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第一章 さては私、世界救っちゃいました?
第5話 ほんとうに街がありました!
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どうして突然、林檎の森が鎖国状態から開国状態になったんだろうと疑問に思っていましたが、歩いているうちに私が結界を破壊したからかと合点がいきました。
ろくに調べることなく破壊してしまったものですから詳細はわかりませんが、おそらくあの結界は、存在そのものを世界から隠してしまうようなとんでもないものだったのでしょう。
……いったい誰がどんな目的で結界を張っていたのでしょうね。結界の破壊が原因でなにかとんでもない厄災のようなものが起きないことを祈るばかりです。
「見えてきたよ」
林檎の森を出てから20分が経とうとした頃、ようやく灼熱さんが私に声を掛けてくれました。悲しいかな、宣言通り私とは馴れ合わず必要最低限の会話しかする気がないようです。トホホ。
顎で示された先に目をやり、私は瞬きをせずにはいられませんでした。
「街だ」
それもかなり発展した街です。遠目に見た感じ石造りの建物が目立つので、街という表現よりも都市という表現のほうがしっくりくる印象です。
その中でひとつだけ抜きんでて背の高いお城が目立っています。皇女さまが住んでいるのはおそらくあの場所ではないでしょうか。
「……ごくり」
なんだかワクワクしてきました。
街にはどれだけの人がいるのでしょうか。なにが発展しているのでしょうか。
捕虜であることを忘れて浮き立ってしまっている私です。
そして5分後、未知との交流の瞬間が訪れました。
「うわぁ……」
人、人、人。
見渡す限りの人でした。
パッと見た感じ、エルフや獣族といった異種族の方はいなさそうです。けどまぁ冒険者や魔法使いがいるのですから、そのうち出会うことになるでしょう。
可愛いモンスターを使役する大道芸人さんがいたり、ギルドの紋章のようなものが書かれた酒場があったり、すれ違う人が腰に剣や杖を携えていたり。
あぁ私はこの世界でひとりぼっちの人間じゃなかったんだなぁってしみじみしちゃいます。魔物の討伐クエストとかがあれば運動がてら参加するのもありかもですね。
「お疲れ様です、冒険者様!」
そう灼熱さんに深々と頭を下げるのは、額に十字の傷跡のある強面の男性さんでした。クロスさんと呼びましょう。
悪人めいた面持ちに似合わず、クロスさんは可愛らしい水玉の桃色エプロンをつけています。背後にパン屋があるのですが、さては店の主人さんなのでしょうか。
「頭を下げられるようなことはしていないよ」
「この娘は?」
「林檎の森にひそんでいた魔女だ」
「っ! この生娘がですか?」
「誰が生娘ですか」
ムッとして反論してしまいます。
まぁ成長を10代後半で止めているので強く否定はできませんが。
というか私、灼熱さんの中で魔女扱いされているんですね。
「コイツの処遇は皇女さまに決めてもらう。おそらく禁固か処刑かだろうね」
さらっと言ってのける灼熱さんです。
そうなったら全力で抵抗してやります。
「だから安心したまえ。この街が危険に晒されることはないよ。私が護る」
「冒険者様……ありがとうございます!」
「やれやれ、頭を下げられるようなことはしていないと言っているだろう。日々親切にしてもらっている恩を返しているだけだ。私たちはこういった形でしか皆に恩が返せないからね」
赤髪をはためかせながら身を翻し、灼熱さんはそれ以上はクロスさんに取り合うことなく歩きはじめます。
カッコいいなこの人。しかも絶対いい人。今は関係値が最悪だけど友達になりたい。
不意に頬に視線を感じました。クロスさんが射殺さんばかりの形相で私を睨みつけていました。
「どうかされましたか?」
「話しかけんな魔女が」
吐き捨てるように言ってクロスさんはパン屋に戻って生きました。あ、やっぱりパン屋の店主さんなんだ。……にしても魔女さん嫌われすぎでは?
