欲しがる妹アナベルは『ざまぁ』されたい!

花房いちご

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番外編 アナベルと出会うまでのエリック(エリック視点)

番外編6話 聖騎士エリック・ルグランと欲しがる妹アナベルの出会い(エリック視点)

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手違いで5話と同じ内容の話を投稿していました。
訂正済みです。
教えて下さりありがとうございます!本当に助かりました!


◆◆◆◆◆◆


 甲高く甘いのに苦しそうにかすれた声が部屋に響く。

「聖女様って。うふふ。本当に、キラキラして、綺麗ね。……お隣の貴方は誰?え?聖騎士なんだ!すごーい!」

「はあ……それはどうも」

 ベッドに横たわるアナベル嬢に、俺はうんざりしながら返答した。
 ここは、ベルトラン子爵家内にあるアナベル嬢の自室だ。
 俺とミシエラは先ほど到着した。遅い時間だったが、挨拶ついでに患者本人を確認するために訪問したのだ。

 これが、アナベル・ベルトラン子爵令嬢か。

 しなびた花びらを思わせるピンク色の髪、濁った空色の瞳、青ざめた顔色だが、とても愛らしい顔立ちの少女だ。
 しかし、15歳の貴族令嬢とは思えない馴れ馴れしさと失礼さには閉口する。重病患者でろくな教育を受けていないのだから、寛大に接するべきかもしれないが……。

「うふふ。貴方エリックって言うのね。よろしく。ミシエラって呼んで!」

 は?初対面で許可を与えてないのにファーストネームを呼び捨てだと?
 おまけにアナベル嬢は、貴族令嬢とはいえ無位無爵の身。威張る気はないが、こちとら騎士爵持ちの聖騎士だ。身分差だけでも天と地の差がある。

「アナベル嬢。私のことはルグラン様と敬称付きで呼ぶように。一度は許すが二度は無い」

「えー?どうして?」

 礼儀に反しているし、他所でやったら不敬で訴えられて最悪死ぬからだ。やんわりと伝えたが通じない。
 俺の中の体育教師の記憶が騒ぐ。さて、この生徒はどう伝えれば通じるだろうか?

「まず、初対面の人間に対して馴れ馴れしすぎて失礼だ。相手には敬意を……貴方のことを重んじますと態度と言葉に出すべきだ。わかるかい?」

「わかんない!それにエリックだって私に対して馴れ馴れしいじゃない!なんで私が悪いの!?」

「アナベル!やめなさい!」

 アナベル嬢のかたわらにいる人物が叫ぶ。姉のマルグリット・ベルトラン子爵令嬢だ。

「アナベル!聖女ミシエラ様と聖騎士ルグラン様に失礼ですよ!申し訳ございません!」

 マルグリット・ベルトラン子爵令嬢は深く頭を下げた。ミシエラは柔らかな笑みを浮かべ、マルグリット嬢の手を握った。

「お気になさらず。貴女が謝ることではありませんよ」

「マルグリット嬢、その通りだ。アナベル嬢が反省すべきことだ」

「えー!どうして意地悪を言うの?アナベル、わかんなーい!」

「先ほど言ったように礼儀がなっていないからだ。
 それにこの国では、身分差を蔑ろにする言動は強く非難される。
 身分の高い者はそれだけ重い責務……平たく言うと大切な仕事をする存在だ。だから身分が下の者は上の者を重んじる。それがこの国の常識であり決まりだ。先ほどのような態度を他所ですれば、君自身が今後困ることになる」
 君も貴族令嬢なら礼節を弁えたまえ」

「れーせつ?知らない!わかんなーい!」

 わからないじゃない。わかろうとしないの間違いだろう。前世、こういう他人を舐め腐った生徒も居たが、どう指導したものか。

「アナベル!」

「きゃー!やだ!お姉様怖い!お父様たちに言ってやるからね!」

 こんなに失礼で幼稚な令嬢を治さなくてはいけないのか。ミシエラの神聖魔法は、もっと大切なことに使うべきなのに。
 いや、難病に苦しんでいる少女に思うことではないが……。

 客室にミシエラを送った際、つい言ってしまった。

「しかし元気な御令嬢だったな。ミシエラ、仮病の可能性はないのか?」

 ミシエラは真顔で否定する。

「間違いなく魔炎まえん病に罹患しています。確かにお元気そうでしたが、息をするのも辛い状態が常に続いています。さらに発作が起こると、身体を内側からズタズタに引き裂かれるような痛みに襲われるようですね。
 ……聖騎士エリック・ルグラン。

「あの魔法はやめてくれ。……人様の一面だけを見て知った気になった俺が悪かった」

「わかればよろしい。しかし、エリックが患者に対して辛辣なのは珍しいですね。彼女がよっぽど気に食わないのか、あるいは……異性として気になるとか?」

 意味ありげに金の瞳を細めるミシエラ。

「邪推はやめてくれ。そんな訳ないだろ」

「あらあら。否定しなくてもいいじゃないですか。お爺ちゃんみたいなエリックには、あれくらい若々しくて元気な子が合うと思いますよ」

「やめろ。好みじゃない」

 まあ、身体が辛いのにあれだけ騒げる根性は悪くないな。そう思いつつ、俺は隣の部屋に引っ込んで眠った。

 まさか、翌日には発言を撤回するとは夢にも思わずに。
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