15 / 31
15、綻びから覗く真実
扉が閉められて、やっと気を抜くことが出来たリリエはソファに座り込んだ。
そしてレクスに着席を促しながら問うた。
「ありがとう、助かったわ。でもどうして私が執務室にいるってわかったの?」
レクスは着席して人懐こい笑顔で答えた。
「副団長が教えてくれたんだ。リリエ嬢が珍しく急ぎ足で執務室に乗り込んでいったって」
「マハチェク副団長が?」
「あの人ね、いつもリリエ嬢の事気にしてるよ? リリエ嬢に挨拶されるの嬉しいって言ってた」
「そうだったの? そんな風に思ってくれてるなんて気が付かなった……」
「話しかけられたら照れ臭いんだって。損するタイプだよね」
ヴァルタリア騎士団のマハチェク副団長はリリエが話しかけるといつもむっつりと黙り込んでしまったので、リリエは嫌われているものだと思っていた。
「いつもとは違う様子で執務室に向かって行ったって。リリエは優しいから派兵に心を痛めているんじゃないかって心配してたよ」
「そうなの……」
意外な人が自分の事を気にかけてくれていた事にリリエは驚いた。
自分の全面的な味方はイグナツとチェスラフだけなんだと思っていたが、その二人以外にもこの領城内で自分を好意的に見てくれている人がいた事に少しだけくすぐったい気持ちで思わず頬が緩んでしまう。
「後でお礼言ってあげてね。きっと喜ぶ」
「うん、そうするわ」
レクスは少しだけ真剣な表情になってリリエに訊ねた。
「何かわかったことはある?」
リリエはティーテーブルの天板の裏側に手を伸ばす。
そしてイグナツの帳簿を取り出しそれをレクスに手渡した。
「これは?」
レクスはパラパラと帳簿を捲った。
「イグナツが領城で卸された品の記録と実数の不一致を帳簿につけてくれていたの」
「……これは重要な証拠になるね」
「ええ。もう6年も前から行われていたみたい。あのね、レクス」
「なに?」
「全ての事が6年前、私の婚約が決まった時から始まってるんじゃないかしら?」
「……鉱山の出入り業者のグロックナー商会に替わったのも6年前だね」
「領城の出入り業者のズラティー・リンク貿易商会に替わったのも6年前なの」
「……リリエ嬢?」
「なに?」
「レアンドロ殿下は王都のさる大物をマークしてるって言ったよね?」
「ええ、そう言ってたわね」
「その大物って、モトキス王国宰相、ヴィテテフ・スヴァトプルク・チェルニーなんだ」
リリエは驚く。
宰相という王に近しい立場の人間が反王派だと目されているというのは大変な事だ。
「リリエ嬢と初めて会ったあの日も、宰相の使いの跡をつけてきて、あの場面に出くわしたんだ」
「……やっぱりそうだったのね。あんなところに人がいるのなんて本当に珍しいもの」
「6年前、リリエ嬢が婚約者候補にあがっていた時、宰相一派は反対の立場だったんだ」
「そうなの?」
「うん、でも婚約が決定してからはそれは成りを潜めた。あれだけ反対してたのにこの件について今は何も言及してこないんだ」
「そもそも婚約に反対していた理由ってなんだったの?」
「色々言ってたみたいだけど彼らの一番の主張はヴァルタリア領が力を持ちすぎる、だった」
「……それって今でも通る理由よね?」
「そう。だからこそレアンドロ殿下が宰相に疑念を持つきっかけにもなったんだ。宰相が何も言わなくなったのは手段を変えたからなんじゃないのかって」
「……宰相からしてみれば、決まってしまった時点でこれ以上強硬に反対しても自分の立場を悪くするだけだもの。だったら他のやり方を考えるでしょうね」
「そう、そしてヴァルタリア領の不正が始まったのも婚約がきっかけ、そのヴァルタリアに宰相が何か介入している痕跡がある。……うん、繋がって来たね」
「……後はイグナツの帳簿とヴァルタリアの財務帳簿を照らし合わせる事よね?」
「うん、少なくともそれでヴァルタリアの不正は発見出来るね」
リリエはレクスの手元にあるイグナツの帳簿を見つめる。そして長く沈黙した後、レクスを真っすぐ真剣な眼差しで見つめた。
「私、お父様の部屋に忍び込んでみるわ。財務帳簿を保管してあると思うし、過去の記録1冊でも持ち出せれば充分な証拠になる」
レクスはリリエのその真剣な眼差しを受け止めて同じ様に真剣に答えた。
「……ねえ? リリエ嬢、わかってると思うけど……、それはヴァルタリア領主……つまり自分の父親を告発する事になるよ? ヴァルタリア領主は最悪……死刑だってあり得る」
レクス真剣な眼差しを受け止める。
領主が不正を行った場合、領主権はく奪の上に蟄居を命じられるのが一般的だ。でも、王家の裁量次第では死刑だってあり得る。
リリエはレクスの綺麗なセレスティアルブルーの瞳をじっと見つめた。
長く見つめ合った後、リリエは目を伏せる。
「……そうね。でも、お父様の不正で領民が苦しんでいるのは確かだもの……。正されなきゃいけないわ……」
リリエはもう一度レクスの綺麗な瞳を見つめ、はっきりと宣言する。
「……覚悟は出来たわ。大丈夫」
それを受けたレクスはこくりと頷いた。
「……大変な決断をさせてしまったね」
「元はと言えばお父様が不正なんて働くからいけないのよ。何もレクスが気に病む事は無いわ」
リリエは出来るだけ明るく笑う。何故ならレクスに責任を背負わせる気なんてなくて自分で決めた事で、その結果も全部自分の決断のせいだと理解しているから。
「………………あの、さ?」
今度はレクスが目を伏せて手元にあるイグナツの帳簿を眺める。
「なに?」
レクスは顔をあげてリリエを見ていつもの人懐こい笑顔を見せた。
「………………何でもない。ねえ? 領主の執務室に本気で忍び込むの?」
「ええ、お父様が王都の別邸に行ってる今がチャンスだと思うの」
「……だったら、夜だね。見回りさえかいくぐれば後はわざわざ夜執務室に入る人間はいないと思うんだよね。基本的に領主の執務室なんてこの領城内で一番みだりに入ったり出来ない場所な筈だから」
「そうね。なら、確実にお父様がいない今夜がいいと思うわ。……お父様は前触れなく突然帰って来る事が多いの」
「そうか。なら決まりだね。今夜忍び込んでくるよ」
「どうしてレクス一人で忍び込むことになってるの?」
また、人懐こい笑顔を見せたレクスはイグナツの帳簿をティーテーブルの上にそっと置いてリリエの手前に寄せた。
「だって、俺、隠密行動割と得意だし」
「一人でなんて行かせないわ。だって、万が一誰かに見つかったら、レクスだけでは言い訳が何も出来ないもの。でも私がいれば私が処分されるだけで済む。だってレクスは王太子付きの護衛騎士なんですもの。私の命に従って一緒に忍び込んだなら、その罰はレアンドロ殿下に裁量に委ねられる事になる。レアンドロ殿下も密命を遂行中の時に起きた事なら手心を加えて下さるでしょ?」
リリエはにっこりと笑ってレクスを説得する。
それを受けたレクスは目を見開いてややあって、大きな溜息を吐いた。
「俺は、リリエ嬢には一生口喧嘩では叶いそうにないや」
「そうかしら? 筋道立てればわかる事じゃない」
「筋を通してしまうから勝てないんだよ」
リリエはイグナツの帳簿をティーテーブルの天板の裏の隠されたスペースに再び収納した。
「とにかく、今夜決行ね。私、イグナツの所に行って、執務室の鍵をどうにか入手出来ないか聞いてくるわ」
「……イグナツも大変だな、そんな危ない橋一緒に渡らされて」
レクスは少し苦笑いをする。
「大丈夫。イグナツとチェスラフは私の一番の味方だから」
「そうみたいだね。二人にくれぐれもリリエ嬢をしっかり守る様に念を押されちゃったよ」
少し困ったように笑うレクスを見て、イグナツとチェスラフがどんな風に言い含めたのか想像が出来て、リリエは笑ってしまった。
そしてレクスに着席を促しながら問うた。
「ありがとう、助かったわ。でもどうして私が執務室にいるってわかったの?」
レクスは着席して人懐こい笑顔で答えた。
「副団長が教えてくれたんだ。リリエ嬢が珍しく急ぎ足で執務室に乗り込んでいったって」
「マハチェク副団長が?」
「あの人ね、いつもリリエ嬢の事気にしてるよ? リリエ嬢に挨拶されるの嬉しいって言ってた」
「そうだったの? そんな風に思ってくれてるなんて気が付かなった……」
「話しかけられたら照れ臭いんだって。損するタイプだよね」
ヴァルタリア騎士団のマハチェク副団長はリリエが話しかけるといつもむっつりと黙り込んでしまったので、リリエは嫌われているものだと思っていた。
「いつもとは違う様子で執務室に向かって行ったって。リリエは優しいから派兵に心を痛めているんじゃないかって心配してたよ」
「そうなの……」
意外な人が自分の事を気にかけてくれていた事にリリエは驚いた。
自分の全面的な味方はイグナツとチェスラフだけなんだと思っていたが、その二人以外にもこの領城内で自分を好意的に見てくれている人がいた事に少しだけくすぐったい気持ちで思わず頬が緩んでしまう。
「後でお礼言ってあげてね。きっと喜ぶ」
「うん、そうするわ」
レクスは少しだけ真剣な表情になってリリエに訊ねた。
「何かわかったことはある?」
リリエはティーテーブルの天板の裏側に手を伸ばす。
そしてイグナツの帳簿を取り出しそれをレクスに手渡した。
「これは?」
レクスはパラパラと帳簿を捲った。
「イグナツが領城で卸された品の記録と実数の不一致を帳簿につけてくれていたの」
「……これは重要な証拠になるね」
「ええ。もう6年も前から行われていたみたい。あのね、レクス」
「なに?」
「全ての事が6年前、私の婚約が決まった時から始まってるんじゃないかしら?」
「……鉱山の出入り業者のグロックナー商会に替わったのも6年前だね」
「領城の出入り業者のズラティー・リンク貿易商会に替わったのも6年前なの」
「……リリエ嬢?」
「なに?」
「レアンドロ殿下は王都のさる大物をマークしてるって言ったよね?」
「ええ、そう言ってたわね」
「その大物って、モトキス王国宰相、ヴィテテフ・スヴァトプルク・チェルニーなんだ」
リリエは驚く。
宰相という王に近しい立場の人間が反王派だと目されているというのは大変な事だ。
「リリエ嬢と初めて会ったあの日も、宰相の使いの跡をつけてきて、あの場面に出くわしたんだ」
「……やっぱりそうだったのね。あんなところに人がいるのなんて本当に珍しいもの」
「6年前、リリエ嬢が婚約者候補にあがっていた時、宰相一派は反対の立場だったんだ」
「そうなの?」
「うん、でも婚約が決定してからはそれは成りを潜めた。あれだけ反対してたのにこの件について今は何も言及してこないんだ」
「そもそも婚約に反対していた理由ってなんだったの?」
「色々言ってたみたいだけど彼らの一番の主張はヴァルタリア領が力を持ちすぎる、だった」
「……それって今でも通る理由よね?」
「そう。だからこそレアンドロ殿下が宰相に疑念を持つきっかけにもなったんだ。宰相が何も言わなくなったのは手段を変えたからなんじゃないのかって」
「……宰相からしてみれば、決まってしまった時点でこれ以上強硬に反対しても自分の立場を悪くするだけだもの。だったら他のやり方を考えるでしょうね」
「そう、そしてヴァルタリア領の不正が始まったのも婚約がきっかけ、そのヴァルタリアに宰相が何か介入している痕跡がある。……うん、繋がって来たね」
「……後はイグナツの帳簿とヴァルタリアの財務帳簿を照らし合わせる事よね?」
「うん、少なくともそれでヴァルタリアの不正は発見出来るね」
リリエはレクスの手元にあるイグナツの帳簿を見つめる。そして長く沈黙した後、レクスを真っすぐ真剣な眼差しで見つめた。
「私、お父様の部屋に忍び込んでみるわ。財務帳簿を保管してあると思うし、過去の記録1冊でも持ち出せれば充分な証拠になる」
レクスはリリエのその真剣な眼差しを受け止めて同じ様に真剣に答えた。
「……ねえ? リリエ嬢、わかってると思うけど……、それはヴァルタリア領主……つまり自分の父親を告発する事になるよ? ヴァルタリア領主は最悪……死刑だってあり得る」
レクス真剣な眼差しを受け止める。
領主が不正を行った場合、領主権はく奪の上に蟄居を命じられるのが一般的だ。でも、王家の裁量次第では死刑だってあり得る。
リリエはレクスの綺麗なセレスティアルブルーの瞳をじっと見つめた。
長く見つめ合った後、リリエは目を伏せる。
「……そうね。でも、お父様の不正で領民が苦しんでいるのは確かだもの……。正されなきゃいけないわ……」
リリエはもう一度レクスの綺麗な瞳を見つめ、はっきりと宣言する。
「……覚悟は出来たわ。大丈夫」
それを受けたレクスはこくりと頷いた。
「……大変な決断をさせてしまったね」
「元はと言えばお父様が不正なんて働くからいけないのよ。何もレクスが気に病む事は無いわ」
リリエは出来るだけ明るく笑う。何故ならレクスに責任を背負わせる気なんてなくて自分で決めた事で、その結果も全部自分の決断のせいだと理解しているから。
「………………あの、さ?」
今度はレクスが目を伏せて手元にあるイグナツの帳簿を眺める。
「なに?」
レクスは顔をあげてリリエを見ていつもの人懐こい笑顔を見せた。
「………………何でもない。ねえ? 領主の執務室に本気で忍び込むの?」
「ええ、お父様が王都の別邸に行ってる今がチャンスだと思うの」
「……だったら、夜だね。見回りさえかいくぐれば後はわざわざ夜執務室に入る人間はいないと思うんだよね。基本的に領主の執務室なんてこの領城内で一番みだりに入ったり出来ない場所な筈だから」
「そうね。なら、確実にお父様がいない今夜がいいと思うわ。……お父様は前触れなく突然帰って来る事が多いの」
「そうか。なら決まりだね。今夜忍び込んでくるよ」
「どうしてレクス一人で忍び込むことになってるの?」
また、人懐こい笑顔を見せたレクスはイグナツの帳簿をティーテーブルの上にそっと置いてリリエの手前に寄せた。
「だって、俺、隠密行動割と得意だし」
「一人でなんて行かせないわ。だって、万が一誰かに見つかったら、レクスだけでは言い訳が何も出来ないもの。でも私がいれば私が処分されるだけで済む。だってレクスは王太子付きの護衛騎士なんですもの。私の命に従って一緒に忍び込んだなら、その罰はレアンドロ殿下に裁量に委ねられる事になる。レアンドロ殿下も密命を遂行中の時に起きた事なら手心を加えて下さるでしょ?」
リリエはにっこりと笑ってレクスを説得する。
それを受けたレクスは目を見開いてややあって、大きな溜息を吐いた。
「俺は、リリエ嬢には一生口喧嘩では叶いそうにないや」
「そうかしら? 筋道立てればわかる事じゃない」
「筋を通してしまうから勝てないんだよ」
リリエはイグナツの帳簿をティーテーブルの天板の裏の隠されたスペースに再び収納した。
「とにかく、今夜決行ね。私、イグナツの所に行って、執務室の鍵をどうにか入手出来ないか聞いてくるわ」
「……イグナツも大変だな、そんな危ない橋一緒に渡らされて」
レクスは少し苦笑いをする。
「大丈夫。イグナツとチェスラフは私の一番の味方だから」
「そうみたいだね。二人にくれぐれもリリエ嬢をしっかり守る様に念を押されちゃったよ」
少し困ったように笑うレクスを見て、イグナツとチェスラフがどんな風に言い含めたのか想像が出来て、リリエは笑ってしまった。
あなたにおすすめの小説
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
社長は身代わり婚約者を溺愛する
日下奈緒
恋愛
ある日礼奈は、社長令嬢で友人の芹香から「お見合いを断って欲しい」と頼まれる。
引き受ける礼奈だが、お見合いの相手は、優しくて素敵な人。
そして礼奈は、芹香だと偽りお見合いを受けるのだが……
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。