婚約破棄された令嬢は、失意の淵から聖女となり、いつか奴等を見返します！

３

『お客さん、そろそろナホリの街に着きますぜ』

馬を操る御者に声をかけられて目を覚ました。

ナホリは比較的大きな街であり、この周辺に住む若い子の《神技落としの儀》はナホリで執り行われている。冒険者ギルドもあり、中核都市といった位置付けであろう。

アリス姉さんの旦那様は、商人ギルドに所属している商人だ。商人ギルドならば、簡単な仕事がありつけるのではないかと期待を持っていた。

馬車がナホリの街に入り、乗客は次々に降りていった。私も乗車代を支払い、姉のアリスの屋敷を目指した。

すれ違う人々には笑顔が溢れている。いい街なんだろう。明るく活気のある街並みを歩くだけで元気が出てくる気がする。

しばらく歩いていると瀟洒な、神殿が目に留まった。

入り口の扉は開け放たれている。吸い込まれるように、中に入った私は、神殿の奥に誘われたように進んで行った。

全国の神殿では、女神様が祀られ本尊として女神像が置かれている。

信心深い方ではなかった私であったが、今回の件で藁にもすがりたい気持ちになっていた。

女神像の前で、跪き今までの出来事を整理するかのように、思い出す。

「女神様、なにとぞ私にも加護を授けて下さい」

私は心の芯から願っていた。

《人間とは悪い心の者が多いのです。勉強になりましたね？》

急に声が聞こえてきた。

私は、目を見開き、辺りを見渡した……が誰も居ない……

《あなたには、人を救うための加護を特別に授けましょう。この力で困っている人々を救うのですよ。いいですか？弱き心に、悪い心が宿るのです。強く生きなさい！》

目の前が見えなくなるほど明るくなった！あまりの明るさに目をつぶったが、再び目を開くと何も変わった様子はなかった。

今のはなんだったのかしら？

両手を広げて見るが、変わりはない。

頭の中に響いていた言葉を思い出そうとした。

人々を救うための加護を授けた！？

《神技落としの儀》に参加出来なかった私に、女神様は加護を授けてくれたのだろうか？

しかしなんのスキルを授けて貰ったのか分からない。通常は、儀式の後に、神官様による『○○のスキルを授けられた～～！！』と御達しがある。

この神殿には誰もおらず、御達しを教えてくれる神官様が居ない。

女神像の前に、再び跪き、願いを申してみるが、なんの変化もない。今のは、夢か幻か？私の依頼心から、現実逃避した夢を見ることになったのか？

誰も居ない神殿を後にした私は、狐につままれたような気持ちのまま、当初の予定通り姉の屋敷を探す事にした。