身代りの花嫁と軍服のこじれた初恋

絵麻

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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋

五十三話『標的はーーー』

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 行燈の明かりが、淡く室内を照らした。

「あのーー」
 まるで初夜のように、清華は緊張していた。
「見張りって、どんな配置でしょうか」
「さあ、風呂から戻る時、廊下にも侍女の人がいたけど」
「え」
 清華は茹で上がる。
「じゃ」
 聞かれちゃう、と涙ぐむ。
「声を出さなければいい。第一、侍女は口が堅い」
「ーーって、する気ですか」
 言葉は口付けで塞がれる。
 
「これ、どうやって脱がすんだ」
 変わったデザインの寝間着に、鏡弥が戸惑う。
「えと、このリボンを解いて」
「ふむ」
 清華は腰にある飾り紐を引く、衣類が崩れて胸元が顕になる。
「あ」
「ふふ、かかったな」

 胸元に口付けられ、「ん」と仰け反る。
「やだ、聞かれちゃ」
「なら、噛んでろ」
 指をくちに挿れられる。
「ーーー!」
「清華」
 吐息混じりに名前を呼ばれ、膝を抑える。
「だ、だめ」
「―――!」

 やだぁ、深ぁ

 掛布を噛み、なんとか声を抑える。
「大丈夫だ」
「!」
「必ず、家に帰れるから。一緒に家に帰ろう」
「帰れ、ますか」
「ああ、だから今はこっちに集中してくれ」
「いぁ」
 
『命を狙われてるのは、お前だ』
 敬之は言った。
『嵐で木材が崩れてきたが、お前を殺るためだ。嫁さんじゃない』 

 気を失うように眠る清華の首筋に、額を埋めて目を閉じる。

 ずっと一緒に
 この先もいたい

 それは、鏡弥も同じ想いだ。
(相手は剣の使い手ばかりだ。オレは銃は得意だが)
 清華が目を開ける。
「何か、他にあるんじゃないですか?」
「え」
「鏡弥さんが約束を違えたことは、今まで一度もなかったし」
「大丈夫だ」
「隠し事は、なしにして下さいね」
 指先に口付ける。
「何も言わずに居なくなるとか、しないで」
「分かってる」

 約束ですよ

 清華が目を閉じた。
「おやすみ、清華」
 狙われているのは、清華ではなく自分だと知れば、清華は泣くだろう。
「ん」
 口付けられ、清華が身動いだ。

 翌朝、鏡弥は剣術指南を受け始めた。
「彰義に頼めばよい。彰義は今でこそ私の補佐官だが、かつては清輝と帝国の双璧と呼ばれた腕だ」
 なぁ、彰義?
「まぁ、清輝ほどではありませんが」
「宜しく、お願い致します」

 練兵場に向かう鏡弥に、清華もついて行く。
「見ておれ、清華」
「はい」
「彰義も手練だが、鏡弥もなかなかだ」
「そう、なのですか」

 始め!

 目に止まらぬとは、このことかも知れない。義隆が手を下ろすと同時に、鏡弥は打ちこんでいた。

「今のは、悪くありません」
 彰義が余裕で受ける。
「だが、まだまだ甘い!」

「すご!彰義さん、余裕で流してますね」
「ああ、あれが戦場なら―――鏡弥は二回刺されておる。彰義に勝てねば、黒いオオカミは倒せぬ」

 遅い!
 
 どのくらい、手合わせをしていただろうか。とうとう義隆が、待てを出して終了した。

「ありがとう、ございます」
 汗をかき、鏡弥は息を乱していたが、彰義は涼しげだ。
「鏡弥さん」
 清華が駆け寄る。
「完敗だ」
 悔しそうに、鏡弥は拳を叩きつけた。


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