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71 カザノリア2
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勿体無いので、馬車の周りに転がっている鎧や兜や剣などの武具を回収した。
僕一人じゃ大変なので、奴隷達に手伝わせたのだが、何故か奴隷達の表情が急に表情が明るくなっている。
僕を恐れた怯えた眼差しが綺麗に無くなり、やけに態度が従順になっている。
なんだか物凄く気持ちが悪い。
ファーレやミューアに理由を聞いてみたのだが、”秘密”と言って教えてくれなかった。
武具を拾い集めた後、傷み具合を視ながら使えそうな品物を整理した。
兵士要員として買った奴隷達の装備を、まだ準備していなかったので都合が良かった。
すると、なんだか物凄く不審な剣を発見した。
ぶつぶつと何事かを呟いて、カタカタと勝手に動いているのだ。
”なんじゃこれは、可笑しいぞ。何でここから出られん。タイミングが悪いのじゃろうか、それじゃ今度は・・・。あれ?ここは何処じゃ、なんで儂はここに居る。なんじゃこれは、可笑しいぞ”
しかも同じ事をエンドレスで何度もブツブツと呟いている。
剣の中に魂が封じられているようで、魂の感触からすると、さっき見た中で一番強そうだった奴に違いない。
たぶんここの領主だったカザノフに違いないのだが・・・。
「カシス、どう思う」
「老衰で死んだ筈だから惚けてんじゃないの」
「無礼者、儂は惚けとらんぞ。・・・お嬢ちゃんは誰じゃったかのー」
カザノフならば聞きたい事がある。
でも何だかとっても不安だ。
「爺さん、あんたの館は何処にあるんだ」
「何処って、あそこに決まっておるじゃろ」
「その”あそこ”は何処だ」
「”あそこ”は”あそこ”に決まっておろうが、馬鹿な男じゃ」
馬糞の中に突っ込んでやろうかと思ったが、何とか自重した。
「お爺ちゃん、私達館へ行きたいの。案内してくれる?」
「ほー、綺麗なお嬢ちゃんじゃな。どうしようかのー」
カザノリアはこの百五十年、この爺さんの所為で人が立ち入っていない。
街道だった場所も、鬱蒼と木が生い茂り、立派な森に変っている。
闇雲に歩き回るよりは、地縛霊としてこの森を支配していた爺さんに聞いた方が良いと思ったのだ。
剣がコンコンとミントに向かって飛び跳ねて行き、ミントの尻を鍔で撫でまわしている。
この野郎、それは僕の尻だ。
やはり、馬糞の中へ突っ込むことにした。
「ぎゃー!」
僕は反省している、うん、感情に任せて行動するのは良くないことだ。
結局僕が、剣にこびり付いた馬糞を拭う羽目になってしまった。
良く考えれば解ることだった、あー臭い。
「さあ爺さん、案内しろ」
「解った、解ったから年寄に無体なことはするな」
人が立ち入らなかった所為か、森は生き物が豊かだった。
猪、熊、狼、野犬、大型の蜘蛛、恐竜みたいな蜥蜴、大蛇、大型の蜂。
一月分以上の食糧が十分に確保できた。
森に入ってはや十日、僕は二百名を越える大部隊を率いて途方に暮れていた。
「もう直ぐじゃ、あと半刻も歩けば城壁が見えて来る筈じゃ」
「はー、はー、爺さん、その台詞、十日前から聞いてるぞ」
周囲の森は増々深くなって行き、勾配がだんだんきつくなって来ている。
なんかこのままじゃ、峠を越えて隣国に入ってしまいそうだ。
ーーーーー
ナトチウス国 戦略室長 ケゲス
誤算だった、報告を聞いた時には信じられなかった。
我々があんなに手古摺っていたカザノフの怨霊達が、鬼の一声で昇天してしまったと言うのだ。
我々の試算では、カザノフの怨霊達を戦力として見積もると、五千人を越える部隊に匹敵する。
この情報を臨時の戦略会議においてを報告した時、沈黙が会議を支配して、もはや、国境への派兵に異議を唱える将軍はいなかった。
しかも鬼の軍勢は、カゼカノの町へ向かって真っ直ぐに進行して来ている。
もはやクルシュ皇国の狙いは疑う余地が無い、カゼカノの銀山を奪い取る積もりなのだ。
カゼカノの町に指令を飛ばし、郊外に一万の兵を配置し、臨戦態勢で備えさせた。
