身代りの花嫁と軍服のこじれた初恋

絵麻

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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋

五十五話『反乱軍』

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「鏡弥さん」
 清華と鏡弥は、幸せなひとときを過ごしていた。
「月がきれいだな」
「はい」
 縁側に座り、肩を寄せ合う。
「鏡弥さん、家に帰ったら。鏡弥さんの好きな物、たくさん作りますね」
「ああ、楽しみにしてる」
「皇居のご飯も美味しいですけど、やっぱり自分で作りたいです」
 愛する人に、温かな食事で癒やしてあげたい。清華の幼い日からの願いだ。
「清華、もしかしたら黒いオオカミが狙うのは、オレでも君でもなく」
「帝位かも知れませんね」
 鏡弥は驚く。
「皇后様が懐妊された時、皇后様は帝に伝えるのを躊躇ったそうです。自分が懐妊したと分かれば、元子様の命が危うくなるからって」
 章枝の父は美作昭三だ、そして息子の許嫁に清華を選んだのは美作家の地位を確立するため。
「和俊くんがかわいそう、あんなに優しい人なのに」
 何度も、外に連れ出してくれた。
「私、和俊くんには何もしてあげられなかった」
 募るのは後悔ばかりで―――。俯く清華の顎を持ち、鏡弥が口付ける。

「だ、だめぇ」
「大丈夫だ、体調が優れないのに無理強いはしない」
 優しい眼差しが見つめる。

 和俊と反乱軍が、西の門まで押し寄せていた。
 御所内での動静をうかがっていた者が走り出て、彼らの馬蹄を止めさせた。
 中で祈祷が始まっていることを、詳しく報告した。
 しばし静まっていた蹄の音が、また強くなる。後に続く反乱軍の歩幅も速くなる。西の門をくぐり抜けた彼らの前に、戦闘服を着た鏡弥達の姿があった。
 だが、目を疑ったのは黒い戦闘服龍紋の兜黒鎧をつけ、馬に黒鉄馬甲を着た鏡弥が、五人もいたことだ。
 両脇から黒い戦闘服を着た鏡弥が走ってくるのを見た和俊は、晃嗣に向って疾走した。

 だが、反乱軍の部隊は鏡弥の防御線を越えられず、その場に立ち止まってしまう。
 五人の鏡弥の間に槍と盾で武装した黒衣の軍人達が次々と走って来て整列した。
 
 祭壇に立っていた晃嗣の手が徐々に上がる。その手には弓があり、晃嗣は箙から矢を抜くと弓につがえて引いた。
 和俊も馬を駆りながら、剣を抜いた。
 張り切った弦から矢が離れ、和俊のすぐ左を走っていた兵士の喉を貫いた。
 反乱軍が驚く間もなく、和俊の剣が雨を裂いて横に振られる。
 その瞬間、右側を走っていた兵士の頸が刎ねられた。
 何の準備も出来ていなかった反乱軍の兵士は、次々と死体に成り果てた。

「和俊、これはどういう事だぁ!」
 昭三の怒号が響く。振り返ると、親政軍が反乱軍を取り囲むのが見えた。
 和俊は鏡弥らとともに、晃嗣の前に並ぶんだ。状況は完全に自分が不利だと分かっているのに、まだ昭三は諦めてはいなかった。

「和俊、どういう事だぁ」
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