150年のりんご採取で異世界最強の大魔導士になった私は、林檎の聖女と讃えられ可愛い弟子たちと平和なスローライフを満喫します!

風戸輝斗

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第三章 そんなこんなで、魔族の皆さんからも聖女と讃えられるようになりました。

第23話 ふたりめの弟子ができました。

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 翌朝。
 ……という名の、眠りに落ちてから4時間後。

 しょぼしょぼの瞳を擦りつつ、エリシュナさんの用意してくださった朝食に舌鼓を打っていると、ギルティアさんがなんの前触れもなく口を開きました。

「お母さま、私、プリオリ様の弟子になろうと思うの。差し当たって短くても5年ほどこの家を留守にしたいのだけれどいいわよね?」
「ん、そうか、そりゃいい判断だ。しっかりプリオリのいいところ学んでこいよ」
「ちょっと待てぃ!」

 私は慌てて立ち上がりました。

「らしくねぇな。急に大声あげてどうした?」
「そりゃ声も荒らげちゃいますよ! 娘が5年も親元を離れて暮らすって言っているんですよ? 5年ですよ!? ちょくちょく顔を出すとはいえ、日常からきっぱり娘がいなくなってしまうんですよ!? そんなあっさり承諾してしまっていいんですか!?」

 私が思い描いていたのは、エリシュナさんとギルティアさんが激しく言い争い、場を収めつつギルティアさんに親と過ごす尊さを説いて弟子の件は諦めてもらうというビジョンです。ほぼ確実にそうなると思っていました。

 それがどうでしょう。
 事態は真逆の方角に転がってしまっています。

「そりゃ寂しくはあるぜ? けどよ、ギルが自分でプリオリの弟子になりたいって頼んできたんだ。子どもの覚悟を親のエゴでパーにしちまうのは違うだろ?」
「うわ、めっちゃ大人な意見で反撃の手が浮かばない……」
「焦りが声になっているわよ、プリオリ様」

 正面にいたはずのギルティアさんがいつの間にか隣にやってきていました。え、いつ魔法使いました?

 ギルティアさんは私の腕にきゅっと抱きつき、

「お母さまから許可が出たから正式に私も弟子ね。モカモカも名前で呼んでいるのだから、これからは私のこともギルティアさんではなくギルティアと呼んで頂戴ね」
「……エリシュナさん、最終確認です。あなたの大切な娘さんを5年ほど私が預かってしまってほんとうにいいんですね? 全力は尽くしますけど、万一なにかあっても私を恨むのは無しですよ?」

 そいつは困るなって言え。そいつは困るなって言え……

「あははっ」

 高笑いしています。
 はい、私の願いは潰えたようですね。お疲れ様でした、解散解散。

「なぁにその件に関しては心配してねぇよ。我よりプリオリのほうが断然つえぇし、人格が優れてるし、5年後にギルがどうなるか今から楽しみだぜ」
「自分で言うのもなんだけれど、私、頑固だから根っこの部分はほとんど変わらないと思うわよ」
「んなこと言ってられんのも今のうちだぜ? 少なくとも我は、プリオリと関わってから人間の見え方ががらりと変わった。聖女様の名は伊達じゃねぇぜ?」
「そ、そうですかね?」

 褒められてデレデレしちゃいます。いやぁちやほやされるのはやっぱり堪らんですねぇ。

 ……ギルティアの件はいいのかって? はは、もう諦めていますので。

 不意に左頬にじっと視線が刺さっていることに気づきました。バゲットを持つモカモカが私をジト目で見つめていました。

「どうかしましたか?」
「……べつに」

 ふいっと視線を明後日にやり、不満げにバゲットにかじりつきます。

 1か月も同じ時間を過ごしていれば、その不貞腐れた態度がなにを示しているのかは言われずともわかりました。

「ごめんなさい。モカモカに説明することなくギルティアを弟子にしてしまって」
「いいよ。……それはいいんだけど、あの子の態度が気に食わない」
「あー……少しずつ仲良くしてきましょう。ね?」
「……努力はする」

