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43 ココロ神殿神官養成校
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ーーーーー
ココロ神殿神官養成校 二年A組 ジョージ
物凄く面白くねー、今度来る神殿の神官長は上級神官の資格持ちなんで、神官養成課程が一年に短縮されるらしい。
下の学年の連中と一緒の卒業なんて、俺達は完全に馬鹿みたいじゃねーか。
女連中に馬鹿にされながら、一年間この恰好悪い首輪を我慢して着けてたのによー。
どうせ都から来た軟弱な奴に違えーねー、その上級神官とやらに、この町のルールを教えて追い返してやる。
「おう、何人集まった」
「百人だ」
「けっ、けっ、けっ。本当に馬鹿ばっかりだな、男も女も全員じゃねーか」
「当たり前さ、あたい達だって一学年下の連中と同時卒業なんて嫌だよ。あの生意気な連中に舐められるからね」
「昨日若い女の神官が二人神殿に来てたけど、あいつ等かなー。神殿の連中がやけにぺこぺこしてたわよ」
「やっちまっても良いよな」
「構わないんじゃない、でも若い男だったらあたい達に遊ばせて貰うわよ」
「婆さんだったりしてね」
「勘弁してくれよ」
「まあ、それだったら、錫杖でも突っ込んで神殿前広場に素っ裸で晒して置くさ」
「本当にジョージは悪い奴だよね。まっ、そこが好きなところだけどね」
「しかし良く上町の連中も参加する気になったな」
「マリアに聞いたんだけどさー、連中は親から言われたらしいよ。なんでも商工会は自分達の息の掛かった神官長が副神官長に降格されて怒ってるらしいからさ。成功したら報酬も準備してるらしいよ」
「けっ、けっ、けっ。運の良い上級神官様じゃねーか。今夜たっぷり歓迎してやろうぜ。殺しちまっても商工会で処理してくれるだろうしよ」
「おう、この町のルール、たっぷり身体に教えてやろうぜ」
ーーーーー
冒険者ギルドは金が豊富に有るらしく、神殿は重厚な白と赤の磨石造りで、内装は至る所に透かし彫りが施され、高級家具が随所に配備されていた。
幹部神官達も贅沢な暮らしを送っているらしく、皆太っていた。
特に撲へこの神官長室を明け渡した副神官長は、完全な健康に悪い肥満体だった。
神官長室は特に豪華で、応接室が四つ、寝台付の従者控室が二つ、広い寝室が二つ、広い食堂と広い厨房、図書館並みの書斎、会議室、五十人位入れそうな風呂が用意されていた。
書斎の本棚を調べていたら埃の積もっていない本があり、好奇心でその本を手に取ったら、その本棚の後ろに隠されていた部屋のレバーを見付けてしまった。
その部屋には、十センチ角ほどの灰色の立方体、空間の光景と音を記録し再現する魔道具が山程保管されていた。
この魔道具は一個で金貨十枚以上する高級魔道具なので、通常は国同士の機密会議の記録や、結界で閉ざした空間で行う危険な魔法実験の記録などに使われる。
その魔道具が山程、たぶんこの魔道具の購入費で、楽に城が一つ買えそうな量が保管されていた。
ただ、この魔道具はその空間に存在する物全体を正確に再現する優れものなのだが、記録した場所へ正確に戻さないと記録は再現出来ないので、この記録場所不明の魔道具の山は、唯のゴミに過ぎない。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
最近、刻印札無しでも身体表面に魔力の炎を宿せる様になった。
この炎を宿した状態で触れれば、本来触る事が出来ない霊体や魔法の隠し扉や魔法の結界にも触れる事ができる。
なんとなく、まだこの部屋には秘密が隠されている様な気がしたのだ。
あった、簡素なベットが置かれていた寝室の壁に誤認の結界が張られており、その壁を抜けた先に魔法の扉が作られていた。
