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Ⅰ 第一学年
11 情報の海
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月曜日の午後、恭平おじさんの研究室へ出向く、アルバイトのお礼と講義の開始時期を確認するためだ。
「おう、雷人、仕事が早くて助かったって言われたぞ、ありがとな」
「僕こそ助かったよ、あんなに貰って良かったの」
「いや、あれは昔からの知り合いだから安く受けてたんだ。今IT系の陰陽師が不足しているから新規ならあの倍は貰ってる、今度はもっと実入りの良い仕事を紹介するよ」
「ありがとう、おじさん。今日から講義始まるの」
「いや、まだ人数が多いんだ。もう少し絞り込んでから始める積りなんだ。じゃないと、最初の水泳の練習が大変なんだ」
「水泳の練習?」
「ああ、精神力の水泳だ」
今日の最終選考で受講生を十人に絞り込む予定の様だ、勿論僕と摩耶と雷子は別枠だ。
今日はまだ摩耶と雷子は来ていない、あの二人が居ないと落ち着いた時間を過ごせる。
「雷人、情報の海に思考を送った事はあるか」
「無いよ、勿論」
「見えない場所を感覚で探った事は」
「それなら有るよ、コントローラー無しのゲームなんかそれだしね」
「ああ、それなら大丈夫かな。ちょっと手伝って欲しい事があるんだ」
「うん、いいよ」
コンピューターの前に移動し、おじさんが呪文を唱えて印を結ぶ、闇を照らし道筋を示す呪文だ。
「天照す火の灯し立て掲ぐれば闇という闇は・・・」
ボタンの無いマウスを渡された。
「さあ、雷人。これを伝って場を感じてごらん」
イメージ的には湖の様な場所の水の上に立っている感じだ。
「しっかり立ててるかい」
「うん、大丈夫だよ」
「じゃ、そこを泳ぎ回ってごらん」
水の中に身体を沈めて泳ぎ回る。
「段々泳ぐ速度を上げてごらん」
「はい」
湖のイメージが池に変わり、プールぐらいの区画された大きさに変わった。
「そこはここの研究室ネットワークだから狭いんだよ。インターネットに接続すると物凄い荒れた潮の流れに変わるんだ。じゃっ、そこに新しい情報を流すから拾い上げてごらん」
プールの水にさざ波が立ち、水が少し変化する、新しいデータは水の中に漂うソーメンの様に周りと馴染まないで白い太い線として存在しているので直ぐに判る。
そのソーメンを丁寧に泳ぎながら拾い集める。
「はい、えーと画像データだね。写真、んんん、えっ!摩耶と雷子の水着姿の写真じゃないか」
「正解、それだけ出来れば上等だよ。もう戻っても良いよ」
「駄犬の癖に私の名前を呼び捨てにしないで頂戴、ちゃんと摩耶様って呼びなさい」
「雷君、会えなくて寂しかったよー」
来た、摩耶と雷子が来た、途端に騒がしくなる。
「きゃー、何で恭平がこの写真持ってるのよ。直ぐに消去なさい、汚れるわ」
三十二インチのディスプレイに二人のビキニ姿の写真が大写しされている、日付からすると去年の夏の写真だ、まあ二人共、ボリューム豊かとは言い難い。
摩耶が僕の手からマウスを奪い取って、握った途端そのまま固まって動かなくなってしまった。
「あっ、雷人、摩耶を助けに行け」
「はい」
「私も行くー」
手を重ねてマウスを握り、思念を飛ばす。
摩耶が広大な湖に沈んで溺れそうになってもがいている、口から思念の情報を吐き出して萎んで行っている。
助けないと、意識と人格が情報の海に飲み込まれてしまう。
「雷君はお姉ちゃんを外に連れ出して、私はお姉ちゃんの意識を拾い集めて来るから」
「うん、解った」
潜って情報の水の中から引っ張り上げ、口を合わせて摩耶の意識の肺に俺の情報の器の概念を送り込む。
「はい、雷君、お姉ちゃんの意識」
一メートルくらい有りそうな長いソーメンの束を渡された、摩耶の身体の上に乗せると沈み込む様に吸収されて行く。
ちなみに摩耶と僕は制服姿で、何故か雷子はビキニ姿だ。
「雷子、その胸は少し盛り過ぎだぞ」
「てへっ」
「うーん」
摩耶の意識が本体とリンクしたようだ、存在としての意識が戻る。
「摩耶、ここは情報の世界だ。今から意識を身体に戻すから追いてこい」
素直に頷いている、なんか気持ち悪い。
何とか身体に意識を連れ戻す。
「駄犬、感謝するわ」
うん、何時もの摩耶に戻っている。
「雷人、これを手伝って欲しいんだ。本当はもっと絞り込まないと厳しいんだが、学院から駄目と言われてるんだ」
確かにこれは精神力の水泳の練習だ、だがおじさんと半分ずつとしても五人の初心者の相手は大変かもしれない。
良く毎年十人も教えられるたものだ。
「雷子にも手伝って貰ったら」
「こいつは人のプライバシーを平気で持ち出すから危なくて駄目なんだ。雷子、ちゃんと記憶を全部摩耶に返しておけよ」
「はーい」
小さく舌を出してから、摩耶の眉間に指を当てて記憶を返している、何の記憶だろう、摩耶が真っ赤になっている。
学生の選考が終わってからおじさんを手伝ったのだが、思ったとおり厳しかった。
予めダイビングを知らされているので、摩耶の様に完全なパニック状態では無いのだが、それでも沈んでしまうのだ。
助け上げて口から僕の持っている器の概念を送り込むのだが、何故か全員女性で、泳ぐと聞いた所為か全員が布地の少ないビキニ姿をイメージしてるのだ。
講義が終わった後、しばらく女風呂に居るイメージが抜けなかった。
でもこれは基本中の基本だ、僕等は荒れ狂う情報の大海に巣食う鬼や物怪を祓う術式を勉強をするのだから。
「おう、雷人、仕事が早くて助かったって言われたぞ、ありがとな」
「僕こそ助かったよ、あんなに貰って良かったの」
「いや、あれは昔からの知り合いだから安く受けてたんだ。今IT系の陰陽師が不足しているから新規ならあの倍は貰ってる、今度はもっと実入りの良い仕事を紹介するよ」
「ありがとう、おじさん。今日から講義始まるの」
「いや、まだ人数が多いんだ。もう少し絞り込んでから始める積りなんだ。じゃないと、最初の水泳の練習が大変なんだ」
「水泳の練習?」
「ああ、精神力の水泳だ」
今日の最終選考で受講生を十人に絞り込む予定の様だ、勿論僕と摩耶と雷子は別枠だ。
今日はまだ摩耶と雷子は来ていない、あの二人が居ないと落ち着いた時間を過ごせる。
「雷人、情報の海に思考を送った事はあるか」
「無いよ、勿論」
「見えない場所を感覚で探った事は」
「それなら有るよ、コントローラー無しのゲームなんかそれだしね」
「ああ、それなら大丈夫かな。ちょっと手伝って欲しい事があるんだ」
「うん、いいよ」
コンピューターの前に移動し、おじさんが呪文を唱えて印を結ぶ、闇を照らし道筋を示す呪文だ。
「天照す火の灯し立て掲ぐれば闇という闇は・・・」
ボタンの無いマウスを渡された。
「さあ、雷人。これを伝って場を感じてごらん」
イメージ的には湖の様な場所の水の上に立っている感じだ。
「しっかり立ててるかい」
「うん、大丈夫だよ」
「じゃ、そこを泳ぎ回ってごらん」
水の中に身体を沈めて泳ぎ回る。
「段々泳ぐ速度を上げてごらん」
「はい」
湖のイメージが池に変わり、プールぐらいの区画された大きさに変わった。
