学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太

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前編

教室に二人きり

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「実はね……城之内君のこと、1年の時から知ってたんだ」

「え? そうなのか?」

「うん。もちろん雄君の友達っていうのもあったんだけど……城之内君のご実家って、隣県の水巌寺でしょう?」

「ああ、そうだ。知ってるのか?」

「知ってるも何も……うちのお寺も同じ浄土真宗本願寺派だし、多分全国でも水巌寺を知らないお寺は無いと思うよ」

「ああ……そうなんだな」

 俺の実家の東横院水巌寺は以前は閑古鳥が泣くような寂れた寺だったが、今では若い参拝客が大勢来てくれるようになった。それはもちろん俺の兄貴の功績によるものなのだが、全国のお寺から「成功事例」として見学に来る寺院関係者が引きも切らないと、兄貴から聞いたことがある。

「それでね、ちょっと恥ずかしい話なんだけど……うちのお寺、もともと参拝客も多くなくてね。しかも最近では檀家さんも少なくなっちゃって、お寺の運営が大変らしいの」

『ほら来たわよ、ナオ! だからやっぱり腎臓を売ったんだよ。さあ、今度はナオに何を売るつもりなの? 壺? 鍋? 数珠のセット?』

「まあこれから少子化が進むし、檀家が少なくなるのはどこの寺も同じだよな」

 俺はりんのたわごとを無視する。

「そうなの。それで雄君からね、城之内君のご実家が水巌寺だってことを聞いて……もう私びっくりしちゃって」

 花宮がその綺麗な黒髪を少しかきあげた。甘い匂いがフワッと舞い上がった気がした。

「それでたまたまお父さんにその事を話したら『そうか! 是非その城之内君と友だちになって、雄介君と一緒に連れて来なさい』って言うのよ。でも私、そんなの利用するみたいで絶対にイヤって言ったの」

「そうだったんだな。別にそんなこと気にしなくたって、雄介経由で言ってくれればよかったのに」

 俺だって花宮とお近づきになれるわけだから、WinWinだ。

「さすがにそれは言えないでしょ? でも……あの時、助けてくれたじゃない? 私あの時、本当に嬉しくて」

「そんなに大したことしてないだろ? ただプリントを拾って、一緒に教室まで持っていっただけだぞ」

「そうなんだけどね……私、そもそも男の子からあんまり優しくされたこととかなくて。しかも城之内君だったから『うわぁ』ってなっちゃって」

 花宮はそう言うと、頬を少し紅潮させて下を向いてしまった。

 え、なにこれ? いい感じじゃね? 意外な展開に、りんも静かになった。

「いやいや、花宮に優しくしたいっていう男どもは、山のようにいると思うぞ。別に俺じゃなくったって」

「うーん……私ね、学校がお休みの日に巫女の装束を着てお寺の販売所でバイトしてるんだけど、1年の時に写真を取られてネットで拡散されたことがあったの」

「そんなことがあったのか?」

「うん、それで……ちょっとおかしな男の人にストーカーまがいのことをされたことがあってね。結局警察に相談して今のところはなんとかなっているんだけど……それ以来男の人に近づくのが苦手になっちゃって」

 そうだったのか……だから他の男子生徒と話しているところを、あまり見なかったんだな。

「大変だったんだな。俺でよかったら、いつでも相談に乗るから。あ、でも女の友達の方が相談しやすいよな」

「……私、正直女の子の友達もあんまりいないのね」

「そうなのか?」

「うん。ストーカーの一件以来、門限がすっごく厳しくなっちゃったの。それでなかなか皆と遊びに行く時間もなくなっちゃったし。それと……私のことあんまりよく思ってない人も、少数派だけどいるみたいで……」

「ああ……まあ嫉妬だよな」

 それは俺も聞いたことがあった。なにしろ花宮は栄花学園のアイドルだ。どうしたって同性から嫉妬を買うこともある。自分の好きな男子が花宮のことを好きだったりとか……そんなケースだ。

 だがそんなものは少数派だし、そもそも花宮の預かり知るところではない。

「でも……俺も一応男なんだけどな」

「城之内君は変なことしないでしょ? 雄君の友達だし……信用できるし」

『あーそれはどうかな? ナオはきっと琴ちゃんのエロい巫女装束姿を想像しながら、夜な夜なほとばしる性欲に身を任せて下半身に手を』

「ゴホッ」

『ひゃいっ』

 俺は霊体にだけ聞こえる音域で、威嚇音を立てる。花宮には単なる咳払いにしか聞こえないと思うが、りんは驚いている。こいつ……生前どんだけエロ小説読んでたんだ?

「花宮、俺にできることがあったら言ってくれよ? ただ寺の運営とかに関しては、全部俺の兄貴がやってるんだよ」

「うん、知ってる。城之内君のお兄さん、テレビ番組で見たことあるよ」

「そうだったんだな」

 兄貴がテレビのバラエティ番組に出演したっていう話は、妹から連絡があった。俺も見たがうちの寺が映画の舞台に使われたことや、併設のカフェのスイーツの紹介をしていた。まさか花宮まで見ていたとは……それにしてもこの業界では、うちの寺は思った以上に有名みたいだな。

「訊きたいことがあれば俺から兄貴に訊くことができるから、その辺は遠慮なく言ってほしいし、花宮のお父さんにもそう伝えてもらって構わないから」

「本当? ありがとう。そう言ってくれると嬉しいな」

 花宮はそう言うと、ホッとした表情で柔らかく笑った。ああ……また周囲の空気が浄化されていく。

 花宮の二重で少し垂れ目気味の優しそうな目元、整った鼻筋と口元、白くて綺麗な肌、そして細身なのに主張の強い胸元……俺はそんな栄花の巫女様を、少しの間見とれてしまっていた。

「? どうしたの?」

「えっ? いや、なんでもない」

 キョトンと首をかしげる花宮の言葉に、俺は我に帰る。芸能人並みの美少女と、俺は教室の中で二人きり。その事実に、改めて緊張してしまった。
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