そして魔法の扉を抜けると、そこには拷問室が作られていた。
まあこれも一つのお約束だろう。
天井に仕掛けられた滑車、壁に提げられている縄や鎖や拘束具。
木馬や可動式の拘束具の付いたテーブル。
昔SMビデオで見た事のある道具が並んでいた。
部屋の中央に二十センチ角の青い透明な箱が台に乗せて置いてある。
もしやと思い、書斎の隠し部屋から記録の魔道具を何個か持って来た。
魔道具を青い透明な箱の上に乗せると、虹色に輝きながら箱の中へ沈んで行き、魔力を込めると、記録されていた光景が再現され始めた。
記録の中身は、副神官長のこの部屋で行ったプライベートSM記録だった。
副神官長単独の物もあれば、数人の男が少女に群がっている物もある。
明らかに人妻と思われる女性の物もあれば、少年、少女の物もある。
副神官長の個人的な嗜好なので、別に文句を付ける積りは無いのだが、困った事に、中に完全な本物が混じっていた。
冒険者ギルドが送り込んで来た副神官長の悪事を調べていた女性調査官なのだろう、拷問に掛けられて調査内容を喋らされていた。
目が虚ろになった女性調査官に対し、副神官長は満面に笑みを浮かべている。
これだけの証拠をここに残して部屋を明け渡したのだから、新しい神官長を直ぐにでも追い出せる自信と目算があったのだろう。
僕を見て脂汗を流している姿を不思議に思ったのだが、これで腑に落ちた。
僕の様な男が現れることは、予想していなかったのだろう。
寝室に戻ったが、悶々として眠れない。
今日は完全休養日なのだが、宿舎へ押し入って、ピーかミントかカシスを攫ってくるか。
そう思った時だった、息を殺して廊下をこの部屋に向かってくる大勢の気配を感じた。
多くは十四、五歳位の気配なので、たぶん養成校の生徒だろう。
ただその中に七人程、場数を踏んだ本物の暗殺者の抑えた殺気の気配が混じっている。
誰かが生徒を唆し、混乱の場で僕を殺害して、生徒に罪を押し付ける積りなのだろう。
この部屋の鍵を開けている、たぶん副神官長が合鍵を渡したのだろう。
ーーーーー
ココロ神殿神官養成校 二年A組 ジョージ
商工会の職員から手渡された鍵で、神官長室の鍵を開ける。
封印魔法も施されておらず、油断しきっているらしい。
音を立てない様に慎重に暗闇の中を進む。
幸い毛足の長い絨毯が足音を消してくれる。
十歩程進んだ時だった、突然後頭部に衝撃を感じて俺は気を失った。
「おっ、気が付いたか。この連中が誰か説明しろ」
気が付いたら裸に剥かれて手足を縛られていた。
暗器の有無を調べたのだろう、相手は荒事に慣れているようだ。
周囲を素早く見回すと、全員が裸に剥かれて風呂場のタイルの上で縛られて倒れている。
相手を嘗めていたようだ、ここで水攻めにでもされるのだろうか。
商工会の職員も全員裸で縛られているが、全員顔が腫れあがり、口から泡を吹いて気絶している。
「嘗めるんじゃねー、簡単にゲロすると思うな!」
「そうよ、あたい達を嘗めるんじゃないよ・・・ひっ」
声のする方を見て驚いた、声色から優男を想像していたのだが、淡い光石の中に浮かび上がっていたのは鬼だった。
俺は少しちびってしまった、直ぐ横に転がっているニナから暖かい液体が流れて来たので、ニナは盛大にお漏らししたのだろう。
「それじゃ身体を洗った後、話をじっくり聞かせて貰うぞ」
「ひー」
「いやー」
丁寧に身体を洗われたので、てっきりこれから喰われるんじゃないかと思ったが、連れて行かれたのは食堂じゃなくて寝室だった。
ニナと一緒に広いベットに放り込まれ、後はピンク色の雲の中で溺れているようだった。
ニナの喘ぎ声なのか自分の声なのかも解らなかった。
耳元で囁かれる質問に、声を張り上げて必死で答えている自分がいた。
何度も昇り詰め、そして頭が真っ白になった。
