9 / 45
第二章 2
しおりを挟む
美鈴の目の前で、愛実はふくよかな両胸を露出した状態のまま、既に硬くなった乳首を背後から男に指先で抓まれているではないか。しかも、スーツ姿の別の男が、か弱き女生徒の下半身にその汚らわしい腕を伸ばしている。目を凝らしてよく見ると、既に純白のパンティーが膝の辺りまで下げられているのが確認出来た。可哀想に愛実は顏を伏せ、しくしくと噎び泣いている。
(痴漢だっ! 助けなくっちゃっ!)
正義感に駆られた美鈴は、今まさに目の前で痴漢被害に遭う女生徒を救出するべく、男たちの許へ向かった。
先ず、愛実の乳房を弄ぶ初老の男性の腕を鷲掴むとっグイっと捻った。
「止めなさいっ!」
「痛ぇててぇてぇぇ……」
「警察に突き出してやる。次の駅で降りなさいっ。もう大丈夫よ細川さん、心配しないで、先生がついているから」
美鈴は視線を、卑劣極まりない痴漢から教え子に移しながら、はっきりとした明瞭な口調で告げた。
「……先生、私ぃぃ……怖かった」
愛実は堰が切れたように泣き出した。
「放せっ手を放せっ!」
美鈴に腕を掴まれた男は振り解こうと暴れ出した。
「大人しくしなさいっ」
気丈で勝気な美鈴は、男を一喝する。
この男の仲間たちは、突然の出来事に困惑し狼狽え始めた。周囲にいた他の乗客も、この痴漢騒ぎに気づき、チラチラとこちらを見やって何事かヒソヒソ話をしている。
だが、痴漢師たちの中の一人、ホマード利かせたオールバックヘアの男性は、他の男たちと違って何故か落ち着き払っていた。
四十代前半と思しき男が身に纏う服は、高級ブランドスーツだった。ネクタイはシルバーとブラックのストライプ柄。ベルトもクロコダイルの革を使用した高級品だ。身形から察するに財産はそれなりにあるようだ。男は全く動揺する素振りを見せず、酷薄な唇の端に薄い笑いを浮かべた。
列車が次の駅に到着した。ドアが開いた。
客たちが乗り降りするその間、人妻女教師は、教え子の腕を確りと握り締め、凝っと痴漢師たちを睨んでいた。
間もなくしてドアが閉じた。列車が走り出した。車内が左右に揺れた瞬間、痴漢師たちの仲間で一番若い青年が、何事かに気づいたかのようにカッと目を開き、ギラギラと瞳を輝かせた。この青年が、先ほどから何度も美鈴の顏を窺っているのが、彼女にも気になっていた。
「先生……? そうだやっぱりそうだ里中美鈴先生だぁっ!?」
突然旧姓で名前を呼ばれ、美鈴は思わずハッとなった。目の前に立つ銀髪で両耳にピアスを着けた青年の顏を、マジマジと見詰める。青年の口許に薄い笑みが浮かんでいた。
忽ち美鈴の脳裏に嫌な記憶が蘇って来る。
(まさか……そんな筈はない……)
美鈴は自分自身の記憶を否定しようと、かぶりを振ってみた。
が、やはり目の前に立つ青年は、夫翔馬の嘗ての教え子だった窪修二に間違いない。
「ご無沙汰しています里中先生……。あっ、そうだ今はご結婚なさって確か、沢村って苗字に変わったんだね……」
修二は、沢村という苗字を口にする時、憎しみを込めるように唇が震えていた。
高級スーツに身を固めた一見して紳士のような男性が、美鈴を一瞥すると青年を見やった。
「何だ、修二。この先生、お前の知り合いなのか?」
「はい、横井さん。この女は、俺を嵌めた憎い沢村って先公の女です」
修二は蒼褪めた顏を痙攣させつつ震える声で、痴漢師のリーダー横井慎弥に告げた。蟀谷がヒクヒクと動いている。激昂しているのだ。
「く、窪君、ど、どうしてあなたがこんな連中と一緒に……!?」
美鈴は口に手を当て、愕然となって立ち尽くす。
やがて列車は駅のホームに到着した。その次の駅が、美鈴たちが下車する目的の駅だった。
(痴漢だっ! 助けなくっちゃっ!)
