神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

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Ⅰ 第一学年

21 人食い鬼2

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権田さんと一緒に池袋の怪しげなネオンやら看板やらが立ち並ぶ猥雑な通りを歩く。

「ご苦労さまです」
「うむ」

周囲の店から黒いチョッキやらスーツやらを着た飛び出して来て、権田さんに挨拶する、なんかやくざの親分と一緒に歩いている気分だ。

「赤菱連合には中国資本が流れ込んでいるらしくてな、できれば俺は勢力を伸ばさせたくないんだ」

権田さんが裏通りに面したオフィスの扉をノックも無しに開ける。

「入るぞ」
「ご苦労さまです」
「ご苦労さまです」
「ご苦労さまです」
「ご苦労さまです」
「ご苦労さまです」
「ご苦労さまです」

見るからにその筋の人達が大勢出て来て、権田さんに挨拶を繰り返す。
権田さんはその人達に軽く手を振って、どかどかと慣れた足取りで奥の部屋に入り、どかっとソファーに腰を下ろし、テーブルの上に足を投げ出す。

「おう、喉が渇いた」
「へい」

若い衆が飛んで行って、氷とグラスと高級そうな酒瓶を持って帰ってきた。
化粧の厚いお姉さんが出て来て、権田さんの脇に座って、瓶の封を切って氷を入れたグラスに注ぐ。
権田さんの前に一つ、僕の前に一つ、権田さんが一気に煽る、僕も飲まないと周りの怖いおじさん達に怒られそうなので、一気に飲む、うん、濃いんで喉が痛い。

「小僧、名前なんだっけ」
「雷夢雷人です」
「おう、いい名前だな。しかし雷人はいい根性してるな、高校生の癖に俺の目の前で酒飲むなんてよ。俺だって警察官なんだぞ」

うわー、忘れてた。

二杯ほど飲んで気持ち良くなったところでベンツのナビを見せて貰う。

「上手く隠してますが、僅かにナビを操作して術を流した形跡があります。うーん、交通情報から侵入したみたいですね。窓に景色を映されながらナビを操作されたんじゃ気が付かなかったでしょうね」
「よし解った、でかしたぞ。やり口が解れば対処方法もある。もしもし権田です奴らのやり口が解りました」

権田さんが携帯で連絡を取っている、うん、ただの不真面目な人じゃ無かったようだ。

「雷人、明日も付き合え。交通情報の方は交通課に調べさせるが、俺達は狙われている可能性の高い奴の車に乗って召喚の手口を探る。安心しろ、俺も対魔訓練は受けている」

うん、この人は鬼より強そうだ。

「雷人この後暇か、暇だったら面白い店に連れて行ってやる」

そして無理やり連れて行かれた店は、ライムライトと言う店だった。

「ゴンちゃんご無沙汰、寂しかったわよ。あらまあ、この子ゴンちゃんの燕さん」
「ママさんおひさ、此奴か、此奴はこの店と同じ名前だから連れてきた」
「あらー、ライムちゃんって呼んでいいかしら」
「いえ、雷人でお願いします」
「こう見えても此奴、初級の鬼殺しなんだぜ」
「・・・・・・・、まあ、ゴンちゃんは冗談が好きなんだから」

ん?なんか変な間が有った。

奥のボックスに入ると綺麗なお姉さんが大勢やってきた。
お酒を飲んでカラオケを歌って大騒ぎした。
権田さんがお姉さん達の胸や腿を触っている、じゃっ僕も見習ってお尻を触ろう。
ん?変な感触がある、スカートを捲って確認する。

「きゃー、駄目よ、おいたしちゃ」
「おー、雷人積極てきだな。俺も負けられん」

パンツを半分引き下ろす、うん、これは尻尾だ、確認の為擦ったら、お姉さんが身悶えしている。

「だめよー、こんなところじゃ駄目ー」

うん、面白い、もっとごしごしだ。

「雷人、お前やるなー。よし俺も」
「キャー、キャー、キャー」
”ガブリ”
「ギャー」

翌朝店のソファーで目を覚ました、うー頭痛い、なんか昨日の記憶が飛んでいる。
権田さんは床で大の字になって寝ていた。
ママさんが物凄く不機嫌な表情で御飯と味噌汁を食べさせてくれた。