気が付くと、手足の縄が解かれて寝室の床に転がっていた。
窓から朝日が差し込んでおり、床の上に転がる大勢の裸の男女を照らしていた。
逃げようと思っても腰に力が入らず、足が動かない。
ベットが軋む音が聞こえたので目線を上げると、鬼がアリサとロットを弄んでいた。
アリサとロットを軽々と抱き上げ、強大な逸物を物凄い速さで交互に突き立てている。
跳ねあがりそうな勢いを、身体を押さえられているので真面に受けている。
ロットが大きく仰け反って脱力すると、アリサも直ぐに首を振りながら絶叫して仰け反った。
お終いなのかと思っていたら、脱力して糸の切れた人形の様になったアリサとロットを抱き合わせてベットに横たえて覆い被さり、再び腰を動かし始めた。
容赦が無い、やっぱり鬼だ。
二人の短い叫び声が遠ざかり、俺は深い眠りの中に再び落ちて行った。
目を覚ましたのは、ゴラスに抱き上げられた時だった。
何時も高笑いして斜に構えているゴラスが緊張に顔を引き攣らせている。
風呂場に連れて行かれた、ケイトに支えられて前を歩いているニナの股間から、内腿を伝って白い汁が流れ落ちている。
俺も同じように何かが内腿を伝って流れ落ちている感触がある。
身体を洗ってくれた後、ゴラスが服の着替えも手伝ってくれた。
宿舎に帰る途中、ゴラスが泣きそうな声で聞いて来た。
「あいつがよ、昨日話を聞け無かった連中は今晩じっくり話を聞かせて貰うって言ってたんだよ。何されるとこんなにボロボロになるんだよ。俺、あいつを見ただけで怖くて小便ちびっちまった。なんか怖くて怖くてよー」
俺は昨夜の事を、明け方に見たアリサとロットの様子も含めて正直に説明した。
回りの連中全員が俺の説明に耳を傾け、思い出したように、肩を借りながらすすり泣く連中も大勢いた。
ゴラスの顔が段々青褪めて来た。
「ゴラス、逃げようと思わないほうが良いぜ、たぶんあいつは別の生き物だ」
その日全員が恐怖心から、這うように頑張って授業へ出席した。
そして昼飯時、食堂で飯を食っていると、神殿の中庭から叫び声が聞こえて来た。
急いで窓際に走り寄り外を確認すると、前神官長が鬼に襟首を掴まれ、叫び声を上げて中庭の芝生上を引き摺られていた。
暴れ回る前神官長の巨体を軽々と、まるで軽いゴミ袋を持つように引き摺っている。
前神官長の絶叫が神殿中に響き渡る。
遠目にも恐怖で失禁しているのが解る。
神殿前広場で待っていた冒険者ギルドの護送車の檻へ、鬼が軽々と泣き叫ぶ前神官長を放り込む。
なんか、魔法を見ているようだった。
そして俺達全員が確信した、あいつに逆らうと命が危ないと。
その晩、残りの連中は全員大人しく神官長室へ出向いた。
そして誰が言い出した訳でも無いのに、俺達はサポートの為に同行した。
その晩、ゴラスに肩を貸しながら歩く宿舎への帰り道を、月が明るく照らしてくれていた。
ーーーーー
聖神殿主任神官 ミント
夕食後、カシスとお茶を飲んでいる時でした。
青褪めた顔をした若い神官が私の部屋に駆け込んで来ました。
身のこなしから、格闘術の上級者であることが読み取れます。
彼女は暫く扉の外の気配を探っていましたが、小さな息を吐いて私達の方に向き直りました。
「私は冒険者ギルドからの命で神殿内を内偵しているアヤメと申します。今晩行われる神官長様の襲撃計画を探り出しました。これから神官長様にお知らせして来ますので、お二人は先にお逃げ下さい」
「あっはっはっ、オークを襲おうなんて大馬鹿よね。大丈夫よ放っておいて」
「でも、格闘術の訓練を積んだ二学年生徒百人とプロの殺し屋が七人ですよ」
「あっはっはっ、その程度じゃ全然平気。それに生徒が百人も居るんなら大丈夫よ。今日は完全休養日だから、生徒四、五人だったら危ないから止めに行くけど百人なら大丈夫よ。オークも喜ぶわ」
「えっ?」