苦笑しつつ、灼熱さんの後を追う形で足を進めます。
「で、占いおばば、この国の未来はどうなんだよ?」
「青りんご色の長い髪に金色の賢そうな双眸を持つ少女がこの世界に平穏をもたらすようじゃ」
「いやに的確だな。そんな女いるわけ……」
「えと、そんなに見つめてどうしました?」
「なぁ冒険者様、そいつは?」
「林檎の森で捕らえた魔女だよ。皇女さまのもとに連行している」
「うわぉ魔女。……ま、こんな生娘が救世主なわけねぇしな」
「誰が生娘ですか」
すれ違いざまに失礼なことをいってくる無神経さんです。
……私、そんなに幼く見えますか? たしかに童顔ではありますけども。
「泥棒よっ!」
不意に金切り声が背後から聞こえてきました。
さすが都市です、歩いているだけでイベントがほいほい発生します。
「物騒なこと言わないでよっ。用が済んだらすぐに返すって言ってるでしょ?」
ぜーはー息を切らすおばさまが指を差しているのは、人波を縫って軽快に駆ける茶髪の少女です。
街の人が必死の形相で捕まえようとしますが、茶髪の少女は軽やかな身のこなしで、ついには冒険者さんたちからも逃げおおせてしまいます。
盗んで逃げることに慣れているのでしょうか。見惚れてしまうほどに華麗な動きでした。
「ですが、悪事は見逃せませんよね」
私は静かに口ずさみました。
「光よ、捕えなさい」
まもなく冒険者の集団からも抜け出そうとしていた茶髪の少女は、突如出現した光の輪に拘束されて地面に落下します。
「なにこれっ!?」
「冒険者さまだ! 俺たちの冒険者が悪党を捕らえてくれたぞ!」
「いや私はなにもしていないが?」
「ありがとうございます冒険者さま! おかげで助かりました!」
おばさまが灼熱さんの手を取り、ぶんぶん振って感謝を告げています。
言い訳が思い浮かばなかったのか、灼熱さんは「冒険者さま万歳!」コールを甘んじて聞き入れていました。
私はとことこおばさまに近づいて訊ねます。
「その鞄は大切なものなのですか?」
「あらお嬢ちゃんは誰かしら?」
「断定魔女です」
「けっ、魔女に話すことなんてないわよ」
にこにこ顔を一転して、絵に描いたような塩対応で応じるおばさまでした。
私、そろそろ泣きますよ?
けどまぁ、泥棒さんが捕まっておばさまが笑顔になれたならいっか。
これにて一見落ちゃ……
「うわ~ん! 捕まりたくないよぉ~!」
「盗みを働いたんだから捕まるに決まってんだろ。これで何回目だ?」
「毎回返してるもん! 盗んでるけど返してるから実質盗んだことはないもん!」
「……じゃあ今後は盗まないって誓うか?」
「盗まなきゃいけない理由があるんだもん!」
「そこは改心するところだろうが……。モカモカの気持ちはわかるんだけどよ」
ギャン泣きする茶髪の少女に、まわりのおとながそろって呆れています。盗んでるけど毎回返してるってどういう状況ですか?
