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Ⅰ 第一学年
4 入学式3
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僕を見る時の目は怖かったものの、先生の気持ちも落ち着いた様で無事午後のガイダンスが始まった。
まずは定番の自己紹介から、最初に担任の先生から始めた。
「私の名前は夢野琴音だ、歳は三十、お前等の倍人生を経験している、ちゃんと敬えよ貴様ら。私に見合った男が未だ見つからないからまだ独身だ。幻術が得意技だ、名前が示すとおり、特に得意なのは琴を使った夢への介入だ。教師になってまだ六年だが、今日の入学式程楽しい思いをしたことはない、だから楽しい思いをさせてくれた生徒二人には特別に楽しい夢をプレゼントしたいと思う。どんな夢だったかは、明日の楽しみとして当人達に確認して欲しい。以上だ」
うっ、やっぱりまだ怒っている。
「それじゃ名前順で行くぞ。最初は愛だ」
「はい、愛心音と申します。得意技は幻術で暗示が特に得意です。宜しくお願いします」
「つぎは犬井」
「はい、犬井次郎と申します。名前のとおり得意技は使役術で犬の使役には自信があります。宜しくお願いします」
「つぎは鵜飼」
「はい、鵜飼与謝次郎と申します、名字は鵜ですが鳥類一般の使役が得意です。宜しくお願いします」
「つぎは江川」
「はい、江川徹と申します。得意なのは水術と魚類の使役です。宜しくお願いします」
「つぎ、落」
「はい、落転之助と申します。得意なのは転術ですが、まだ未熟者で十メートルくらいしか飛び降りられません。宜しくお願いします」
「つぎ、風祭」
「はい、風祭明美です。得意なのは勿論風術です。宜しくお願いします」
「つぎ、火見谷」
「はい、私は火見谷望と申します。火見の分家の者です。中学生になってから能力が発現して受験が許されました。無事合格出来て光栄に思っております。宜しくお願いします」
「つぎ、木見」
「はい、木見紅葉と申します。木見の家の者です。私も火見谷さんと同じく中学で力が発現しました。宜しくお願いいたします」
通知を受け取ってからの一週間、父さんから付け焼刃的に陰陽師世界の情報は仕入れて来た。
僕達日本人は、普段意識しないのだが、潜在的に名字に力を示すシグナルを隠しているらしい。
たとえば、水谷ならば水術の才能、土田なら土術、木内なら木術の様にだ。
陰陽の習慣が残っている地域では、物心が付いたころから名字に沿った基礎訓練を始め、才能が有るエリート達は初等部の時点で学院に入学させるのだそうだ。
だから高校からの編入組でも訓練を積んで来た物が多い、僕の様に全くの基礎知識の無い初心者はレアケースなのだ。
次に家系の知識、陰陽の習慣が残った地域では才能ある能力者を多く輩出する名家が存在する。
先ほどの自己紹介で出て来た火見家や木見家がそれに該当する。
名家や本家や分家、これに個人の才能が絡み合って、劣等感と優越感が入り混じった複雑な感情が存在するらしい。
その後もサクサクと自己紹介が続き、猫パンツさんの名前は光井智子さん、縞パンツさんの名前は夢路遥さんであることが判明した。
光井さんは川越、夢路さんは横浜出身で俺と同じくいきなり合格通知が舞い込んだらしい。
「つぎ、雷夢」
「はい、雷夢雷人と申します。えー、照明のLimelightではなくて、雷と夢、、雷と人と書いて”らいむらいと”と読みます」
女性達からざわめきと小さな歓声が起こった、この反応は初めてだ。
「僕も夢路さんと同じく、陰陽に関する知識は全く無くて、この学院の存在は通知を受け取って初めて知りました。全くの初心者ですが宜しくお願いします」
「ちなみに此奴は助平だが、雷術教師の雷羅恭平の親戚だ」
「えっ、おじさんがここに居るんですか」
「なんだ、そんな事も知らないで入学したのか、後で私が恭平の研究室に連れて行ってやるぞ」
「はい」
恭平おじさんは親戚付き合いの少ない父さんの、唯一良く遊びに来る親戚だ。
父さんの弟の様な存在だ。
「最後だ、乱動」
この名を聞いた途端、何人かがぎょっとした顔をして後退った。
「はい、乱動迷子と申します。私も雷夢さんと同じでこの学院の事は通知を受け取って初めて知りました。昔から物凄い方向音痴で、これが私の才能なんだって御祖父ちゃんに言われました。素人ですが宜しくお願いいたします」
「ちなみに乱動は偶発術の大家の乱動教授のお孫さんだ。才能に恵まれているって話だったが、それは先ほど私が実体験させて貰った。本人がまだコントロールできる状態じゃ無いので、皆でサポートして欲しい。それじゃまだクラス委員を決めて無かったな。清掃用具入れから出て来た奴はいるか」
「はい」
恐る恐る手を挙げる、思った通り俺しかいない。
「うーん、雷夢か、まあ仕方が無いだろう。お前がクラス委員だ、中心になって乱動をサポートしろ」
「先生、初心者が初心者をサポートしても」
「それじゃ、手引きの百六ページを開けろ、ここに時間割が書いてある」
「あの先生」
「基本的には午前中が一般教養、午後が専門教育だ。専門教育は選択制だぞ、あとで希望表を出させる」
「・・・・・」