「まあ、自業自得かしら。でも百人って二年生全員でしょ、唆されているにしても、何でそんなに気が荒い人が多いのかしら」
「選考試験がそもそも殴り合いですから、不良の少年少女の集まりみたいな物なんです。授業は全然真面に聞かないし」
「えっ?」
「冒険者の養成校ですから、殴り合いはこの町の常識みたいな物なんです」
「ふーん」
「ですから、不良百人に襲われるのと一緒ですから危険なんです」
「大丈夫ですよ、アヤメさん。オークさんはミノタウロス十体と互角に渡り合える人ですから」
「えっ!」
「殺し屋七人はオークさんが捕まえてくれますから、アヤメさんは尋問の手配お願いします」
そして次の日の朝には殺し屋の尋問が終わり、首謀者が副神官長であることが判明しました。
昼前には逮捕状が完成し、アヤメさんがギルドの治安隊員と一緒に逮捕に向かいました。
副神官長は魔法で激しく抵抗しましたが、副神官長程度の魔法はオークさんには全然通じず、無事連行されて行きました。
そしてその晩、オークさんが残った生徒達から聞き取り調査を行い、商工会の関与も判明しました。
その記録を持って、オークさんと二人で商工会へ出向くと、応接室で大勢の人相の悪い男達に囲まれてしまいました。
殴り合いになると思って張り切っていたのですが、オークさんが懐から四角い小さな魔道具を出してテーブルの上に置くと、商工会の会頭さんが急に脂汗を流して、土下座して謝って来ました。
帰り道、気になったのでオークさんに聞いてみました。
「オークさん、その四角い小さな魔道具は何の魔道具なんですか」
「ミント、知りたいのか」
「ええ、会頭さんが脂汗流して謝ってましたから」
「物凄く知りたい?」
「ええ、物凄く知りたいです」
「よーし、帰って昼飯食ったら、直ぐに教えてやろう」
そして、キャー、恥ずかしくてこれ以上は話せません。
魔法の扉から寝室に戻ったら、既に夜が明けていました。
ココロ神殿神官養成校 二年A組 ジョージ
物凄く面白くねー、今度来る神殿の神官長は上級神官の資格持ちなんで、神官養成課程が一年に短縮されるらしい。
下の学年の連中と一緒の卒業なんて、俺達は完全に馬鹿みたいじゃねーか。
女連中に馬鹿にされながら、一年間この恰好悪い首輪を我慢して着けてたのによー。
どうせ都から来た軟弱な奴に違えーねー、その上級神官とやらに、この町のルールを教えて追い返してやる。
「おう、何人集まった」
「百人だ」
「けっ、けっ、けっ。本当に馬鹿ばっかりだな、男も女も全員じゃねーか」
「当たり前さ、あたい達だって一学年下の連中と同時卒業なんて嫌だよ。あの生意気な連中に舐められるからね」
「昨日若い女の神官が二人神殿に来てたけど、あいつ等かなー。神殿の連中がやけにぺこぺこしてたわよ」
「やっちまっても良いよな」
「構わないんじゃない、でも若い男だったらあたい達に遊ばせて貰うわよ」
「婆さんだったりしてね」
「勘弁してくれよ」
「まあ、それだったら、錫杖でも突っ込んで神殿前広場に素っ裸で晒して置くさ」
「本当にジョージは悪い奴だよね。まっ、そこが好きなところだけどね」
「しかし良く上町の連中も参加する気になったな」
「マリアに聞いたんだけどさー、連中は親から言われたらしいよ。なんでも商工会は自分達の息の掛かった神官長が副神官長に降格されて怒ってるらしいからさ。成功したら報酬も準備してるらしいよ」
「けっ、けっ、けっ。運の良い上級神官様じゃねーか。今夜たっぷり歓迎してやろうぜ。殺しちまっても商工会で処理してくれるだろうしよ」
「おう、この町のルール、たっぷり身体に教えてやろうぜ」
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冒険者ギルドは金が豊富に有るらしく、神殿は重厚な白と赤の磨石造りで、内装は至る所に透かし彫りが施され、高級家具が随所に配備されていた。
