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前編
「いくらでも利用してくれ」
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翌朝俺はいつもより早く家を出て、いつもより2本早い電車に乗った。隣でりんが『よく早く起きられたわね』と感心している。
教室にはまだ来ている生徒はまばらだったが……花宮は自分の席に座り本を読んでいた。いつも花宮は学校へ早い時間に来ることは、俺も知っていた。
花宮は俺の姿をみて少し驚いた表情を見せた。そして……少しバツの悪そうな顔をした。
「城之内君、おはよう。それと……昨日はゴメンね。私、なんか変なこと言っちゃって……わ、忘れてくれていいから」
「花宮。花宮のお父さんに、伝えてくれないか?」
俺は花宮の前の席に座り、後ろを向く形で花宮の顔を正面から見据える。
「多分俺から話をするより、直接水巌寺に行って兄貴から話を聞いたほうが参考になることが多いと思う」
花宮は目を見開いた。
「それにうちの寺を実際見てもらったほうが、いろいろなアイデアをその目で見て確認できて参考になるはずだ。俺が兄貴にアポを取るから、都合のいい時にいつでも言ってほしい。一緒に案内してもらうようにアレンジするから」
「でも、迷惑なんじゃ……」
「迷惑な事なんて何もないぞ。実際参拝客が減っているお寺は全国にごまんとあるし、明らかにお寺関係者と思われる人がスパイのようにこっそり見に来ることも多いらしいんだ。兄貴は堂々と言ってくれればいいのに、っていつも言ってたよ。だから遠慮することなんて、何もないんだ」
なにか参考になることがあれば、是非とも完永寺にも取り入れてもらえればいい。
「それから……俺の名前を利用することで花宮が楽になるんだったら、いくらでも利用してくれ」
「城之内君……」
「俺だって花宮と仲良くなれれば嬉しいし……ひょっとしたら、門限の時間もゆるくなるかもしれないだろ? そうしたら今度は少し遠いところでも遊びに行けるんじゃないかな……あ、そのときは雄介も一緒だな」
門限が厳しくて遊びに行けないのは、花宮だって辛いはずだ。「二人で遊びに行こう」と言えないところは俺のヘタレだが。
「城之内君……ありがとう。やっぱり城之内君は優しいなぁ……」
花宮の目に薄く膜が張る。
「私ね、昨日あんなこと言って……すっごく後悔したの。自分勝手だなって。城之内君に嫌われたらどうしようって」
花宮は鼻声でそう言った。
「俺が花宮を嫌う理由なんて何もないだろ? それより花宮のお父さんをなんとかしないとな」
「うん、ありがと……私からお父さんに今度話してみるね」
顔を上げた花宮はまだ涙目だったが、ちょっと無理目な作り笑いを俺に向けてそう言った。
「テスト勉強、進んでるか?」
俺はあえて話題転換をはかる。
「え? ううん、昨夜はずっと考え事してたから……」
「そうか。俺は昨日カレーを作ったら食べすぎて、腹の具合が悪い」
「えー、カレー作ったんだ。市販のルーのやつ?」
「当然だろ? 誰がスパイスの調合からやるんだよ」
「そりゃそうだけど」
花宮はようやく笑顔を見せてくれた。泣き顔より笑顔のほうがずっと可愛いよな……俺はそんなことを思いながら花宮の笑顔を見つめていた。隣でりんもニコニコ笑いながら、俺たち二人のことを眺めていた。
◆◆◆
「あーもう、めっちゃ疲れたぞ」
『お疲れお疲れ、って言っても普段からもっと勉強すればいいのに。一夜漬けで全部覚えようとするからだよ』
「まあそうなんだけどな」
俺は横から正論をぶつけてくるりんにそう答えながら、近所のスーパーへの道を歩いて行く。
中間テストが今日でようやく終わった。もちろんテスト期間中、りんは部屋でお留守番だった。連れていったら、やり方によってはカンニングとかできてしまう。さすがにそれは避けないといけない。
眠気が限界に達していた俺は、家に帰ってベッドで横になり霊壁を張って昼寝をした。起きたときには、かなりいい時間になっていた。
疲れたせいもあってか、それほど腹は減っていない。ただこのままだと遅い時間に空腹になるだろうし、なにより冷蔵庫の中が空っぽだった。なのでとりあえずスーパーへ買い出しに出かけることにした。
「うーん、特になにか食べたいものも思いつかないなぁ。仕方ない、カップ麺でも買っていくか」
『また? 昨日の夜もカップ麺だったじゃない』
「そうだけど……もう何か作るのも面倒くさいんだよ」
『まあわかるけどさ……あ、それじゃあさ。カップ麺だけど、ちょっと変わったのを作ってみようよ』
「変わった麺?」
『そうそう。それだったら……これ』
スーパーの店内でりんがそう言って指さしたのはカップ焼きそばだった。大きな丸い円盤型のヤツだ。
「カップ焼きそばか。いいな、俺はあんまり食べないけど」
『ナオはスープが好きだもんね。ああでも、これは一応スープ付きって書いてあるよ。それから……卵は冷蔵庫にまだ入っていたし、あとはカット野菜で簡単なサラダを作ればいいか。とりあえずそれだけでいいよ』
「わかった」
俺はカップ焼きそば2個とポテトチップスを1つかごに入れて、レジに向かった。
教室にはまだ来ている生徒はまばらだったが……花宮は自分の席に座り本を読んでいた。いつも花宮は学校へ早い時間に来ることは、俺も知っていた。
花宮は俺の姿をみて少し驚いた表情を見せた。そして……少しバツの悪そうな顔をした。
「城之内君、おはよう。それと……昨日はゴメンね。私、なんか変なこと言っちゃって……わ、忘れてくれていいから」
「花宮。花宮のお父さんに、伝えてくれないか?」
俺は花宮の前の席に座り、後ろを向く形で花宮の顔を正面から見据える。
「多分俺から話をするより、直接水巌寺に行って兄貴から話を聞いたほうが参考になることが多いと思う」
花宮は目を見開いた。
「それにうちの寺を実際見てもらったほうが、いろいろなアイデアをその目で見て確認できて参考になるはずだ。俺が兄貴にアポを取るから、都合のいい時にいつでも言ってほしい。一緒に案内してもらうようにアレンジするから」
「でも、迷惑なんじゃ……」
「迷惑な事なんて何もないぞ。実際参拝客が減っているお寺は全国にごまんとあるし、明らかにお寺関係者と思われる人がスパイのようにこっそり見に来ることも多いらしいんだ。兄貴は堂々と言ってくれればいいのに、っていつも言ってたよ。だから遠慮することなんて、何もないんだ」
なにか参考になることがあれば、是非とも完永寺にも取り入れてもらえればいい。
「それから……俺の名前を利用することで花宮が楽になるんだったら、いくらでも利用してくれ」
「城之内君……」
「俺だって花宮と仲良くなれれば嬉しいし……ひょっとしたら、門限の時間もゆるくなるかもしれないだろ? そうしたら今度は少し遠いところでも遊びに行けるんじゃないかな……あ、そのときは雄介も一緒だな」
門限が厳しくて遊びに行けないのは、花宮だって辛いはずだ。「二人で遊びに行こう」と言えないところは俺のヘタレだが。
「城之内君……ありがとう。やっぱり城之内君は優しいなぁ……」
花宮の目に薄く膜が張る。
「私ね、昨日あんなこと言って……すっごく後悔したの。自分勝手だなって。城之内君に嫌われたらどうしようって」
花宮は鼻声でそう言った。
「俺が花宮を嫌う理由なんて何もないだろ? それより花宮のお父さんをなんとかしないとな」
「うん、ありがと……私からお父さんに今度話してみるね」
顔を上げた花宮はまだ涙目だったが、ちょっと無理目な作り笑いを俺に向けてそう言った。
「テスト勉強、進んでるか?」
俺はあえて話題転換をはかる。
「え? ううん、昨夜はずっと考え事してたから……」
「そうか。俺は昨日カレーを作ったら食べすぎて、腹の具合が悪い」
「えー、カレー作ったんだ。市販のルーのやつ?」
「当然だろ? 誰がスパイスの調合からやるんだよ」
「そりゃそうだけど」
花宮はようやく笑顔を見せてくれた。泣き顔より笑顔のほうがずっと可愛いよな……俺はそんなことを思いながら花宮の笑顔を見つめていた。隣でりんもニコニコ笑いながら、俺たち二人のことを眺めていた。
◆◆◆
「あーもう、めっちゃ疲れたぞ」
『お疲れお疲れ、って言っても普段からもっと勉強すればいいのに。一夜漬けで全部覚えようとするからだよ』
「まあそうなんだけどな」
俺は横から正論をぶつけてくるりんにそう答えながら、近所のスーパーへの道を歩いて行く。
中間テストが今日でようやく終わった。もちろんテスト期間中、りんは部屋でお留守番だった。連れていったら、やり方によってはカンニングとかできてしまう。さすがにそれは避けないといけない。
眠気が限界に達していた俺は、家に帰ってベッドで横になり霊壁を張って昼寝をした。起きたときには、かなりいい時間になっていた。
疲れたせいもあってか、それほど腹は減っていない。ただこのままだと遅い時間に空腹になるだろうし、なにより冷蔵庫の中が空っぽだった。なのでとりあえずスーパーへ買い出しに出かけることにした。
「うーん、特になにか食べたいものも思いつかないなぁ。仕方ない、カップ麺でも買っていくか」
『また? 昨日の夜もカップ麺だったじゃない』
「そうだけど……もう何か作るのも面倒くさいんだよ」
『まあわかるけどさ……あ、それじゃあさ。カップ麺だけど、ちょっと変わったのを作ってみようよ』
「変わった麺?」
『そうそう。それだったら……これ』
スーパーの店内でりんがそう言って指さしたのはカップ焼きそばだった。大きな丸い円盤型のヤツだ。
「カップ焼きそばか。いいな、俺はあんまり食べないけど」
『ナオはスープが好きだもんね。ああでも、これは一応スープ付きって書いてあるよ。それから……卵は冷蔵庫にまだ入っていたし、あとはカット野菜で簡単なサラダを作ればいいか。とりあえずそれだけでいいよ』
「わかった」
俺はカップ焼きそば2個とポテトチップスを1つかごに入れて、レジに向かった。
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