予測では、鬼は五日後にカゼカノへ到着する。
ーーーーー
館の城壁をやっと発見した。
僕らは隣国との境のカザリア山脈の尾根近くまで登って来てしまっている。
ここまで来ると、周囲の見晴しが良くなり、僕の領地を眼下に一望できる。
切り立った絶壁の上に立つ立派な城壁がはっきりと見える。
城壁は遥か彼方、遥か下方の山裾に有った。
確かに、僕らが森に入った場所のすぐ近くだ。
「だから、直ぐ近くだと教えたじゃろうが」
この野郎、熊の糞の中にぶち込んでやる。
ーーーーー
ナトチウス国 カゼカノ方面部隊 部隊長 メメス
罠を何か所にも仕掛け、万全の態勢で鬼を待ち構えた。
カゼカノ出身者が、兵の半数以上を占めるため、兵士達の士気を維持することが、最も大変な作業だった。
地元民の鬼に対する恐怖は、自分の想像以上だった。
もはや魂にこびり付いていると言っても過言ではなかった。
だが、到達予測日を過ぎても鬼は現れなかった。
緊張の日々を重ねるうち、兵士達がパニックに陥り始めた。
もはや部隊維持が困難となり、軍法会議覚悟で撤退の指示を出そうとした時だった。
本部から隼便が送られて来たので指令書を読むと、鬼が突然撤退したので、通常勤務体制に戻せとの内容だった。
膝から力が抜けて座り込んでしまった。
徐々に喜びが込上げて来て、涙が止まらなかった。
兵士達にこの情報を知らせると、私同様地面へ座り込み、抱き合って泣いていた。
急いで転属願いを出そう。
ーーーーー
石造りの館は、思っていたより屋根も壁もしっかりと残っていた。
それでも、大規模な手入れや修繕は勿論必要で、当面は掃除と大工仕事の日々が続きそうだった。
嬉しい誤算もあった。
便所の糞溜めに漬け込むと脅かしたら、爺さんが貯め込んであった財宝の隠し場所を白状したので、結構領地の復興資金に余裕が出来たのだ。
領内には温泉の湧き出ている場所が何か所もあり、道を整備してやれば、結構良い保養地になりそうなのだ。
館も敷地内に湧き出た温泉の湯を使っており、大きく立派な男女別の浴場が設けられていた。
「オーク、あの爺さん鎖で繋いでおいて」
「何でだ、ミューア」
「女子の浴場に忍び込んで来て、下着を盗んで行くのよ」
「・・・・・解った」
僕一人じゃ大変なので、奴隷達に手伝わせたのだが、何故か奴隷達の表情が急に表情が明るくなっている。
僕を恐れた怯えた眼差しが綺麗に無くなり、やけに態度が従順になっている。
なんだか物凄く気持ちが悪い。
ファーレやミューアに理由を聞いてみたのだが、”秘密”と言って教えてくれなかった。
武具を拾い集めた後、傷み具合を視ながら使えそうな品物を整理した。
兵士要員として買った奴隷達の装備を、まだ準備していなかったので都合が良かった。
すると、なんだか物凄く不審な剣を発見した。
ぶつぶつと何事かを呟いて、カタカタと勝手に動いているのだ。
”なんじゃこれは、可笑しいぞ。何でここから出られん。タイミングが悪いのじゃろうか、それじゃ今度は・・・。あれ?ここは何処じゃ、なんで儂はここに居る。なんじゃこれは、可笑しいぞ”
しかも同じ事をエンドレスで何度もブツブツと呟いている。
剣の中に魂が封じられているようで、魂の感触からすると、さっき見た中で一番強そうだった奴に違いない。
たぶんここの領主だったカザノフに違いないのだが・・・。
「カシス、どう思う」
「老衰で死んだ筈だから惚けてんじゃないの」
「無礼者、儂は惚けとらんぞ。・・・お嬢ちゃんは誰じゃったかのー」
カザノフならば聞きたい事がある。
でも何だかとっても不安だ。
「爺さん、あんたの館は何処にあるんだ」
「何処って、あそこに決まっておるじゃろ」
「その”あそこ”は何処だ」
「”あそこ”は”あそこ”に決まっておろうが、馬鹿な男じゃ」
馬糞の中に突っ込んでやろうかと思ったが、何とか自重した。
「お爺ちゃん、私達館へ行きたいの。案内してくれる?」
「ほー、綺麗なお嬢ちゃんじゃな。どうしようかのー」
カザノリアはこの百五十年、この爺さんの所為で人が立ち入っていない。
街道だった場所も、鬱蒼と木が生い茂り、立派な森に変っている。
