神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

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Ⅰ 第一学年

3 入学式2

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「手引きの九十二ページを見ろ、ここに今日の予定が書いてある。今はミーティングの時間だ、これが終わったら体育館に移動して入学式だ。最もお前等以外は始業式みたいな物だがな。入学式が終わったら食堂に移動だ、一応歓迎式として昼飯を食わせてやる。荷物はずっとここに置いておくんだぞ、そんな物ガラガラ引っ張って歩かれたら迷惑だからな。でっ、飯を食い終わったら再びこの教室に集合だ、ガイダンスを行う。お前等の中で全くの初心者は何人おる、手を挙げてみろ」

恐る恐る手を挙げる、撲以外にも五人程居た、あっ、猫パンツさんと縞パンツさんも初心者だったのか。
皆不安そうに手を挙げながら周囲を見回している、なんか少し安心した。

「六人か、少し多いな。今手を挙げた者はガイダンスの後半は別室に移動して貰う。ガイダンスが終わったら各寮の寮長が迎えに来る、後はそいつ等の指示に従ってくれ、以上だ。なんか質問はあるか」
「はい」

前の方に座っていた初心者の一人、眼鏡を掛けた大人しそうな女の子が手を挙げた、確か教壇の下から這い出て来た子だ。

「扉を潜って、別の場所に飛んでしまったら、どのように連絡を取ったら良いでしょうか」
「・・・・、常識で考えてそんな馬鹿な事が起こる筈ないだろ。下らん質問はするな。他に無いか、無いようなら移動開始だ。教室の前扉から出るんだぞ、後ろの扉からは出るなよ」

うん、これは聞いちゃいけない事なんだ、暗黙の了解、知らない振りをしなければならない事項なんだ。
全員が前扉から体育館へ向かう、後ろの扉を試すようなチャレンジャーは勿論いない。
先生に質問した女の子は、必死の形相で先生の服の裾を掴んで後ろにぴたりと付いて行った。

廊下に無事?出ると、他のクラスもミーティングが終わった様で、教室からぞろぞろと出て来た。
その人の流れに乗って撲も体育館に移動した、階段を下り、廊下を進んで、長い渡り廊下歩く。
白い、客船の様な少し変わったデザインの体育館に入ると、上級生達は既に着席して待っていた。

教室を出る時に確認したら、確かDクラスだった、Dの立札の立った席へ行くと椅子に番号札付いていた、僕の席は後ろから二番目だった。

式典が始まろうとしている、学院長が来賓席から舞台中央のマイクに歩み寄って行く。
だが我クラスの二名がまだ来ていない、そう、最初に先生の後について教室を出た眼鏡を掛けた女の子とそして先導していた筈の先生その人だ。

式典が始まってしまい、理事長が挨拶を始めた。
理事長が祝辞を締めようとした時だった、舞台の左手で木枠が倒れた様な物凄い音がして、舞台の袖から先生と眼鏡の女生徒が転がり出て来た。
さすがに担任を任される先生だ、騒がず慌てずスクット立ち上がると、理事長に軽く会釈して平然と舞台を降りて来た。
眼鏡の女生徒はただ只管ひたすら先生の背中を見つめている。

クラスの列の前から三番目の席に女生徒座らせ、先生は俺の後ろの席に座った。
何が有ったのだろう、教室を出る時にはバリッとしてたスーツ姿だったのが、なんだかだいぶ疲れているような気がする、それに髪型もだいぶ乱れている。

普段来賓挨拶何て寝ながら聞いているのだが、今日は背後から物凄い怒気が漂って来たので怖くて目が覚めていた。

無事式典が終了し、最後に新入生全員が立ち上がって頭を下げる、そして一斉に着席する。
そしてその時再びトラブルが起きた、眼鏡の女の子が足をもつれさせて転んだのだ、後ろの子に見事なタックルを仕掛けた、そしてその子も転んで後ろの子にタックルを仕掛ける、そして見事な人間のドミノ倒しが起きた。

あっと言う間に僕まで波及して、ぼくも後ろの人に縋り付く、そう先生だ。
さすがに先生、倒れなかった、だが僕の両手に握られているのは明らかに先生のスカートだ、先生の足首で輪になっている。
恐る恐る見上げると、この日六本目の間近で見る生足とパンツ、パンツ丸出しの先生が立っていた。
先生が拳を震わせている。

「この野郎」

グーで五発殴られたが、これは絶対に不可抗力だと思う。

その後に歓迎会も兼ねた昼飯が振舞われたが、隣に座った先生の殺気混りの怒気に当てられて、何を食ったのか良く覚えていない。
僕は早々に食堂を出て、教室に逃げ込んだ。

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