おとなの方々の様子を見るに、本気で茶髪の少女に罰を受けて欲しいと思っている方はいないように見えます。
茶髪の少女もえんえん泣きじゃくって反省しているようですし、もう充分、罰を与えることはできたでしょう。私は茶髪の少女にかけた魔法を解きました。
「ふぇ?」
やんちゃもほどほどにするんですよ。
そう心の中で助言を送って前を向き直します。
目の前に灼熱さんがいてぎょっとしました。
「プリオリ、なにかしたか?」
「し、しししてませんよ?」
「ほんとうだな?」
「ほ、ほほんとですよ?」
「……そうか」
灼熱さんが身を翻します。
さすが私、嘘をつく技術は昔から天下一品です(まわりからはど下手くそだと言われていましたが)。
冒険者さんたちに取り囲まれて歩く事しばし、街の奥に鎮座する城までやってきました。
「ここが皇女さまの城だ。くれぐれも無礼を働かないように」
「やはりここが皇女さまのお城ですか」
果たしてどんな方が出てくるのでしょうか。
私のワクワクは最高潮に達していました。
ろくに調べることなく破壊してしまったものですから詳細はわかりませんが、おそらくあの結界は、存在そのものを世界から隠してしまうようなとんでもないものだったのでしょう。
……いったい誰がどんな目的で結界を張っていたのでしょうね。結界の破壊が原因でなにかとんでもない厄災のようなものが起きないことを祈るばかりです。
「見えてきたよ」
林檎の森を出てから20分が経とうとした頃、ようやく灼熱さんが私に声を掛けてくれました。悲しいかな、宣言通り私とは馴れ合わず必要最低限の会話しかする気がないようです。トホホ。
顎で示された先に目をやり、私は瞬きをせずにはいられませんでした。
「街だ」
それもかなり発展した街です。遠目に見た感じ石造りの建物が目立つので、街という表現よりも都市という表現のほうがしっくりくる印象です。
その中でひとつだけ抜きんでて背の高いお城が目立っています。皇女さまが住んでいるのはおそらくあの場所ではないでしょうか。
「……ごくり」
なんだかワクワクしてきました。
街にはどれだけの人がいるのでしょうか。なにが発展しているのでしょうか。
捕虜であることを忘れて浮き立ってしまっている私です。
そして5分後、未知との交流の瞬間が訪れました。
「うわぁ……」
人、人、人。
見渡す限りの人でした。
パッと見た感じ、エルフや獣族といった異種族の方はいなさそうです。けどまぁ冒険者や魔法使いがいるのですから、そのうち出会うことになるでしょう。
可愛いモンスターを使役する大道芸人さんがいたり、ギルドの紋章のようなものが書かれた酒場があったり、すれ違う人が腰に剣や杖を携えていたり。
あぁ私はこの世界でひとりぼっちの人間じゃなかったんだなぁってしみじみしちゃいます。魔物の討伐クエストとかがあれば運動がてら参加するのもありかもですね。
「お疲れ様です、冒険者様!」
そう灼熱さんに深々と頭を下げるのは、額に十字の傷跡のある強面の男性さんでした。クロスさんと呼びましょう。
悪人めいた面持ちに似合わず、クロスさんは可愛らしい水玉の桃色エプロンをつけています。背後にパン屋があるのですが、さては店の主人さんなのでしょうか。
「頭を下げられるようなことはしていないよ」
「この娘は?」
「林檎の森にひそんでいた魔女だ」
「っ! この生娘がですか?」
「誰が生娘ですか」
ムッとして反論してしまいます。
まぁ成長を10代後半で止めているので強く否定はできませんが。
というか私、灼熱さんの中で魔女扱いされているんですね。
「コイツの処遇は皇女さまに決めてもらう。おそらく禁固か処刑かだろうね」
さらっと言ってのける灼熱さんです。
そうなったら全力で抵抗してやります。
「だから安心したまえ。この街が危険に晒されることはないよ。私が護る」
「冒険者様……ありがとうございます!」
「やれやれ、頭を下げられるようなことはしていないと言っているだろう。日々親切にしてもらっている恩を返しているだけだ。私たちはこういった形でしか皆に恩が返せないからね」
赤髪をはためかせながら身を翻し、灼熱さんはそれ以上はクロスさんに取り合うことなく歩きはじめます。
カッコいいなこの人。しかも絶対いい人。今は関係値が最悪だけど友達になりたい。
不意に頬に視線を感じました。クロスさんが射殺さんばかりの形相で私を睨みつけていました。
「どうかされましたか?」
「話しかけんな魔女が」
吐き捨てるように言ってクロスさんはパン屋に戻って生きました。あ、やっぱりパン屋の店主さんなんだ。……にしても魔女さん嫌われすぎでは?
