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第2部
第2部 15話 近衛騎士隊特別訓練 後編(アドリアン視点)
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「ルルティーナと結婚する理由はなんだ?ポーション目当てか?共同事業のためか?」
「は?」
イアン殿の聞き捨てならない言葉に、頭のどこかが切れる音がした。
「ふざけるな!ルティを愛してるからに決まってるだろうが!【氷の剣】!」
俺は、体内魔力の大部分を使い氷の剣を生み出した。
『な、なんて数だ……』
『百、いや二百は……まだ増えていく!』
魔獣を一斉に倒す時の技だ。空中に現れた氷の剣たちは、イアン殿目掛けて一斉に飛んだ。
「ぬう!【水壁】!」
イアン殿が分厚い水に包まれる。今までの【水壁】の比ではない強力な防御。氷の剣が消えていく。
しかし、連続攻撃をいつまでも防げるとは思えない。
恐らくイアン殿の魔力切れも近い。このまま物量で押せば倒せる!
「ルティと俺の結婚を認めて下さい!お義父さん!」
「だからまだ義父と呼ぶな!後なあ!ルルティーナのどんな所を愛してるっていうんだ!?ポーションでも事業でもなきゃ見た目か!?」
「確かにルティは見た目も素晴らしい!薄紅に輝く銀の髪も!プリムローズのような薄紅の瞳も!愛らしい笑顔も!大好きだ!
だがそれだけではない!
ルティはあんなにも華奢でお淑やかな女性だが!俺が暴走したら止めてくれる!しっかりした人だ!おまけに慈悲深く優しい!」
「全肯定かよ!?怖っ!?」
「いいや!クズどものせいで卑屈になりやすく自己評価が低いところと、仕事が好き過ぎて無理しがちなところは直して欲しい!我慢強過ぎて溜め込み過ぎるのも良くない!あともっと俺に甘えて頼って欲しい!たまにそっけなくて寂しい時もある!
しかし、それもルティを構成する大事な部分!俺は全て受け止めて愛している!」
「お、おう」
イアン殿が引きつった声を出す。【水壁】に氷の剣が突き刺さり、今にも破りそうだ。
だが、イアン殿は手練。油断は出来ない。
俺は氷の剣をさらに出そうとしたが……。
「はぁ……色々と参った。俺の負けだ!改めて、ルルティーナとの結婚を認めてやる!」
イアン殿はあっさりと敗北宣言した。殺気も闘気も無い。それを受け、俺は氷の剣を消す。
『勝者!アドリアン・ベルダール辺境伯!』
近衛騎士隊長の声が響いた。途端、割れんばかりの歓声と拍手が修練場を包む。
『うおおー!凄い戦いだった!』
『ベルダール辺境伯閣下!万歳!』
『アメティスト子爵もお見事!』
『ベルダール辺境伯閣下ー!プランティエ伯爵とお幸せに!』
『お熱くてうらやましい!』
……後で知ったが、俺たちの会話は近衛騎士隊長の風属性魔法で筒抜けだったらしい。
会場中から祝福され、ここまでがイアン殿の作戦だったのだろうと気づく。
まあ、その割には殺意が高かったが。
「はい!ルティと俺は幸せになります!」
「泣かせたら殺す」
「肝に銘じます」
俺の肩を潰さんばかりに掴むイアン殿。さっさと汗を流して歓談の場に……そう思ってたのだが。
「なんと野蛮な!ああ!畏れ多くも王城で!なぜ魔王たちが暴れているのでしょう!」
芝居臭い声に歓声が止む。声の方を見ると、観客席に派手な一団がいた。
大きな声を出したのは女だ。赤っぽい髪と瞳。やたら眩しくごてごてしたピンク色のドレスに、エメラルドと金の装飾をつけている。
隣にいる男にしなだれかかり、慰められているようだ。
「落ち着いてデルフィー。この僕が守ってあげる。魔王なんて恐れるに足らずさ!」
慰める男。集団の中心人物だろう。ああ、あいつがそうか。
近衛騎士隊長が硬い声を出す。
「これはこれはパーレス・グルナローズ辺境伯令息様。わざわざ御自らおいでとは、いかような御用でございましょうか?先触は頂いておりませんが?」
「あれ?そうだったかな?まあ、王家の血を引く僕が王城のどこに行くのも自由でしょ」
波打つ長いピンクブロンド、緑の瞳、甘やかな美貌の男……最も王妹殿下に似ているとされるパーレス・グルナローズ辺境伯令息。
まだ18歳と若いだけあって、青年というより少年といった顔立ちだ。顔つきも話し方も幼い。
あと王城を自由に歩いていい訳があるか!王位継承権を持つとはいえ!グルナローズ辺境伯令息でしかないのだぞ!あと近衛騎士の訓練見学は許可申請が必要だ!
近衛騎士隊長はその点を指摘して抗議する。が、パーレスたちは聞き流す。
緑色の瞳が俺を見て、フッと鼻で笑った。
「君がアドリアン・ベルダール伯爵か。一応は貴族の端くれだというのに、戦うことしか能のない血生臭い男。流石は魔王だね」
わかりやすいし捻りもない悪口だな。あと魔王とは?あれか?昔話や伝説に残る魔獣の親玉で、子供くらいしか存在を信じていない架空の存在の。
俺もまた鼻で笑い返した。
「パーレス・グルナローズ辺境伯令息、お初に御目にかかる。結構なご挨拶を頂いたが、貴殿の発言は間違いだらけだ。
私の名はアドリアン・ベルダール辺境伯であり、貴殿よりも爵位は上だ。また、貴殿は私の主君でも上官でも師でも親でもない。礼儀に則った発言をせよ」
俺の発言に一団が色めきだつ。
「男爵家の三男風情が生意気な!」
「失礼よ!床に額を擦り付けて謝罪なさい!」
「黙れ」
「ひっ!?」
軽く睨んで殺気をぶつける。面白いくらい静かになった。パーレスもにやけた笑みを引っ込めて固まっている。
「登城する前に、まずは礼儀作法を身につけるべきだ。
いや、その前に治癒魔法師にかかられた方がいい。人間と架空の存在の見分けもつかないようだからな」
もう会話する価値もない。俺は奴らから顔を逸らした。今にも怒りが爆発しそうなイアン殿の肩を叩く。
「ぼ、僕に対してなんて無礼な!近衛騎士!あの無礼者を拘束しろ!」
近衛騎士隊長は深いため息を吐いた後、キッと顔を上げた。
「お断りします。
我らの主君は両陛下と王太子殿下のみ。王位継承権を持つ尊いお産まれとはいえ、グルナローズ辺境伯令息様に命令されるいわれはございません」
「なっ!」
本気で衝撃を受けているらしい。よほど甘やかされて育てられたのか?
「近衛騎士隊長!貴様も無礼が過ぎる!パーレス様への態度もそうだが!そこの三人も不当に貶め解職したそうではないか!」
ああ、端っこで放置されていた三人な。そういえばパーレスの推薦だったか。
なるほど。パーレスたちは、三人の解職を誰かに知らされて抗議しに来たのだな。
「不当ではございません。この三人はベルダール辺境伯閣下に無礼を働き、騎士にあるまじき言動を繰り返しました。
また、あまりにも実力不足です。
この三人を推薦し、審査も試験も拒否させたお方には正式に抗議させて頂く」
パーレスは怒りで顔を真っ赤にして叫ぶ。
「騎士ごときが口がすぎるぞ!戦う以外能のない野蛮人どもが!」
瞬間、会場全体が殺気立つ。黙っていられず口を挟む。
「では、貴殿は一体なにが出来る?」
「は?」
「王都と保養地で暮らしているそうだが、王城に士官している訳でも、事業経営をしている訳でもない。
グルナローズ辺境伯家は武門の家。優秀な騎士を輩出してきた名家だが、もちろん貴殿は騎士ですらない。
貴殿は一体なにをして生きている?その服はどうやって買った?」
「な、なに?何を言っているんだい?僕は僕に相応しい生活をするのが役目だ。お父様もそう言っていた。
士官?事業?働くってことだよね?それは僕のする事じゃないよ?服だって欲しいといえば用意されて……」
クスクス……ふふふ……。
あちこちから冷ややかな失笑が漏れる。
観客席の女性方だ。口元を扇子で隠して嗤っている。男性方も侮蔑と怒りの眼差しを隠していない。
パーレス・グルナローズ辺境伯令息。騎士階級からの支持を喪ったな。
騎士は家柄よりも実力と礼節が重視される。また、主君に選ばれる立場ではあるが、同時に主君を選ぶ権利を持つ。
不当に侮辱されれば主君相手でも抗議する。ましてや主君ですらない若造相手だ。
罵声を浴びせず決闘を申し込まないあたり、かなり穏当だ。一応は主君と同じ血に連なる者だからだろうか。
「ぱ、パーレス様、ここは空気が悪うございます。そろそろ帰りましょ」
流石に不利を悟ったのだろう。あのごてごてした女、デルなんとかが、この場を去るよう促した。
ギッと、パーレスが俺を睨む。
「魔王め!調子に乗るなよ!ルルティーナは僕の婚約者だ!必ず魔獣だらけの辺境から救い出してあげるんだから!」
「ルティは俺の婚約者だ。俺と結婚するし、これからもミゼール領で幸せに暮らす。
意味不明な妄言はもう結構。お帰りはあちらだ。流石に帰り道くらいはお分かりか?常識も礼節もご存知ない坊や」
どっと笑い声が上がる。パーレスたちはその声に追い立てられるようにして帰った。
その後、俺たちは予定通り歓談して帰路に着いたのだった。
◆◆◆◆◆◆
語り終えた俺は、溜め息を吐いた。
「しかし、思ったより馬鹿だった。よく今まで問題になってなかったな」
「は?」
イアン殿の聞き捨てならない言葉に、頭のどこかが切れる音がした。
「ふざけるな!ルティを愛してるからに決まってるだろうが!【氷の剣】!」
俺は、体内魔力の大部分を使い氷の剣を生み出した。
『な、なんて数だ……』
『百、いや二百は……まだ増えていく!』
魔獣を一斉に倒す時の技だ。空中に現れた氷の剣たちは、イアン殿目掛けて一斉に飛んだ。
「ぬう!【水壁】!」
イアン殿が分厚い水に包まれる。今までの【水壁】の比ではない強力な防御。氷の剣が消えていく。
しかし、連続攻撃をいつまでも防げるとは思えない。
恐らくイアン殿の魔力切れも近い。このまま物量で押せば倒せる!
「ルティと俺の結婚を認めて下さい!お義父さん!」
「だからまだ義父と呼ぶな!後なあ!ルルティーナのどんな所を愛してるっていうんだ!?ポーションでも事業でもなきゃ見た目か!?」
「確かにルティは見た目も素晴らしい!薄紅に輝く銀の髪も!プリムローズのような薄紅の瞳も!愛らしい笑顔も!大好きだ!
だがそれだけではない!
ルティはあんなにも華奢でお淑やかな女性だが!俺が暴走したら止めてくれる!しっかりした人だ!おまけに慈悲深く優しい!」
「全肯定かよ!?怖っ!?」
「いいや!クズどものせいで卑屈になりやすく自己評価が低いところと、仕事が好き過ぎて無理しがちなところは直して欲しい!我慢強過ぎて溜め込み過ぎるのも良くない!あともっと俺に甘えて頼って欲しい!たまにそっけなくて寂しい時もある!
しかし、それもルティを構成する大事な部分!俺は全て受け止めて愛している!」
「お、おう」
イアン殿が引きつった声を出す。【水壁】に氷の剣が突き刺さり、今にも破りそうだ。
だが、イアン殿は手練。油断は出来ない。
俺は氷の剣をさらに出そうとしたが……。
「はぁ……色々と参った。俺の負けだ!改めて、ルルティーナとの結婚を認めてやる!」
イアン殿はあっさりと敗北宣言した。殺気も闘気も無い。それを受け、俺は氷の剣を消す。
『勝者!アドリアン・ベルダール辺境伯!』
近衛騎士隊長の声が響いた。途端、割れんばかりの歓声と拍手が修練場を包む。
『うおおー!凄い戦いだった!』
『ベルダール辺境伯閣下!万歳!』
『アメティスト子爵もお見事!』
『ベルダール辺境伯閣下ー!プランティエ伯爵とお幸せに!』
『お熱くてうらやましい!』
……後で知ったが、俺たちの会話は近衛騎士隊長の風属性魔法で筒抜けだったらしい。
会場中から祝福され、ここまでがイアン殿の作戦だったのだろうと気づく。
まあ、その割には殺意が高かったが。
「はい!ルティと俺は幸せになります!」
「泣かせたら殺す」
「肝に銘じます」
俺の肩を潰さんばかりに掴むイアン殿。さっさと汗を流して歓談の場に……そう思ってたのだが。
「なんと野蛮な!ああ!畏れ多くも王城で!なぜ魔王たちが暴れているのでしょう!」
芝居臭い声に歓声が止む。声の方を見ると、観客席に派手な一団がいた。
大きな声を出したのは女だ。赤っぽい髪と瞳。やたら眩しくごてごてしたピンク色のドレスに、エメラルドと金の装飾をつけている。
隣にいる男にしなだれかかり、慰められているようだ。
「落ち着いてデルフィー。この僕が守ってあげる。魔王なんて恐れるに足らずさ!」
慰める男。集団の中心人物だろう。ああ、あいつがそうか。
近衛騎士隊長が硬い声を出す。
「これはこれはパーレス・グルナローズ辺境伯令息様。わざわざ御自らおいでとは、いかような御用でございましょうか?先触は頂いておりませんが?」
「あれ?そうだったかな?まあ、王家の血を引く僕が王城のどこに行くのも自由でしょ」
波打つ長いピンクブロンド、緑の瞳、甘やかな美貌の男……最も王妹殿下に似ているとされるパーレス・グルナローズ辺境伯令息。
まだ18歳と若いだけあって、青年というより少年といった顔立ちだ。顔つきも話し方も幼い。
あと王城を自由に歩いていい訳があるか!王位継承権を持つとはいえ!グルナローズ辺境伯令息でしかないのだぞ!あと近衛騎士の訓練見学は許可申請が必要だ!
近衛騎士隊長はその点を指摘して抗議する。が、パーレスたちは聞き流す。
緑色の瞳が俺を見て、フッと鼻で笑った。
「君がアドリアン・ベルダール伯爵か。一応は貴族の端くれだというのに、戦うことしか能のない血生臭い男。流石は魔王だね」
わかりやすいし捻りもない悪口だな。あと魔王とは?あれか?昔話や伝説に残る魔獣の親玉で、子供くらいしか存在を信じていない架空の存在の。
俺もまた鼻で笑い返した。
「パーレス・グルナローズ辺境伯令息、お初に御目にかかる。結構なご挨拶を頂いたが、貴殿の発言は間違いだらけだ。
私の名はアドリアン・ベルダール辺境伯であり、貴殿よりも爵位は上だ。また、貴殿は私の主君でも上官でも師でも親でもない。礼儀に則った発言をせよ」
俺の発言に一団が色めきだつ。
「男爵家の三男風情が生意気な!」
「失礼よ!床に額を擦り付けて謝罪なさい!」
「黙れ」
「ひっ!?」
軽く睨んで殺気をぶつける。面白いくらい静かになった。パーレスもにやけた笑みを引っ込めて固まっている。
「登城する前に、まずは礼儀作法を身につけるべきだ。
いや、その前に治癒魔法師にかかられた方がいい。人間と架空の存在の見分けもつかないようだからな」
もう会話する価値もない。俺は奴らから顔を逸らした。今にも怒りが爆発しそうなイアン殿の肩を叩く。
「ぼ、僕に対してなんて無礼な!近衛騎士!あの無礼者を拘束しろ!」
近衛騎士隊長は深いため息を吐いた後、キッと顔を上げた。
「お断りします。
我らの主君は両陛下と王太子殿下のみ。王位継承権を持つ尊いお産まれとはいえ、グルナローズ辺境伯令息様に命令されるいわれはございません」
「なっ!」
本気で衝撃を受けているらしい。よほど甘やかされて育てられたのか?
「近衛騎士隊長!貴様も無礼が過ぎる!パーレス様への態度もそうだが!そこの三人も不当に貶め解職したそうではないか!」
ああ、端っこで放置されていた三人な。そういえばパーレスの推薦だったか。
なるほど。パーレスたちは、三人の解職を誰かに知らされて抗議しに来たのだな。
「不当ではございません。この三人はベルダール辺境伯閣下に無礼を働き、騎士にあるまじき言動を繰り返しました。
また、あまりにも実力不足です。
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パーレスは怒りで顔を真っ赤にして叫ぶ。
「騎士ごときが口がすぎるぞ!戦う以外能のない野蛮人どもが!」
瞬間、会場全体が殺気立つ。黙っていられず口を挟む。
「では、貴殿は一体なにが出来る?」
「は?」
「王都と保養地で暮らしているそうだが、王城に士官している訳でも、事業経営をしている訳でもない。
グルナローズ辺境伯家は武門の家。優秀な騎士を輩出してきた名家だが、もちろん貴殿は騎士ですらない。
貴殿は一体なにをして生きている?その服はどうやって買った?」
「な、なに?何を言っているんだい?僕は僕に相応しい生活をするのが役目だ。お父様もそう言っていた。
士官?事業?働くってことだよね?それは僕のする事じゃないよ?服だって欲しいといえば用意されて……」
クスクス……ふふふ……。
あちこちから冷ややかな失笑が漏れる。
観客席の女性方だ。口元を扇子で隠して嗤っている。男性方も侮蔑と怒りの眼差しを隠していない。
パーレス・グルナローズ辺境伯令息。騎士階級からの支持を喪ったな。
騎士は家柄よりも実力と礼節が重視される。また、主君に選ばれる立場ではあるが、同時に主君を選ぶ権利を持つ。
不当に侮辱されれば主君相手でも抗議する。ましてや主君ですらない若造相手だ。
罵声を浴びせず決闘を申し込まないあたり、かなり穏当だ。一応は主君と同じ血に連なる者だからだろうか。
「ぱ、パーレス様、ここは空気が悪うございます。そろそろ帰りましょ」
流石に不利を悟ったのだろう。あのごてごてした女、デルなんとかが、この場を去るよう促した。
ギッと、パーレスが俺を睨む。
「魔王め!調子に乗るなよ!ルルティーナは僕の婚約者だ!必ず魔獣だらけの辺境から救い出してあげるんだから!」
「ルティは俺の婚約者だ。俺と結婚するし、これからもミゼール領で幸せに暮らす。
意味不明な妄言はもう結構。お帰りはあちらだ。流石に帰り道くらいはお分かりか?常識も礼節もご存知ない坊や」
どっと笑い声が上がる。パーレスたちはその声に追い立てられるようにして帰った。
その後、俺たちは予定通り歓談して帰路に着いたのだった。
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