奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

文字の大きさ
55 / 83

55 地下遺跡12

しおりを挟む
遺跡調査団団長 ケイロン・リ・カルタナス

帰りが遅い。
”ケルベロスの咢”は行く手を直ぐに水で阻まれる探索が困難な遺跡で、そのため調査が殆ど行われていない。
出発したのが陽の二鈴なので、早ければ暮の一鈴、遅くとも暮の三鈴には戻って来ると思っていた。
中で訓練を行っているとしても遅すぎる、そろそろ夜が明けてしまう。
一、二班は相当消耗しきって帰って来た。
密かに聞き取ってみた限り、明らかに訓練の限界は超えており、多くの者が死に掛けたと言っていた。
あの神官長、見掛け通りの人外なのかもしれない。

捜索隊の編成を指示しようと決心した時になって、漸く戻って来た。
東の空が既に白み始めていた。

多くの犠牲が出ていることも覚悟していたのだが、犠牲者は無く、むしろ全員が何かやけに元気だ。
未開の地の裸族ではないが、男は護衛の兵士も含めて全員が褌一丁、女性も、驚いたことに貴族の令嬢達も含めて、褌に胸帯一枚という裸に近い格好で、楽しげに会話を交わしながら戻って来た。
全員が一回り大きくなった様な雰囲気で、逞しさが増した感じがする。
楽しげに雑談を交わしながら歩く姿には、まだまだ肉体的にも、精神的にも余裕が感じられる。

貴族の令嬢達は平民の少女達と楽しげに会話を交わしている。
若い少女達の瑞々しい身体が何か眩しい。
その少女一団から一人駆け寄って来た。
その白いしなやかな肢体にドキリとしたが、クルリ君だった。
何故君は胸帯を着けている。

「隊長、戻りました。報告を行いたいと思いますが宜しいでしょうか」
「私は構わないが、君達は疲れていないのかい。神官長の同意は貰ったのかい」
「僕は全然大丈夫です。オークさんは僕に報告を押し付けて飯を食いに行っちゃいそうなので、捕まえてきます」
「・・・・・、それじゃ指揮幕営で待ってるよ」

ーーーーー

昨夜の残飯を貰いに行こうと思ったら、ファーレとピーとクルリに捕まってしまった。
おかげで空きっ腹を抱えて報告することになってしまった。
少し位遺跡の中に生き物が居ると思っていたのが甘かった、今度は食糧をちゃんと持って行こう。

今、指揮幕営の作戦卓前で、ピーがクルリを背中から抱きしめている。
美少年二人による○×ショウをこれから始める訳じゃなくて、ピーとクルリの能力の相性上、この様な姿勢になっている。
クルリの特殊能力は記憶術、目で見た光景を記憶として鮮明に残す事が出来るのだ。
普段はこの記憶を基に詳細な絵を描き起こして報告書を作ったり、画家に記憶を送って絵を描かせるのだが、ピーはこの記憶をクルリから受け取ると、直接映像として映し出す事が出来るのだ。

「これが入口近くの様子です」
「ほー、うむ、ちょっと停めてくれ。拡大は出来るか」
「はい」

作戦卓前に下がっている敷布に映し出された映像が拡大する。

「うーむ、この透かし彫りの文様からするとサイノラス文明の初期じゃな。どうかの、タルトロス」
「うむ、他の遺跡に比べて遺棄された時期がだいぶ早いの」
「次はこれです。あっ、ピー消して」
『おー』

助手連中から歓声が起こった。
ピナス嬢の着替えシーンが突然大写しにされたのだが、直ぐに消えてしまった。

「若い子の尻はピチピチして可愛いの」
「クルリ、後で個人的に見せとくれ」
「駄目ですよ、先生」

僕も後でクルリを説得してみよう。
その後一層の様子が十数枚続いた。

「次が二層の様子です」

むむ、泳ぎ回る女の子達が一緒に映り込んでいる。

「すみません、女の子達に追いかけ回されていたんで、こんな光景になってしまいました」
「クルリ君、この子達は宙に浮いているように見えるが目の錯覚か」
「いえ団長、水の中なので泳いでいるんです」
「水面が見えんようだが」
「ええ、完全に水没していましたから」
「・・・・・。神官長、何か魔術を使ったのか」
「魔力を顔に纏わせて、空気を通す膜を作らせてだけです」
「・・・そんな事ができのか」
「全員出来る様になりましたよ」

「クルリ、その右上壁を拡大して見せてくれ」
「はい」
「アスピ、この彫像はメリメーノス文明の夢魔の像に似ておるの」
「うむ、メリメーノ大帝国がこの地域まで版図を広げていたとの伝承は有ったがの、具体的な証拠はこれが初めてじゃろ」
「クルリ、次の」
「先生方、報告書は後日クルリ君に作成して貰いますので、本日はゲートの方向についての議論を優先させて頂きます」
「おう、そうじゃった。すまん、ケイロン」
「申し訳ありません。それじゃ、クルリ君、結果を教えてくれ」
「はい、これが今日探索した遺跡の立体図です」

遺跡の立体図が映し出された。

「この方向から霊が侵入して来ました。昨日探索したもう一つ遺跡と突合して地図に落とすとゲートの位置はこの辺になります」
「うむ、遺跡が存在しない場所じゃの」
「それともう一つ、これはオークさんと遺跡から戻る途中に考察したんですが、十層から下の遺跡の通路跡が向かっている方向や、大門跡の向いている方向が、霊の侵入して来る方向と一致してるんです」
「ふーむ、その方向に何か古代の巨大施設が埋まっていると考えているのか」
「はいグリッドさん、僕もオークさんも同じ考えで、その巨大施設の中にゲートが生まれていると予想しています」
「それで神官長、明日からの、いや、今日の行動はどう計画してるんだい」
「三、四班はもう一人前なので、今日の昼まで休ませてから、それぞれまだ入っていない遺跡に潜らせて、この中心施設への通路を捜させます。ミントとカシスに随行させ、危ないと判断したら戻らせますから大丈夫でしょう。団長、この三つの遺跡は水が多いです」
「この、ケルベロスの尻尾は、入口自体が水面下にあるが、残りの二つは、下の層は水没しているが、今日ほどではない」
「それならば、一、二、五班は今日の昼から”ケルベロスの尻尾に潜ります。それとこれはお願いなのですが、調理師やポーターの女性で一緒に遺跡へ潜りたいという希望者がいれば、一緒に潜らせて下さい」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...