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回想・身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
十一話『君が好き』
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「花ちゃん」
それは、思いがけない訪問だった。
「兄さま」
「花ちゃん、ちょっといいかな」
「はい」
私は、小さく頷いた。
そこは、丘の上にある小さな霊園だった。私は街を一望できる小高い丘に、小さな墓碑を見つけた。
「妻の、香苗の墓だ」
「え!?」
心臓がドキンとはねた。
「結婚して、すぐに走馬性肺結核と分かってね。打つ手もなく、亡くなったよ」
「・・・」
幸せなんだと。
そう、信じていたのに。
「香苗との結婚まで、三ヶ月の猶予があったのに。僕は香苗を愛そうとしなかった、いや、好きになる要素を彼女に探さなかった」
肩が震えていた。
「ごめんね、花ちゃん。この間は嘘をついて」
「え」
「羨ましかった。僕は君が好きだった」
ズキンと、胸が痛む。
「そんな顔しないで。『だった』、過去だよ」
「うん」
「ね、花ちゃん。もし、僕が一年早く帰れて、告白したなら。愛してくれた?」
「う、ううん」
首を振る、胸が痛む。
お願い、自分を貶めないで。
「私は、義孝さんが好き。兄さまに先に会っても、やっぱり義孝さんを愛したとおもうの」
だって、他の人じゃ。
こんなに幸せじゃないから。
「そうか。やっぱり、欲張りは駄目だね。二兎を追う者は一兎をも得ず、昔の言葉にある通りだ。僕は香苗も、花ちゃんも失った」
「兄さま」
「花ちゃん。僕はね、今度は誰かを好きになったら、絶対に伝える。時東さんのように、勇気を出して」
「私も、兄さまが好きよ。あの辛い日々の中で、兄さまは私の光だった」
光。
両親の過大な期待に、毎日が押し潰される思いだった。
「ありがとう、花ちゃん。一つ、最後に頼みを聞いてくれるかな?」
「うん」
「目を閉じて」
素直に従った私の額に、兄さまは口づけた。そして、驚いて目を開いて、絶望した。
凍りつくような眼差しの義孝さんが、兄さまの向こう側にいた。
「さよなら、花ちゃん。来週から九州なんだ」
そう言って、兄さまは立ち去った。
スッと、義孝さんが私の傍を走り抜けた。
「待って」
私は辛うじて、義孝さんの手を掴んだ。
ーーーー殺す。
「待って、額だから!口じゃないから!」
ーーー額?だから?
「兄さまの、奥さんの前よ?哀しいこと、言わないで!しないで!」
必死にしがみついた。
「お願い、私が愛しているのは、義孝さんだけよ!」
すぅーーーー。
義孝さんが息を吸う。
ポタポタと、握り拳から血が滴り落ちていた。
「いい加減に、妬かせるのはやめてください」
震えている。
「ごめんなさい。お別れを、言いに来てくれただけだから」
涙が止まらなかった。
私は、義孝さんを傷付けてしまった。
「あら、どうしたの?」
千代が目をぱちくりする。
「カヤで切りました」
「ドジね」
私は傷薬を吹きかけた。
「ぐぅ」
義孝さんが眉を顰めた。
それは、思いがけない訪問だった。
「兄さま」
「花ちゃん、ちょっといいかな」
「はい」
私は、小さく頷いた。
そこは、丘の上にある小さな霊園だった。私は街を一望できる小高い丘に、小さな墓碑を見つけた。
「妻の、香苗の墓だ」
「え!?」
心臓がドキンとはねた。
「結婚して、すぐに走馬性肺結核と分かってね。打つ手もなく、亡くなったよ」
「・・・」
幸せなんだと。
そう、信じていたのに。
「香苗との結婚まで、三ヶ月の猶予があったのに。僕は香苗を愛そうとしなかった、いや、好きになる要素を彼女に探さなかった」
肩が震えていた。
「ごめんね、花ちゃん。この間は嘘をついて」
「え」
「羨ましかった。僕は君が好きだった」
ズキンと、胸が痛む。
「そんな顔しないで。『だった』、過去だよ」
「うん」
「ね、花ちゃん。もし、僕が一年早く帰れて、告白したなら。愛してくれた?」
「う、ううん」
首を振る、胸が痛む。
お願い、自分を貶めないで。
「私は、義孝さんが好き。兄さまに先に会っても、やっぱり義孝さんを愛したとおもうの」
だって、他の人じゃ。
こんなに幸せじゃないから。
「そうか。やっぱり、欲張りは駄目だね。二兎を追う者は一兎をも得ず、昔の言葉にある通りだ。僕は香苗も、花ちゃんも失った」
「兄さま」
「花ちゃん。僕はね、今度は誰かを好きになったら、絶対に伝える。時東さんのように、勇気を出して」
「私も、兄さまが好きよ。あの辛い日々の中で、兄さまは私の光だった」
光。
両親の過大な期待に、毎日が押し潰される思いだった。
「ありがとう、花ちゃん。一つ、最後に頼みを聞いてくれるかな?」
「うん」
「目を閉じて」
素直に従った私の額に、兄さまは口づけた。そして、驚いて目を開いて、絶望した。
凍りつくような眼差しの義孝さんが、兄さまの向こう側にいた。
「さよなら、花ちゃん。来週から九州なんだ」
そう言って、兄さまは立ち去った。
スッと、義孝さんが私の傍を走り抜けた。
「待って」
私は辛うじて、義孝さんの手を掴んだ。
ーーーー殺す。
「待って、額だから!口じゃないから!」
ーーー額?だから?
「兄さまの、奥さんの前よ?哀しいこと、言わないで!しないで!」
必死にしがみついた。
「お願い、私が愛しているのは、義孝さんだけよ!」
すぅーーーー。
義孝さんが息を吸う。
ポタポタと、握り拳から血が滴り落ちていた。
「いい加減に、妬かせるのはやめてください」
震えている。
「ごめんなさい。お別れを、言いに来てくれただけだから」
涙が止まらなかった。
私は、義孝さんを傷付けてしまった。
「あら、どうしたの?」
千代が目をぱちくりする。
「カヤで切りました」
「ドジね」
私は傷薬を吹きかけた。
「ぐぅ」
義孝さんが眉を顰めた。
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