奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

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54 地下遺跡11

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エメノス侯爵家護衛隊長 ロンノル

貴族の姫達にあのような格好をさせるなぞ万死に値するのだが、不思議な事に姫達は皆あのオークなる人物の言う事に従って着替えている。
今回の調査団の護衛役として、彼女達の家からも特段の配慮を頼まれている。
だから自分が矢面に立ってあの化け物に意見するべきだったのだが、躊躇してしまった。
自分が護衛として役に立っていない負い目は勿論ある、既に二回意識を失い、小さな女の子に介抱されている。

だがそれ以上に、自分にあの男を説得できる自信が無かったのだ。
普段ならば、口論の先に控えている拳での説得と戦場で身に付けた殺気を糧に相手を説き伏せることができる。
国軍の一線を退いたとは言え、これでも自分にはまだまだこの国の戦士として十指入る自負と実績がある。
だがこいつを前にすると、勝てる気がまるでしないのだ。

体格が二周りも違うことは勿論ある、だがそれ以上に身体が纏っている生命力そのものが違う気がするのだ。
若い頃、山の中を行軍していた時に、向かいの尾根を歩くジャイアントオーガを見掛けたことがある。
隊長の合図で全員が地に伏せて息を殺した。
その迫力に足の震えが止まらなかったし、早く立ち去ってくれる事をじっと神に祈った。
あいつの前に立つと、あの時と同質の恐怖が蘇って来るのだ。

泳ぎの訓練の為に我々しばらくこの場に留まることになった。
姫様達は魔力の炎の扱いを直ぐに慣れ、自由に水中を泳ぎ回ってあの男に纏わり付いている。
坊ちゃまもピーと言う娘と仲良くなった様で、男の背中によじ登ってじゃれあっている。
何故坊ちゃまは、胸帯をされているのだろうか。

ーーーーー
調査団助手 第三班班長 クルリ

男らしくないのは判っているが、人前で胸を晒すのが、なんか物凄く恥ずかしい。
そう思って服を脱ぐ事を躊躇していたら、妖精の様な少女が話し掛けて来た。
背中と右腰の大きな蝶々結びが、飾り物の陶器の人形にリボンを結んだ様で可愛らしい。

「恥ずかしかったら、胸帯貰って来ようか」
「はははは、でも僕は男だからね。胸を出すのが恥ずかしいって言ったら変だろ」
「何で?僕も男だけど、人前で胸を出すのは物凄く恥ずかしいよ」
「えっ、君、男なの」
「うん」
「何で女の子の恰好してるの」
「最初は男の服着せて貰えなかったからだけど、今は女の子の服の方が可愛いから好きなんだ」
「へー、確かにその背中と腰の蝶々結び可愛いよね」
「君も似合うと思うよ」
「クルリで良いよ。似合うかな」
「僕はピー、貰って来ようか」
「うん」

ーーーーー
全員が泳げる様になったので、再び探索を開始した。
気晴らしと思って少し長めに溜り水で遊ばせてやったのだが、これが魔力と魔力の炎のコントロールの習熟に効果があった様で、魔術師の魔法の精度が上がり、安定した結界を張れる様になった。
治療師も治療の精度が上がり、地図師や護衛も自力で口や鼻から侵入しようとする霊を払い除けられる様になった。

そして最も技量が上達したのが神官と神官見習い達の祓術だ。
空中を飛び回る霊を叩き落し、炎を纏わせ殴打して昇天させることが出きる様になったのだ。
驚いた事に、よれよれになりながらも、霊やゾンビの襲撃を凌いでしまったのだ。

ーーーーー
ココロ神殿神官養成校 二年A組 ジョージ

水の溜まっている個所が多くなり、ついに遺跡は完全に水の下に沈んだ。
これでやっと帰れると大喜びしたのだが、完全に甘かった。
教官と神官長と女の餓鬼が回って来て、頬に刻印を描き始めたのだ。

「これから水中で呼吸する練習をする」

何か神官長が物凄く無茶苦茶なことを言い始めた、俺たちは魚じゃねー。

「頬の刻印に魔力を込め、炎で顔を覆え。炎を薄く強くコントロールして、水を拒んで空気だけを通すようにしろ」

そしてまだ聞いた事を良く理解しない内に、水の中へ蹴り落とされた。
水中から顔を上げようとすると、神官長に頭を押さえられる。
溺れて気を失うと、殴って叩き起こされ、再び水の中に放り込まれた。

四回程、去年死んだ祖父ちゃんに会い、俺はここで死ぬのかと思った。
五回目のご対面がうっすらと見え始めた時、俺は唇の感触を感じて意識を取り戻した。
ニナだった、ニナが必死で俺の口に空気を送り込んでくれていたのだ。

情けない、俺は自分自身に腹が立って、死ぬ積もりで頑張った。
そして突然、藪から空き地に這い出た様な感じで呼吸が出来るようになった。

ーーーーー
ファーレ

うーん、やっぱり男って単純です。
女の子から口移しで空気を吸わせて貰うと、炎の勢いが急に力強く変ってます。

最初に息が出来る様になったのは貴族の女の人達でした。
魔力が強い所為かと思ったのですが、何か違う様です。

「化粧の要領よ」

彼女達からそんな伝言が広がって行き、見習いの女の子達も直ぐに息が出来るようになりました。
そして安定して息が出来るようになると、健気な事に、オークの周りで頭を押さえられて溺れている彼氏達を助けに向かいました。

オークから彼氏を庇って、一生懸命口の中へ空気を送り込んでいます。
うわー、なんか物凄く微笑ましいです。

貴族の女の子達は、全員がクルリ君に群がって唇を奪い合っています。
可哀想に、クルリ君は息が吐けなくて白目を向いています。
はい、こちらは物凄く見苦しいです。

あっ、見兼ねたピーが女の子達からクルリ君を奪い取りました。
唇を重ねて呼吸させ、女の子達から器用に逃げ回っています。
追掛けている女の子達の魔力の炎が、怒りで物凄いことになってます。
あーあ、今晩からピーへの呪いと毒は決定でしょう。

護衛の兵士さん達は、ミントさんとカシスさんが面倒を見ています。
こちらも兵士さん達が異様に張っ切ってます、やはり男って馬鹿です。
取り敢えず、全員が呼吸出来る様になったみたいです。

「さあ、潜るぞ」
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