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第一章
第四十八話 無葬獣
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「──うおっ!?」
獄鎖を使って移動していると、獄鎖が突然大きく横に弾かれた。
獄鎖の具現化元である腕環を嵌めている手首が引っ張られそうになるのを、獄鎖を消すことで未然に防ぐ。
「チッ。奴は、ッ!」
咄嗟に上体を反らし、木陰から強襲してきたウーの攻撃を躱わす。
目の前の空間をウーの右手が薙いでいく。
完璧に躱したはずなのに、身に付けている胴鎧型マジックアイテム〈女王蟻の魔蟲甲冑〉の胸甲部を、ギャリッという音を立てて削りながら不可視の爪が通過していった。
上体を反らした勢いのまま大きく後ろに跳び、一回転してから着地するとウーと向き直る。
「吹き飛ばしのダメージは無しか……」
「今のを躱すとは。2人だけでダンジョンを攻略したのはマグレではないようだな」
同化中でもアーティファクト〈月神の賢眼〉の空間認識能力によって、不可視化されているウーの鉤爪武器が視えていなければ、防具は切り裂かれていた可能性がある。
前世において発生した、とあるアイテムの争奪戦の際にウーと戦ったことがある。
その時のウーは使っていなかった武器だが……なるほど。
〈月神の賢眼〉で鑑定したところ、前世で装備していた武器よりも鉤爪武器の等級は低いようだ。
前世の通りならば、いずれもっと高ランクであるあの武器へ更新されるのだろう。
そう考えると、今のうちにウーを倒せるのはラッキーなのかもしれない。
先ほど入手したばかりの〈狐幻魔刀サイラ〉を鞘から抜き、正面に構えると【魔煌気刃】と【五煌刃尾】を発動させる。
【魔煌気刃】では、俺が所持する魔法スキルの属性と同じ属性のオーラを刀身に宿すことができる。
どの属性にするか悩んだが、火力重視ということで炎のオーラを選択した。
あとは、獣にはやはり火が有効だろうという気持ち的な理由もある。
実体のある幻の刀である5つの幻刀にも同様に炎のオーラを宿しており、これで手数も火力も十分に揃えられただろう……普通ならな。
「ハァッ!!」
【並列行使】のスキルによる補助のおかげで、思考操作による5本の幻刀の動きは、俺の剣の技量にかなり近い。
そのため、相手からすれば六人の俺が連携して攻撃を仕掛けてくるようなものなのだが、ウーが相手ではそうはいかなかった。
「フンッ!」
ウーが振るう拳が幻刀に触れると、幻刀がガラス細工のように容易く破壊されていた。
前世において〈無葬獣〉という二つ名と共に、ウーが裏の世界で覚醒者殺しとして有名になったのは、奴が持つ異能【幻想否定】にある。
その能力は名称の通りで、魔法やスキルといった非現実的な現象を問答無用で破壊することができる。
【幻想否定】には自動発動型と任意発動型の2つの能力があり、自動発動型はリリアの〈魅了〉のようにウーの心身に直接干渉するタイプの力に対して発動し破壊する。
一方の任意発動型は、先ほどの獄鎖のようにウーが認識した現象に対して発動でき、その能力を発動されると幻刀のようなスキル現象である具現化体は強度に関わらず簡単に破壊されてしまう。
身体強化といった現象もウーが身体に触れた瞬間に解除されてしまうが、ウー本人が使用する身体強化などは解除されることはないため、相手は圧倒的不利な状況を強いられることになる。
この覚醒者が使用する力を破壊し、一方的に蹂躙できる理不尽な異能の力こそが、ウーが〈無葬獣〉と呼ばれた理由だ。
一見すると無敵の能力のように思えるが、具現化体とは違ってちゃんと現実にアイテムとして存在するマジックアイテム自体が問答無用で破壊されたりはしない。
そのため、高い攻撃力を持つ武器型マジックアイテムで能力を使わない物理攻撃をすれば普通にウーを倒すことができる。
なので、遠距離からの狙撃といった認識外からの即死攻撃も有効だろう。
また、アーティファクトが発する能力現象に関しては、マジックアイテムの能力とは異なりウー本人にも多少は干渉することができる。
先ほどの念動力が少しは通じた理由はアーティファクト由来の能力だからだ。
こうして改めて考えてみると、結構隙の多い異能だよな。
「まぁ、厄介なことには変わりないが」
炎のオーラを纏った幻刀を使って前世との違いを確認していく。
前世では、その能力から一対一の戦いに限れば最強候補に挙がっていたウーだが、それでも人間であることには変わりはなく、前世では物理的な攻撃で身体を真っ二つにされて死んだ。
とあるアイテムの争奪戦に参戦していた他の覚醒者によって殺されていたのだが、そういえば彼女は元気かな?
前世で近距離戦最強と謳われた美女のことを思い出したついでに、その彼女がウーを倒した時の戦いを参考にすることにした。
足りない部分はアーティファクトでカバーする。
「『岩杭土場』」
幻刀を破壊しながら距離を詰めてくるウーとの間に魔法で大量の岩杭を生成する。
更に【植物支配】も使って周りの草木で足止めを行なって距離を取ると、狐幻魔刀サイラを鞘に納めて代わりに白霊剣オルトレールを抜剣した。
異能【万物変換】の第3層能力【属性変換】にて生み出した神聖属性魔力を注ぎ込むことで使用できる【白聖霊起】を発動させる。
身体能力が超強化されたのを確認してから、アーティファクト〈支配の王環〉の念動力の力をオルトレールの剣身に纏わせて攻撃力を強化した。
念動力とは、言い換えるならば空間的な圧力を意味する。
それ故に、念動力は空間属性事象に分類されるため、アーティファクト由来の強力な空間属性事象ならば、擬似的に空間属性の刃を構築することができる。
空間属性の斬撃を防ぐ手段は限られており、高圧縮されたアーティファクト由来の空間属性の力となればウーの異能でも破壊することはできない。
まさに絶対切断と言っても過言ではない力だろう。
ここまで精密に空間属性の力を操作するには高度の空間認識能力が必要だが、俺には同じくアーティファクトの〈月神の賢眼〉があるため可能だった。
2つのアーティファクトの使用に専念しなければ実現できない力なだけあって、精神への負担が凄まじいがそれだけに非常に強力だ。
【肉体変換】で精神値の値を引き上げても長時間は使えないため、さっさと勝負を決めさせてもらう。
岩杭を破壊して姿を現したウーに向けて、真正面からオルトレールを振り下ろす。
攻撃を防ぐためにウーは両手の鉤爪武器を盾代わりに構えたが、絶対切断の刃はその鉤爪武器ごとウーの身体を軽々と斬り裂いていった。
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┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
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物語の行く末も、世界一の紅雨のオタクとして読みたいものを形にするぞ〜〜!と頑張る作者の姿も、あたたかく見守って頂けましたら幸いです。よろしくお願い致します。
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