身代りの花嫁と軍服のこじれた初恋

絵麻

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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋

五十四話『新しい命』

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 鏡弥の動きは、日に日に良くなっていた。必ず、戦い抜くという強い意志が、鏡弥の剣を上達させた。
「よし、そこまでだ。鏡弥、彰義相手にそれだけ戦えれば、大丈夫だ」

 晃嗣が階段を降りてくる。
「恐れ入ります」
 一礼する鏡弥に、清華は嬉しそうに笑う。

「清華?」
 清華を見る鏡弥の顔色が、見る間に変わる。

 清華!

「どうした、清華」
「あ、鏡弥さん」
 大丈夫です、といいながら清華はフラ・・とよろめく。
「顔色が悪いが、気分でも」
「ん・・ちょっと、怠くて」

 風邪かな、清華は笑う。

「皇后様が、私に」
「はい、女同士で菓子を食べながらと」
「もちろん、伺います」
 清華は笑った。
「さて、何を着ようかな」
「大丈夫か?」
「はい」
 清華は頷いた。

 せっかくのお招きを、無下に出来ないと清華は笑う。

「清華、近頃体調が優れぬようだが、加減はどうだ」
「はい、お陰様でだいぶ・・ゔ」
 紅茶の香りさえ、近頃は辛く食事も、とくに白米が辛い。
「なぁ、清華?そなた、月のアレは来ているか」
「月の・・・」
「無いの、だな?」
「はい、二ヶ月ほど。でも、鏡弥さんには」
「わかっている、心配させたくないのだろう?」
 章枝は清華を抱きしめだ。
「私が、そなたの母か姉ならば、慰めてやれた。辛いな、愛しい人の子を宿したのに、言えぬとは」
「っ」
「鏡弥には伏せよう」
 清華は泣いた。

「本当は真っ先に伝えたいであろうに」
 自分の宮に戻る清華を見つめ、章枝は膨らんだお腹を撫でる。
「清華、そなたの気持ちは痛いほど分かるぞ」

「清華」
 鏡弥が迎えに来た。
「大丈夫か」
「はい」 
 抱きしめられ、泣きたくなる。早く、伝えたい。

「!」
 その日、膳に並んだ食事はどれも口当たりの良い、食べやすい物だった。
「厨房に言って、さっぱりしたものを用意してもらった」
「鏡弥さん」
「ちゃんと食べろ、最近はほとんど箸をつけないじゃないか」
「・・・」
「暑さに疲れている時こそ、食事は大事だ」
「――――はい」

 子供が出来たと言えば、鏡弥はどれほど喜ぶだろうか。
 ふと、子供を抱く鏡弥を想像する。

(きっと、優しいお父さんになる。深い愛情を注ぐ、優しいお父さんに)

「頂きます」
「ああ、たくさん食べろ」

 膳には冷やし中華などの、肉や野菜をたくさん食べられる食事が並んでいた。
「ありがとうございます、鏡弥さん」
 清華は笑顔を浮かべた。
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