「二人とも一月出入り禁止」

怒っている、一体何が有ったのだろう、うー頭が痛い。

「特に雷人、あんた女の子の尻尾は凄くデリケートなのよ、何考えてるの。パンツ下ろして擦ったり噛んだり、あんた変態なの。みんな泣いてたわよ」

ごめんなさい、全然覚えてません、でもなんで尻尾だったんだろう、普通パンツ下ろしたらあそこやあそこだろう、覚えてないから仕方がないが。

痛む頭を抱えて猫毛会の事務所に向かう、警視庁から昨日、今日行く事は伝えてある筈だ。

「ご苦労様です、お二人ともお疲れの様で」
「煩せー、この野郎、余計な御世話だ」

権田さん、八つ当たりは良くないと思う。

猫毛会の黒塗りベンツに乗って、首都高を流して貰う、しばらくすると交通情報に何かが混じり始める、でもこの車がターゲットじゃない。

「権田さん、もう一台の方がターゲットみたいです」
「ちょっと待て」

権田さんが携帯を架ける。

「おう、俺だ。そっちが狙われてるらしいぞ。今どこだ、うん、ああ・・・・・ちっ切れやがった。ナビの画面小さくしてくれ、ああ、それくらいだ」
「ちょっと、その画面固定して下さい。権田さん、召喚の印が有りましたよ」
「えっ、何処だ」

画面に五か所、首都高環状線の事故情報が映っている。
事故は環状線の上でほぼ等間隔に発生しており、その五か所を結ぶと五芒星、セーマンが出来上がる、物凄い大きい印だ、この事故は仕掛けられた事故だ。
画面に意識を伸ばして事故情報を線で結んで五芒星を描く。

「その星の中心に向かって下さい」
「へい」

首都高を降りる、五芒星の中心、御茶ノ水駅近くの駐車場にもう一台のベンツが止まっていた。
権田さんが運転席のドアを引き剥す、中の人は無事だ、間に合った様だ。

「ひっ、権田さん?、へっ、ここは何処だ」
「逃げて下さい」

その時ラジオからFM番組のパーソナリティーの声が聞こえて来た。

「はい、それではお便りの時間です。唐揚げの天婦羅さんからポエムが届いています。読ませて貰いますね。”虚を実となし、無に有を生じめん、虚の陰なる者よ、印を通りて実の陽となれ”」

空に巨大な五芒星が一瞬浮かび、ナビの五芒星に吸い込まれる。ナビの五芒星の中が闇に変わり、そこから丸太の様な腕が伸びて来た。
危ない、ナビに意識を飛ばし、抜け出そうとする鬼を再び情報の世界に引き戻す。
ここでなら僕の方が有利だ。

「縛」

意識の鎖で巨大な鬼を縛りあげ、動きを封じる。
この技はおじさんが人魚を縛ったのを見てから習い覚えた。

「律」

結界で囲う、電撃のおまけ付の結界だ、鬼が痙攣している。

「滅」

祓いの印を切る、鬼が絶叫を上げながら消えて行った。
意識を身体に戻す。

「権田さん、祓い終わりましたよ」
「お、おう。雷人すまん、助かった」

直ぐに呪文を読み上げたラジオのパーソナリティーに捜査の手が入った。
容疑は邪類取扱い法違反、ラジオやテレビで呪文を唱えるのは、影響範囲の大きさから意外と罪は重い。
ラジオの放送を担当していたタレントは、脅迫されて何回も同じ手紙を指定時刻に読み上げていたらしい。
このタレントを足掛かりに鬼を操っていた組織は直ぐに判明し逮捕され、芋蔓式に赤菱連合の幹部も次々に逮捕された。

「雷君、活躍だったみたいね」

日曜日、迷子が昼飯を誘いに来た。

「迷子、女って尻尾が有るのか」
「有る訳ないでしょ」
「ちょっと見せてくれ」
「えっ、なに、えっ、雷君」

スカートを捲ってパンツを半分擦り下ろす、うんやっぱり無いよな、勘違いじゃない、安心した。

「あれ、迷子ちゃん、雷君そんな所でなにしてるの」
「ギャー」

迷子にグーで十発殴られた。
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