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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋
十五話『幼い日のプロポーズ』
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「まったく、余計な話を。清華にはまじないをかけたんだ。忘れた方が幸せなことがあるだろ?」
「事故死、自分は乗らなかった。何回も暗示をかけたんだ」
余計なことをしてくれた!と崇裕は毒づいた。
「血まみれだった。あの子は血まみれだったんだよ!だから、忘れさせたのに」
「また、暗示にかけるか?クソ、骨が折れるぞ、あれは」
崇裕が歯ぎしりした。
いいえ。
清華が目を覚ます。
「このまま、暗示はいりません」
「清華、大丈夫か。無理せず、崇裕さんに」
「お兄ちゃん」
「!」
鏡弥は驚く。
「私、鏡弥さんのことを、そう呼んでいたのね」
「清華」
「やれやれ、全部思い出したのかい」
多香子が涙を浮かべる。
「覚えていても、幸せなことなんて一つもないだろうに」
清華は多香子に振り返る。
「おば様、今までありがとう。私、叩かれてなかった」
全ては暗示だ。
「清華」
「私、お母さん達を殺した人達を見ました。黒い服を来たのは、黒い服面の」
「清華、もういい。言わなくて、お前は辛い、恐い夢を見たんだ」
多香子は止める。
「おば様、大丈夫よ。黒い覆面に隠されて、顔は見えなかった。だけど、あの冷たい声と眼差しは忘れない」
なぜ、両親が殺されたかは分からない。
「そうかい、顔は知らないんだね。ま、その方がいいさ」
「知ってたら、殺されただろうし」
多香子が目を伏せる。
「ゾッとするよ。清華を引き取りに行った日を思い出すとね」
全身に両親の血に濡らし、壊れた目をした清華を抱きしめ、多香子は泣いた。
「あのあと、清華に旦那が催眠術をかけたんだ。何日もかけてね」
「大変だったんだぞ。泣いて暴れるし、それで虐待の疑いがかかるし」
「すみません」
「黒い覆面ね」
「見られたら、まずいか」
ただ、何かを見落としている。清華はそんな気がしてならなかった。
「幸せになりな、清華。清輝や櫻子のことは忘れたフリをするんだよ」
「おば様」
「あんたまで死なれちゃ、私はやってやられないよ」
頼むから。
多香子の目から、涙が流れ落ちる。
「わかりました」
清華は頷いた。
「清華、他には。何か思い出したことは」
「えと――――」
「何かあるのか?」
「うん」
清華は頬を染めた。
「実は、小さい頃に何度目か、一緒に食事した日のことなんだけど」
「うん」
「私、たしか―――その、花畑みたいな場所で――お兄ちゃんに」
「うん」
「好きって、言われたの。で、私も好きって言ったの」
「それで?」
「お兄ちゃんは、私に『大きくなったら、僕のお嫁さんになってくれ』って」
「それで?」
「返事は、次に会ったときにするって」
鏡弥は清華の目を見つめている。その目は、黒曜石のように綺麗だった。
「でも、あの事件があったから。ずっと会えなくて。今、してもいい?」
「ああ」
鏡弥は頷いた。
「私を、鏡弥さんのお嫁さんにしてください」
赤くなり、清華は俯く。
「ああ、もちろん」
上を向かされた清華の顔は、涙に濡れていた。
「もちろん、喜んで」
鏡弥は口付けた。
「事故死、自分は乗らなかった。何回も暗示をかけたんだ」
余計なことをしてくれた!と崇裕は毒づいた。
「血まみれだった。あの子は血まみれだったんだよ!だから、忘れさせたのに」
「また、暗示にかけるか?クソ、骨が折れるぞ、あれは」
崇裕が歯ぎしりした。
いいえ。
清華が目を覚ます。
「このまま、暗示はいりません」
「清華、大丈夫か。無理せず、崇裕さんに」
「お兄ちゃん」
「!」
鏡弥は驚く。
「私、鏡弥さんのことを、そう呼んでいたのね」
「清華」
「やれやれ、全部思い出したのかい」
多香子が涙を浮かべる。
「覚えていても、幸せなことなんて一つもないだろうに」
清華は多香子に振り返る。
「おば様、今までありがとう。私、叩かれてなかった」
全ては暗示だ。
「清華」
「私、お母さん達を殺した人達を見ました。黒い服を来たのは、黒い服面の」
「清華、もういい。言わなくて、お前は辛い、恐い夢を見たんだ」
多香子は止める。
「おば様、大丈夫よ。黒い覆面に隠されて、顔は見えなかった。だけど、あの冷たい声と眼差しは忘れない」
なぜ、両親が殺されたかは分からない。
「そうかい、顔は知らないんだね。ま、その方がいいさ」
「知ってたら、殺されただろうし」
多香子が目を伏せる。
「ゾッとするよ。清華を引き取りに行った日を思い出すとね」
全身に両親の血に濡らし、壊れた目をした清華を抱きしめ、多香子は泣いた。
「あのあと、清華に旦那が催眠術をかけたんだ。何日もかけてね」
「大変だったんだぞ。泣いて暴れるし、それで虐待の疑いがかかるし」
「すみません」
「黒い覆面ね」
「見られたら、まずいか」
ただ、何かを見落としている。清華はそんな気がしてならなかった。
「幸せになりな、清華。清輝や櫻子のことは忘れたフリをするんだよ」
「おば様」
「あんたまで死なれちゃ、私はやってやられないよ」
頼むから。
多香子の目から、涙が流れ落ちる。
「わかりました」
清華は頷いた。
「清華、他には。何か思い出したことは」
「えと――――」
「何かあるのか?」
「うん」
清華は頬を染めた。
「実は、小さい頃に何度目か、一緒に食事した日のことなんだけど」
「うん」
「私、たしか―――その、花畑みたいな場所で――お兄ちゃんに」
「うん」
「好きって、言われたの。で、私も好きって言ったの」
「それで?」
「お兄ちゃんは、私に『大きくなったら、僕のお嫁さんになってくれ』って」
「それで?」
「返事は、次に会ったときにするって」
鏡弥は清華の目を見つめている。その目は、黒曜石のように綺麗だった。
「でも、あの事件があったから。ずっと会えなくて。今、してもいい?」
「ああ」
鏡弥は頷いた。
「私を、鏡弥さんのお嫁さんにしてください」
赤くなり、清華は俯く。
「ああ、もちろん」
上を向かされた清華の顔は、涙に濡れていた。
「もちろん、喜んで」
鏡弥は口付けた。
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