幹部神官達も贅沢な暮らしを送っているらしく、皆太っていた。
特に撲へこの神官長室を明け渡した副神官長は、完全な健康に悪い肥満体だった。
神官長室は特に豪華で、応接室が四つ、寝台付の従者控室が二つ、広い寝室が二つ、広い食堂と広い厨房、図書館並みの書斎、会議室、五十人位入れそうな風呂が用意されていた。
書斎の本棚を調べていたら埃の積もっていない本があり、好奇心でその本を手に取ったら、その本棚の後ろに隠されていた部屋のレバーを見付けてしまった。
その部屋には、十センチ角ほどの灰色の立方体、空間の光景と音を記録し再現する魔道具が山程保管されていた。
この魔道具は一個で金貨十枚以上する高級魔道具なので、通常は国同士の機密会議の記録や、結界で閉ざした空間で行う危険な魔法実験の記録などに使われる。
その魔道具が山程、たぶんこの魔道具の購入費で、楽に城が一つ買えそうな量が保管されていた。
ただ、この魔道具はその空間に存在する物全体を正確に再現する優れものなのだが、記録した場所へ正確に戻さないと記録は再現出来ないので、この記録場所不明の魔道具の山は、唯のゴミに過ぎない。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
最近、刻印札無しでも身体表面に魔力の炎を宿せる様になった。
この炎を宿した状態で触れれば、本来触る事が出来ない霊体や魔法の隠し扉や魔法の結界にも触れる事ができる。
なんとなく、まだこの部屋には秘密が隠されている様な気がしたのだ。
あった、簡素なベットが置かれていた寝室の壁に誤認の結界が張られており、その壁を抜けた先に魔法の扉が作られていた。
そして魔法の扉を抜けると、そこには拷問室が作られていた。
まあこれも一つのお約束だろう。
天井に仕掛けられた滑車、壁に提げられている縄や鎖や拘束具。
木馬や可動式の拘束具の付いたテーブル。
昔SMビデオで見た事のある道具が並んでいた。
部屋の中央に二十センチ角の青い透明な箱が台に乗せて置いてある。
もしやと思い、書斎の隠し部屋から記録の魔道具を何個か持って来た。
魔道具を青い透明な箱の上に乗せると、虹色に輝きながら箱の中へ沈んで行き、魔力を込めると、記録されていた光景が再現され始めた。
記録の中身は、副神官長のこの部屋で行ったプライベートSM記録だった。
副神官長単独の物もあれば、数人の男が少女に群がっている物もある。
明らかに人妻と思われる女性の物もあれば、少年、少女の物もある。
副神官長の個人的な嗜好なので、別に文句を付ける積りは無いのだが、困った事に、中に完全な本物が混じっていた。
冒険者ギルドが送り込んで来た副神官長の悪事を調べていた女性調査官なのだろう、拷問に掛けられて調査内容を喋らされていた。
目が虚ろになった女性調査官に対し、副神官長は満面に笑みを浮かべている。
これだけの証拠をここに残して部屋を明け渡したのだから、新しい神官長を直ぐにでも追い出せる自信と目算があったのだろう。
僕を見て脂汗を流している姿を不思議に思ったのだが、これで腑に落ちた。
僕の様な男が現れることは、予想していなかったのだろう。
寝室に戻ったが、悶々として眠れない。
今日は完全休養日なのだが、宿舎へ押し入って、ピーかミントかカシスを攫ってくるか。
そう思った時だった、息を殺して廊下をこの部屋に向かってくる大勢の気配を感じた。
多くは十四、五歳位の気配なので、たぶん養成校の生徒だろう。
ただその中に七人程、場数を踏んだ本物の暗殺者の抑えた殺気の気配が混じっている。
誰かが生徒を唆し、混乱の場で僕を殺害して、生徒に罪を押し付ける積りなのだろう。
この部屋の鍵を開けている、たぶん副神官長が合鍵を渡したのだろう。
ーーーーー
ココロ神殿神官養成校 二年A組 ジョージ
