46 / 83
46 地下遺跡3
しおりを挟む
ーーーーー
冒険者 デイジ
シクラも私も、姉ちゃんに置いて行かれない様に必死で追い掛けた。
出遅れたらまた姉ちゃんに殴られてしまう。
姉ちゃんは、特に治療の弟子である私には厳しい。
テオが狼を凄い勢いで倒し始めた時には本当に焦った。
だから、辛うじて一匹倒した時は、本当にほっとした。
可哀そうに、コスモとデルフィが姉ちゃんに頭を小突かれながら小言を喰らっていたが、姉ちゃんも今回はテオが混じっているので仕方がないと思っていた様だ。
うん、姉ちゃんすらテオに出遅れていた。
全員で手分けして狼を捌く。
これもテオがやたら手早い、此奴は本当に十三歳でHクラスの冒険者なのだろうか。
テオが蹴り倒した奴が一番大きかった。
「テオ、良くこんなでかいのを一発で倒せたな」
「そお?僕のリーダーだったら、拳骨一振りで三匹位撲殺するよ」
「・・・」
全員で手分けして毛皮と肉を背負い、七層の宿屋へ向かう。
途中何組もの、焼かれて、無残に食い散らかされたパーティーの遺体に遭遇した。
多分あの狼の群れに襲われたのだろう。
その遺体を見て、セチアやラックは青くなってゲーゲー吐いていたが、テオは冷静に散らばった遺体を確認していた。
そしてテオが、遺体を拾い集めて人の形に並べ、埋葬の悪霊祓いの儀式を始めた。
遺体の上に乗せた刻印札が、歌に乗せた詠唱と共に燃え上がり、遺体全体を青い炎で包んで行く。
テオの美しい歌声が、遺跡の中へ広がり染み亘って行き、場を清めて行く。
何かテオが聖女様の様に見えて来るから不思議だ。
全員で手を合わせて祈っていると、遺体から白い霧の様な塊が舞い上がり遺跡の天井を抜けて消えて行った。
遺体は灰に変わり、後には燃え残ったギルド登録証と入場札、魔石と武器だけが残されていた。
武器はすべて曲がったり折れたりしており、生き残ろうとした必死さを、雄弁に語っていた。
テオが小袋を取出し、遺体毎に名前を書いて、ギルド登録証と入場札と魔石を入れる。
ゾンビに変わった半焼けのパーティーが現れた時はパニックになり掛けたが、冷静なテオを見て落ち着きを取り戻した。
テオが落ち着いて手と足に刻印札を貼り付け呪文を唱えた。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
テオの手と足に青い炎が燃え上がり、ゾンビのパーティーの中へ突っ込んで行った。
ゾンビは脳天を叩かれると動きを止めて青い炎に包まれる。
そして尻をテオに蹴り上げられると、口を大きく開いて霧の様な黒い塊と白い塊を身体から吐き出して灰に変わる。
白い魂は上へと昇って天井に消え、黒い魂はテオに叩き落とされ足蹴にされる。
グリグリと踏み付けてられて小さくなり、そして消えた。
今まで私達が高級呪符を使って必死に対処していたのが、馬鹿みたいに思えて来る。
埋葬の儀式を四十八回、野犬の討伐を八回繰り返して、無事宿屋に到着。
宿屋の食堂やロービーには怪我人が溢れていた。
「おお、良く無事に来られたね。途中で炎狼の群れに遭わなかったのかい」
「運良く祠の中から対処出来てたので倒せました」
「そりゃすごい、あいつ等十五層から上がって来た群れなんで、全員この宿から動けなかったんだ。おーい!炎狼が倒されたぞ」
「本当か、これでやっと帰れるぞ」
「良かった、助かった」
「神官さん、神官さんいますか。ニーナの埋葬を・・うっ、うっ、うっ」
「九層の魔法陣へ行きます、合流希望のパーティーいますか」
「六層の魔法陣に戻ります。合流希望のパーティーはこのテーブルに集まって」
「パーティーの再編を考えている奴は俺の部屋に集まってくれ」
「仲間がゾンビに・・・、うっ、うっ、うっ」
「治療師さんいませんかー、治療師さんいませんかー、いたら治療を手伝って下さい」
宿屋中に人々の叫び声や大声が溢れた。
「はい注目!」
テオの良く通る声が宿屋の中に響き渡った。
「六層の魔法陣からここまでの間は、僕が埋葬を済ませて来ました。このテーブルの上に登録証の入った袋を並べますから、仲間の分を持ち帰って、入出場確認所で手続きお願いします」
