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7 二層
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翌朝、起きたらズボンとシャツが親指の長さ程短くなっていた。
ズボンとシャツが一夜で短くなる筈もないので、僕自身がレベルアップで大きくなったらしい。
腕や足、腹や肩の筋肉も昨日より盛り上がっている。
土属性は皆小柄だと思っていたのだけれど、これが原因だったらしい。
朝食後、レザーアーマーの丈を伸ばし調整した。
母さんが僕の成長を考え、幾重にも内側に革を折り込んで置いてくれた。
一つ一つの丁寧な縫い目にも母さんの思いが籠もっており、これを渡した時の母さんの思いを考えると、涙が零れそうになった。
今日は二層に潜って見る積もりだ。
一旦二層に潜ると、以後迷宮の入口から強制的に二層の入り口へと送られるので、二度と一層に戻ることは出来ない。
もし僕の魔法が角兎に通じなかったら、逃げ帰るしかないので僕の成長はここで止まる。
一層で経験値を貯めるという選択枝が永遠に無くなるのだ。
だが僕は一歩踏み出すことにした。
昨日の出来事で、僕は先導者、道標としての役割を改めて自覚したのだ。
彼女達の未来を護るためにも、立ち止まって躊躇している暇は無く、これから起こることを皆に伝えなければならないのだ。
銅貨十枚を払い、迷宮の入口で深呼吸する。
二層への最短距離はガイドブックの地図で確認し、頭に刻み込んで有る。
入口に飛び込んで、そのまま一気に走り出した。
一層はほぼ無人だから、人と衝突することもない。
鼠と遭遇しても戦うことなく飛び越えひたすら走る。
無事魔法を使うことも無く二層への入口に到着、躊躇うこともなく一気に虹色に光る壁に飛び込んだ。
一層と違い、二層の入口には談笑しながら休憩している連中が数人居た。
皆若く、今年の羽化式を終えた連中だろう。
魔獣は入口や出口の虹色の光を嫌うとガイドブックに書いてあったから、休憩場所にしているのだろう。
「おいお前、この町人間じゃないな、初めて見る顔だ」
右脇で休んでいた連中の一人が声を掛けて来た、生意気そうな餓鬼だ。
「ああ、ヴェルディ村の狩人だ」
「けっ、土属性かよ。ここはお前らの来る場所じゃないんだぞ。目障りだからさっさと出て行けよ」
「そうだぜ、お前らなんか一生肥に塗れて土ほじくってるのがお似合いなんだよ」
「どうせ鼠から逃げ回ってここに来ちまったんだろうさ。死にたくなかったら、そこの壁から外に出な」
「奥に連れて行ってやろうぜ。どれ位逃げ回れるか、賭けようぜ」
「面白れー、俺も一口乗るぜ」
「おいお前ら、相手が無抵抗だと思って勘違いしてるんじゃないか。狩人ってのは、生き物殺しのプロなんだぜ。迷宮で死ぬと、魔獣みたいに全部迷宮吸い込まれるって言うじゃねえか。証拠も残らないし丁度良いかもな」
山刀を抜いて近づくと、全員が顔を真っ青にして光る壁に飛び込んで行った。
山刀を鞘に収めると、休憩していた残り全員が息を殺して僕を見つめている。
そんな連中を無視して、僕は二層の通路に足を踏み入れた。
二層は一層の二倍の広さがある。
基本的には一層と同じでほぼ無人だが、時々角兎と戦っている連中に出会う。
連中と言ったのは、数人一組で戦っているからだ。
興味半分で眺めて見ると戦い方が酷い、攻撃が当たらないのだ。
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、光矢!」
光の矢が飛んで行ったが、呪文に反応して角兎は走り出しているので、敵はそこにはいない。
急いで向かって来た角兎を盾で防いで、至近距離から足下に向かって魔法をぶっ放している。
「二本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、水矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、闇矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、風矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、光矢!」
「二本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、水矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、闇矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、風矢!」
足下に魔石が一つ転がっている。
他人が倒した魔獣の魔石を拾うと消えてしまうので、ステータス画面を開いて確認している。
「わーい、経験値が増えている。私のが当たったんだ」
「それにしても当たらないね。何が悪いんだろう」
矢の出現する高さが不安定だし、矢の速度が遅いし不安定だ。
獲物を良く見てないし、獲物の動きも予測できていない。
他にも突っ込み所が満載だが、そっとその場を離れる。
色々悩んだが、驚くほどあっけなく土弾で角兎を倒すことが出来た。
矢の飛距離が伸びたので、角兎が気が付く前に狩れるので効率が良い。
昨日の奴が魔力切れを狙って襲って来る心配があるので、魔力を二残して迷宮から引き上げる。
「まあ、氷属性なのかしら、優秀なのね。角兎の魔石二十五個だから銀貨十二枚と銅貨五十枚よ」
「はい、ありがとうございます」
二層から逃げ出した連中が後ろで待ち伏せていたので、肯定も否定もしなかった。
振り返ると属性マウントに負けたと勘違いしたのか、僕を睨みながらも黙っている。
争いが好きな訳じゃない、穏便に済ませられるなら、それに越した事はない。
狩りを済ませて歓楽街へ帰ると、予想どおり昨日の奴が仲間五人と共に待ち伏せていた。
「貴様ら、町中での攻撃魔法は厳禁だからな」
門番より偉そうな制服を着た兵士が、六人を威嚇してくれている。
そんな兵士を昨日の奴が突き飛ばし、それを合図に全員が呪文を唱え始める。
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「おい、貴様ら、俺の警告を・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「土質改変」
六人全員が泥に沈んだ。
「うわっぷ、たすけて」
「げふ、げふ」
「ひー」
「はなしが・・うっぷ」
「ごぼ、ごぼ」
「た・・す・・」
突き飛ばされた兵士を助け起こす。
「これって攻撃魔法にはなりませんよね」
「土が泥に変わっただけだから大丈夫だ、俺が保証する。それにそもそもこれは正当防衛だ。此奴ら札付きのチンピラなんだが今まで証拠が無くてな。これで領都に送って裁いて貰える。おい、助ける必要は無いぞ。溺れてから引き上げろ」
「はっ」
「はっ」
思った通り門番の上司だったらしい、これで煩わしい一件が落着だ。
ズボンとシャツが一夜で短くなる筈もないので、僕自身がレベルアップで大きくなったらしい。
腕や足、腹や肩の筋肉も昨日より盛り上がっている。
土属性は皆小柄だと思っていたのだけれど、これが原因だったらしい。
朝食後、レザーアーマーの丈を伸ばし調整した。
母さんが僕の成長を考え、幾重にも内側に革を折り込んで置いてくれた。
一つ一つの丁寧な縫い目にも母さんの思いが籠もっており、これを渡した時の母さんの思いを考えると、涙が零れそうになった。
今日は二層に潜って見る積もりだ。
一旦二層に潜ると、以後迷宮の入口から強制的に二層の入り口へと送られるので、二度と一層に戻ることは出来ない。
もし僕の魔法が角兎に通じなかったら、逃げ帰るしかないので僕の成長はここで止まる。
一層で経験値を貯めるという選択枝が永遠に無くなるのだ。
だが僕は一歩踏み出すことにした。
昨日の出来事で、僕は先導者、道標としての役割を改めて自覚したのだ。
彼女達の未来を護るためにも、立ち止まって躊躇している暇は無く、これから起こることを皆に伝えなければならないのだ。
銅貨十枚を払い、迷宮の入口で深呼吸する。
二層への最短距離はガイドブックの地図で確認し、頭に刻み込んで有る。
入口に飛び込んで、そのまま一気に走り出した。
一層はほぼ無人だから、人と衝突することもない。
鼠と遭遇しても戦うことなく飛び越えひたすら走る。
無事魔法を使うことも無く二層への入口に到着、躊躇うこともなく一気に虹色に光る壁に飛び込んだ。
一層と違い、二層の入口には談笑しながら休憩している連中が数人居た。
皆若く、今年の羽化式を終えた連中だろう。
魔獣は入口や出口の虹色の光を嫌うとガイドブックに書いてあったから、休憩場所にしているのだろう。
「おいお前、この町人間じゃないな、初めて見る顔だ」
右脇で休んでいた連中の一人が声を掛けて来た、生意気そうな餓鬼だ。
「ああ、ヴェルディ村の狩人だ」
「けっ、土属性かよ。ここはお前らの来る場所じゃないんだぞ。目障りだからさっさと出て行けよ」
「そうだぜ、お前らなんか一生肥に塗れて土ほじくってるのがお似合いなんだよ」
「どうせ鼠から逃げ回ってここに来ちまったんだろうさ。死にたくなかったら、そこの壁から外に出な」
「奥に連れて行ってやろうぜ。どれ位逃げ回れるか、賭けようぜ」
「面白れー、俺も一口乗るぜ」
「おいお前ら、相手が無抵抗だと思って勘違いしてるんじゃないか。狩人ってのは、生き物殺しのプロなんだぜ。迷宮で死ぬと、魔獣みたいに全部迷宮吸い込まれるって言うじゃねえか。証拠も残らないし丁度良いかもな」
山刀を抜いて近づくと、全員が顔を真っ青にして光る壁に飛び込んで行った。
山刀を鞘に収めると、休憩していた残り全員が息を殺して僕を見つめている。
そんな連中を無視して、僕は二層の通路に足を踏み入れた。
二層は一層の二倍の広さがある。
基本的には一層と同じでほぼ無人だが、時々角兎と戦っている連中に出会う。
連中と言ったのは、数人一組で戦っているからだ。
興味半分で眺めて見ると戦い方が酷い、攻撃が当たらないのだ。
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、光矢!」
光の矢が飛んで行ったが、呪文に反応して角兎は走り出しているので、敵はそこにはいない。
急いで向かって来た角兎を盾で防いで、至近距離から足下に向かって魔法をぶっ放している。
「二本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、水矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、闇矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、風矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、光矢!」
「二本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、水矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、闇矢!」
「三本の矢よ、一つとなりて敵を穿て、風矢!」
足下に魔石が一つ転がっている。
他人が倒した魔獣の魔石を拾うと消えてしまうので、ステータス画面を開いて確認している。
「わーい、経験値が増えている。私のが当たったんだ」
「それにしても当たらないね。何が悪いんだろう」
矢の出現する高さが不安定だし、矢の速度が遅いし不安定だ。
獲物を良く見てないし、獲物の動きも予測できていない。
他にも突っ込み所が満載だが、そっとその場を離れる。
色々悩んだが、驚くほどあっけなく土弾で角兎を倒すことが出来た。
矢の飛距離が伸びたので、角兎が気が付く前に狩れるので効率が良い。
昨日の奴が魔力切れを狙って襲って来る心配があるので、魔力を二残して迷宮から引き上げる。
「まあ、氷属性なのかしら、優秀なのね。角兎の魔石二十五個だから銀貨十二枚と銅貨五十枚よ」
「はい、ありがとうございます」
二層から逃げ出した連中が後ろで待ち伏せていたので、肯定も否定もしなかった。
振り返ると属性マウントに負けたと勘違いしたのか、僕を睨みながらも黙っている。
争いが好きな訳じゃない、穏便に済ませられるなら、それに越した事はない。
狩りを済ませて歓楽街へ帰ると、予想どおり昨日の奴が仲間五人と共に待ち伏せていた。
「貴様ら、町中での攻撃魔法は厳禁だからな」
門番より偉そうな制服を着た兵士が、六人を威嚇してくれている。
そんな兵士を昨日の奴が突き飛ばし、それを合図に全員が呪文を唱え始める。
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「おい、貴様ら、俺の警告を・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「十本の矢よ、一つとなりて・・」
「土質改変」
六人全員が泥に沈んだ。
「うわっぷ、たすけて」
「げふ、げふ」
「ひー」
「はなしが・・うっぷ」
「ごぼ、ごぼ」
「た・・す・・」
突き飛ばされた兵士を助け起こす。
「これって攻撃魔法にはなりませんよね」
「土が泥に変わっただけだから大丈夫だ、俺が保証する。それにそもそもこれは正当防衛だ。此奴ら札付きのチンピラなんだが今まで証拠が無くてな。これで領都に送って裁いて貰える。おい、助ける必要は無いぞ。溺れてから引き上げろ」
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