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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋
四十五話『奈都へ』
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「旅行」
「ああ、まだ新婚旅行に行ってないからな。明後日から行く」
「いいんじゃね、嫁さんも気分転換になるさ」
七月十五日、清華と鏡弥は帝都の東にある奈都へ向かった。
帝国は五つの主要都市があり、中央の帝都、西の旧都・北の北都・東の奈都がある。
「奈都って、小説の舞台になってるんですよ」
「へえ、どんな話だ」
汽車の中で、清華は愛華から借りていた小説の話をする。
「華族のお嬢様が、結婚を目前で婚約者と引き離されるんです」
「へぇ」
「婚約者は主人公と、宿屋で一夜を明かすことになるんですけど。真珠のネックレスをプレゼントして、必ず迎えに行くと言って清い仲を守るんです」
「―――オレには、無理だな」
鏡弥の言葉に、清華は吹き出す。
「鏡弥さんだって、半年も待ってくれましたよ」
「だが、接吻はしたぞ」
「ふふ、そうでしたね。で、話は戻しますけど、主人公は真珠のネックレスを胸に、成金の子持ち男性に嫁ぐんです。親子ほど年の離れた男性に」
「絵に描いた悲劇だな」
「はい、でもちゃんと結ばれます。夫の死後、恋人と再会して。互いに自由になって、また宿屋に行くんです」
駅で降りた二人は、宿屋に荷物を預ける。
「お部屋に案内しますか、それとも外出なさいますか」
「外出します」
身軽になり、観光を楽しむ。
「どこか、目的地はあるのか?」
「えと―――尼寺に」
「尼寺?」
そこは、小さな宿坊になっていた。
「ここなんです。二人が結ばれたのは」
「え?尼寺でしたのか」
「も、尼寺です。そんな露骨に」
清華が頬を染めた。
「へぇ、いい感じの部屋だな」
「お遍路さんしか泊まれない筈なんですけど」
「ま、小説だからな。いいんじゃないか?」
鏡弥が笑う。
「そうですね、野暮ですね」
「しかし、いい所だな。静かで、清水が流れる音を聞きながら、二人きり」
「おじいちゃんとおばあちゃんになったら、私達もお遍路さんしますか」
「そうだな。楽しそうだ」
白髪になっても、一緒にいたいと清華は思う。
「私、諦めません。ずっと一緒にいたいですから」
「ああ、生きてゆこう」
しっかりと手を握る。
「どんな気持ちだったんだろ。一生の思い出として、恋人と過ごすのって」
「一生の思い出?」
「末期癌だったんです、主人公。幸せになれるのに、末期癌だとわかるんです」
「―――耐えられないな。もし清華が、そんな病なら。オレは幸せだな。妻が健康でいる」
「はい、私も幸せです」
鏡弥の背中に抱きつく。
「鏡弥さん、これからも飽きるほどに傍に居て下さい」
いなくならないでと、清華は告げる。
「ああ」
清華の手を握る。
「私と、生きて下さい。それだけです、私が願うのは」
「ああ、まだ新婚旅行に行ってないからな。明後日から行く」
「いいんじゃね、嫁さんも気分転換になるさ」
七月十五日、清華と鏡弥は帝都の東にある奈都へ向かった。
帝国は五つの主要都市があり、中央の帝都、西の旧都・北の北都・東の奈都がある。
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「へえ、どんな話だ」
汽車の中で、清華は愛華から借りていた小説の話をする。
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「へぇ」
「婚約者は主人公と、宿屋で一夜を明かすことになるんですけど。真珠のネックレスをプレゼントして、必ず迎えに行くと言って清い仲を守るんです」
「―――オレには、無理だな」
鏡弥の言葉に、清華は吹き出す。
「鏡弥さんだって、半年も待ってくれましたよ」
「だが、接吻はしたぞ」
「ふふ、そうでしたね。で、話は戻しますけど、主人公は真珠のネックレスを胸に、成金の子持ち男性に嫁ぐんです。親子ほど年の離れた男性に」
「絵に描いた悲劇だな」
「はい、でもちゃんと結ばれます。夫の死後、恋人と再会して。互いに自由になって、また宿屋に行くんです」
駅で降りた二人は、宿屋に荷物を預ける。
「お部屋に案内しますか、それとも外出なさいますか」
「外出します」
身軽になり、観光を楽しむ。
「どこか、目的地はあるのか?」
「えと―――尼寺に」
「尼寺?」
そこは、小さな宿坊になっていた。
「ここなんです。二人が結ばれたのは」
「え?尼寺でしたのか」
「も、尼寺です。そんな露骨に」
清華が頬を染めた。
「へぇ、いい感じの部屋だな」
「お遍路さんしか泊まれない筈なんですけど」
「ま、小説だからな。いいんじゃないか?」
鏡弥が笑う。
「そうですね、野暮ですね」
「しかし、いい所だな。静かで、清水が流れる音を聞きながら、二人きり」
「おじいちゃんとおばあちゃんになったら、私達もお遍路さんしますか」
「そうだな。楽しそうだ」
白髪になっても、一緒にいたいと清華は思う。
「私、諦めません。ずっと一緒にいたいですから」
「ああ、生きてゆこう」
しっかりと手を握る。
「どんな気持ちだったんだろ。一生の思い出として、恋人と過ごすのって」
「一生の思い出?」
「末期癌だったんです、主人公。幸せになれるのに、末期癌だとわかるんです」
「―――耐えられないな。もし清華が、そんな病なら。オレは幸せだな。妻が健康でいる」
「はい、私も幸せです」
鏡弥の背中に抱きつく。
「鏡弥さん、これからも飽きるほどに傍に居て下さい」
いなくならないでと、清華は告げる。
「ああ」
清華の手を握る。
「私と、生きて下さい。それだけです、私が願うのは」
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