 頷きはしないんですね。

 それから朝食が終わるまで、私は弟子とたくさんの会話をしました。比率は、ギルティアが10で、モカモカが0でした。
 ……これはマズいですよね。

 ◇◆◇◆◇

 街の観光をするため、外行きに着替えて部屋を出たときのことです。

 私より早く支度を終えていたモカモカとギルティアが、部屋の前で向かい合って話をしていました。
 私は柱の陰にそそっと隠れて会話に聞き耳を立てます。

「ふぅん。ギルティアはそんなに強いんだ?」
「えぇ、プリオリ様には瞬殺されてしまったけれど、あれが唯一の黒星よ。そういうモカモカはどうなの? そもそも誰かと戦った経験はあるのかしら?」
「ないよ。誰も傷つけず平穏に問題を解決するようにっていうのがお師匠様の教えだからね。だけど、あたしすごく強いんだよ。見てよこのバッジ!」
「ん、2級魔法使いバッジね。あなた2級魔法使いなの?」
「そうだよ。ふふん、すごいでしょ?」
「えぇこれは驚いたわ。全然大したことないじゃないの」
「はぁ!?」

 わ、私の可愛いモカモカがものすごく怒った顔してる……。弟子の新しい表情が見られてうれしい反面、複雑な気持ちです。

 ……もう少しだけふたりを見守るとしましょう。まだ喧嘩に発展すると決まったわけではないですし。

「プリオリ様は実力者だから戦わずして問題を解決することが可能だけれど、ザコモカ……失礼、モカモカがそれを真似るのは無理がないかしら? ……うん、間違いないわ。私の言っていることは間違っているかしら?」
「ぺらぺらぺらぺらと……そこまで言うなら勝負だ!」
「ん? ちょっと待って頂戴、確認だけれど、2級魔法使い程度のあなたがこの私に戦いをふっかけているの?」
「そうだよ! ルールは簡単、一般拘束魔法で相手を捕らえた方の勝ち! ここまで大口叩いているんだから一般拘束魔法くらい使えるよね?」
「もちろん使えるけれど……ほんとうにいいの? 見るも無残な結果になるわよ?」
「それはこっちの台詞だよ! 先手必勝! ――光よ、捕えろっ」

 拘束魔法の掛け合いなら怪我をすることもなさそうなので傍観を続けることにします。勝敗が決したら顔を出しましょう。
 ……まぁ一瞬で雌雄は決するでしょうけど。

「闇よ、捉えなさい」
「ふっ、杖も無しで魔法を唱えるなんてやっぱりずっと強がってただけかな? 仮に魔法が使えたとしても後出し詠唱であたしより早く魔法発現できるわけ……むふぅ!?」
「はい、私の勝ち。ごめんなさいね、私、杖無しの詠唱でも魔法を使える天才なのよ。それで勝者の報酬はなにかしら? まだルールしか聞いていなかったわよね?」
「むぐぐぐっ!」
「はい、そこまでです」

 手を叩いて、モカモカの口を縛る一般拘束魔法を解除します。モカモカはぷはっと息を吐き出しました。

「プリオリ様、ずっと柱の陰に隠れていたわよね? どうして顔を出さなかったのかしら?」
「バレてましたか……。私の仲裁無しでもふたりが仲良くなってくれたらいいなぁと期待してたんです。……モカモカ」
「……はい」
「怒らないのでそんなにしょんぼりしないでください。ひとつ、約束してください。今後は私の許可なくギルティアと魔法対決しないでください。これはギルティアも同じです。私に許可なくモカモカに魔法を使わないように」
「わかったわ」
「うん、聞き分けが良くてよろしい。それでは街の観光に出発しましょう」

 身を翻してすぐ、背後からボソボソと声が聞こえました。

「絶対いつかぎゃふんと言わせてやるっ……!」
「ふっ、やれるものならやってみなさい2級魔法使いさん」
「こら、喧嘩は厳禁ですよ」

 モカモカもギルティアも単体ならいい子なのですが、さては混ぜるな危険だったりするのでしょうか。

 どうか仲良くなってくれますように。

 当然私も最大限の努力はしますけど、実際問題、相性の関係でどうしようもないことってあるので、ここはひとつ神頼みです。お願い女神さまっ!
 
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