苦笑しつつ、灼熱さんの後を追う形で足を進めます。
「で、占いおばば、この国の未来はどうなんだよ?」
「青りんご色の長い髪に金色の賢そうな双眸を持つ少女がこの世界に平穏をもたらすようじゃ」
「いやに的確だな。そんな女いるわけ……」
「えと、そんなに見つめてどうしました?」
「なぁ冒険者様、そいつは?」
「林檎の森で捕らえた魔女だよ。皇女さまのもとに連行している」
「うわぉ魔女。……ま、こんな生娘が救世主なわけねぇしな」
「誰が生娘ですか」
すれ違いざまに失礼なことをいってくる無神経さんです。
……私、そんなに幼く見えますか? たしかに童顔ではありますけども。
「泥棒よっ!」
不意に金切り声が背後から聞こえてきました。
さすが都市です、歩いているだけでイベントがほいほい発生します。
「物騒なこと言わないでよっ。用が済んだらすぐに返すって言ってるでしょ?」
ぜーはー息を切らすおばさまが指を差しているのは、人波を縫って軽快に駆ける茶髪の少女です。
街の人が必死の形相で捕まえようとしますが、茶髪の少女は軽やかな身のこなしで、ついには冒険者さんたちからも逃げおおせてしまいます。
盗んで逃げることに慣れているのでしょうか。見惚れてしまうほどに華麗な動きでした。
「ですが、悪事は見逃せませんよね」
私は静かに口ずさみました。
「光よ、捕えなさい」
まもなく冒険者の集団からも抜け出そうとしていた茶髪の少女は、突如出現した光の輪に拘束されて地面に落下します。
「なにこれっ!?」
「冒険者さまだ! 俺たちの冒険者が悪党を捕らえてくれたぞ!」
「いや私はなにもしていないが?」
「ありがとうございます冒険者さま! おかげで助かりました!」
おばさまが灼熱さんの手を取り、ぶんぶん振って感謝を告げています。
言い訳が思い浮かばなかったのか、灼熱さんは「冒険者さま万歳!」コールを甘んじて聞き入れていました。
私はとことこおばさまに近づいて訊ねます。
「その鞄は大切なものなのですか?」
「あらお嬢ちゃんは誰かしら?」
「断定魔女です」
「けっ、魔女に話すことなんてないわよ」
にこにこ顔を一転して、絵に描いたような塩対応で応じるおばさまでした。
私、そろそろ泣きますよ?
けどまぁ、泥棒さんが捕まっておばさまが笑顔になれたならいっか。
これにて一見落ちゃ……
「うわ~ん! 捕まりたくないよぉ~!」
「盗みを働いたんだから捕まるに決まってんだろ。これで何回目だ?」
「毎回返してるもん! 盗んでるけど返してるから実質盗んだことはないもん!」
「……じゃあ今後は盗まないって誓うか?」
「盗まなきゃいけない理由があるんだもん!」
「そこは改心するところだろうが……。モカモカの気持ちはわかるんだけどよ」
ギャン泣きする茶髪の少女に、まわりのおとながそろって呆れています。盗んでるけど毎回返してるってどういう状況ですか?
おとなの方々の様子を見るに、本気で茶髪の少女に罰を受けて欲しいと思っている方はいないように見えます。
茶髪の少女もえんえん泣きじゃくって反省しているようですし、もう充分、罰を与えることはできたでしょう。私は茶髪の少女にかけた魔法を解きました。
「ふぇ?」
やんちゃもほどほどにするんですよ。
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目の前に灼熱さんがいてぎょっとしました。
「プリオリ、なにかしたか?」
「し、しししてませんよ?」
「ほんとうだな?」
「ほ、ほほんとですよ?」
「……そうか」
灼熱さんが身を翻します。
さすが私、嘘をつく技術は昔から天下一品です(まわりからはど下手くそだと言われていましたが)。
冒険者さんたちに取り囲まれて歩く事しばし、街の奥に鎮座する城までやってきました。
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