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一章
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晴天の空の下、大臣は息巻いていた。
モンスター達と共にワイワイと設計図を描いて、そして建造物の建築作業を再開する。
それの繰り返し。
「ねぇねぇ、執事。
大臣は何やってるの?」
勉強に飽きたのか、王が窓の外にいる大臣について執事に問う。
「一週間後の大臣の誕生祭の準備をしているんですよ。」
なんの抑揚もなく、平坦な口調で執事はそう言った。
「あぁ…」王はそう空返事をして、
「えぇえええええええ!!!!!!!!」
叫んだ。
「聞いてないですけど!!?
てか、誕生祭って何!!?ボクも執事も誕生日会だったのに!!?」
若草色の髪をぐしゃぐしゃにし、王はそう訴えた。
執事はすかさずその手を止め、再び櫛で王の髪を梳いた。
「大臣は誕生祭の準備を自分でするんです。我々は誕生日会程度の準備しかしなくていいのでとても楽です。」
抑揚のない執事の声が少し弾んだように聞こえる。
王は窓の外でモンスター達と楽しそうにしている大臣をみた。
「ねぇ…執事ぃ…、大臣の誕生日プレゼントって…。」
「考えるのはいいですが、お勉強が終わってからです。」
無慈悲な執事の一言に王は「そんなぁ…」と、机に突っ伏した。
外では、相も変わらず大臣とモンスターたちが建築を続けている。
*****
午後のダンスのレッスンのせいか、浴槽で爆睡していた王。
そんな王を浴槽から救出し、ベッドへ運ぶ。
この王国を背負っている若草色の髪の少女。
執事が忠誠を誓った二人目の王。
まだ18歳の彼女がこの国を切り盛りしているなんて誰も思わないだろう。
勉強やマナー、ダンスの練習。
これらは彼女の国政の合間合間に行っている。
それは彼女が貴族出身ではなく、平民出身が故だ。
ただでさえ、モンスターの国。
国政も大変だというのに、今度は人間の相手をするための勉強、勉強、勉強。
執事は王の顔に掛かる髪を優しく梳かす。
王国のため、そして王の為に私は…。
執事は王の寝室の扉をゆっくりと閉める。
さぁ、今日も豚を狩らなければ。
そう廊下を進もうと振り向くと、そこには大臣がいた。
「びっくりした…、どうした?」
勿論声色は一定だが。
「お前、今日もまた行くのか?」
金色の寝巻を纏った大臣が神妙な顔をして問うた。
「当たり前だ。これが俺の仕事だからな。」
王の目の前の執事とはがらりと雰囲気が変わった。
声は相手を威嚇するように低くなり、口調もいささか乱暴だ。
そんな彼に怯まず、大臣は口を開く。
「お前も、俺も、もうそんなことしなくていいんだよ!みるくがいれば、この国は…!」
「…やめろ。」
大臣の言葉に、執事が静止をかけた。
「ヤンスー…。
王は…みるくはまだ子供だ…。そんな彼女をあんな貴族の中に放り込む訳にはいかない。」
執事は、今もなお納得のいかない顔をする大臣の肩へと手を置いた。
「大丈夫だ。俺がなんとかする。」
そう言って執事は大臣の横を通りすぎる。
「黒霧…。」
大臣の声が大理石の廊下に空しく響いた。
モンスター達と共にワイワイと設計図を描いて、そして建造物の建築作業を再開する。
それの繰り返し。
「ねぇねぇ、執事。
大臣は何やってるの?」
勉強に飽きたのか、王が窓の外にいる大臣について執事に問う。
「一週間後の大臣の誕生祭の準備をしているんですよ。」
なんの抑揚もなく、平坦な口調で執事はそう言った。
「あぁ…」王はそう空返事をして、
「えぇえええええええ!!!!!!!!」
叫んだ。
「聞いてないですけど!!?
てか、誕生祭って何!!?ボクも執事も誕生日会だったのに!!?」
若草色の髪をぐしゃぐしゃにし、王はそう訴えた。
執事はすかさずその手を止め、再び櫛で王の髪を梳いた。
「大臣は誕生祭の準備を自分でするんです。我々は誕生日会程度の準備しかしなくていいのでとても楽です。」
抑揚のない執事の声が少し弾んだように聞こえる。
王は窓の外でモンスター達と楽しそうにしている大臣をみた。
「ねぇ…執事ぃ…、大臣の誕生日プレゼントって…。」
「考えるのはいいですが、お勉強が終わってからです。」
無慈悲な執事の一言に王は「そんなぁ…」と、机に突っ伏した。
外では、相も変わらず大臣とモンスターたちが建築を続けている。
*****
午後のダンスのレッスンのせいか、浴槽で爆睡していた王。
そんな王を浴槽から救出し、ベッドへ運ぶ。
この王国を背負っている若草色の髪の少女。
執事が忠誠を誓った二人目の王。
まだ18歳の彼女がこの国を切り盛りしているなんて誰も思わないだろう。
勉強やマナー、ダンスの練習。
これらは彼女の国政の合間合間に行っている。
それは彼女が貴族出身ではなく、平民出身が故だ。
ただでさえ、モンスターの国。
国政も大変だというのに、今度は人間の相手をするための勉強、勉強、勉強。
執事は王の顔に掛かる髪を優しく梳かす。
王国のため、そして王の為に私は…。
執事は王の寝室の扉をゆっくりと閉める。
さぁ、今日も豚を狩らなければ。
そう廊下を進もうと振り向くと、そこには大臣がいた。
「びっくりした…、どうした?」
勿論声色は一定だが。
「お前、今日もまた行くのか?」
金色の寝巻を纏った大臣が神妙な顔をして問うた。
「当たり前だ。これが俺の仕事だからな。」
王の目の前の執事とはがらりと雰囲気が変わった。
声は相手を威嚇するように低くなり、口調もいささか乱暴だ。
そんな彼に怯まず、大臣は口を開く。
「お前も、俺も、もうそんなことしなくていいんだよ!みるくがいれば、この国は…!」
「…やめろ。」
大臣の言葉に、執事が静止をかけた。
「ヤンスー…。
王は…みるくはまだ子供だ…。そんな彼女をあんな貴族の中に放り込む訳にはいかない。」
執事は、今もなお納得のいかない顔をする大臣の肩へと手を置いた。
「大丈夫だ。俺がなんとかする。」
そう言って執事は大臣の横を通りすぎる。
「黒霧…。」
大臣の声が大理石の廊下に空しく響いた。
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