31 / 83
31 説得
しおりを挟む
「我は”黒き角”、この狭き森の長だ。オークが何故人に味方する」
うー、最初から意思の疎通に行違いが生じている。
「僕はオーク、この世界の神の意思により、人として生きている」
うん、これならば嘘にはならないだろう。
ミントさんが訳しながらピクリと身を縮めたが、これは後で説明しよう。
「神の意思か、なら納得だ。では問おう、何故我を呼んだ」
何か簡単に納得してくれた。
「取引がしたい。人を襲うのを止めてくれ。対価に広き森へお前達を導こう」
「我らが此処に住まうは神の意思だ。神の意思の糸が我々をここに縛っている」
「なら、人を襲うのも神の意思か」
「いや、それは我らが意思だ」
「何故人を憎む」
「人がここに森を作り、我らをこの森に繋ぎ留めることを望み運命の糸を紡いだ。神はこの糸を縒って我らをこの森に繋ぎ留めている。故にここに狭き森を作り、この狭き場所に繋ぎ留める糸を紡いだ人を憎む」
「人の望みの糸は僕が断ち切った。神の糸はまだ残っているのか」
嘘ではない、テオを通じて研究所長と皇帝にミノタウロス達の解放の了承は得ている。
「それは神の意思を聞かねば判らぬ」
「新しき森は広いぞ、端には昼と夜が十度訪れても辿り着けない」
「うーむ」
「空には端が無い、無限の彼方に光る石が瞬いている」
「うーむ」
「空には白く輝く鋭い大岩が遥か彼方に浮いている」
「うーむ、それは亡くなった長老に聞いた事がある」
「なら長老の糸がまだ残っているかも知れないぞ」
「解った、神の意思を聞こう」
儀式は単純だった。
赤い石の回りに輪を作り、”アンガ、ウンガ、オンガ、フンガ”と呪文を唱えながら、右足を踏み鳴らし、左足を踏み鳴らし、大きく前に飛んで腰を落とす。
この動作を延々と繰り返すだけだった。
石の色が白く変われば新しい行動を起こし、黒く変われば現状を維持する。
僕もこの儀式加わった。
物凄く大変だった、全力で前に飛ばないと輪が乱れてしまうのだ。
無事石が白く変わり、儀式が終わった時には、太腿がパンパンに張っていた。
無事第三層を通過、これから下の層は生活区だ。
ーーーーー
聖神殿主任神官 ミント
ミノタウロスがあんなに知性を持った生き物だったとは意外でした。
言葉に乗って流れ込んで来た意識は、人間の物と全く変わりがありませんでした。
外見に惑わされ固定観念に囚われる、聖職者として失格です。
それとあんなに長時間、男性に抱き抱えられていたのは初めての経験です。
交渉が終わって下に降ろされた時、自分の居場所を追い出されたような、物凄い寂しさが胸に去来しました。
危なく抱き付いて泣き出しそうになりました、危ない危ない。
オークさんに縋り付いて抱き上げて貰っているあの子達を見ると、子供相手に恥ずかしいのですが、心の中に黒い雲が湧き上って来るような気がします。
”この世界の神の意思により、人として生きている”
この科白が私の頭に流れ込んで来た時に、オークさんの困惑に近い意思が私に流れ込んできました。
この科白に嘘は全く感じませんでした。
私よりも神を身近に感じている特別な存在、そんな印象を強く感じました。
これはあの子達も知らない、私だけが知っているオークさんの秘密・・・。
あれっ?胸がなんだか軽くなりました。
ーーーーー
生活・事務区に入っても楽にはならなかった。
今は事務区を進んでいるのだが、部屋毎に巨大な魚の化け物が住み付いているのだ。
ご丁寧に部屋の前を通過する度に、縄張りを荒らされたと思うのか、襲い掛かって来る。
魚の化け物も大きく強くなり、剣や槍では刃が立たなくなった。
後ろから襲われる心配が無くなったこともあり、全員で連携して倒す事にした。
魚が襲って来ると、僕が蹴りを入れて動きを止める。
魚が止まっている間に、柄の長いピッケルの様な道具で魚の頭を引掛けて、頭を地面に引き摺り下ろす。
次にシュタイゲルさんが大金槌、シトラスさんが長さ二メートルの大釘を持って僕の後ろから飛び出して来て、魚の頭にカンコンと大釘を打ち込んで、石の床に縫い留める。
その間にも、後続の兵士達が同じように大金槌と大釘を持って部屋に突入し、次々に魚の身体を床に縫い留め、動けなくなった魚の頭部の急所に、最後の三人が大金槌と大楔で留めを刺して行く。
大釘も大金槌も、ミノタウロスが侵入して来た場合の非常時用にと、各部屋の物置や倉庫に、鎖の網とセットで大量に保管してあった。
事務区の下は居住区、魚は少し小振りになったが数が多い。
長い廊下を挟んだ左右に二百五十世帯づつ、合計五百世帯が五階分並んでいるのだ。
合計二千五百部屋、二千五百匹の魚の化け物を倒さなければならないのだ。
もう完全な流れ作業だ。
ーーーーー
聖神殿主任神官 カシス
はっ、はっ、はっ。
肉体労働が有るなんて聞いて無かったです。
治療の作業も除霊の作業も少なくなったので、神官が大釘を満載した荷車を曳かされています。
まったくオークさんは若い女性を何だと思っているんでしょ。
あっ、また頭の中でファンファーレが、この数日で何度もレベルアップしています。
でも神官なのに腕力と体力が増えて来るなんてどうなんでしょう。
「大釘四本頼む」
「はい、どうぞ」
うー、大釘四本を軽々持てる様になってしまいました。
あーん、進む速度が段々早くなってます、結界からはみ出そうです、待って下さい。
うー、最初から意思の疎通に行違いが生じている。
「僕はオーク、この世界の神の意思により、人として生きている」
うん、これならば嘘にはならないだろう。
ミントさんが訳しながらピクリと身を縮めたが、これは後で説明しよう。
「神の意思か、なら納得だ。では問おう、何故我を呼んだ」
何か簡単に納得してくれた。
「取引がしたい。人を襲うのを止めてくれ。対価に広き森へお前達を導こう」
「我らが此処に住まうは神の意思だ。神の意思の糸が我々をここに縛っている」
「なら、人を襲うのも神の意思か」
「いや、それは我らが意思だ」
「何故人を憎む」
「人がここに森を作り、我らをこの森に繋ぎ留めることを望み運命の糸を紡いだ。神はこの糸を縒って我らをこの森に繋ぎ留めている。故にここに狭き森を作り、この狭き場所に繋ぎ留める糸を紡いだ人を憎む」
「人の望みの糸は僕が断ち切った。神の糸はまだ残っているのか」
嘘ではない、テオを通じて研究所長と皇帝にミノタウロス達の解放の了承は得ている。
「それは神の意思を聞かねば判らぬ」
「新しき森は広いぞ、端には昼と夜が十度訪れても辿り着けない」
「うーむ」
「空には端が無い、無限の彼方に光る石が瞬いている」
「うーむ」
「空には白く輝く鋭い大岩が遥か彼方に浮いている」
「うーむ、それは亡くなった長老に聞いた事がある」
「なら長老の糸がまだ残っているかも知れないぞ」
「解った、神の意思を聞こう」
儀式は単純だった。
赤い石の回りに輪を作り、”アンガ、ウンガ、オンガ、フンガ”と呪文を唱えながら、右足を踏み鳴らし、左足を踏み鳴らし、大きく前に飛んで腰を落とす。
この動作を延々と繰り返すだけだった。
石の色が白く変われば新しい行動を起こし、黒く変われば現状を維持する。
僕もこの儀式加わった。
物凄く大変だった、全力で前に飛ばないと輪が乱れてしまうのだ。
無事石が白く変わり、儀式が終わった時には、太腿がパンパンに張っていた。
無事第三層を通過、これから下の層は生活区だ。
ーーーーー
聖神殿主任神官 ミント
ミノタウロスがあんなに知性を持った生き物だったとは意外でした。
言葉に乗って流れ込んで来た意識は、人間の物と全く変わりがありませんでした。
外見に惑わされ固定観念に囚われる、聖職者として失格です。
それとあんなに長時間、男性に抱き抱えられていたのは初めての経験です。
交渉が終わって下に降ろされた時、自分の居場所を追い出されたような、物凄い寂しさが胸に去来しました。
危なく抱き付いて泣き出しそうになりました、危ない危ない。
オークさんに縋り付いて抱き上げて貰っているあの子達を見ると、子供相手に恥ずかしいのですが、心の中に黒い雲が湧き上って来るような気がします。
”この世界の神の意思により、人として生きている”
この科白が私の頭に流れ込んで来た時に、オークさんの困惑に近い意思が私に流れ込んできました。
この科白に嘘は全く感じませんでした。
私よりも神を身近に感じている特別な存在、そんな印象を強く感じました。
これはあの子達も知らない、私だけが知っているオークさんの秘密・・・。
あれっ?胸がなんだか軽くなりました。
ーーーーー
生活・事務区に入っても楽にはならなかった。
今は事務区を進んでいるのだが、部屋毎に巨大な魚の化け物が住み付いているのだ。
ご丁寧に部屋の前を通過する度に、縄張りを荒らされたと思うのか、襲い掛かって来る。
魚の化け物も大きく強くなり、剣や槍では刃が立たなくなった。
後ろから襲われる心配が無くなったこともあり、全員で連携して倒す事にした。
魚が襲って来ると、僕が蹴りを入れて動きを止める。
魚が止まっている間に、柄の長いピッケルの様な道具で魚の頭を引掛けて、頭を地面に引き摺り下ろす。
次にシュタイゲルさんが大金槌、シトラスさんが長さ二メートルの大釘を持って僕の後ろから飛び出して来て、魚の頭にカンコンと大釘を打ち込んで、石の床に縫い留める。
その間にも、後続の兵士達が同じように大金槌と大釘を持って部屋に突入し、次々に魚の身体を床に縫い留め、動けなくなった魚の頭部の急所に、最後の三人が大金槌と大楔で留めを刺して行く。
大釘も大金槌も、ミノタウロスが侵入して来た場合の非常時用にと、各部屋の物置や倉庫に、鎖の網とセットで大量に保管してあった。
事務区の下は居住区、魚は少し小振りになったが数が多い。
長い廊下を挟んだ左右に二百五十世帯づつ、合計五百世帯が五階分並んでいるのだ。
合計二千五百部屋、二千五百匹の魚の化け物を倒さなければならないのだ。
もう完全な流れ作業だ。
ーーーーー
聖神殿主任神官 カシス
はっ、はっ、はっ。
肉体労働が有るなんて聞いて無かったです。
治療の作業も除霊の作業も少なくなったので、神官が大釘を満載した荷車を曳かされています。
まったくオークさんは若い女性を何だと思っているんでしょ。
あっ、また頭の中でファンファーレが、この数日で何度もレベルアップしています。
でも神官なのに腕力と体力が増えて来るなんてどうなんでしょう。
「大釘四本頼む」
「はい、どうぞ」
うー、大釘四本を軽々持てる様になってしまいました。
あーん、進む速度が段々早くなってます、結界からはみ出そうです、待って下さい。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる