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叫び声と共に、金属のぶつかり擦れ合う甲高い嫌な音が響いた。
目の前にいるサリさんは、男の腕を斬りつけて私の前に立ちはだかった。
「王妃、どうぞ私の後ろに」
「わかりました。ご武運を」
私は簡潔にサリさんを労い、邪魔にだけはならないようにちゃんと守られる。
私の両サイドをマリとレーナが守っている。
こういう時、私は守られてばかりで情けない。私も陛下の様に戦えたらいいのに。
陛下は守られているだけの王じゃない。いつだって自分が先頭に立つし、殿もやって、常に皆を守る事を考えてる。
私は陛下が本当は皆を守りたいと思ってる優しい人なのを知っている。そういう陛下を尊敬しているし、誰よりも愛おしいと思う。
斬りつけられた男は腕を押さえながら他の兵士達に命じた。
「王妃を捕らえ、拘束しろ!」
表の喧騒を気にしながら、黄色い布の兵士達はサリさんに向かっていった。
サリさんは演舞の様な動きで敵を翻弄しながら、着々と兵士達を屠っていく。
動きだけならヘリュ様より早いかもしれない。
的確に急所を狙って、一撃で敵を沈めていく。
そうこうしている内に表の喧騒がどんどん近づいてきて、部下数名を伴った宰相様が血糊のついた剣を手に庭園に入ってきた。
「王妃! ご無事ですか?!」
「宰相様!」
宰相様はいつもとは違って鋭い険のあるお顔をしていた。
私と目が合った瞬間、一瞬ホッとした様な表情をされて、いつもの笑顔を見せて下さった。
「遅くなってしまいました、王妃!」
「いいえ、見事なご手腕ですね、宰相様」
「いえいえ。お褒め頂くにはまだ早いです」
そう仰ると、自身の近場にいた黄色い布の兵士達を一刃を以て次々に沈めていった。
こうして剣を奮っていらっしゃる所を見るのは初めてだけれど、宰相様は陛下やヘリュ様の次位にはお強いのじゃないかしら?
みるみる内に黄色い布の兵士達は屠られていく。
そして、宰相様と部下の方々は場を完全に制圧した。
「助かりました、宰相様。お怪我はありませんか?」
私が宰相様の元に駆け寄ると宰相様は私にいつもの笑顔でお返事して下さった。
「ありませんよ。王妃はお怪我などありませんか?」
「私は皆に守って頂いたので大丈夫です。宰相様? 法相様はご無事でしょうか?」
「ああ、あいつは放っておいても大丈夫ですよ、殺しても死にませんから。恐らく時期にこちらに合流するでしょう」
悪戯っぽく笑って宰相様はそう答えた。
「状況はわかりますか?」
「陸軍の海の民の派閥の一派による、叛逆の様ですね。一部の侍女達もあちら側の様で、それらが侵入の手引きした模様です。武器と人員を招き入れ、挙兵。まずはこの庭園を押さえた様です。この叛逆の中心人物の一人がそこにいるカンニスト大尉です」
宰相様の視線の先には宰相様の部下の方によって拘束されている、あの背のヒョロリと高い軍服の男がいた。
「叛逆兵の中には海軍の軍人や各領の領兵崩れも一部いる様です。……はぁ、こりゃ陛下にお叱りを受けそうだ」
宰相様は大袈裟に肩を落とした。私はその芝居がかった様子にクスリと笑う。
「侍女達の一部も寝返ってしまったのなら、私もお叱りを受けそうですね。一緒に怒られましょう?」
宰相様は優しく笑った。
「王妃が一緒に怒られて下さるなら心強い」
私もそれに微笑みで応えた。
「で、このままここに立て篭もるのですか?」
「そうですね、恐らく海側は閣下の軍船が囲うでしょうからここが一番安全でしょうね」
「なるほど! ならば皆を避難させるにもここがいいですね。では早速……」
宰相様が私の肩に優しく手を乗せた。
「王妃は別行動です」
私はその言葉に小首を傾げる。
「別行動? ……ですか?」
宰相様はいつもの笑顔で言った。
「王妃にしか出来ない事なんです。これはこの作戦の根幹に関わる重要な役目です」
「……なんでしょう?」
「今の王城の様子を陛下にお伝え頂きたいのです」
「陛下に? 私がですか?」
「はい、王妃にしかこの城の抜け路は通れません。あの抜け路を使うなら供もつけられませんので危険を伴いますがお願い出来ますか?」
私は宰相様をじっと見つめた。私、この城から離れて大丈夫かしら? そう考えたのが顔に出たのか、宰相様は更に笑った。
「陛下はきっとマイヤールの領軍に王城の陸側の西と南を囲うよう御命じになるでしょう。その陛下にこちらの状況を知らせなければきっと動きようがない。戦において情報は命の次に重要です。その情報を陛下にお伝え下さい」
私は更にじっと宰相様を見つめる。宰相様は黙って私を見つめ返した。
「……この場は大丈夫ですか?」
「もちろんです。命に変えても御妾妃様方と侍女達は守ります」
「……それと、もう一つ」
「なんでしょう?」
「宰相様と法相様のお命もです」
宰相様はいつもと同じ笑顔で答えてくれる。
「それは少々骨が折れますが、ご命令とあらば」
「約束して下さいますか?」
「ええ、誓って」
宰相様は私の肩から手を離して、恭しく頭を下げた。
目の前にいるサリさんは、男の腕を斬りつけて私の前に立ちはだかった。
「王妃、どうぞ私の後ろに」
「わかりました。ご武運を」
私は簡潔にサリさんを労い、邪魔にだけはならないようにちゃんと守られる。
私の両サイドをマリとレーナが守っている。
こういう時、私は守られてばかりで情けない。私も陛下の様に戦えたらいいのに。
陛下は守られているだけの王じゃない。いつだって自分が先頭に立つし、殿もやって、常に皆を守る事を考えてる。
私は陛下が本当は皆を守りたいと思ってる優しい人なのを知っている。そういう陛下を尊敬しているし、誰よりも愛おしいと思う。
斬りつけられた男は腕を押さえながら他の兵士達に命じた。
「王妃を捕らえ、拘束しろ!」
表の喧騒を気にしながら、黄色い布の兵士達はサリさんに向かっていった。
サリさんは演舞の様な動きで敵を翻弄しながら、着々と兵士達を屠っていく。
動きだけならヘリュ様より早いかもしれない。
的確に急所を狙って、一撃で敵を沈めていく。
そうこうしている内に表の喧騒がどんどん近づいてきて、部下数名を伴った宰相様が血糊のついた剣を手に庭園に入ってきた。
「王妃! ご無事ですか?!」
「宰相様!」
宰相様はいつもとは違って鋭い険のあるお顔をしていた。
私と目が合った瞬間、一瞬ホッとした様な表情をされて、いつもの笑顔を見せて下さった。
「遅くなってしまいました、王妃!」
「いいえ、見事なご手腕ですね、宰相様」
「いえいえ。お褒め頂くにはまだ早いです」
そう仰ると、自身の近場にいた黄色い布の兵士達を一刃を以て次々に沈めていった。
こうして剣を奮っていらっしゃる所を見るのは初めてだけれど、宰相様は陛下やヘリュ様の次位にはお強いのじゃないかしら?
みるみる内に黄色い布の兵士達は屠られていく。
そして、宰相様と部下の方々は場を完全に制圧した。
「助かりました、宰相様。お怪我はありませんか?」
私が宰相様の元に駆け寄ると宰相様は私にいつもの笑顔でお返事して下さった。
「ありませんよ。王妃はお怪我などありませんか?」
「私は皆に守って頂いたので大丈夫です。宰相様? 法相様はご無事でしょうか?」
「ああ、あいつは放っておいても大丈夫ですよ、殺しても死にませんから。恐らく時期にこちらに合流するでしょう」
悪戯っぽく笑って宰相様はそう答えた。
「状況はわかりますか?」
「陸軍の海の民の派閥の一派による、叛逆の様ですね。一部の侍女達もあちら側の様で、それらが侵入の手引きした模様です。武器と人員を招き入れ、挙兵。まずはこの庭園を押さえた様です。この叛逆の中心人物の一人がそこにいるカンニスト大尉です」
宰相様の視線の先には宰相様の部下の方によって拘束されている、あの背のヒョロリと高い軍服の男がいた。
「叛逆兵の中には海軍の軍人や各領の領兵崩れも一部いる様です。……はぁ、こりゃ陛下にお叱りを受けそうだ」
宰相様は大袈裟に肩を落とした。私はその芝居がかった様子にクスリと笑う。
「侍女達の一部も寝返ってしまったのなら、私もお叱りを受けそうですね。一緒に怒られましょう?」
宰相様は優しく笑った。
「王妃が一緒に怒られて下さるなら心強い」
私もそれに微笑みで応えた。
「で、このままここに立て篭もるのですか?」
「そうですね、恐らく海側は閣下の軍船が囲うでしょうからここが一番安全でしょうね」
「なるほど! ならば皆を避難させるにもここがいいですね。では早速……」
宰相様が私の肩に優しく手を乗せた。
「王妃は別行動です」
私はその言葉に小首を傾げる。
「別行動? ……ですか?」
宰相様はいつもの笑顔で言った。
「王妃にしか出来ない事なんです。これはこの作戦の根幹に関わる重要な役目です」
「……なんでしょう?」
「今の王城の様子を陛下にお伝え頂きたいのです」
「陛下に? 私がですか?」
「はい、王妃にしかこの城の抜け路は通れません。あの抜け路を使うなら供もつけられませんので危険を伴いますがお願い出来ますか?」
私は宰相様をじっと見つめた。私、この城から離れて大丈夫かしら? そう考えたのが顔に出たのか、宰相様は更に笑った。
「陛下はきっとマイヤールの領軍に王城の陸側の西と南を囲うよう御命じになるでしょう。その陛下にこちらの状況を知らせなければきっと動きようがない。戦において情報は命の次に重要です。その情報を陛下にお伝え下さい」
私は更にじっと宰相様を見つめる。宰相様は黙って私を見つめ返した。
「……この場は大丈夫ですか?」
「もちろんです。命に変えても御妾妃様方と侍女達は守ります」
「……それと、もう一つ」
「なんでしょう?」
「宰相様と法相様のお命もです」
宰相様はいつもと同じ笑顔で答えてくれる。
「それは少々骨が折れますが、ご命令とあらば」
「約束して下さいますか?」
「ええ、誓って」
宰相様は私の肩から手を離して、恭しく頭を下げた。
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