テーブルの上に二百近い袋が墓標の様に並べられた。
大勢の冒険者が泣きながら群がって来た。
「マスター、それじゃ依頼の確認お願いします。手紙が十二通、風邪薬と毒消しと下痢止めが各二十、穀物粉が三袋、葉野菜が六束、これで全部です」
「うむ、確認した。これが受け取り証だ」
「それと狼の肉要ります?」
「こんな状況だ、食糧が足りなくて困っていたんだ、一樽銀貨二十枚で引き取ろう。それと治療が出来るメンバーがいたら、ギルドへの証明書を書くから手伝ってくれ」
姉さんと私とテオが治療を手伝うことになりました。
勿論見習いである私は魔道具の力を借りなければ治療は出来ません。
治療の魔道具を三連にしたネックレスに魔石で魔力を充填し、首から掛けます。
うー、この身体の力を吸い取られる様な感覚は、何度やっても好きになれません。
テオもまだ治療師としては見習いで、魔道具の力が必要だと言っていました。
あれ?テオは魔道具のネックレスを掛けていません、ん?指輪、指輪型の治療の魔道具は初めて見ました。
ーーーーー
冒険者 カンナ
驚きました、テオが取り出した魔道具は指輪型の治療の魔道具でした。
周囲の治療師や神官も一斉に動きを止めてその指輪を見詰めています。
聖神殿の神官のみが許される治療の指輪です。
私も実物は初めて見ました。
神官にとっては、聖神殿での修行経験を示すステータスシンボルと言われています。
聖神殿で修行するための競争率は、一万倍とも十万倍とも言われる狭き門です。
指輪の威力なのでしょうか、スピードも効果も全然違います。
それに他の術者達が魔力切れで寝込んでしまっても、一人だけまだ元気です。
んっ、あれっ?魔力の流れが治療を始めた時と変わっています。
テオの身体から指輪に向かって流れていた魔力の流れが、逆に指輪からテオの身体へと流れています。
多分、指輪が空中の魔力を捕捉し、テオに供給しているのでしょう。
「テオ、魔道具無しでも治療が出来てるよ」
「えっ!」
冒険者 デイジ
シクラも私も、姉ちゃんに置いて行かれない様に必死で追い掛けた。
出遅れたらまた姉ちゃんに殴られてしまう。
姉ちゃんは、特に治療の弟子である私には厳しい。
テオが狼を凄い勢いで倒し始めた時には本当に焦った。
だから、辛うじて一匹倒した時は、本当にほっとした。
可哀そうに、コスモとデルフィが姉ちゃんに頭を小突かれながら小言を喰らっていたが、姉ちゃんも今回はテオが混じっているので仕方がないと思っていた様だ。
うん、姉ちゃんすらテオに出遅れていた。
全員で手分けして狼を捌く。
これもテオがやたら手早い、此奴は本当に十三歳でHクラスの冒険者なのだろうか。
テオが蹴り倒した奴が一番大きかった。
「テオ、良くこんなでかいのを一発で倒せたな」
「そお?僕のリーダーだったら、拳骨一振りで三匹位撲殺するよ」
「・・・」
全員で手分けして毛皮と肉を背負い、七層の宿屋へ向かう。
途中何組もの、焼かれて、無残に食い散らかされたパーティーの遺体に遭遇した。
多分あの狼の群れに襲われたのだろう。
その遺体を見て、セチアやラックは青くなってゲーゲー吐いていたが、テオは冷静に散らばった遺体を確認していた。
そしてテオが、遺体を拾い集めて人の形に並べ、埋葬の悪霊祓いの儀式を始めた。
遺体の上に乗せた刻印札が、歌に乗せた詠唱と共に燃え上がり、遺体全体を青い炎で包んで行く。
テオの美しい歌声が、遺跡の中へ広がり染み亘って行き、場を清めて行く。
何かテオが聖女様の様に見えて来るから不思議だ。
全員で手を合わせて祈っていると、遺体から白い霧の様な塊が舞い上がり遺跡の天井を抜けて消えて行った。
遺体は灰に変わり、後には燃え残ったギルド登録証と入場札、魔石と武器だけが残されていた。
武器はすべて曲がったり折れたりしており、生き残ろうとした必死さを、雄弁に語っていた。
テオが小袋を取出し、遺体毎に名前を書いて、ギルド登録証と入場札と魔石を入れる。
ゾンビに変わった半焼けのパーティーが現れた時はパニックになり掛けたが、冷静なテオを見て落ち着きを取り戻した。