正義感に駆られた美鈴は、今まさに目の前で痴漢被害に遭う女生徒を救出するべく、男たちの許へ向かった。
先ず、愛実の乳房を弄ぶ初老の男性の腕を鷲掴むとっグイっと捻った。
「止めなさいっ!」
「痛ぇててぇてぇぇ……」
「警察に突き出してやる。次の駅で降りなさいっ。もう大丈夫よ細川さん、心配しないで、先生がついているから」
美鈴は視線を、卑劣極まりない痴漢から教え子に移しながら、はっきりとした明瞭な口調で告げた。
「……先生、私ぃぃ……怖かった」
愛実は堰が切れたように泣き出した。
「放せっ手を放せっ!」
美鈴に腕を掴まれた男は振り解こうと暴れ出した。
「大人しくしなさいっ」
気丈で勝気な美鈴は、男を一喝する。
この男の仲間たちは、突然の出来事に困惑し狼狽え始めた。周囲にいた他の乗客も、この痴漢騒ぎに気づき、チラチラとこちらを見やって何事かヒソヒソ話をしている。
だが、痴漢師たちの中の一人、ホマード利かせたオールバックヘアの男性は、他の男たちと違って何故か落ち着き払っていた。
四十代前半と思しき男が身に纏う服は、高級ブランドスーツだった。ネクタイはシルバーとブラックのストライプ柄。ベルトもクロコダイルの革を使用した高級品だ。身形から察するに財産はそれなりにあるようだ。男は全く動揺する素振りを見せず、酷薄な唇の端に薄い笑いを浮かべた。
列車が次の駅に到着した。ドアが開いた。
客たちが乗り降りするその間、人妻女教師は、教え子の腕を確りと握り締め、凝っと痴漢師たちを睨んでいた。
間もなくしてドアが閉じた。列車が走り出した。車内が左右に揺れた瞬間、痴漢師たちの仲間で一番若い青年が、何事かに気づいたかのようにカッと目を開き、ギラギラと瞳を輝かせた。この青年が、先ほどから何度も美鈴の顏を窺っているのが、彼女にも気になっていた。
「先生……? そうだやっぱりそうだ里中美鈴先生だぁっ!?」
突然旧姓で名前を呼ばれ、美鈴は思わずハッとなった。目の前に立つ銀髪で両耳にピアスを着けた青年の顏を、マジマジと見詰める。青年の口許に薄い笑みが浮かんでいた。
忽ち美鈴の脳裏に嫌な記憶が蘇って来る。
(まさか……そんな筈はない……)
美鈴は自分自身の記憶を否定しようと、かぶりを振ってみた。
が、やはり目の前に立つ青年は、夫翔馬の嘗ての教え子だった窪修二に間違いない。
「ご無沙汰しています里中先生……。あっ、そうだ今はご結婚なさって確か、沢村って苗字に変わったんだね……」
修二は、沢村という苗字を口にする時、憎しみを込めるように唇が震えていた。
高級スーツに身を固めた一見して紳士のような男性が、美鈴を一瞥すると青年を見やった。
「何だ、修二。この先生、お前の知り合いなのか?」
「はい、横井さん。この女は、俺を嵌めた憎い沢村って先公の女です」
修二は蒼褪めた顏を痙攣させつつ震える声で、痴漢師のリーダー横井慎弥に告げた。蟀谷がヒクヒクと動いている。激昂しているのだ。
「く、窪君、ど、どうしてあなたがこんな連中と一緒に……!?」
美鈴は口に手を当て、愕然となって立ち尽くす。
やがて列車は駅のホームに到着した。その次の駅が、美鈴たちが下車する目的の駅だった。
2
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる