身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)

九話『夢想?妄想?願望?』

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 それは、予定外の帰宅だった。

「おかえりなさい、義孝さん」
 にこぉ、と蕩ける笑顔の花。
「ただいま帰りました、花さん」
「どうしたのです、義孝。いつもは十一月でしょう?」
「はい。まあ、整備です」
「整備?」
「何年か一度、調整するんですよ。しばらくは、陸勤務です」

 ぱぁぁ、花が笑顔になる。
「あら、まぁ!」
 千代が微笑んだ。
「花さんが嬉しいなら、何の問題もないですねぇ」
 ふふ、と千代が笑う。
「整備、調整!大歓迎します」
 わきわき、と花が手を動かす。
「そんな事を言う人、初めて見ました。いや、案外・・・どこの家庭も?」
「きっと、そうです」
 花が、ふるっと涙目になる。
「旦那様が戻るのに、嬉しくない奥さんはいません」
「ありがとう、花さん」
 幸せなこと、義孝は自分が幸せだと痛感した。

「・・・」
 視線を感じる。
「ーーーーあの、花さん?」
「はい」
「何か、変ですか?」
 言われて、花は茹で上がる。
 つい、まじまじと義孝の背中を見つめていた。目測で義孝のサイズを図ろうとして、痴女の眼差しをしていたのだ。

「えと、義孝さんは背中も格好いいな、と」
「は?」
 義孝が完全に固まる。
「す、すみません!」
 真っ赤になり、花が台所に向かった。

 ーーーーハッ!?

「今のは、お誘いか?」
 いや、まさか。
 相手は、あの花である。
「あり得ない、花さんが昼間から、猥談なんて・・・。これは、きっと妄想だ、私の幻想だ」

 ーーーー海軍五省だ。

 冷静に、平常心と唱えた。

    ✣✣就寝前✣✣

 またも、花は奇妙な動きだ。
 挙動不審な妻に、義孝は戸惑う。

「ふええ!絶対に、変態だと誤解されたァ!」
 遊びに来た美沙に、事のあらましを説明した。
「サイズ、採寸させてって言えば?」
「内緒でプレゼントしたいの、いつ編んだのって。喜ばせたいの」
 ぐす、と洟をすする。
「義孝さんはさり気なく、やってくれるのに。私は、何も出来てない」
「花ちゃん」
「っ」
「幸せ、なんだね。ホントに時東さんが、大好きなんだね」
 美沙が微笑んだ。
「ん・・・大好き」
「ね、サイズ測らせてって言ったげた方が、絶対に喜ぶよ?こっそりもいいけど、言うのも大切だよ」
「ん」

 そして、勇気を出して。
「だ、ダメ、失敗したら?」
 うまく編めなかったら?
 イマイチな仕上がりなら?
「意気地なし」
 くすん、と洟をすする。

 白いシャツを広げる。
「こんな感じ?でも、義孝さんのお腹は・・・筋肉があって、色っぽい感じで」
 着替えを何度か見たから分かるが、細く見えてーーーー逞しいのだ。

「なんか、様子がおかしいな」
 昼休み、弁当を食べながら、考えたのは花の行動。
「ん、弁当はいつもながらに、美味い」
 悩んでいても、花は失敗がない。
 働き者で、細やかで、優しい。

「私は、良き嫁をもらったな」
 帰宅した時の、可愛らしい笑顔。
 元々器量がいいが、この一年足らずで磨きがかかった。
  
 そして、帰宅。
「おかえりなさいませ」
 パタパタと、子犬のように走る。
「ただいま帰りました」
 空になった弁当を渡し、他愛ない話をする。
「すぐ、夕飯になります。今日は秋刀魚の塩焼きです、重松が七輪で焼いてくれたから。期待してください、絶品ですよ!」
「良かった、いつも通りだ」

「うーん、あとは腰周りだけど」

 就寝時、義孝が眠るなり花はメジャーを出した。
「起きないで?」
 そっと跨り、胸幅、肩幅、そして肝心の腹部と腰をーーーー。

 ドクン・・・ドクン

(やっぱり、すごい)
 もう、何回か見ているのに、やはりすごいのは腹部の割れた筋肉である。
(この腕も、逞しくて・・・安心できて・・・)

(なんか、重い?) 
 義孝が目を開けると、花が義孝の上にいる。
「!?」
 しかも、花自身は気付かず、コソコソと弄る。

 ーーーーハッ、夜這い!?

 いや、まさか。
 花に限って有り得ない。

(平常心だ、平常心。これは、私が、夢想したこと!)
 だが、なぜ?
 義孝は自問した末に、尋ねる選択肢を選んだ。

「花さん?」
「はい」
「何してんですか?」
 花が、ビクッと震える。
「え、義孝さん?」

 いやあーーーーーっ!

 悲鳴を上げた花の口を、義孝は慌てて塞いだ。

「旦那様」
「花様、いかがされました?」
 重松、鹿江、女中たち、
 遅れて、千代が来た。
「義孝、花さん、大丈夫?」

 ーーーーはい、大丈夫です。

 花の声がした。

「ごめんなさい、ネズミがいて。大声を出しました」

 ーーーそう、ならいいの。

 皆が、部屋に戻る足音がする。
 ほっ、と花は息を吐く。

「花さん、何をしてるんですか」
「あ」
 まだ、義孝の上に座ったまま。
「もしや、夜這いですか?」
「違います!」 
「では、何を」

 ふるふると、花は泣きベソ顔になる。

「編み物を、しようかと。冬の海は寒いですし・・・セーターを着れば、温かいかと」
 ぐす、と洟をすする。
「それで、ずっと」
「ごめんなさい。サイズ、測らせてって言えばいいけど、それじゃ、びっくりしてもらえないし」
 
 ーーー結局、バレた。

「なんで、私は駄目なんでしょう。義孝さんは上手に出来て、私はなんっで?」
 だから、継母に愛されなかった。
「私は、いつも驚いていますが」
「え?」
「花さんと関わることで、様々な感情が私にあったと驚いていますが」

 ーーーサイズ、測るんですよね。

 脚を開かされ、花は慌てる。
「やぁ、こんな格好」
「この方が、直接触れるでしょ」

 ーーーもう、採寸は終わっ。

(その夜、義孝さんは私を放してくれなかった)

 一ヶ月後、疾風の艦長室に小包が届き、中にはセーターがあったという。
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