アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第二章

第五十七話 理屈が通らないが故に謎なのだ

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 ◆◇◆◇◆◇


 到着した変電所の外観を一言で表現するならば、緑生い茂る自然の中に埋もれた秘密研究所といった感じだった。
 管理用の建物の外壁や変電設備を大小様々なサイズの蔓が覆っている。
 変電設備に直接絡み付いている方の蔓は、まるで脈動するように時折電気らしき光が明滅していた。
 見るからに電気を吸収している最中の明滅蔓を辿っていくと、それらの電力は全て管理用の建物の上部に聳える大樹へ送られているようだった。


「アレは生命活動のためのエネルギー補給なのかね? それとも強くなるためのエネルギー補給か?」

「元々がトレントだったのが大樹化しているんだから、後者じゃない?」

「……動ける木と大樹って、大樹の方がモンスターとして強いのか?」

「強いんじゃないですかネ。ほら、お兄さん、あそこに他のモンスターが捕まってマス」


 ソフィアが指差す方向に視線を向けると、そこには蔓に捕まっているオークの集団がいた。
 身体を縛る太い蔓を振り解けないらしく、オーク達の身体に突き刺さった蔓の先端から血液か何かを吸い取られているように見える。
 まだ太ましい個体もいるが、殆どの個体はミイラのように骨と皮だけになっていた。
 というか、その太ましい個体がいなかったらオークの集団だとは分からなかったほどに変化が著しい。
 ちょうどいいタイミングでソフィアが指差していたオークの身体が萎んでいっていた。


「シオンは何か分かったか?」

「……あの蔓は血などの体液以外にも魔力を吸っているわね。吸われる優先順位は魔力の方が上で、体内魔力が尽きたら体液を吸われるみたいよ」

「なるほどね」


 〈魔眼〉を発動させたことで紫色の双眸を紅く染めたシオンが、今のオークの変化から分かったことを教えてくれた。
 シオンの異能である〈魔眼〉には魔力を精密に視覚化できるなどの力もあるため、今回のような状況には打って付けだ。


「体内魔力が多ければすぐには死なないかな?」

「たぶんね。そもそもオーク並みの筋力しかない超人は捕まったら逃げられないわ」

「そうだよな……あの蔓が建物内部に無いことを祈って、低ランク超人が多い部隊やグループは内部に行ってもらうのが無難か?」

「先に全員で外の蔓を排除してから向かうのは?」

「見るからに排除した先から再生しそうなんだが……確認してくる」


 シオンとソフィアも含めた他の超人達に待機させると、俺一人で近くの蔓へと無防備に近付いていく。
 すると、蔦まで五メートルを切ったあたりで蔓がピクリと反応し、次の瞬間に獲物を狩る蛇のような俊敏さと動きで蔓が襲い掛かってきた。
 迫る蔓を見据えつつアーティファクト〈解体鬼剣ムラマサ〉を振るう。
 通常の形状は短剣サイズだが、能力とは別にムラマサが有する機能で形状を刀に変化させておいたのでリーチは十分だ。
 〈解体妙理〉と名付けた能力によって迫る蔓の最適な解体方法が理解できる。
 まぁ、今の場合は解体方法というよりも斬り方というべきか。

 純粋な蔓の反応が見たいため、〈解体妙理〉以外のムラマサの能力は使わずに蔓をバラバラに斬り刻んだ。
 先端付近を斬り落とされた蔓が、切断面から謎の液体を撒き散らしながら退いていく。
 その蔓の状態を観察していると、切断面から新たな蔦が生えてきた。
 再生した蔓がまた襲ってきたので、次は蔓に向かってアーティファクト〈黒金雷掌ヤルングレイプ〉の電撃を放ってみることにした。
 この蔓は魔力や体液だけでなく電気も吸収するようだが、アーティファクトが生み出す特殊な電気も吸収するのかが気になったからだ。

 〈銀雷生成〉により発せられた銀雷が蔓に着弾する。
 銀色のスパークが蔓から発せられると、蔓はそのまま黒い炭と化してボロボロに崩れていった。
 銀雷が吸われなかっただけでなく、切断面から新たな蔓が生えてくる様子もない。


「ふむ。おーい、誰か電気を放つ能力を持つのがいたよな?」


 離れたところで待機している味方に声を掛けると、一人の男性超人が手を挙げてきた。
 新都エリアを発つ前に読んだ味方の資料の記憶が正しければ、確かにあの超人だったな。


「アーティファクト以外の能力の電撃も有効か確認してほしい。ついでに他の属性放射系の遠距離能力持ちも出てきてくれ。あと、それぞれの護衛のために近接系超人も一緒に来てくれ」


 一応リーダーの俺の呼び掛けに応じて該当する超人達が前に出てきた。
 俺が炭化させた蔓以外にも蔓は大量に蔓延っている。
 それらの蔓に向けて、電撃や炎、氷、水、風などの属性放射系の遠距離能力が放たれていく。
 結果、電撃も含めたそれらの能力は吸収されることなく蔓にダメージを与えることに成功した。
 どうやら大樹モンスターはファンタジー由来の電気は吸わないようだ。
 それなのにファンタジーなエネルギーである魔力を生物から吸うのはどういうことだろうか?
 まぁ、モンスターの生態自体が不明だからそういうものだと思うしかないのだが。


「アーティファクトや超人の能力ならば電撃でも吸収されないみたいだな。他の属性も通じる、と」

「蔓が再生するから炎と電撃、氷あたりが有効みたいデスネ」

「ダメージを負った断面を排除して再生するといった器用なことも出来ないみたいだしな。屋内は狭いようだし、属性放射系の遠距離能力持ちは屋外で蔦の排除に動いてもらうか」


 今ある蔓を再生出来ないように排除してもらえば大樹モンスターの手数も減るだろう。
 外から蔓を排除してもらっている間に、それ以外のメンバーで位置関係的に大樹モンスターの重要部があるっぽい建物内部の探索をするのが良さ気だな。
 全員で外の蔓を排除してから屋内を探索したら、探索中は遠距離能力持ちを持て余しそうだ。


「長柄武器のラーミナ壱式を使える者は、遠距離能力持ち達とともに建物の外で蔓の排除を行なってくれ。排除は変電設備に絡み付いている蔓を最優先だ。変電設備は壊さないように頼む。その後は敷地外から来るかもしれない他のモンスターの警戒を行なってくれ。なので、建物内部の探索はそれ以外のメンバーで行うぞ」


 それぞれの人数に不安はあるが、二手に分けないと討伐効率が悪そうだし敷地外への警戒も必要だから仕方がない。
 大樹モンスターの動き次第では対応が間に合わず犠牲が出そうだが、その時はその時だ。
 まぁ、現状では戦闘可能な人員が足りないので、なるだけ死なないでもらいたいものだな。

 
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