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第一章 希望と欲望の街、シャングリラ 前編
第18話06 冒険者の職業(ジョブ)
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「俺たち冒険者をやりたいんだ」。
それを聞いたエリックは、
にやりと笑みを浮かべた。
「そんで“争いのない世界を作る”の?
かっこいーい!」
「それは掘り返さないでくれ!!」
茶化されて思わず拳を振り回したけれど。
エリックもジルベールも明るい笑顔で
サイモンを見ていた。
「いいんじゃない?
今回は主催者がゴネたせいで
最後までキメきれなかったけど、
サイモンさん頭いいし、
後衛の才能あると思うよ!
いや、もし目指すなら
前衛でもいいと思うけど……
うーん」
「いや、ビッグケットちゃんがバリ強なんだから、
ここは後衛なんじゃない?
回復とかバフとかあると
百人力なんじゃないかなぁ」
エリックとジルベールが
何やら楽しそうに話している。
さぽーたー?あたっかー??
なんの話だろう。
「…………いや、これは
ジュリアナも含めて大会議するべき。
サイモンさん、今んとこ
なりたい職業ないんでしょ?」
「えっ、ジョブって…………?」
「うーんそこからか!
ちょっと待ってて!!」
気がつけば
最後の扉まで辿り着いてしまった。
あとは階段のあるスペースで
女性二人を待つ予定だったが…………
あれっ?エリックがいない。
「あれ、エリックは?」
「今魔法で中に戻ったっぽいね。
すぐ戻ってくるんじゃない?」
サイモンがジルベールを振り返ると、
彼もきょとんとしている。
こんな細く長い一本道の通路で、
目の前の扉も開いてない。
なのにエリックの姿がないとなれば、
確かに魔法で消えたんだろうけど…………。
とりあえず、広い所に出よう。
扉を開けると。
「いえーいただいま!!」
「わぁーーーー心臓に悪い!!!」
さっき消えたエリックが目の前にいた。
そしてビッグケットとジュリアナも。
魔法で拾って先にホールに出たのか。
怖い。怖すぎる。
心臓がバクバクいっている。
「やめろおおお人を驚かすなーーーー!!!」
なおサイモン、
びっくりとかドッキリとか
突然とかが大嫌いな部類である。
あまりの仕打ちに大声を出すと、
「ちょっとサイモンさん!!!
テオドール様に会ったんですって!!??
私も会いたかった!!
ていうか、あのアナウンスが
ご本人様だったんですね!!
ああーーっ
もうちょっと真剣に聞いとけば
良かったー!!!!」
それに負けないくらい、
いや倍はでかい声が返ってきた。
ジュリアナである。
両手を組んで目をキラキラさせている。
「ふぁーーーっ、
変化魔法界のトップスター!
あの方なら人型からドラゴンでも、
犬猫でも、鳥でも魚でも、
もちろん人相だってなんでも変身出来ます!
すごい実力です!
なのにそれは趣味で、
本命はダンジョンの植物研究なんて…………
渋すぎです!!
人嫌いで有名ですが、
一度でいいから
ダンジョン探索ご一緒したい!
変化魔法界憧れの存在です!!!!!」
…………つまり、すごいんだな。
いつもローテンションでだるそうだったジュリアナが
目をパッチリ見開いて矢継ぎ早に語るくらい
すごいってことはよくわかった。
思わず一歩後ずさってしまう。
「つーかジュリアナ、
サイモンさん冒険者始めるんだって!
職業は何がいいと思う?」
そこでエリックが口を挟む。
それを聞いたジュリアナは、
ギラギラした目つきのまま
ぐりん!とサイモンを振り返った。
「サイモンさんが冒険者!
でしたらイチもニもなく回復師ですね!
ビッグケットさんに前衛を任せて、
傷ついたら即回復!
攻撃の前衛、回復の後衛は
パーティーにおいて
必要不可欠なパーツだと思います!
お二人で始めるならなおさら!」
「ええー、
回復師なんて外部委託でいいじゃん。
どうせ二人じゃ足りなくて雇うんだろうから、
だったらサイモンさんにオススメなのは
加護者だな。
加護者に必要なのは
前衛とのシビアな連携、
そして互いに命を託せる
確かな信頼。
この二人にこんなにお似合いの関係も
ないはずだぞ」
「えええ、信頼が基盤なら
前衛同士もありなんじゃない?
それこそ後衛を
全部雇いのメンバーにして、
道具師とか調教師はどう?
ド素人からでも目指せて、
最悪魔法が出来なくても大丈夫。
知識欲もりもりなサイモン君に
合ってると思うな~」
「じゃあ全部乗せで符術師はどう?
今この業界すごい熱いらしいよ!」
「いっそ迷宮踏破者で
適正極めるのはどうでしょう?
サイモンさん、知識素養が高いので
絶対伸びます!」
「それはもったいない、
むしろ得意分野は極めず
無資格のまま兼任でいいんじゃないかな…………!
それより必要な技能もっとあるでしょ!」
わいのわいの。
正直、サイモンは3人が何を話しているのか
まっっったくわからなかった。
とりあえず、冒険者にはたくさんジョブ……
職業があるようだ。
…………無職で旅に出ちゃ駄目なのか?
「あの、アタッカーとかサポーターとかって
絶対ならなきゃ駄目なのか?
俺、知識を深めるのは別に構わないけど、
なんかの職業になるつもりはなかったんだけど…………」
かろうじて間に言葉を捩じ込む。
するとエリック、ジュリアナ、ジルベールは
一斉にサイモンを見た。
「世の中資格だよ、資格。
どんなに能力が高いんです!ってアピールしたところで、
『でも無資格なんでしょう?』
ってなっちゃうからな!
黒猫ちゃんはもう立派な肩書きがある。
『シャングリラ闇闘技場殿堂入り』!
これだけで武闘家としてヤバいくらい
アピールになる。
でも、サイモンさんは?
アンタはとても有能だと思うけど、
猫ちゃんと二人で旅するなら
もっと極めるべき知識、技術がいーっぱいある!
極めようぜ!色々!
だってアンタも見ただろ?
バフなしじゃボコボコにされた黒猫ちゃんが、
ちょちょっとバフ乗せただけで
逆にオーガを圧倒出来たんだ。
並の単騎じゃあんな火力出ない、
アンタたちにしか出来ないことだ!
黒猫ちゃんにバフ乗せて
攻撃も防御もバキバキに固めたら、
大型ドラゴンだって一人で倒せるぞ!
かっこいいだろ!?
そんな猫ちゃん、見たくないか!?」
キラキラした顔で熱弁するエリック。
それを見たサイモンの脳裏に、
未だ焼きつく
左腕を豪快に千切られたビッグケットの姿。
そして、魔法の加護をもらって
見事なアッパーを決めたビッグケットの姿が
蘇った。
…………加護師、か…………。
それを聞いたエリックは、
にやりと笑みを浮かべた。
「そんで“争いのない世界を作る”の?
かっこいーい!」
「それは掘り返さないでくれ!!」
茶化されて思わず拳を振り回したけれど。
エリックもジルベールも明るい笑顔で
サイモンを見ていた。
「いいんじゃない?
今回は主催者がゴネたせいで
最後までキメきれなかったけど、
サイモンさん頭いいし、
後衛の才能あると思うよ!
いや、もし目指すなら
前衛でもいいと思うけど……
うーん」
「いや、ビッグケットちゃんがバリ強なんだから、
ここは後衛なんじゃない?
回復とかバフとかあると
百人力なんじゃないかなぁ」
エリックとジルベールが
何やら楽しそうに話している。
さぽーたー?あたっかー??
なんの話だろう。
「…………いや、これは
ジュリアナも含めて大会議するべき。
サイモンさん、今んとこ
なりたい職業ないんでしょ?」
「えっ、ジョブって…………?」
「うーんそこからか!
ちょっと待ってて!!」
気がつけば
最後の扉まで辿り着いてしまった。
あとは階段のあるスペースで
女性二人を待つ予定だったが…………
あれっ?エリックがいない。
「あれ、エリックは?」
「今魔法で中に戻ったっぽいね。
すぐ戻ってくるんじゃない?」
サイモンがジルベールを振り返ると、
彼もきょとんとしている。
こんな細く長い一本道の通路で、
目の前の扉も開いてない。
なのにエリックの姿がないとなれば、
確かに魔法で消えたんだろうけど…………。
とりあえず、広い所に出よう。
扉を開けると。
「いえーいただいま!!」
「わぁーーーー心臓に悪い!!!」
さっき消えたエリックが目の前にいた。
そしてビッグケットとジュリアナも。
魔法で拾って先にホールに出たのか。
怖い。怖すぎる。
心臓がバクバクいっている。
「やめろおおお人を驚かすなーーーー!!!」
なおサイモン、
びっくりとかドッキリとか
突然とかが大嫌いな部類である。
あまりの仕打ちに大声を出すと、
「ちょっとサイモンさん!!!
テオドール様に会ったんですって!!??
私も会いたかった!!
ていうか、あのアナウンスが
ご本人様だったんですね!!
ああーーっ
もうちょっと真剣に聞いとけば
良かったー!!!!」
それに負けないくらい、
いや倍はでかい声が返ってきた。
ジュリアナである。
両手を組んで目をキラキラさせている。
「ふぁーーーっ、
変化魔法界のトップスター!
あの方なら人型からドラゴンでも、
犬猫でも、鳥でも魚でも、
もちろん人相だってなんでも変身出来ます!
すごい実力です!
なのにそれは趣味で、
本命はダンジョンの植物研究なんて…………
渋すぎです!!
人嫌いで有名ですが、
一度でいいから
ダンジョン探索ご一緒したい!
変化魔法界憧れの存在です!!!!!」
…………つまり、すごいんだな。
いつもローテンションでだるそうだったジュリアナが
目をパッチリ見開いて矢継ぎ早に語るくらい
すごいってことはよくわかった。
思わず一歩後ずさってしまう。
「つーかジュリアナ、
サイモンさん冒険者始めるんだって!
職業は何がいいと思う?」
そこでエリックが口を挟む。
それを聞いたジュリアナは、
ギラギラした目つきのまま
ぐりん!とサイモンを振り返った。
「サイモンさんが冒険者!
でしたらイチもニもなく回復師ですね!
ビッグケットさんに前衛を任せて、
傷ついたら即回復!
攻撃の前衛、回復の後衛は
パーティーにおいて
必要不可欠なパーツだと思います!
お二人で始めるならなおさら!」
「ええー、
回復師なんて外部委託でいいじゃん。
どうせ二人じゃ足りなくて雇うんだろうから、
だったらサイモンさんにオススメなのは
加護者だな。
加護者に必要なのは
前衛とのシビアな連携、
そして互いに命を託せる
確かな信頼。
この二人にこんなにお似合いの関係も
ないはずだぞ」
「えええ、信頼が基盤なら
前衛同士もありなんじゃない?
それこそ後衛を
全部雇いのメンバーにして、
道具師とか調教師はどう?
ド素人からでも目指せて、
最悪魔法が出来なくても大丈夫。
知識欲もりもりなサイモン君に
合ってると思うな~」
「じゃあ全部乗せで符術師はどう?
今この業界すごい熱いらしいよ!」
「いっそ迷宮踏破者で
適正極めるのはどうでしょう?
サイモンさん、知識素養が高いので
絶対伸びます!」
「それはもったいない、
むしろ得意分野は極めず
無資格のまま兼任でいいんじゃないかな…………!
それより必要な技能もっとあるでしょ!」
わいのわいの。
正直、サイモンは3人が何を話しているのか
まっっったくわからなかった。
とりあえず、冒険者にはたくさんジョブ……
職業があるようだ。
…………無職で旅に出ちゃ駄目なのか?
「あの、アタッカーとかサポーターとかって
絶対ならなきゃ駄目なのか?
俺、知識を深めるのは別に構わないけど、
なんかの職業になるつもりはなかったんだけど…………」
かろうじて間に言葉を捩じ込む。
するとエリック、ジュリアナ、ジルベールは
一斉にサイモンを見た。
「世の中資格だよ、資格。
どんなに能力が高いんです!ってアピールしたところで、
『でも無資格なんでしょう?』
ってなっちゃうからな!
黒猫ちゃんはもう立派な肩書きがある。
『シャングリラ闇闘技場殿堂入り』!
これだけで武闘家としてヤバいくらい
アピールになる。
でも、サイモンさんは?
アンタはとても有能だと思うけど、
猫ちゃんと二人で旅するなら
もっと極めるべき知識、技術がいーっぱいある!
極めようぜ!色々!
だってアンタも見ただろ?
バフなしじゃボコボコにされた黒猫ちゃんが、
ちょちょっとバフ乗せただけで
逆にオーガを圧倒出来たんだ。
並の単騎じゃあんな火力出ない、
アンタたちにしか出来ないことだ!
黒猫ちゃんにバフ乗せて
攻撃も防御もバキバキに固めたら、
大型ドラゴンだって一人で倒せるぞ!
かっこいいだろ!?
そんな猫ちゃん、見たくないか!?」
キラキラした顔で熱弁するエリック。
それを見たサイモンの脳裏に、
未だ焼きつく
左腕を豪快に千切られたビッグケットの姿。
そして、魔法の加護をもらって
見事なアッパーを決めたビッグケットの姿が
蘇った。
…………加護師、か…………。
応援ありがとうございます!
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