商工会の職員から手渡された鍵で、神官長室の鍵を開ける。
封印魔法も施されておらず、油断しきっているらしい。
音を立てない様に慎重に暗闇の中を進む。
幸い毛足の長い絨毯が足音を消してくれる。
十歩程進んだ時だった、突然後頭部に衝撃を感じて俺は気を失った。
「おっ、気が付いたか。この連中が誰か説明しろ」
気が付いたら裸に剥かれて手足を縛られていた。
暗器の有無を調べたのだろう、相手は荒事に慣れているようだ。
周囲を素早く見回すと、全員が裸に剥かれて風呂場のタイルの上で縛られて倒れている。
相手を嘗めていたようだ、ここで水攻めにでもされるのだろうか。
商工会の職員も全員裸で縛られているが、全員顔が腫れあがり、口から泡を吹いて気絶している。
「嘗めるんじゃねー、簡単にゲロすると思うな!」
「そうよ、あたい達を嘗めるんじゃないよ・・・ひっ」
声のする方を見て驚いた、声色から優男を想像していたのだが、淡い光石の中に浮かび上がっていたのは鬼だった。
俺は少しちびってしまった、直ぐ横に転がっているニナから暖かい液体が流れて来たので、ニナは盛大にお漏らししたのだろう。
「それじゃ身体を洗った後、話をじっくり聞かせて貰うぞ」
「ひー」
「いやー」
丁寧に身体を洗われたので、てっきりこれから喰われるんじゃないかと思ったが、連れて行かれたのは食堂じゃなくて寝室だった。
ニナと一緒に広いベットに放り込まれ、後はピンク色の雲の中で溺れているようだった。
ニナの喘ぎ声なのか自分の声なのかも解らなかった。
耳元で囁かれる質問に、声を張り上げて必死で答えている自分がいた。
何度も昇り詰め、そして頭が真っ白になった。
気が付くと、手足の縄が解かれて寝室の床に転がっていた。
窓から朝日が差し込んでおり、床の上に転がる大勢の裸の男女を照らしていた。
逃げようと思っても腰に力が入らず、足が動かない。
ベットが軋む音が聞こえたので目線を上げると、鬼がアリサとロットを弄んでいた。
アリサとロットを軽々と抱き上げ、強大な逸物を物凄い速さで交互に突き立てている。
跳ねあがりそうな勢いを、身体を押さえられているので真面に受けている。
ロットが大きく仰け反って脱力すると、アリサも直ぐに首を振りながら絶叫して仰け反った。
お終いなのかと思っていたら、脱力して糸の切れた人形の様になったアリサとロットを抱き合わせてベットに横たえて覆い被さり、再び腰を動かし始めた。
容赦が無い、やっぱり鬼だ。
二人の短い叫び声が遠ざかり、俺は深い眠りの中に再び落ちて行った。
目を覚ましたのは、ゴラスに抱き上げられた時だった。
何時も高笑いして斜に構えているゴラスが緊張に顔を引き攣らせている。
風呂場に連れて行かれた、ケイトに支えられて前を歩いているニナの股間から、内腿を伝って白い汁が流れ落ちている。
俺も同じように何かが内腿を伝って流れ落ちている感触がある。
身体を洗ってくれた後、ゴラスが服の着替えも手伝ってくれた。
宿舎に帰る途中、ゴラスが泣きそうな声で聞いて来た。
「あいつがよ、昨日話を聞け無かった連中は今晩じっくり話を聞かせて貰うって言ってたんだよ。何されるとこんなにボロボロになるんだよ。俺、あいつを見ただけで怖くて小便ちびっちまった。なんか怖くて怖くてよー」
俺は昨夜の事を、明け方に見たアリサとロットの様子も含めて正直に説明した。
回りの連中全員が俺の説明に耳を傾け、思い出したように、肩を借りながらすすり泣く連中も大勢いた。
ゴラスの顔が段々青褪めて来た。
「ゴラス、逃げようと思わないほうが良いぜ、たぶんあいつは別の生き物だ」
その日全員が恐怖心から、這うように頑張って授業へ出席した。
そして昼飯時、食堂で飯を食っていると、神殿の中庭から叫び声が聞こえて来た。
急いで窓際に走り寄り外を確認すると、前神官長が鬼に襟首を掴まれ、叫び声を上げて中庭の芝生上を引き摺られていた。
