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1、出逢い
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魔界は強さを重んじる。
主に魔力の強さだ。同時に複数の魔法を行使出来るものほどその強さを認められ、その威力が強いほど、従う事を強要出来る。
巨大な魔力を行使する、淡黄色の髪色の大悪魔である証の羊の様なツノの生えた長身の黒衣の悪魔が長い髪を靡かせて魔界の荒野で佇んでいる。彼、クロエには現在空位である、『傲慢』の地位に就いて欲しいと現魔王直々に打診が来ているが、真っ平ごめんだった。
クロエは先ずそもそも魔界も魔界のルールも馬鹿げていて嫌いだった。
そんな自分を魔界の者達は変わり者だと言う。
自分が何を欲しているのか答えの出ないまま、この嫌いな魔界を彷徨い歩いている。
強さにどんな価値があるんだ。
例えば強さは自分の身を守る。
でもそれ以上でも以下でもない。
自分は確かに必要以上に強くあるが、その力の庇護を求め、媚び諂う奴らの顔を見ているのは不愉快だった。
全てに苛立たしい。
憂さ晴らしに弱い者を虐げ悦んでいる馬鹿を血祭りに上げる。
毎度毎度、死に際には命乞いをし、自分の物の様に弱い者を差し出す。
なお一層不快感が支配して、結局いつも息の根を止めてしまう。
助けられた弱者もそうだ。
恐れをなし、逃げて行く者は深追いしない。そんな奴らはまだマシだ。
所有者が変わっただけだと言わんばかりに諦観の瞳でこちらを見つめてくる奴らも不快感でいっぱいになり、殺したくなる。
そして、更に苛立たしいのが、媚び諂ってくる糞どもだ。
これらはつい手が先に出てしまい、殺してしまう。
クロエも所詮は悪魔なので、自分の欲望や心情に正直に従って生殺与奪の権利を振り翳してしまう。
そんな矛盾にクロエ自身も己を嘲り笑っていた。
今日も晴れもしない憂さを晴らしに、弱者を虐げている馬鹿を狩る。
女が1人、殴られながら犯されている。
魔界ではよく見る光景で特に珍しくともなんともない。
男を引き剥がし、頭を吹き飛ばしてやる。
不愉快極まりない物を一つ掻き消した爽快感が胸に少しだけ広がった。
ついでに女に声をかける。
「大丈夫か?」
女は殴られた顔が痛々しく腫れて、右目は上手く開けられないようだった。
腰まで届く長い淡萌葱の髪の毛をゆらりとゆらしなが起き上がった。
首にかかった鎖がジャラリと音を立てる。
茜色の左眼からポロポロと涙を流しながら、女はクロエに言った。
「…どうして、ころしちゃったの…?」
クロエの中に疑問が生じた。
こんな反応は初めてだ。
この2人は同意の元の恋仲で、こういうプレイがお好みだったのだろうか?
だったらば、これは大変な余計なお世話だ。
責任を取らねばならないだろうが、クロエにはそういった趣味はない。
「…恋人だったのか?」
女に問いかける。
女は首を横に振る。
「リルはね、どれいなんだって」
よかった。とりあえず責任は取らなくて済みそうだ。と内心ホッと胸を撫で下ろす。
「あのね、ドミニクさまはリルのごしゅじんさまだったの」
「…だったら、死んでせいせいしただろう?」
「……しんじゃうって、いたいでしょ?リルはいたいのヤなの…」
「お前が痛い訳じゃないだろ?」
「…しんじゃうって、もうあえなくなっちゃうことでしょ?いたくて、あえないのは、とってもかなしいの…」
これは初めて聞く感想だった。
クロエの中で大きな衝撃になった。
自分を恐れる事もなく、じっと見つめてポロポロと涙を流し続けるリルという女に、
心を鷲掴みにされてしまった。
「リルって言ったな…俺はお前と一緒にいたい。一緒にいてもいいか?」
「…いたいこと、しない?」
「しない」
「いたくないなら、いいよ」
リルはにっこりと笑った。
リルは酷く殴られていた様だったので、先ずは治癒してやった。
腫れのひいたリルは大きく潤む茜色の瞳に長い耳が特徴のセイレーンの一種、『ヒーメロペー』と呼ばれる種族だと一目で分かった。
愛らしい顔もその特徴の一つで、その歌声と容姿で森に彷徨う獲物を惑わし、性交で生気を奪う。
リルも例に漏れず愛らしい容姿をしている。
そしてその顔に似合わず、大人びた妖艶な肉体を持っていた。
「俺の名はクロエ。俺はリルに惚れたから、何処までもリルについていく」
「…クロエは、ごしゅじんさまじゃない?」
キョトンとしたリルがクロエに訊ねる。
クロエは優しく微笑んでリルの手を取った。
「ご主人様はリルだよ」
「…リル、ごしゅじんさま、よくわかんないの…」
リルは戸惑い、クロエに小首を傾げながら言う。
「自由でいいよ。したい事を言って。全部叶えてあげるから」
「ホント?」
クロエは手に取ったリルの手の甲にキスを落とす。
「誓うよ。リルの望むものは何でも与えてあげる。生涯離れない。守るよ」
