57 / 76
第二章
第五十七話 理屈が通らないが故に謎なのだ
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
到着した変電所の外観を一言で表現するならば、緑生い茂る自然の中に埋もれた秘密研究所といった感じだった。
管理用の建物の外壁や変電設備を大小様々なサイズの蔓が覆っている。
変電設備に直接絡み付いている方の蔓は、まるで脈動するように時折電気らしき光が明滅していた。
見るからに電気を吸収している最中の明滅蔓を辿っていくと、それらの電力は全て管理用の建物の上部に聳える大樹へ送られているようだった。
「アレは生命活動のためのエネルギー補給なのかね? それとも強くなるためのエネルギー補給か?」
「元々がトレントだったのが大樹化しているんだから、後者じゃない?」
「……動ける木と大樹って、大樹の方がモンスターとして強いのか?」
「強いんじゃないですかネ。ほら、お兄さん、あそこに他のモンスターが捕まってマス」
ソフィアが指差す方向に視線を向けると、そこには蔓に捕まっているオークの集団がいた。
身体を縛る太い蔓を振り解けないらしく、オーク達の身体に突き刺さった蔓の先端から血液か何かを吸い取られているように見える。
まだ太ましい個体もいるが、殆どの個体はミイラのように骨と皮だけになっていた。
というか、その太ましい個体がいなかったらオークの集団だとは分からなかったほどに変化が著しい。
ちょうどいいタイミングでソフィアが指差していたオークの身体が萎んでいっていた。
「シオンは何か分かったか?」
「……あの蔓は血などの体液以外にも魔力を吸っているわね。吸われる優先順位は魔力の方が上で、体内魔力が尽きたら体液を吸われるみたいよ」
「なるほどね」
〈魔眼〉を発動させたことで紫色の双眸を紅く染めたシオンが、今のオークの変化から分かったことを教えてくれた。
シオンの異能である〈魔眼〉には魔力を精密に視覚化できるなどの力もあるため、今回のような状況には打って付けだ。
「体内魔力が多ければすぐには死なないかな?」
「たぶんね。そもそもオーク並みの筋力しかない超人は捕まったら逃げられないわ」
「そうだよな……あの蔓が建物内部に無いことを祈って、低ランク超人が多い部隊やグループは内部に行ってもらうのが無難か?」
「先に全員で外の蔓を排除してから向かうのは?」
「見るからに排除した先から再生しそうなんだが……確認してくる」
シオンとソフィアも含めた他の超人達に待機させると、俺一人で近くの蔓へと無防備に近付いていく。
すると、蔦まで五メートルを切ったあたりで蔓がピクリと反応し、次の瞬間に獲物を狩る蛇のような俊敏さと動きで蔓が襲い掛かってきた。
迫る蔓を見据えつつアーティファクト〈解体鬼剣ムラマサ〉を振るう。
通常の形状は短剣サイズだが、能力とは別にムラマサが有する機能で形状を刀に変化させておいたのでリーチは十分だ。
〈解体妙理〉と名付けた能力によって迫る蔓の最適な解体方法が理解できる。
まぁ、今の場合は解体方法というよりも斬り方というべきか。
純粋な蔓の反応が見たいため、〈解体妙理〉以外のムラマサの能力は使わずに蔓をバラバラに斬り刻んだ。
先端付近を斬り落とされた蔓が、切断面から謎の液体を撒き散らしながら退いていく。
その蔓の状態を観察していると、切断面から新たな蔦が生えてきた。
再生した蔓がまた襲ってきたので、次は蔓に向かってアーティファクト〈黒金雷掌ヤルングレイプ〉の電撃を放ってみることにした。
この蔓は魔力や体液だけでなく電気も吸収するようだが、アーティファクトが生み出す特殊な電気も吸収するのかが気になったからだ。
〈銀雷生成〉により発せられた銀雷が蔓に着弾する。
銀色のスパークが蔓から発せられると、蔓はそのまま黒い炭と化してボロボロに崩れていった。
銀雷が吸われなかっただけでなく、切断面から新たな蔓が生えてくる様子もない。
「ふむ。おーい、誰か電気を放つ能力を持つのがいたよな?」
離れたところで待機している味方に声を掛けると、一人の男性超人が手を挙げてきた。
新都エリアを発つ前に読んだ味方の資料の記憶が正しければ、確かにあの超人だったな。
「アーティファクト以外の能力の電撃も有効か確認してほしい。ついでに他の属性放射系の遠距離能力持ちも出てきてくれ。あと、それぞれの護衛のために近接系超人も一緒に来てくれ」
一応リーダーの俺の呼び掛けに応じて該当する超人達が前に出てきた。
俺が炭化させた蔓以外にも蔓は大量に蔓延っている。
それらの蔓に向けて、電撃や炎、氷、水、風などの属性放射系の遠距離能力が放たれていく。
結果、電撃も含めたそれらの能力は吸収されることなく蔓にダメージを与えることに成功した。
どうやら大樹モンスターはファンタジー由来の電気は吸わないようだ。
それなのにファンタジーなエネルギーである魔力を生物から吸うのはどういうことだろうか?
まぁ、モンスターの生態自体が不明だからそういうものだと思うしかないのだが。
「アーティファクトや超人の能力ならば電撃でも吸収されないみたいだな。他の属性も通じる、と」
「蔓が再生するから炎と電撃、氷あたりが有効みたいデスネ」
「ダメージを負った断面を排除して再生するといった器用なことも出来ないみたいだしな。屋内は狭いようだし、属性放射系の遠距離能力持ちは屋外で蔦の排除に動いてもらうか」
今ある蔓を再生出来ないように排除してもらえば大樹モンスターの手数も減るだろう。
外から蔓を排除してもらっている間に、それ以外のメンバーで位置関係的に大樹モンスターの重要部があるっぽい建物内部の探索をするのが良さ気だな。
全員で外の蔓を排除してから屋内を探索したら、探索中は遠距離能力持ちを持て余しそうだ。
「長柄武器のラーミナ壱式を使える者は、遠距離能力持ち達とともに建物の外で蔓の排除を行なってくれ。排除は変電設備に絡み付いている蔓を最優先だ。変電設備は壊さないように頼む。その後は敷地外から来るかもしれない他のモンスターの警戒を行なってくれ。なので、建物内部の探索はそれ以外のメンバーで行うぞ」
それぞれの人数に不安はあるが、二手に分けないと討伐効率が悪そうだし敷地外への警戒も必要だから仕方がない。
大樹モンスターの動き次第では対応が間に合わず犠牲が出そうだが、その時はその時だ。
まぁ、現状では戦闘可能な人員が足りないので、なるだけ死なないでもらいたいものだな。
12
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる