ。
「オーク殿宜しく頼む、そちらのチャラ男は役に立たんから、敵は俺の方へ流してくれ」
「何を言い出すやら。オークさん、その男は盾の後ろに隠れるだけが取り柄の卑怯者です。単に敵を後ろに流すだけの迷惑な男ですから、無視して下さい。化け物は私の方に回して頂ければ私が屠ります」
「相変わらず口は達者だな。その口でメリッサを誑かしたか」
「はっ、はっ、はっ。単にあなたより私の方が魅力的だっただけですよ。今回無事帰れたら、たっぷりと可愛がってあげますよ」
「メッ、メリッサはそんな女じゃない。馬鹿にするな。直ぐに目が覚めて俺の所に戻って来る」
「どうでしょうね、あははははは。処女だったかどうか教えてあげましょうか」
「貴様」
神官はミントさんとカシスさん、二人とも二十歳前後なのだが、実力は聖神殿で一、二を争っているそうで、二人の互いを見る目は何故か険しい。
「足を引っ張らないでよ、ミント」
「何馬鹿な事言ってんのカシス、シルベニアへの派遣で私の方が上なのははっきりしたでしょ」
「何言ってるのよ、私が乗り物に弱かっただけじゃない」
「本当にそれだけだと思っているの、おほほほほ」
魔術師は、魔術師部隊が自信を持って送り込んだ実力者の筈なのだが。
「オークさん、この仕事が終わったら、一緒にお食事をしましょう」
僕の手を握って目をキラキラさせているのはゲルゴノート君、十代半ば過ぎの男の子、の筈だ。
ピンク色の丈の短い魔道師服を纏い、花が一杯乗ったピンク色の魔術師帽を被っている。
花束で囲んだ短杖を持ち、その恰好が物凄く良く似合っている。
魔道師服の裾から伸びる白くて細い足といい、知らなければ少女にしか見えない。
「ねえ、人選が間違ってるんじゃないの」
「揉めるようなら、途中で捨てて行きましょう」
それと言い忘れたが、僕の背中にはおまけと言おうかお荷物と言おうか、煩いのが二つ貼り付いている。
一緒に行くと、テオとミューアとファーレがごねて、ごねて、ごねて、ごねたので仕方なくミューアとファーレを鎖のリックに入れて背負って来たのだ。
ミューアはいざという時の為の治療役、ファーレは詠唱を覚えたので結界役として連れて来た。
テオはピーと一緒に地上からの連絡役をしてくれと言い包め、何とか説得した。
「テオ、ピーにドアの向こう側の映像を送らせてくれ」
”うん、解った。ピーやって”
”はい”
だがこれが大いに役立っている。
目の前にドアの向こうで戦っている兵士達の姿が浮かび上がった。
呼吸を整えてドアを開け、僕達は走り出した。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
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聖神殿主任神官ミント
何故神殿がオークさんの召喚に拘ったのか納得しました。
シュタイゲルもシトラスもカシスもノートも、全員が唖然としているのが伝わって来ます。
炎を纏った拳や足が一閃するだけで、魚の化け物が千切れ飛んで行くのです。
魚の皮は硬く弾力性があり刃が通り難い。
だから宙を泳ぐ魚を切ったり、刺したりする離れ技は、千年に一人と言われている天才であるシュタイゲルとシトラスにしか出来ないのです。
それだって、五回に一回程度なのですが、オークさんの拳が一閃すると、一度に三、四匹の魚の化け物が千切れ飛んで行くのです。
生命力の強い化け物なのですが、頭を打ち抜かれては一溜りもありません。
無造作に拳を振っている様に見えて実に正確なのです。
それだけではありません、足が結界の至近距離を通過すると、風圧で結界が消し飛んでしまいます。
ただ、結界の近くに居た霊も、一緒にごっそり風圧で吹き飛んで消滅するので、結界を修復する間に侵入する心配はありません。
ノートが必死です、大天才と呼ばれている彼の、こんな余裕の無い姿は初めて見ました。
基本的にシュタイゲルもシトラスもカシスも私も暇です。
走りながら、オークさんの背中で串焼きを食べているミューアちゃんとファーレちゃんを眺めています。
串焼きが美味しそう・・・あれ?。
オークさんの背中のリックに入っている二人がまるで揺れていません。
オークさんはまだまだ余裕が有るといくことなのでしょうか。
ーーーーー
予想していたよりも魚の化け物は脆かった。
霊も低級悪霊程度で、炎で煽ると簡単に消滅した。
まあ、出だしはこんな物なのだろう。
「こらファーレ、汁を零すなよ」
「ごめん、拭いとく」
僕等は大幅に予想よりも早く下のフロアに降りることが出来た。
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