「そこはここの研究室ネットワークだから狭いんだよ。インターネットに接続すると物凄い荒れた潮の流れに変わるんだ。じゃっ、そこに新しい情報を流すから拾い上げてごらん」
プールの水にさざ波が立ち、水が少し変化する、新しいデータは水の中に漂うソーメンの様に周りと馴染まないで白い太い線として存在しているので直ぐに判る。
そのソーメンを丁寧に泳ぎながら拾い集める。
「はい、えーと画像データだね。写真、んんん、えっ!摩耶と雷子の水着姿の写真じゃないか」
「正解、それだけ出来れば上等だよ。もう戻っても良いよ」
「駄犬の癖に私の名前を呼び捨てにしないで頂戴、ちゃんと摩耶様って呼びなさい」
「雷君、会えなくて寂しかったよー」
来た、摩耶と雷子が来た、途端に騒がしくなる。
「きゃー、何で恭平がこの写真持ってるのよ。直ぐに消去なさい、汚れるわ」
三十二インチのディスプレイに二人のビキニ姿の写真が大写しされている、日付からすると去年の夏の写真だ、まあ二人共、ボリューム豊かとは言い難い。
摩耶が僕の手からマウスを奪い取って、握った途端そのまま固まって動かなくなってしまった。
「あっ、雷人、摩耶を助けに行け」
「はい」
「私も行くー」
手を重ねてマウスを握り、思念を飛ばす。
摩耶が広大な湖に沈んで溺れそうになってもがいている、口から思念の情報を吐き出して萎んで行っている。
助けないと、意識と人格が情報の海に飲み込まれてしまう。
「雷君はお姉ちゃんを外に連れ出して、私はお姉ちゃんの意識を拾い集めて来るから」
「うん、解った」
潜って情報の水の中から引っ張り上げ、口を合わせて摩耶の意識の肺に俺の情報の器の概念を送り込む。
「はい、雷君、お姉ちゃんの意識」
一メートルくらい有りそうな長いソーメンの束を渡された、摩耶の身体の上に乗せると沈み込む様に吸収されて行く。
ちなみに摩耶と僕は制服姿で、何故か雷子はビキニ姿だ。
「雷子、その胸は少し盛り過ぎだぞ」
「てへっ」
「うーん」
摩耶の意識が本体とリンクしたようだ、存在としての意識が戻る。
「摩耶、ここは情報の世界だ。今から意識を身体に戻すから追いてこい」
素直に頷いている、なんか気持ち悪い。
何とか身体に意識を連れ戻す。
「駄犬、感謝するわ」
うん、何時もの摩耶に戻っている。
「雷人、これを手伝って欲しいんだ。本当はもっと絞り込まないと厳しいんだが、学院から駄目と言われてるんだ」
確かにこれは精神力の水泳の練習だ、だがおじさんと半分ずつとしても五人の初心者の相手は大変かもしれない。
良く毎年十人も教えられるたものだ。
「雷子にも手伝って貰ったら」
「こいつは人のプライバシーを平気で持ち出すから危なくて駄目なんだ。雷子、ちゃんと記憶を全部摩耶に返しておけよ」
「はーい」
小さく舌を出してから、摩耶の眉間に指を当てて記憶を返している、何の記憶だろう、摩耶が真っ赤になっている。
学生の選考が終わってからおじさんを手伝ったのだが、思ったとおり厳しかった。
予めダイビングを知らされているので、摩耶の様に完全なパニック状態では無いのだが、それでも沈んでしまうのだ。
助け上げて口から僕の持っている器の概念を送り込むのだが、何故か全員女性で、泳ぐと聞いた所為か全員が布地の少ないビキニ姿をイメージしてるのだ。
講義が終わった後、しばらく女風呂に居るイメージが抜けなかった。
でもこれは基本中の基本だ、僕等は荒れ狂う情報の大海に巣食う鬼や物怪を祓う術式を勉強をするのだから。
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