テオが落ち着いて手と足に刻印札を貼り付け呪文を唱えた。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
テオの手と足に青い炎が燃え上がり、ゾンビのパーティーの中へ突っ込んで行った。
ゾンビは脳天を叩かれると動きを止めて青い炎に包まれる。
そして尻をテオに蹴り上げられると、口を大きく開いて霧の様な黒い塊と白い塊を身体から吐き出して灰に変わる。
白い魂は上へと昇って天井に消え、黒い魂はテオに叩き落とされ足蹴にされる。
グリグリと踏み付けてられて小さくなり、そして消えた。
今まで私達が高級呪符を使って必死に対処していたのが、馬鹿みたいに思えて来る。
埋葬の儀式を四十八回、野犬の討伐を八回繰り返して、無事宿屋に到着。
宿屋の食堂やロービーには怪我人が溢れていた。
「おお、良く無事に来られたね。途中で炎狼の群れに遭わなかったのかい」
「運良く祠の中から対処出来てたので倒せました」
「そりゃすごい、あいつ等十五層から上がって来た群れなんで、全員この宿から動けなかったんだ。おーい!炎狼が倒されたぞ」
「本当か、これでやっと帰れるぞ」
「良かった、助かった」
「神官さん、神官さんいますか。ニーナの埋葬を・・うっ、うっ、うっ」
「九層の魔法陣へ行きます、合流希望のパーティーいますか」
「六層の魔法陣に戻ります。合流希望のパーティーはこのテーブルに集まって」
「パーティーの再編を考えている奴は俺の部屋に集まってくれ」
「仲間がゾンビに・・・、うっ、うっ、うっ」
「治療師さんいませんかー、治療師さんいませんかー、いたら治療を手伝って下さい」
宿屋中に人々の叫び声や大声が溢れた。
「はい注目!」
テオの良く通る声が宿屋の中に響き渡った。
「六層の魔法陣からここまでの間は、僕が埋葬を済ませて来ました。このテーブルの上に登録証の入った袋を並べますから、仲間の分を持ち帰って、入出場確認所で手続きお願いします」
テーブルの上に二百近い袋が墓標の様に並べられた。
大勢の冒険者が泣きながら群がって来た。
「マスター、それじゃ依頼の確認お願いします。手紙が十二通、風邪薬と毒消しと下痢止めが各二十、穀物粉が三袋、葉野菜が六束、これで全部です」
「うむ、確認した。これが受け取り証だ」
「それと狼の肉要ります?」
「こんな状況だ、食糧が足りなくて困っていたんだ、一樽銀貨二十枚で引き取ろう。それと治療が出来るメンバーがいたら、ギルドへの証明書を書くから手伝ってくれ」
姉さんと私とテオが治療を手伝うことになりました。
勿論見習いである私は魔道具の力を借りなければ治療は出来ません。
治療の魔道具を三連にしたネックレスに魔石で魔力を充填し、首から掛けます。
うー、この身体の力を吸い取られる様な感覚は、何度やっても好きになれません。
テオもまだ治療師としては見習いで、魔道具の力が必要だと言っていました。
あれ?テオは魔道具のネックレスを掛けていません、ん?指輪、指輪型の治療の魔道具は初めて見ました。
ーーーーー
冒険者 カンナ
驚きました、テオが取り出した魔道具は指輪型の治療の魔道具でした。
周囲の治療師や神官も一斉に動きを止めてその指輪を見詰めています。
聖神殿の神官のみが許される治療の指輪です。
私も実物は初めて見ました。
神官にとっては、聖神殿での修行経験を示すステータスシンボルと言われています。
聖神殿で修行するための競争率は、一万倍とも十万倍とも言われる狭き門です。
指輪の威力なのでしょうか、スピードも効果も全然違います。
それに他の術者達が魔力切れで寝込んでしまっても、一人だけまだ元気です。
んっ、あれっ?魔力の流れが治療を始めた時と変わっています。
テオの身体から指輪に向かって流れていた魔力の流れが、逆に指輪からテオの身体へと流れています。
多分、指輪が空中の魔力を捕捉し、テオに供給しているのでしょう。
「テオ、魔道具無しでも治療が出来てるよ」
「えっ!」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる