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第二章
第五十六話 失ってから気付く電気の有り難み
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「ーー全く。こんな夜中に出動することになるとはな」
「ホント、真っ暗ですよネー」
「人命救助と施設の制圧のためよ」
「分かってはいるが、自前の発電施設がある新都エリアには直接関係ないのにご苦労なことだと思ってね」
電気の供給が途絶え、真っ暗な夜の闇へと沈んだ街中を装甲機動車で走り抜けていく。
目的地は、新都エリアから少し離れた地域一帯に電力を供給する変電所だ。
その変電所は、これまではとある超人集団が管理……というか占拠しており、変電所に拠点を置いて近隣地域一帯を支配していた。
この変電所の超人集団と臨時政府の超人部隊は何度もぶつかっており、争いが絶えない関係だ。
そんな変電所がモンスターに襲撃されたらしく、そこに拠点があった超人集団も生死不明とのこと。
近辺に密かに設置してある監視カメラやドローンなどから得た情報によって発覚した今回の事態に対応すべく、日も暮れた時間帯に俺達をはじめとした複数の超人部隊が出動していた。
変電所という感電の危険性が高い場所であることと、事前に確認されたモンスターの情報から俺にも声が掛けられてしまった。
雇用契約書にある緊急事態に含まれるため、普段の依頼で得られるような報酬が無いためテンションが上がらない。
テンションが上がらないので運転もシオンに任せて助手席でダラけていた。
そんな脱力中な俺の肩をソフィアが後部座席から揺すってきた。
「あっ、お兄さん、アレじゃないですカ?」
「んー? あー、確かにアレだな」
「クリスマスツリーみたいデスネ」
「物騒なクリスマスツリーだな。事前情報通り狙いは電力か」
建物間の切れ間から各部が光っている大樹らしきシルエットが見えた。
ここから見えるぐらいだから、根元にあると思われる変電所の施設は丸ごと取り込まれている可能性が高いな。
「あんなに大きい木がどうやって変電所に来たんですかネ?」
「最初監視カメラに映っていたのは、〈トレント〉と呼ばれる歩く樹木型モンスターの群れだったんだが、電気を吸収しはじめたら互いに絡み合いながら成長していって、最終的に大樹の姿になっていたな。まぁ、あそこまでデカくなかったが」
「ナルホドー」
「事前情報より大きいけど、アレって本当に伐採できるのかしら?」
「燃やせばイケるだろ」
元より臨時政府は変電所施設の再稼働は考えておらず、そこに繋がっていた配電線や施設内の資料などを確保するのが目的らしい。
他にも狙いはあるようだが、先の展望について考えるのは上の役目なので質問はしなかった。
まぁ、あまり施設を破壊するのは止めてくれと言われたので、〈肉片爆発〉能力による〈神秘金属〉製爆弾で大爆破という戦法は使えない。
〈錬金竜〉となった今のメルクリウスを爆弾化した時の威力を検証する良い機会だったのに残念だ……。
「お兄さんが物騒なことを考えている気がしマス」
「〈地雷〉だもの。仕方ないわ」
失礼なことを言う女性陣の発言を聞き流しつつ、銀色の腕環型アーティファクト〈空間保環レア〉の亜空間からキンキンに冷えたスポーツドリンクを取り出す。
敵性超人〈グルメ〉からの戦利品である二つのアーティファクトの一つであるレアは、〈亜空間保管庫〉というザ・ファンタジーな能力を持つアーティファクトだ。
個人的にも非常に重宝しており、臨時政府もマジックアイテムとして量産できないか研究するようにと、研究所に無茶振りするほどに評価している。
長柄武器であるため車内では邪魔になる自作グレイヴ〈アラドヴァル〉だけでなく、もう一つのグルメからの戦利品である〈解体鬼剣ムラマサ〉もレアの亜空間に収納してある。
ちなみに、このムラマサをグルメは解体道具として使っていたらしく、レアの収納空間内に放り込まれていた。
二つのアーティファクトの名称は、戦利品として獲得した際に俺が名付けたものだ。
今回のモンスターは植物系だが、場所的にも小回りの効くムラマサのほうが良いかもしれない。
アラドヴァルの方が伐採範囲は広いし燃やせるが、他に味方もいるし施設の機材や資料のことも考えるとムラマサの方に軍配が上がる。
能力的にも相性は良さそうだし、取り出すのはムラマサだけにしておくとしよう。
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