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 「接岸しました。船を降りられるとこの先は、リビルド王国になります。私はここで引き返しますが、皆さんのご無事をお祈りしています。またフェルカ王国に戻られた際には、お気軽にお声掛けください。どうか皆さんご無事で……」

 リビルド王国の領土に上陸した私達は、卸問屋さんに深い感謝を込めて御礼を言った。

 私は、隠蔽いんぺいの祈りを全員に掛け直す。最後尾の従業員には、足跡を消しながらついてくるように指示を出した。

 隣国になるため、アルフォンス公爵の息がかかった軍隊は、容易に手が出せないだろう。

 私達は湖から姿が見えないように、森の中に駐屯した。デニス先生の報告を待つためだ。

 湖には、船を調達したアルフォンス公爵の息がかかった軍隊が、船上から偵察しているようだ。こちら側には、上陸はしていない。軍隊が監視している間は、フェルカ王国側に戻る事は出来ない。

 デニス先生の帰りをまんじりとせず、待っていた。

 翌朝、馬に乗ったデニス先生と見慣れない男がこちらに近付いてくる。デニス先生も私達の姿が見えないようだ。

 「おーい、おーい!デニスです!戻ってきました!おーい!」

 調理係だったファボがデニス先生に触れると、隠蔽いんぺいの祈りに効果が消え、私達の姿が見えるようになったみたいだ。

 「なるほど!何かが居る気配は感じるのですが、そこだけ認識出来ないというか、その空間だけすっぽり見えなくなる感覚でした。フェルカ王国の軍隊もこんな感覚だったのでしょう。」

 デニス先生は呑気に祈りの分析をしている。

 「デニス先生お疲れ様でした。でどうでしたか?」

 早く結論が聞きたい私達は、息を呑み回答を待った。

 「結論は、大歓迎です。全員の身の安全と生活が保障されました。」

 その言葉に森中の、生物が驚くほどの歓声が上がった。

 「当面は、シルメン教団内の施設に全員滞在して頂く事になります。シルメン教団とリビルド王国の双方の保護、監視下に置かれる事になります。」

 「となると、もうあの忌々いまいましい公爵は手出し出来ないのね?」

 「そういう事になります。」

 一段と大きな歓声が上がった。

 「私達の勝利ね!」

 「正義が報われたわ!」

 私は、両親と抱き合って喜んだ。両親は貴族の地位や御屋敷、全てを捨てて逃げてきてくれたのである。

 「またやり直せばいいよ。命があれば、何度でもやり直せる!」

 安堵した私達は、魔物の森を出てリビルド王国に向かう事になった。
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