闇雲に歩き回るよりは、地縛霊としてこの森を支配していた爺さんに聞いた方が良いと思ったのだ。
剣がコンコンとミントに向かって飛び跳ねて行き、ミントの尻を鍔で撫でまわしている。
この野郎、それは僕の尻だ。
やはり、馬糞の中へ突っ込むことにした。
「ぎゃー!」
僕は反省している、うん、感情に任せて行動するのは良くないことだ。
結局僕が、剣にこびり付いた馬糞を拭う羽目になってしまった。
良く考えれば解ることだった、あー臭い。
「さあ爺さん、案内しろ」
「解った、解ったから年寄に無体なことはするな」
人が立ち入らなかった所為か、森は生き物が豊かだった。
猪、熊、狼、野犬、大型の蜘蛛、恐竜みたいな蜥蜴、大蛇、大型の蜂。
一月分以上の食糧が十分に確保できた。
森に入ってはや十日、僕は二百名を越える大部隊を率いて途方に暮れていた。
「もう直ぐじゃ、あと半刻も歩けば城壁が見えて来る筈じゃ」
「はー、はー、爺さん、その台詞、十日前から聞いてるぞ」
周囲の森は増々深くなって行き、勾配がだんだんきつくなって来ている。
なんかこのままじゃ、峠を越えて隣国に入ってしまいそうだ。
ーーーーー
ナトチウス国 戦略室長 ケゲス
誤算だった、報告を聞いた時には信じられなかった。
我々があんなに手古摺っていたカザノフの怨霊達が、鬼の一声で昇天してしまったと言うのだ。
我々の試算では、カザノフの怨霊達を戦力として見積もると、五千人を越える部隊に匹敵する。
この情報を臨時の戦略会議においてを報告した時、沈黙が会議を支配して、もはや、国境への派兵に異議を唱える将軍はいなかった。
しかも鬼の軍勢は、カゼカノの町へ向かって真っ直ぐに進行して来ている。
もはやクルシュ皇国の狙いは疑う余地が無い、カゼカノの銀山を奪い取る積もりなのだ。
カゼカノの町に指令を飛ばし、郊外に一万の兵を配置し、臨戦態勢で備えさせた。
予測では、鬼は五日後にカゼカノへ到着する。
ーーーーー
館の城壁をやっと発見した。
僕らは隣国との境のカザリア山脈の尾根近くまで登って来てしまっている。
ここまで来ると、周囲の見晴しが良くなり、僕の領地を眼下に一望できる。
切り立った絶壁の上に立つ立派な城壁がはっきりと見える。
城壁は遥か彼方、遥か下方の山裾に有った。
確かに、僕らが森に入った場所のすぐ近くだ。
「だから、直ぐ近くだと教えたじゃろうが」
この野郎、熊の糞の中にぶち込んでやる。
ーーーーー
ナトチウス国 カゼカノ方面部隊 部隊長 メメス
罠を何か所にも仕掛け、万全の態勢で鬼を待ち構えた。
カゼカノ出身者が、兵の半数以上を占めるため、兵士達の士気を維持することが、最も大変な作業だった。
地元民の鬼に対する恐怖は、自分の想像以上だった。
もはや魂にこびり付いていると言っても過言ではなかった。
だが、到達予測日を過ぎても鬼は現れなかった。
緊張の日々を重ねるうち、兵士達がパニックに陥り始めた。
もはや部隊維持が困難となり、軍法会議覚悟で撤退の指示を出そうとした時だった。
本部から隼便が送られて来たので指令書を読むと、鬼が突然撤退したので、通常勤務体制に戻せとの内容だった。
膝から力が抜けて座り込んでしまった。
徐々に喜びが込上げて来て、涙が止まらなかった。
兵士達にこの情報を知らせると、私同様地面へ座り込み、抱き合って泣いていた。
急いで転属願いを出そう。
ーーーーー
石造りの館は、思っていたより屋根も壁もしっかりと残っていた。
それでも、大規模な手入れや修繕は勿論必要で、当面は掃除と大工仕事の日々が続きそうだった。
嬉しい誤算もあった。
便所の糞溜めに漬け込むと脅かしたら、爺さんが貯め込んであった財宝の隠し場所を白状したので、結構領地の復興資金に余裕が出来たのだ。
領内には温泉の湧き出ている場所が何か所もあり、道を整備してやれば、結構良い保養地になりそうなのだ。
館も敷地内に湧き出た温泉の湯を使っており、大きく立派な男女別の浴場が設けられていた。
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