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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋
三十二話『顔に傷がある男』
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「ずいぶん、派手にやられたな」
久瀬大晴は医務官の治療を受けていた。
「さすがは、鳳清輝。手練というわけか」
「はい、丸腰相手に油断しました」
大晴は清華が気になっていた。
(あの少女、恐らく櫻子様の娘だ。だが、もう精神が壊れただろうな)
あの場にいる人間は、全て殺せと言われたが―――。
いつだって誰の命令か、標的の名前すら教えてもらえない。
だが、櫻子の顔は誰でも知っているし、清輝は軍人の花形である御前自衛だ。知らない人間はいない。
「あの清輝を殺ったのだ、お前の腕もなかなかだな」
「恐れ入ります」
「あれから、十三年か」
先日、首謀者とされる宮が身罷り、この話は闇に葬られた。
「あの娘は、どうしただろうか」
まともに話せるなら、きっと評判の娘に成長した。
櫻子は美しい皇女で、清華はよく似ていた。
「久瀬殿」
「これは、杉野様」
杉野浩一は大晴と同じ日に、科挙の試験を受けた。
共に主席で合格し、今は晃嗣の補佐役として皇居にいる。
「久瀬殿、空いている時間はありませんか?美味い豆腐料理の店を見つけました」
「なら、今夜は」
「いいですね」
宮仕えをし、友が出来た。浩一は晃嗣の二人目の皇后(章枝)の従兄弟だ。
「久瀬殿だけです。私を身分で判断せず、人として向き合ってくれるのは」
「私も、身分の低い私を友だと言ってくれるのは、杉野様くらいです」
「久瀬殿、そろそろ敬語はやめませんか?あなたのほうが、年上です」
優しい浩一。
良き友を得た。
「ん、たしかに美味いです」
「でしょ?絶対に久瀬殿に教えたいと思ったのです」
互いに湯葉や豆腐を使う和食が好きで、酒が全く飲めなくて―――。
「久瀬殿、最新刊は買われましたか」
「今日、買に行こうかと」
「実は、私―――二冊あります。一冊どうぞ」
他愛のない会話ができて、過去や身元を一切詮索しない。
誠実な浩一に、大晴はどれだけ救われたか。
顔の傷も、治せる医師を紹介してくれた。
「杉野様、本当にありがとうございます」
深々と大晴は頭を下げた。
「友達ですよ、助けるのは当たり前です」
「ありがとう」
叶うなら、いつまでも友でいてくれと、大晴は願った。
そして、出会ってしまった。
「!」
間違いなく、櫻子の娘だった。
(なぜ、皇居に?)
一緒にいる鏡弥や、晃嗣に血の気が引いてゆく。
(大丈夫だ、いまの私には傷がない。わかるはずもない)
体が、小さく震えた。
「皇居で、暮らさぬか?けして、不自由はさせぬ」
晃嗣の提案を、清華は辞退した。
愛する人と、静かに暮らしたい。
清華の願いを尊重し、晃嗣は承諾した。
「いつでも、私を頼ってくれ」
晃嗣は微笑んだ。
(あの子は間違いなく、二人の娘だ)
青く晴れた美空を見上げ、晃嗣は呟いた。
「櫻子、清輝。もう、心配はいらぬ。そなたらの御子は、幸せを掴んだ」
久瀬大晴は医務官の治療を受けていた。
「さすがは、鳳清輝。手練というわけか」
「はい、丸腰相手に油断しました」
大晴は清華が気になっていた。
(あの少女、恐らく櫻子様の娘だ。だが、もう精神が壊れただろうな)
あの場にいる人間は、全て殺せと言われたが―――。
いつだって誰の命令か、標的の名前すら教えてもらえない。
だが、櫻子の顔は誰でも知っているし、清輝は軍人の花形である御前自衛だ。知らない人間はいない。
「あの清輝を殺ったのだ、お前の腕もなかなかだな」
「恐れ入ります」
「あれから、十三年か」
先日、首謀者とされる宮が身罷り、この話は闇に葬られた。
「あの娘は、どうしただろうか」
まともに話せるなら、きっと評判の娘に成長した。
櫻子は美しい皇女で、清華はよく似ていた。
「久瀬殿」
「これは、杉野様」
杉野浩一は大晴と同じ日に、科挙の試験を受けた。
共に主席で合格し、今は晃嗣の補佐役として皇居にいる。
「久瀬殿、空いている時間はありませんか?美味い豆腐料理の店を見つけました」
「なら、今夜は」
「いいですね」
宮仕えをし、友が出来た。浩一は晃嗣の二人目の皇后(章枝)の従兄弟だ。
「久瀬殿だけです。私を身分で判断せず、人として向き合ってくれるのは」
「私も、身分の低い私を友だと言ってくれるのは、杉野様くらいです」
「久瀬殿、そろそろ敬語はやめませんか?あなたのほうが、年上です」
優しい浩一。
良き友を得た。
「ん、たしかに美味いです」
「でしょ?絶対に久瀬殿に教えたいと思ったのです」
互いに湯葉や豆腐を使う和食が好きで、酒が全く飲めなくて―――。
「久瀬殿、最新刊は買われましたか」
「今日、買に行こうかと」
「実は、私―――二冊あります。一冊どうぞ」
他愛のない会話ができて、過去や身元を一切詮索しない。
誠実な浩一に、大晴はどれだけ救われたか。
顔の傷も、治せる医師を紹介してくれた。
「杉野様、本当にありがとうございます」
深々と大晴は頭を下げた。
「友達ですよ、助けるのは当たり前です」
「ありがとう」
叶うなら、いつまでも友でいてくれと、大晴は願った。
そして、出会ってしまった。
「!」
間違いなく、櫻子の娘だった。
(なぜ、皇居に?)
一緒にいる鏡弥や、晃嗣に血の気が引いてゆく。
(大丈夫だ、いまの私には傷がない。わかるはずもない)
体が、小さく震えた。
「皇居で、暮らさぬか?けして、不自由はさせぬ」
晃嗣の提案を、清華は辞退した。
愛する人と、静かに暮らしたい。
清華の願いを尊重し、晃嗣は承諾した。
「いつでも、私を頼ってくれ」
晃嗣は微笑んだ。
(あの子は間違いなく、二人の娘だ)
青く晴れた美空を見上げ、晃嗣は呟いた。
「櫻子、清輝。もう、心配はいらぬ。そなたらの御子は、幸せを掴んだ」
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