うん、面倒事は御断りと顔に書いてある、なにがなんでも乱動さんを僕に押し付ける積りらしい。
この心臓に毛が生えてる様な先生が疲れた顔をするなんて、さっきは一体何が有ったのだろう、すごく不安だ。
まずは定番の自己紹介から、最初に担任の先生から始めた。
「私の名前は夢野琴音だ、歳は三十、お前等の倍人生を経験している、ちゃんと敬えよ貴様ら。私に見合った男が未だ見つからないからまだ独身だ。幻術が得意技だ、名前が示すとおり、特に得意なのは琴を使った夢への介入だ。教師になってまだ六年だが、今日の入学式程楽しい思いをしたことはない、だから楽しい思いをさせてくれた生徒二人には特別に楽しい夢をプレゼントしたいと思う。どんな夢だったかは、明日の楽しみとして当人達に確認して欲しい。以上だ」
うっ、やっぱりまだ怒っている。
「それじゃ名前順で行くぞ。最初は愛だ」
「はい、愛心音と申します。得意技は幻術で暗示が特に得意です。宜しくお願いします」
「つぎは犬井」
「はい、犬井次郎と申します。名前のとおり得意技は使役術で犬の使役には自信があります。宜しくお願いします」
「つぎは鵜飼」
「はい、鵜飼与謝次郎と申します、名字は鵜ですが鳥類一般の使役が得意です。宜しくお願いします」
「つぎは江川」
「はい、江川徹と申します。得意なのは水術と魚類の使役です。宜しくお願いします」
「つぎ、落」
「はい、落転之助と申します。得意なのは転術ですが、まだ未熟者で十メートルくらいしか飛び降りられません。宜しくお願いします」
「つぎ、風祭」
「はい、風祭明美です。得意なのは勿論風術です。宜しくお願いします」
「つぎ、火見谷」
「はい、私は火見谷望と申します。火見の分家の者です。中学生になってから能力が発現して受験が許されました。無事合格出来て光栄に思っております。宜しくお願いします」
「つぎ、木見」
「はい、木見紅葉と申します。木見の家の者です。私も火見谷さんと同じく中学で力が発現しました。宜しくお願いいたします」
通知を受け取ってからの一週間、父さんから付け焼刃的に陰陽師世界の情報は仕入れて来た。
僕達日本人は、普段意識しないのだが、潜在的に名字に力を示すシグナルを隠しているらしい。
たとえば、水谷ならば水術の才能、土田なら土術、木内なら木術の様にだ。
陰陽の習慣が残っている地域では、物心が付いたころから名字に沿った基礎訓練を始め、才能が有るエリート達は初等部の時点で学院に入学させるのだそうだ。
だから高校からの編入組でも訓練を積んで来た物が多い、僕の様に全くの基礎知識の無い初心者はレアケースなのだ。
次に家系の知識、陰陽の習慣が残った地域では才能ある能力者を多く輩出する名家が存在する。
先ほどの自己紹介で出て来た火見家や木見家がそれに該当する。
名家や本家や分家、これに個人の才能が絡み合って、劣等感と優越感が入り混じった複雑な感情が存在するらしい。
その後もサクサクと自己紹介が続き、猫パンツさんの名前は光井智子さん、縞パンツさんの名前は夢路遥さんであることが判明した。
光井さんは川越、夢路さんは横浜出身で俺と同じくいきなり合格通知が舞い込んだらしい。
「つぎ、雷夢」
「はい、雷夢雷人と申します。えー、照明のLimelightではなくて、雷と夢、、雷と人と書いて”らいむらいと”と読みます」
女性達からざわめきと小さな歓声が起こった、この反応は初めてだ。
「僕も夢路さんと同じく、陰陽に関する知識は全く無くて、この学院の存在は通知を受け取って初めて知りました。全くの初心者ですが宜しくお願いします」
「ちなみに此奴は助平だが、雷術教師の雷羅恭平の親戚だ」
「えっ、おじさんがここに居るんですか」
「なんだ、そんな事も知らないで入学したのか、後で私が恭平の研究室に連れて行ってやるぞ」
「はい」
恭平おじさんは親戚付き合いの少ない父さんの、唯一良く遊びに来る親戚だ。
父さんの弟の様な存在だ。
「最後だ、乱動」
この名を聞いた途端、何人かがぎょっとした顔をして後退った。
「はい、乱動迷子と申します。私も雷夢さんと同じでこの学院の事は通知を受け取って初めて知りました。昔から物凄い方向音痴で、これが私の才能なんだって御祖父ちゃんに言われました。素人ですが宜しくお願いいたします」
「ちなみに乱動は偶発術の大家の乱動教授のお孫さんだ。才能に恵まれているって話だったが、それは先ほど私が実体験させて貰った。本人がまだコントロールできる状態じゃ無いので、皆でサポートして欲しい。それじゃまだクラス委員を決めて無かったな。清掃用具入れから出て来た奴はいるか」
「はい」
恐る恐る手を挙げる、思った通り俺しかいない。
「うーん、雷夢か、まあ仕方が無いだろう。お前がクラス委員だ、中心になって乱動をサポートしろ」
「先生、初心者が初心者をサポートしても」
「それじゃ、手引きの百六ページを開けろ、ここに時間割が書いてある」
「あの先生」
「基本的には午前中が一般教養、午後が専門教育だ。専門教育は選択制だぞ、あとで希望表を出させる」
「・・・・・」
うん、面倒事は御断りと顔に書いてある、なにがなんでも乱動さんを僕に押し付ける積りらしい。
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