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【イベントフラグがまだあった】
教えてください、先生!
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翌日の昼休憩に、昼食を早めに切り上げた私は「お付き合いしますよ」と言うアウレウスを振り切って、ルーナ先生の研究室にやってきた。
「先生、教えて欲しいことがあるんですが!」
私がルーナ先生の研究室に入った時、先生はデスクでお茶を飲んでいる所だった。昼休憩を半分ほど過ぎていたので、幸い先生も昼食は済んでいるらしい。
「何、それって僕の大事なティータイムを邪魔してまで話さなきゃいけないこと?」
カップを持ったまま、振り返りもしないルーナ先生が、しごく面倒そうに言う。
「すみません、ゲームのシナリオのことなんですが……」
「……ちゃんとアポ取って来てよ。セリナちゃんに万が一にでも浮気を疑われたらどうすんのさ」
はあ、と溜め息をついたルーナ先生が、コト、とカップを置いて言うと、椅子から立ち上がった。
「で? シナリオが何? もう闇落ちフラグもないしハッピーエンドなんじゃないの?」
言いながらルーナ先生はソファにドカっと座りこむ。ついでに、私にソファに座るように手で示したので、ありがたく座らせて頂いた。
「そのエンディング前の最後のイベントのことなんですが……」
「収穫祭の夜会? あー、もうそんな時期か。どうせアウレウスくんと行くんでしょ?」
大した興味もなさそうに、頬杖をついてルーナ先生は言う。
「そのアウレウスのことなんですけど……本当にアウレウスってファンディスクの攻略対象なんですか?」
「そうだよ。アウレウスルートで進んどいて今更何言ってんの」
「あの、別に私はアウレウスのルートで攻略してる訳じゃ……」
しどろもどろになって答えると、頬杖をついていたルーナ先生は不思議そうに顔を上げた。
「何でさ、君ら付き合ってんでしょ?」
「付き合ってません!」
私が叫ぶと、ルーナ先生はきょとんとした後に、半眼でこちらをジトっと見つめた。
「いや、マジで何言ってんの? 付き合ってないって言いはるとか、正気?」
ソファに背を預けて深く沈み込むと、上を見ながらルーナ先生は指折り数え始めた。
「常に一緒に行動してる、話す時は顔が近い、人にぶつかりそうだからって歩いている時に腰を持って引き寄せてたりする、アウレウスくんからのボディタッチが割と多い、聖女様はそれを拒絶しないで受け入れている、聖女様がアウレウスくんの服をつまんでたりする……」
そこまで数えて、ぱっとルーナ先生は手を広げて馬鹿にするように笑った。
「僕、そんなに君たちと一緒にいないのに、少なくともさっき言ったくらいのことは見てるよ。あれだけ目の前でいちゃいちゃしといて、付き合ってないってのは無理があるんじゃないの? てか、男爵とは言え、未婚の令嬢が男にあんなにボディタッチ許すってどうなの?」
ルーナ先生の指摘はもっともすぎて、ぐうの音も出ない。
そもそも、最初からアウレウスは距離が近かったし、近ごろは特にエスカレートしてきているけれど、慣れてしまったという部分もある。でも、先生の言う通り、この貴族社会で婚約者でもない男からのボディタッチを許容しているのは不味い……よね、確かに。でも、補佐として身の安全を、とか言われるとそこまで強く拒否できなかったし……。いやそもそも、もう闇落ちのこととか考えないで済んでた解放感で忘れてたけど、アウレウスって私のことを好き、って……言ってたもんな。下心がある人からのボディタッチを許してたっていうのは、こちらもその気があってそうさせてるんだと思われても、仕方がない……ことなのかな。どうしよう。
「……その反応、マジで付き合ってないの?」
私が黙り込んでいると、驚いたようにルーナ先生が問うので、私は静かに頷いた。
「マジか……」
呆れたように漏らす声に、私はまた言葉を返すことができない。
「まあ……聖女様にその気がないんだったら、もうちょっと身の振り方を考えた方がいいと思うよ。男にだらしない聖女なんて評価受けたくないでしょ、聖女様もさ」
哀れなものを見るような目で、真剣に諭さないで欲しい。悲しくなってくるから。でも、本当にその通りだ。
「で、イベントはどうするのさ。アウレウスくんとどうこうなる気がないなら、収穫祭の夜会は一人で参加するの?」
「あの、それが……補佐として一緒に参加してもらうつもりで……」
「は? パートナーじゃなくて?」
意味がわかんないんだけど、とルーナ先生が再びジト目になる。
「パートナーじゃ困るんです。だから、アウレウスのルートってどうやってフラグ折りするんですか? 何があったら、フラグ折れたことになるんですか?」
ぎゅ、とスカートの端を握って、私は問う。
「あ~……フラグ折りね。なるほど」
意味深に頷いて、ルーナ先生は腕を組んだ。
「聖女様ってファンディスクの内容全然知らないんだったね。夜会のイベントまできといてシナリオ通りのフラグ折りっても、今更過ぎる気がするけど……」