これが大悪魔クロエと、無能の悪魔リルとの出逢いだった。
主に魔力の強さだ。同時に複数の魔法を行使出来るものほどその強さを認められ、その威力が強いほど、従う事を強要出来る。
巨大な魔力を行使する、淡黄色の髪色の大悪魔である証の羊の様なツノの生えた長身の黒衣の悪魔が長い髪を靡かせて魔界の荒野で佇んでいる。彼、クロエには現在空位である、『傲慢』の地位に就いて欲しいと現魔王直々に打診が来ているが、真っ平ごめんだった。
クロエは先ずそもそも魔界も魔界のルールも馬鹿げていて嫌いだった。
そんな自分を魔界の者達は変わり者だと言う。
自分が何を欲しているのか答えの出ないまま、この嫌いな魔界を彷徨い歩いている。
強さにどんな価値があるんだ。
例えば強さは自分の身を守る。
でもそれ以上でも以下でもない。
自分は確かに必要以上に強くあるが、その力の庇護を求め、媚び諂う奴らの顔を見ているのは不愉快だった。
全てに苛立たしい。
憂さ晴らしに弱い者を虐げ悦んでいる馬鹿を血祭りに上げる。
毎度毎度、死に際には命乞いをし、自分の物の様に弱い者を差し出す。
なお一層不快感が支配して、結局いつも息の根を止めてしまう。
助けられた弱者もそうだ。
恐れをなし、逃げて行く者は深追いしない。そんな奴らはまだマシだ。
所有者が変わっただけだと言わんばかりに諦観の瞳でこちらを見つめてくる奴らも不快感でいっぱいになり、殺したくなる。
そして、更に苛立たしいのが、媚び諂ってくる糞どもだ。
これらはつい手が先に出てしまい、殺してしまう。
クロエも所詮は悪魔なので、自分の欲望や心情に正直に従って生殺与奪の権利を振り翳してしまう。
そんな矛盾にクロエ自身も己を嘲り笑っていた。
今日も晴れもしない憂さを晴らしに、弱者を虐げている馬鹿を狩る。
女が1人、殴られながら犯されている。
魔界ではよく見る光景で特に珍しくともなんともない。
男を引き剥がし、頭を吹き飛ばしてやる。
不愉快極まりない物を一つ掻き消した爽快感が胸に少しだけ広がった。
ついでに女に声をかける。
「大丈夫か?」
女は殴られた顔が痛々しく腫れて、右目は上手く開けられないようだった。
腰まで届く長い淡萌葱の髪の毛をゆらりとゆらしなが起き上がった。
首にかかった鎖がジャラリと音を立てる。
茜色の左眼からポロポロと涙を流しながら、女はクロエに言った。
「…どうして、ころしちゃったの…?」
クロエの中に疑問が生じた。
こんな反応は初めてだ。
この2人は同意の元の恋仲で、こういうプレイがお好みだったのだろうか?
だったらば、これは大変な余計なお世話だ。
責任を取らねばならないだろうが、クロエにはそういった趣味はない。
「…恋人だったのか?」
女に問いかける。
女は首を横に振る。
「リルはね、どれいなんだって」
よかった。とりあえず責任は取らなくて済みそうだ。と内心ホッと胸を撫で下ろす。
「あのね、ドミニクさまはリルのごしゅじんさまだったの」
「…だったら、死んでせいせいしただろう?」
「……しんじゃうって、いたいでしょ?リルはいたいのヤなの…」
「お前が痛い訳じゃないだろ?」
「…しんじゃうって、もうあえなくなっちゃうことでしょ?いたくて、あえないのは、とってもかなしいの…」
これは初めて聞く感想だった。
クロエの中で大きな衝撃になった。
自分を恐れる事もなく、じっと見つめてポロポロと涙を流し続けるリルという女に、
心を鷲掴みにされてしまった。
「リルって言ったな…俺はお前と一緒にいたい。一緒にいてもいいか?」
「…いたいこと、しない?」
「しない」
「いたくないなら、いいよ」
リルはにっこりと笑った。
リルは酷く殴られていた様だったので、先ずは治癒してやった。
腫れのひいたリルは大きく潤む茜色の瞳に長い耳が特徴のセイレーンの一種、『ヒーメロペー』と呼ばれる種族だと一目で分かった。
愛らしい顔もその特徴の一つで、その歌声と容姿で森に彷徨う獲物を惑わし、性交で生気を奪う。
リルも例に漏れず愛らしい容姿をしている。
そしてその顔に似合わず、大人びた妖艶な肉体を持っていた。
「俺の名はクロエ。俺はリルに惚れたから、何処までもリルについていく」
「…クロエは、ごしゅじんさまじゃない?」
キョトンとしたリルがクロエに訊ねる。
クロエは優しく微笑んでリルの手を取った。
「ご主人様はリルだよ」
「…リル、ごしゅじんさま、よくわかんないの…」
リルは戸惑い、クロエに小首を傾げながら言う。
「自由でいいよ。したい事を言って。全部叶えてあげるから」
「ホント?」
クロエは手に取ったリルの手の甲にキスを落とす。
「誓うよ。リルの望むものは何でも与えてあげる。生涯離れない。守るよ」
これが大悪魔クロエと、無能の悪魔リルとの出逢いだった。
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