身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

挿話3『ひぐらしのなく頃に』

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「なんで、そんな――――?」
 ふるふると涙を溢れさせ、花が訊ねた。
「私は・・・義孝さんと幸せになります!」
 キッと花が眼差しを上げたのは、あまりに口惜しいことを・・・義孝が言ったからだ。

 薬屋の店主・達哉と一緒になる事ができる―――義孝がそんな思い違いをした、それが腹立たしく哀しかった。

「花さん」
 婚礼の儀を三日後に控えた夏のある日、縁側に腰掛け二人で夏の休暇の夜を過ごしていた時のこと。
「以前、薬屋の店主と一緒になるように話したことがありましたが、覚えていますか?」
「――――はい」
 ズキリ、と胸が痛む。
「あの時は、すみませんでした。つまらぬ嫉妬で・・あなたを傷つけた。ただ、言い訳をさせてくれますか?」
「―――も、勿論です」
 弾かれたように、花が目線を上げる。

「私の父親のこと、まだ話していませんでしたね」
「はい」
 花が時東邸に来た時、すでに父親はいなかった。
「・・父は三十余年前に、戦死しました。ちょうど、今くらいの―――ひぐらしが鳴いていた時期でした。屈強で大きい人でしたが・・・小さな骨壺に、丸い石塊が一つ」
「!」
「艦で保管出来ませんからね。海に亡骸を葬り、遺骨の代わりに丸い石塊が」
 日暮れ時、告げられた訃報。
「母が泣き崩れるのを見ました」

 わああああっ。

「声を上げて、泣きじゃくるのを初めて見ました。明るく、強い母が・・・・骨壺を抱いて泣き叫ぶのを」

 想像をしたくなかった。

「花さんが、私の為に泣くのを考えたくなかった」
「――――」
「ましてや、後を追うのは容易に想像出来ました。不幸にしたくなかった」
 花はこれまで、辛く苦しいことが多かった。
「―――だから、あんなことを」
「ええ、すみません」
 花は義孝の腕に抱きつく。
「私は・・・義孝さんに疑われたかと、哀しかったです。二心があると思われたのかと、悔しくて」
「すみません。私の言葉が足りず、哀しい想いだけを。戦争になる可能性もありましたし、万一そうなれば――――生き残れる確率は・・・」
 ぎゅっと、しがみつく手に力が籠もる。
「二度と、あんな言葉は口にしないで?私は義孝さんが好きなんです、他の人なんて・・・」
「ええ、二度と言いませんから」

 義孝は花を抱きしめ、花も抱きしめ返した。
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