「それでも教えてください、先生」
私がそう言うと、先生は「どうしようかな」と首を傾げた。
「先生、教えて欲しいことがあるんですが!」
私がルーナ先生の研究室に入った時、先生はデスクでお茶を飲んでいる所だった。昼休憩を半分ほど過ぎていたので、幸い先生も昼食は済んでいるらしい。
「何、それって僕の大事なティータイムを邪魔してまで話さなきゃいけないこと?」
カップを持ったまま、振り返りもしないルーナ先生が、しごく面倒そうに言う。
「すみません、ゲームのシナリオのことなんですが……」
「……ちゃんとアポ取って来てよ。セリナちゃんに万が一にでも浮気を疑われたらどうすんのさ」
はあ、と溜め息をついたルーナ先生が、コト、とカップを置いて言うと、椅子から立ち上がった。
「で? シナリオが何? もう闇落ちフラグもないしハッピーエンドなんじゃないの?」
言いながらルーナ先生はソファにドカっと座りこむ。ついでに、私にソファに座るように手で示したので、ありがたく座らせて頂いた。
「そのエンディング前の最後のイベントのことなんですが……」
「収穫祭の夜会? あー、もうそんな時期か。どうせアウレウスくんと行くんでしょ?」
大した興味もなさそうに、頬杖をついてルーナ先生は言う。
「そのアウレウスのことなんですけど……本当にアウレウスってファンディスクの攻略対象なんですか?」
「そうだよ。アウレウスルートで進んどいて今更何言ってんの」
「あの、別に私はアウレウスのルートで攻略してる訳じゃ……」
しどろもどろになって答えると、頬杖をついていたルーナ先生は不思議そうに顔を上げた。
「何でさ、君ら付き合ってんでしょ?」
「付き合ってません!」
私が叫ぶと、ルーナ先生はきょとんとした後に、半眼でこちらをジトっと見つめた。
「いや、マジで何言ってんの? 付き合ってないって言いはるとか、正気?」
ソファに背を預けて深く沈み込むと、上を見ながらルーナ先生は指折り数え始めた。
「常に一緒に行動してる、話す時は顔が近い、人にぶつかりそうだからって歩いている時に腰を持って引き寄せてたりする、アウレウスくんからのボディタッチが割と多い、聖女様はそれを拒絶しないで受け入れている、聖女様がアウレウスくんの服をつまんでたりする……」
そこまで数えて、ぱっとルーナ先生は手を広げて馬鹿にするように笑った。
「僕、そんなに君たちと一緒にいないのに、少なくともさっき言ったくらいのことは見てるよ。あれだけ目の前でいちゃいちゃしといて、付き合ってないってのは無理があるんじゃないの? てか、男爵とは言え、未婚の令嬢が男にあんなにボディタッチ許すってどうなの?」
ルーナ先生の指摘はもっともすぎて、ぐうの音も出ない。
そもそも、最初からアウレウスは距離が近かったし、近ごろは特にエスカレートしてきているけれど、慣れてしまったという部分もある。でも、先生の言う通り、この貴族社会で婚約者でもない男からのボディタッチを許容しているのは不味い……よね、確かに。でも、補佐として身の安全を、とか言われるとそこまで強く拒否できなかったし……。いやそもそも、もう闇落ちのこととか考えないで済んでた解放感で忘れてたけど、アウレウスって私のことを好き、って……言ってたもんな。下心がある人からのボディタッチを許してたっていうのは、こちらもその気があってそうさせてるんだと思われても、仕方がない……ことなのかな。どうしよう。
「……その反応、マジで付き合ってないの?」
私が黙り込んでいると、驚いたようにルーナ先生が問うので、私は静かに頷いた。
「マジか……」
呆れたように漏らす声に、私はまた言葉を返すことができない。
「まあ……聖女様にその気がないんだったら、もうちょっと身の振り方を考えた方がいいと思うよ。男にだらしない聖女なんて評価受けたくないでしょ、聖女様もさ」
哀れなものを見るような目で、真剣に諭さないで欲しい。悲しくなってくるから。でも、本当にその通りだ。
「で、イベントはどうするのさ。アウレウスくんとどうこうなる気がないなら、収穫祭の夜会は一人で参加するの?」
「あの、それが……補佐として一緒に参加してもらうつもりで……」
「は? パートナーじゃなくて?」
意味がわかんないんだけど、とルーナ先生が再びジト目になる。
「パートナーじゃ困るんです。だから、アウレウスのルートってどうやってフラグ折りするんですか? 何があったら、フラグ折れたことになるんですか?」
ぎゅ、とスカートの端を握って、私は問う。
「あ~……フラグ折りね。なるほど」
意味深に頷いて、ルーナ先生は腕を組んだ。
「聖女様ってファンディスクの内容全然知らないんだったね。夜会のイベントまできといてシナリオ通りのフラグ折りっても、今更過ぎる気がするけど……」
「それでも教えてください、先生」
私がそう言うと、先生は「どうしようかな」と首を傾げた。
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