暴れ回る前神官長の巨体を軽々と、まるで軽いゴミ袋を持つように引き摺っている。
前神官長の絶叫が神殿中に響き渡る。
遠目にも恐怖で失禁しているのが解る。
神殿前広場で待っていた冒険者ギルドの護送車の檻へ、鬼が軽々と泣き叫ぶ前神官長を放り込む。
なんか、魔法を見ているようだった。
そして俺達全員が確信した、あいつに逆らうと命が危ないと。
その晩、残りの連中は全員大人しく神官長室へ出向いた。
そして誰が言い出した訳でも無いのに、俺達はサポートの為に同行した。
その晩、ゴラスに肩を貸しながら歩く宿舎への帰り道を、月が明るく照らしてくれていた。
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聖神殿主任神官 ミント
夕食後、カシスとお茶を飲んでいる時でした。
青褪めた顔をした若い神官が私の部屋に駆け込んで来ました。
身のこなしから、格闘術の上級者であることが読み取れます。
彼女は暫く扉の外の気配を探っていましたが、小さな息を吐いて私達の方に向き直りました。
「私は冒険者ギルドからの命で神殿内を内偵しているアヤメと申します。今晩行われる神官長様の襲撃計画を探り出しました。これから神官長様にお知らせして来ますので、お二人は先にお逃げ下さい」
「あっはっはっ、オークを襲おうなんて大馬鹿よね。大丈夫よ放っておいて」
「でも、格闘術の訓練を積んだ二学年生徒百人とプロの殺し屋が七人ですよ」
「あっはっはっ、その程度じゃ全然平気。それに生徒が百人も居るんなら大丈夫よ。今日は完全休養日だから、生徒四、五人だったら危ないから止めに行くけど百人なら大丈夫よ。オークも喜ぶわ」
「えっ?」
「まあ、自業自得かしら。でも百人って二年生全員でしょ、唆されているにしても、何でそんなに気が荒い人が多いのかしら」
「選考試験がそもそも殴り合いですから、不良の少年少女の集まりみたいな物なんです。授業は全然真面に聞かないし」
「えっ?」
「冒険者の養成校ですから、殴り合いはこの町の常識みたいな物なんです」
「ふーん」
「ですから、不良百人に襲われるのと一緒ですから危険なんです」
「大丈夫ですよ、アヤメさん。オークさんはミノタウロス十体と互角に渡り合える人ですから」
「えっ!」
「殺し屋七人はオークさんが捕まえてくれますから、アヤメさんは尋問の手配お願いします」
そして次の日の朝には殺し屋の尋問が終わり、首謀者が副神官長であることが判明しました。
昼前には逮捕状が完成し、アヤメさんがギルドの治安隊員と一緒に逮捕に向かいました。
副神官長は魔法で激しく抵抗しましたが、副神官長程度の魔法はオークさんには全然通じず、無事連行されて行きました。
そしてその晩、オークさんが残った生徒達から聞き取り調査を行い、商工会の関与も判明しました。
その記録を持って、オークさんと二人で商工会へ出向くと、応接室で大勢の人相の悪い男達に囲まれてしまいました。
殴り合いになると思って張り切っていたのですが、オークさんが懐から四角い小さな魔道具を出してテーブルの上に置くと、商工会の会頭さんが急に脂汗を流して、土下座して謝って来ました。
帰り道、気になったのでオークさんに聞いてみました。
「オークさん、その四角い小さな魔道具は何の魔道具なんですか」
「ミント、知りたいのか」
「ええ、会頭さんが脂汗流して謝ってましたから」
「物凄く知りたい?」
「ええ、物凄く知りたいです」
「よーし、帰って昼飯食ったら、直ぐに教えてやろう」
そして、キャー、恥ずかしくてこれ以上は話せません。
魔法の扉から寝室に戻ったら、既に夜が明けていました。
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