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高年期[一学期編]
花彫の過去。そして・・・
しおりを挟む朝目を覚ますと、汗をかいたのかパジャマはびっしょり濡れていた。近くにいた執事いわくうなされていたらしい・・・
起こそうと近寄ったと同時に僕が目を覚まし一安心したみたい。
流依兄さんが部屋に朝の挨拶しにやってきて、僕を見て血相を変えて僕に近寄ってきた。
「薫風どうしたんだい!?髪の毛がびしょ濡れになる程汗を掻いたのかい?・・・それに顔色がすごく良くない・・・今日は学校を休んだ方がいいよ。授業の内容は紫音さんに頼んでノートに書いてもらっておくから大丈夫だよ。」
「・・・うん兄さん。有難う。とりあえずシャワー浴びたいな・・・」
そういうと流依兄さんが僕の身体を支えてくれて一緒に風呂場まで付いてきてくれた。それから兄さんは学校の準備があるので自室に戻っていった。
シャワーを浴び新しいパジャマに着替え自室へと戻る。その際僕の執事は心配そうに背中に手を置いて僕を労ってくれた。
朝食を取る気になれずベットで横になる。執事は「何かありましたらお呼びください」と一言残し僕の部屋から出ていった。
それから真菜、流依兄さん、両親と順に僕に声をかけてくれた。うん、僕の家族はとても優しい。
__________
僕、八乙女薫風は前世の記憶がある。
名前は八王子花彫。享年25歳。女性。
6歳の頃に両親が他界する。兄が2人いて両親が亡くなった後、親戚をたらい回しにされながらも高校を卒業し就職した。その頃にはマンションを兄が買い、3人で住んでいた。家事全般は私がやり兄は仕事に忙しい日々を送っていた。
・・・私は19歳になり就職して1年が経ったある日、私はストーカーに目を付けられ嫌がらせをされ始めた。始め兄に心配をかけないため隠していたが、それが裏目にでて仕事帰りにストーカーに捕まり強姦されてしまった。
それから兄以外の男性に嫌悪感を抱くようになる。男性恐怖症とは違い、悉く男性を嫌った。そんな私を兄が忙しい中、仕事に送り迎えをしてくれ、熱をだすと付きっきりで看病してくれた。
そして25歳になり同窓会に行き、知り合いの男性がその時に付き合ってた女性と別れ、その女性が私を逆恨みして殺された・・・
___________
今思うと私は前世でも今世でも兄に大切にしてもらえてる事がわかる。
・・・だから3歳の時に前世を思い出しても兄だけは嫌悪感を感じなかったんだろうと思う。
・・・このままずっと家にいたい。そう、兄と結婚してでも家にいたいと願う程、それほどこの家や家族を大切に思う。
ふと目が覚める。ベットで横になって、いつの間にか寝ていたのだろう。
夜、夢で聞こえてきた声は・・・確かにあのストーカーの声だった。
・・・なんだか凄く不安に駆られた。もし、僕以外に前世の記憶、しかも似たような記憶を持っている人がいるとしたら・・・?
うわぁ、考えただけで冷や汗がでる!
・・・肌着でも用意してもらおうかな?いつもブラウスの中とかパジャマの中とかは何も着ずに素肌なんだよね・・・うん、考えとこ。
するとまたタイミングよくノック音が聞こえる。返事をすると執事がまた遠慮しがちに中に入ってきた。
「薫風様・・・大丈夫でしょうか?」
「あぁ・・・大丈夫だよ。あの、お願いがあるんだけど・・・」
「はい。なんなりと。」
こらこら、何故喜ぶ!忠犬かっ!・・・まぁいいか。とりあえず「肌着が欲しい」と言ったら「肌着とは?」と返された!・・・は?肌着を知らない?何故?
執事いわく、肌着という物は存在せず服の下は何も着ないらしい。女性にはちゃんとした下着はありますよ。でも肌着はないらしい。
なんということだ!!!んーでも僕、肌着の作り方とかわからんし・・・こりゃ無理かな?
コットン?シルク?綿?ん~服なんか作った事ないからなぁ~でも生地はあるだろうから作ってもらおうかな。
デザイン絵は描けるし、どんな感じなのかも実際作ってもらって修正していけば大丈夫だろう・・・。
そして思いつきで作ってもらった肌着は後に大変な事になるとは露知らず僕は完成された肌着を着て明日から学校へ行けるよう養生するのに徹っしたのだった・・・
夕方になり流依兄さんが帰って来て真っ先に僕の所にきてくれた。うん、有難う。
それから紫音さんと麗華さん、そしてクラス長のチャラ男こと越名万純がお見舞いにきてくれた。
パジャマから正装に着替えてお出迎えして、明日からはちゃんと学校へ行くと伝えた。・・・やっぱり持つべきものは友だよね!
後から聞いた話。本当は今日、あの攻略対象の3人もお見舞いに来たがっていたらしい。それを流依兄さんと、何故か風間先輩が牽制したらしい・・・理事長恐るべし・・・何をしたんだ?
ん?権力の横暴じゃないかって?それは・・・僕の事を心配して気を効かせてくれたという事で罪に問われないでしょう!(笑)
「こんばんは薫風。迎えに来たよ。」
「・・・は?」
・・・何故真夜中に窓から風間くん!?
なんかデジャビュ?
疑問に思いながらも風間くんの付き人らしき人が2人、僕の部屋に入ってきて勝手に荷造りをし始めた・・・
「さぁ薫風。私の家へ行こう。」
「・・・・・・何故です?」
「・・・薫風、今すぐこの場で押し倒しても良いかい?それとも大人しく私の家に行くかい?私の家へ行くなら襲ったりしないよ。・・・もちろん私としては今すぐ押したーーー」
「はい!喜んで風間先輩の家にお邪魔したいです!」
「そう?なんだ残念。・・・じゃあ行こうか。」
「・・・はい」
あぁ風間先輩、ご満悦ですか。凄くご機嫌よく僕に手を差し伸べてきたよ・・・
明日は学校行く予定だから寝たいんだけどなぁ~・・・今から風間くん家行ってどうするのよ?
ってか、今度はヘリで来ましたか・・・あの救護の時によく見掛ける長い梯子をヘリから垂らしてますよ・・・えっ?これに乗るの?どーやって!?
先に風間くんが梯子に手と足をかけ、僕に手を差し伸べてきた・・・えっ怖ぇぇ!!!
かなり高い所にヘリが待機してるらしく音も風圧もない。付き人2人は先にヘリに乗ったのかただ目の前には梯子がゆらゆら揺れていた。
恐る恐る風間くんの手を取るとグイッと引き寄せられ僕は無我夢中で風間くんにしがみついた。
すると風間くんはニコニコ笑いながら僕の腰へと腕を回してきた。
「ふふ・・・大丈夫だよ。絶対に離さないから。」
「・・・風間先輩が言うと意味深に聞こえます。」
「うん?・・・そう捉えてもらってもいいよ?」
「いえ・・・今だけは絶対に離さないでください。」
「ははっ!勿論だよ薫風。離さないから私にしっかり捕まってなよ。少しずつ梯子を引き上げてもらってるから。」
「・・・はい。」
それから間も無くしてヘリの中へ入れてもらった。ヘルメットを受け取り席に着きシートベルトをする。
そしてゆっくりと風間家へと向かった・・・
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