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Ⅰ 第一学年
1 旅立ち
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「これは噂なんだが、教育委員会に大臣から直接指示が入るらしいんだ、それだけこの学院の運営母体は力が有るっていうことなんだろうな。受験したって事実自体の記録から消されるらしいぞ」
そんなの可笑しいだろ、そんな横車が通ったら、誰かがマスコミにリークする筈だ。
「父さんの実家はな、お前には話してなかったが隠れ陰陽師の血筋なんだ。分家の分家のまた分家で血は薄いんだが一応陰陽師一族には属している」
なんか父さんが胸を張って変な話を急に喋り始めた、父さんの血筋なんてどうでも良い、これと僕の入学取り消しになんの関係があるんだろうか。
「陰陽師はだな、平安時代から続く歴史ある職業でな、魔の侵入を防ぐ方術を司ることが元々の役割だったんだ。だが、時代と共に魑魅魍魎が増え始め、積極的に物の怪や怪異を祓う仕事に変化していったんだ。お前は知らんだろうがまだ結構必要とされているらしいぞ。それだけ物の怪や怪異がまだ俺達の見えない場所で蔓延っているんだろうな」
何気なく現実離れした話に移っていった、小説じゃあるまいし、実は怪しげな宗教に属しているなんて話だったら勘弁してほしい。
そう言えば、先週二人で旅行に行っていた、そこで洗脳されて来たんだろうか。
「その為の人材を育てるのがこの学院だ。本家筋の子供達は小学生からこの学院で勉強している。ほら、御祖父ちゃんの家に行った時、遊びに来てた摩耶ちゃんと雷子ちゃん、あの子達も確かこの学院の生徒だった筈だぞ」
微かに覚えている、摩耶はやたらに意地悪を仕掛けて来た子、雷子はやたらべたべたして来た子だ。
でも小学生低学年時代の話だ、顔も良く覚えていない。
「それにな、除霊の国家資格を取れば、医者や弁護士より儲かるらしいぞ」
「まあ、それなら安心ね。でも学費は大丈夫かしら」
「雷人、封筒開けるぞ。どれどれ、おっ、学費は無料だ。寮費も含めて自分で稼がせるらしいぞ、最近は積極的な就業体験が流行だからな」
「まあ、それなら安心ね」
冗談じゃない、全然安心じゃない、高校生なのに自分で稼がせるなんて無茶苦茶だ、それに今変な事を言った。
「寮費って父さん、そこって全寮制なの」
「ああ、全寮制らしいぞ。でも一人部屋なんて贅沢だな。稼ぎに応じて部屋のグレードが変わるらしいから、ずいぶん実践的な学校なんだな。正式な高校だから卒業時に他の大学進学するのも可能だそうで、数字を見る限り付属大学への進学が圧倒的だな」
「エスカレーター式なら安心ね、良かったじゃない雷人」
良くない、苦学生なんてやりたくない。
「撲アルバイトなんてしたことが無いよ、無理だよ。東京でアルバイト探す方法も解らないしさ」
「大丈夫だ、学校が除霊の手伝いを斡旋してくれるらしいぞ、ほら、ここに書いてある。ほう、報酬は数千円から数億なんて書いてあるぞ、父さんより稼げるんじゃないか。さっ、雷人これを良く読んで直ぐに準備始めろ、時間が無い。もう選択肢は残って無いんだ」
「父さん、そもそも撲は除霊なんて出来ないよ」
「・・・・・まあ、大丈夫だろ。教えて貰えるんだろ。駄目だったら猫毛高校に編入して貰えるだろう、たぶん」
父さんの最初の説明の意味が、朧気ながら見えて来たような気がする。
僕の知らない場所で僕の知らないことが起きている、そしてその知らない事を僕の知らない機関がニュースになることも無しに秘密裏に解決しているらしい。
たぶん国民に知らせちゃいけない秘密事項でマスコミもそれを知っているのだろう。
だから僕の入学取り消し程度は揉み消されてしまうのだ。
命が取られる訳じゃない、勉強する場所と内容が変わるだけだ、仕方が無い、諦めよう。
僕は神楽坂学院に入学することに決めた。
手続き書類に記入を終え、書いてあった指示どおり、書類を封筒に入れてベランダに立った。
すると何処ともなく現れた大きな梟が、僕の封筒を奪い去って、東京の方角に飛んで行った。
本当にこれで手続きが出来てるのだろうか、とっても不安だ。
旅行用のキャリーケースに必要最低限の荷物を詰め込む、新学期兼入学式は四月一日で普通の高校より早いのだ。
一通り準備を済ませてから、足りない物はコンビニで買い集める。
家に戻ってから一息吐いて、買って来たジュースを飲みながら息抜きにテレビゲームを始めた。
以前から密かに不思議と思っていたのだが、僕には変な特技が有る。
コントローラー無しでゲームが出来るのだ、人に話した事はない、話しちゃいけない事だと思ったのだ。
世の中には、まだまだ僕の知らない不思議が身の回りにごろごろしているのかもしれない。
そんなの可笑しいだろ、そんな横車が通ったら、誰かがマスコミにリークする筈だ。
「父さんの実家はな、お前には話してなかったが隠れ陰陽師の血筋なんだ。分家の分家のまた分家で血は薄いんだが一応陰陽師一族には属している」
なんか父さんが胸を張って変な話を急に喋り始めた、父さんの血筋なんてどうでも良い、これと僕の入学取り消しになんの関係があるんだろうか。
「陰陽師はだな、平安時代から続く歴史ある職業でな、魔の侵入を防ぐ方術を司ることが元々の役割だったんだ。だが、時代と共に魑魅魍魎が増え始め、積極的に物の怪や怪異を祓う仕事に変化していったんだ。お前は知らんだろうがまだ結構必要とされているらしいぞ。それだけ物の怪や怪異がまだ俺達の見えない場所で蔓延っているんだろうな」
何気なく現実離れした話に移っていった、小説じゃあるまいし、実は怪しげな宗教に属しているなんて話だったら勘弁してほしい。
そう言えば、先週二人で旅行に行っていた、そこで洗脳されて来たんだろうか。
「その為の人材を育てるのがこの学院だ。本家筋の子供達は小学生からこの学院で勉強している。ほら、御祖父ちゃんの家に行った時、遊びに来てた摩耶ちゃんと雷子ちゃん、あの子達も確かこの学院の生徒だった筈だぞ」
微かに覚えている、摩耶はやたらに意地悪を仕掛けて来た子、雷子はやたらべたべたして来た子だ。
でも小学生低学年時代の話だ、顔も良く覚えていない。
「それにな、除霊の国家資格を取れば、医者や弁護士より儲かるらしいぞ」
「まあ、それなら安心ね。でも学費は大丈夫かしら」
「雷人、封筒開けるぞ。どれどれ、おっ、学費は無料だ。寮費も含めて自分で稼がせるらしいぞ、最近は積極的な就業体験が流行だからな」
「まあ、それなら安心ね」
冗談じゃない、全然安心じゃない、高校生なのに自分で稼がせるなんて無茶苦茶だ、それに今変な事を言った。
「寮費って父さん、そこって全寮制なの」
「ああ、全寮制らしいぞ。でも一人部屋なんて贅沢だな。稼ぎに応じて部屋のグレードが変わるらしいから、ずいぶん実践的な学校なんだな。正式な高校だから卒業時に他の大学進学するのも可能だそうで、数字を見る限り付属大学への進学が圧倒的だな」
「エスカレーター式なら安心ね、良かったじゃない雷人」
良くない、苦学生なんてやりたくない。
「撲アルバイトなんてしたことが無いよ、無理だよ。東京でアルバイト探す方法も解らないしさ」
「大丈夫だ、学校が除霊の手伝いを斡旋してくれるらしいぞ、ほら、ここに書いてある。ほう、報酬は数千円から数億なんて書いてあるぞ、父さんより稼げるんじゃないか。さっ、雷人これを良く読んで直ぐに準備始めろ、時間が無い。もう選択肢は残って無いんだ」
「父さん、そもそも撲は除霊なんて出来ないよ」
「・・・・・まあ、大丈夫だろ。教えて貰えるんだろ。駄目だったら猫毛高校に編入して貰えるだろう、たぶん」
父さんの最初の説明の意味が、朧気ながら見えて来たような気がする。
僕の知らない場所で僕の知らないことが起きている、そしてその知らない事を僕の知らない機関がニュースになることも無しに秘密裏に解決しているらしい。
たぶん国民に知らせちゃいけない秘密事項でマスコミもそれを知っているのだろう。
だから僕の入学取り消し程度は揉み消されてしまうのだ。
命が取られる訳じゃない、勉強する場所と内容が変わるだけだ、仕方が無い、諦めよう。
僕は神楽坂学院に入学することに決めた。
手続き書類に記入を終え、書いてあった指示どおり、書類を封筒に入れてベランダに立った。
すると何処ともなく現れた大きな梟が、僕の封筒を奪い去って、東京の方角に飛んで行った。
本当にこれで手続きが出来てるのだろうか、とっても不安だ。
旅行用のキャリーケースに必要最低限の荷物を詰め込む、新学期兼入学式は四月一日で普通の高校より早いのだ。
一通り準備を済ませてから、足りない物はコンビニで買い集める。
家に戻ってから一息吐いて、買って来たジュースを飲みながら息抜きにテレビゲームを始めた。
以前から密かに不思議と思っていたのだが、僕には変な特技が有る。
コントローラー無しでゲームが出来るのだ、人に話した事はない、話しちゃいけない事だと思ったのだ。
世の中には、まだまだ僕の知らない不思議が身の回りにごろごろしているのかもしれない。
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