身代りの花嫁と軍服のこじれた初恋

絵麻

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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋

四十八話『招集』

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「美味しい!」
 運ばれた料理は、どれも彩り鮮やかな一品だった。

「あ、この鮎は煮付けですね」
「はい、鮎の甘露煮といいまして、塩焼きとはまた違う味わいがありますよ」
 ほかほかと湯気を上げる甘露煮に、清華が箸を入れた。
「わ、柔らかい」
 甘辛い味付けが、白いご飯によく合う料理だった。

「たしかに、塩焼きとは違いますね」
「たしかに」
「家で出来るかな。今から、鮎は旬だし」
「女将に聞いたらどうだ?清華の腕ならできるだろ」
「頑張ります」
 その日は部屋にある露天風呂に入った。
「贅沢ですね、露天風呂がついた離れなんて」
「ああ」
 ちらと、清華は鏡弥の体を見やる。

(それにしても、鏡弥さんって軍人なんだな。細いけど筋肉が綺麗について、でも肩や腕に傷痕が)
 胸が痛む。

「鏡弥さん」
「なんだ」
「痛かった、ですか」
 清華の質問に、鏡弥は首を傾げる。
「いつもと逆だな」
「ちが―――っ」
 清華は茹で上がる。
「じゃなく、その傷痕です」
「ん?――ああ、どうかな。寝ていたし起きたら、治療も済んでいたからな」
 清華は背中に額をつける。

「物足りないか?」
「ばか!なんで、そう助平なんですか」
「大丈夫だ、痛いとして。それも生きてる、助かる証拠だ」
「助かる、証拠」
「だから、泣くな。オレは生きているんだから」
「はい」

 優しい鏡弥。
 どちらからともなく口付け、清華は息が上がる。

「だめ、です。のぼせちゃう」
「部屋に行くか?」
「―――はい」
 恥ずかしさで、泣きたくなる。鏡弥は軽々と抱き上げる。

 体を拭き、寝室に向かう。
(わ、すでに布団が!しかも、ふかふか)

「まるで、初夜が今日みたいだな」
「ばかぁ」
 明かりが消され、部屋が暗くなる。清華は目を閉じ、観念したのだった。

「さて、今日はどうするか」
 翌朝、朝食を食べた二人が、予定を立てている時だった。
「長谷川様。第一司令部から、ご連絡が」
「分かりました」
 一瞬にして、鏡弥の顔つきが変わる。

「招集?」
「ああ、漣という料亭で宴席があるから、すぐに来いと」
「仕方ないです、お仕事ですから」
「すぐ戻る」

 行っちゃった

 涙があふれる。
「泣いちゃだめ、きのは一緒だった。我慢、しなきゃ」
 寂しい。
 しゃくり上げると、あとはなし崩しだった。
「泣いちゃ、だめ、子供じゃないんだからっ」
 寂しい、よ。
 すすり泣く声が、しばらく響いた。

「ちょっとだけ、外に行こうかな」
 引きこもるのは勿体ないと、清華は外に出た。
「少しだけ」
 カウンタに言伝を頼み、土産物を見に出かけた。
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