お兄ちゃん、馬鹿な事言わないでよ -妹付き異世界漫遊記ー

切粉立方体

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22 早く普段の生活に戻ろう

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王都から赤竜騎士団が呼ばれ、鵺の確認に向かった。
結局不本意ながら、俺の証言のみでは信用され無かったのだ。

鵺が現れ生死は不明、そんな噂が流れたら、それでなくとも魔獣騒動で客足の減っていた温泉街の致命傷になるのだ。
鵺の死体を持ち帰り、派手な安全宣言をして不安を一掃したい。
これがこの町から王宮に出された嘆願だった。

客なのに俺が案内する羽目になったし、赤竜騎士団の連中も迷惑そうな顔をしている。
そもそも団長が勘違いしている雰囲気なので仕方無いのかもしれないが。

「ミノス、迷惑だと思わんのか。やっと少し落ち着けると思ったのに。鵺じゃなくて野猿の間違いじゃないのか。貴様が野猿の雌でも裸で追いかけ回してたんじゃないのか」

俺が鵺を裸で追ったのを多くの人達が目撃した。
そもそも鵺は、町のメイン道路を堂々と歩き回って、町をパニックにしてから俺達の所に来たのだ。
怖いもの見たさに野次馬が遠巻きにゾロゾロ付いてきていたそうで、その眼前で鵺は離れの屋根を引き剥がし少女を掠ったのだ。

恐怖に人々がパニックになりかけたそうだ、だが次の瞬間、素っ裸の男が刀を一本持って何をプラプラさせながら鵺を追いかけて行く不思議な光景を見て、人々は喉元までこみ上げていた悲鳴を飲み込んでしまったそうだ。
何か違う変な物を見た感じ、恐怖の狭間に何か違う物がヌルリと入って来た様な違和感を感じたらしい。
失礼な話だ、俺は必死で真剣だったのに。
だから、王都への要請も今一つ中途半端な感じになったらしいのだ。

「ミノス、道はしっかり覚えているか。裸じゃなくて大丈夫か」

このやろう、目の前で素っ裸になってやろうかと思ったのだが、また打ち首だと騒がれると厄介なので我慢した。
でもなんかカラスがやけにに俺に絡んでくる気がする。

大型の荷そりを引いているので森の中の直線距離は進めない。
迂回しながらの、のんびりした道中になった。
俺に嫌みを言うのに飽きたのか、団長は荷の中ですやすや寝ている。
仕方が無いから、道案内の代わりに部隊を指揮した。
新任の兵達は怪訝そうな顔をいていたが、結界杭からの付き合いが有る連中は違和感を感じていないようだった。

遺跡入り口に到着、兵士の装備を確認して、注意事項を伝える。
暗視能力の有る俺が先頭で入り、トラップの場所などを指示して先に進んだ。

目的地に到着、団員達は鵺の大きさに驚愕して立ち尽くしていた。
カラスも驚愕して唖然として立っている。
なんか物凄く真剣な顔だったので、何となくいじりたくなった。

「わっ」

軽い冗談の積もりで背後から脅かしたのだが、遺跡の中に俺の声が反響して物凄くおどろおどろしい感じになってしまった。
兵士達は転げ出す様に逃げ出し、カラスは腰を抜かして泣き出してしまった。

団長を一人置いて逃げ出すのも酷いと思うが、原因は俺だ、何か物凄く悪い事をした様な気分になってしまった。
罪滅ぼしと思い、ハグして背中をさすって気持ちを落ち着かせた。

ーーーーー小隊長ツグミーーーーー

パニックになって本能的に逃げ出してしまった。
そしてだいぶ走ってから団長がいないことに気が付いたのだ。
姫様を置いて逃げ出してしまったのだ、このまま戻っても最悪全員打ち首かも知れない。
仕方ないので怖々戻って行った。

最初温泉街でミノスさんと会った時、私達は物凄く違和感を感じていた。
数日しか経っていないのに、何か獰猛な野獣が脇に居るような凄まじい迫力を感じるのだ。
これは団長も一緒の様で、自分を奮い立たせるために、ミノスさんを挑発している様な感じだった。
部隊を指揮してくれて居る時は安心感が有ったのだが、鵺の死体を見た瞬間恐ろしくなったのだ。
一大隊でも勝てるかどうか怪しい凄まじい大きさの鵺が胸から僅かな血を流して死んでいるのだ。

不安が脳裏を走る、ミノスさんに化けた魔に騙されて遺跡の奥へまんまと誘い出されてしまったのではないかと。
その時突然後ろから凄まじい怒号が聞こえたのだ、ついに本性を現したかと思った。
だから必死に逃げ出した。

戻りながらも団長が頭からバリバリ食われている姿しか想像出来なかった。
きっと顔半分まで口が裂けて、そこに鋸のような歯が並んでいるのだろう。
だが予想に反して団長は無事だった、ミノスさんに抱かれて甘え泣きをしている。
うわー、見ちゃいけない物を見た気がする、急いで物陰に隠れた。

ーーーーーミノスーーーーー

何とかカラスが落ち着きを取り戻した。
ハンカチで涙を拭き取ってから抱き上げてやる。
まだ腰が抜けているようなのだ。
でも彼奴等あれで隠れている積もりなのだろうか、あんなに前のめりで凝視されても困ってしまう。

「おい、お前等帰るぞ。鵺を担いで持って来い」
「へーい」

町に鵺を持ち帰ったら大騒ぎだった。
楽団を先頭に町のメインロードを行進させられてしまった。
お祭り騒ぎはまだまだ続く様だったが、おれはミーナを連れて町を抜け出した。
さあ、早く普段の生活に戻ろう。
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