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前編

初めての勉強会

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 俺たちの栄花学園高校は、年間を通じて前期・後期の2期制だ。前期の中間テストは6月。俺はあまり勉強が得意な方ではないので、授業についていくだけでも大変だ。

 中間テストを前に俺は少し焦っていた。英語も数学も、1年の時と比べて遥かに難しくなっている。

「さてと……勉強しないとマズいよな」

 夕食を終えてそんなことを考えていたところで、俺のスマホにメッセージが。

 花宮:こんばんは。テスト勉強ヤバイよ。雄君、城之内君、明日3人で勉強しない?

 花宮からだ。俺と雄介と3人のグループLimeだった。

 雄介:オレをダシに使うな。ナオと二人で仲良く勉強したらどうだ?

 花宮:なんでそういう意地悪言うかな。雄君、英語と数学教えてよ!

 俺が返信する前に、既にこんなやりとりがされていた。確かに……俺だって花宮と二人はちょっと緊張し過ぎてツライぞ。

 それに雄介は定期試験で常に学年トップ20にはランクインしている成績優秀者だ。雄介に教えてもらえるんだったら、こんなにありがたいことはない。

 城之内:雄介頼む。俺も数学と英語がヤバい。教えてくれ!

 俺からもそう書き込んだ。結局雄介は渋々だったが、3人での勉強会に参加してくれることになった。

『へぇー3人で勉強会かぁ。でも雄介が成績優秀っていうのは意外だね』

「そうなんだよ。イケメンで成績優秀で家が金持ちっていう3点セットはずるいよな」

『まあナオの霊能者っていうのも、大概チートだと思うけどね』

「霊能者なんてのは対外的には秘密にしなきゃいけないんだ。だから得することなんてあまりないぞ。まあ俺のオヤジぐらいのレベルになるとまた話は別だが……まったく不公平な世の中だよ」

 俺は少し愚痴りがちになったが、それでも花宮と一緒に勉強会というイベントに心を踊らせていた。


               ◆◆◆


 そして翌日。授業が終わって俺とりん、雄介と花宮の3人+1霊は、そのまま教室に残ってささやかな勉強会を開くことにした。

 雄介から教えてもらったりして騒がしくなるので、図書館は使えない。ファミレスでも行こうかという話にもなったが、結局教室に残ることにした。

 机を寄せ合って勉強を始める。俺と花宮が向かい合わせに座って、雄介がその横に座った。花宮は俺にちょっと目を向けて一瞬ニコッと笑ったあと、恥ずかしそうに下を向いてしまった。か、可愛い……俺は勉強に集中できるか心配になった。

 俺たちは早速勉強に取り掛かる。最初に俺と花宮が苦手なところを雄介に質問する形となった。面白いことに、俺と花宮は英語にしても数学にしても苦手なところがかなり共通していた。

 雄介はそれらに対して一つ一つ説明してくれた。最初に教科書に沿って説明して、練習問題を解く。そこで間違いそうな箇所について、解説してくれる。これだけで俺も花宮も十分理解することができた。

 雄介の教え方はとても的確だった。俺と花宮が「何が分かっていないか」をすぐに理解して、それに対してのポイント・練習問題・解説をしてくれる。

 お陰で短時間でもかなり勉強になった。雄介は教え方まで上手いなんて……やっぱり世の中は不公平だ。

「じゃあ次の問題は」と雄介が言った瞬間、机の上の雄介のスマホがブルっと震える。雄介は素早くスマホを取り上げるが、俺のすぐ横に置かれていたスマホの黒いスクリーンに一瞬浮かんだ通知が見えてしまった。「春奈」と表示されていた。

 雄介はスマホを操作し少し考えた素振りを見せた後、「悪い、帰るわ。野暮用できた」と言って片付け始めた。

 「は?」「ちょ、ちょっと」と焦る俺と花宮を後目に雄介は立ち上がると、「ホント悪い。あとは二人で仲良くやってくれ」と言い残して、さっさと教室を出て行ってしまった。

 広い教室に残されたのは、俺と花宮……と霊が1体。

『ちょっとナオ、いい感じじゃない? 教室の中に残った二人。夕日に包まれて高まるムードの中、ナオは琴ちゃんをそっと抱きしめた。溢れる性欲を押さえることができないナオは、その手を琴ちゃんの制服のスカートの中へと導く。今日の琴ちゃんの下着はピンクのレース。ナオはそのサイドの紐に手をかけると』

「雄介のヤツ、いきなり帰っちまったな」

 俺はりんの陳腐な官能小説をブッた切る。こいつマジでふざけ過ぎだ。

「う、うん。あれ、多分女の人からの連絡じゃないかな」

「スマホ画面、チラッと見えたけど……多分女の名前だった」

「あーやっぱり……テスト前なのに、そんな事してていいのかな。雄君、余裕あり過ぎだよね」

「確かにな」

 俺と花宮は二人顔を見合わせて笑った。屈託のない花宮の笑顔に、俺は幸せな気持ちになる。

「俺たちだけじゃ、多分教えられないよな?」

「うーん、そうかも。じゃあ残り時間、自習にしよっか?」

「ああ、そうだな。そうしよう」

 このまま帰ってしまうのかなと思っていた俺は、花宮の申し出にほっと胸を撫で下ろす。できればもう少し花宮と一緒にいたい。だがそれと同時に……間がもたなくて緊張する。
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