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CHAPTER5
6
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「犀川一家四人殺害の手口から見て、プロの犯行と推測出来る。また、A大女子学生桜井心音の殺害に関しても、同一犯の犯行と思われる。更に、本庁八係と三田中央署が追っている高校教師森博一殺害に関してだが、被害者の血液からアコニチンとテトロドトキシンが検出されおり、トリカブト毒とフグ毒の拮抗左様を利用した殺人事件だ。この犯行手口から見て、殺害実行犯が化学に精通していることは間違いない」
陣頭指揮を執る和田一課長が私見を展開している間、可南子は自分なりに犯人像を推理してみた。
――和田課長のいう通り、犀川一家四人殺害犯と桜井心音殺害犯は、同一犯と見て間違いない。現場から検出されたDNAは、井の頭公園で他殺体となって発見された劉磊彪のモノと一致した。つまり、劉磊彪は真犯人の手によって口封じのため殺害された……。果たしてこの犯行が、女性である岡崎香織一人に出来るかな? ん? 仲間か? それも多分、男の仲間だ……。以前、あの女が弁護を引き受けた元犯罪者っていう線も考えられるよね……。
「比嘉警部補っ!?」
という彼女を呼ぶ和田の声で、可南子はハッと我に返った。
「あっ、済みません……」
恥ずかしさの余り可南子は双頬を赤く染め、頭を下げた。
「比嘉警部補、キミは本件の被疑者に付いてどう見ている?」
中村参事官が直々に質問して来た。
「状況から考えて、ひき逃げ事件を起こした遠山清志の依頼を受けた人物が、口封じのために目撃者を殺害したと考えるのが妥当かと思います」
「その人物とは?」
中村は覗き込むように身を乗り出し、可南子を見詰めた。
講堂に集まる捜査員たち全員が、可南子の口許に注目した。
「……お、おか……?」
可南子が、自分が考えている黒幕の名を口にしようとしたその時、緒川が彼女の言動を制するように人差し指を立て、唇に当てた。
――うん? ジュンちゃん、シーってどういうことよ……?
「どうしたのかね、比嘉君?」
「いいえ、その……。何でもありません。私が推測するには、プロの殺し屋かと……」
「プロの殺し屋だと? 何をいうんだ比嘉警部補、キミは素人か。私がキミに訊ねているのは、そのプロの殺し屋に付いてだよ、具体的にいってみなさい」
「いいえ、まだ、特定の被疑者まで辿り着いておりません」
可南子は面目なさ気に小声でいった。
舌打ちしたあと、中村は、
「柘植警部補? キミはどう考えている?」
と意見を求めた。
可南子の右隣に座る柘植が、徐に立ち上がった。
「……自分も、比嘉主任と同様、遠山清志の依頼を受けた人物が裏ルートを使い、第四者に目撃者の殺害を実行させたと考えております」
「なるほど、で、実行犯の名前は?」
「先日、井の頭公園で他殺体となって発見された中国籍男性劉磊彪が所属する中国マフィアの構成員の一人で、劉磊彪と同じ中国吉林省白山市出身の男性張作賢、年齢三十九歳……」
「張作賢か……」
「はい。間違いありません」
柘植は自信あり気に頷いた。
「その情報の入手先は?」
「嘗て自分が所属しておりました組対二課の松岡警部補からです」
柘植は、捜査一課に来る前、国際犯罪組織の捜査を主な任務とする組織犯罪対策二課にいた。そのコネを使い、国際社会の裏で暗躍する中国マフィアの構成員の一人張作賢の名を入手したのだ。
「猪瀬警部? キミはどう思う?」
中村は、森博一殺害事件を追っている八係長に意見を求めた。
猪瀬は一礼したあと、マイクを手に取った。
「……森博一が、文京区千石三丁目のT女子高校で死亡した七月一日金曜日当日に、四名の人物が被害者を訪ね、学校に訪れています。一人目は、『○□書房』の営業マン木澤雄一、二人目は、『○☓教材』の伊藤誠二、三人目と四人目が、『□△書店』の本多康人と佐野玲子です。なお、死亡したマル害の森が持参した水筒から微量のアコニチンとテトロドトキシンが検出され、我々は妻の由唯が怪しいと睨み、任意で事情を聴いておりました。ただ今回の一連の事件を受け、保険金目的のために妻の由惟が夫殺害を企てたと考えるには、些か無理が生じます……」
「被害者男性死亡当日、学校を訪れたという、その四人に付いてだが、裏は取れたのか?」
和田が訊ねた。
「何れも前科はなく、暴力団、半グレ、中国マフィア等の反社会勢力との繫がりも一切ありません」
「そうか……、もう少し、捜査の範囲を広げてくれ。例えば、当日学校を訪れた全ての人間や、教職員、保護者に至るまで……」
「はい、了解しました」
数秒の間のあと、
「麻生一係長? そっちはどうなっている?」
和田は、女子大生桜井心音殺害事件を追っている麻生警部に質問した。
一礼しマイクを手に取ると、麻生はゆっくりと口を開いた。
「渋谷の犀川一家殺害事件と同様、その残忍な手口から考えて、中国マフィアによる犯行と考えております」
各係長の報告の間、可南子は口を真一文字に閉じ、浮かない顔で思案していた。
――なんだよ、結局、四係も含めて各帳場全て、捜査が行き詰まり、暗礁に乗り上げているじゃない。やっぱり、突破口はあの女か。他の連中はまだ、あの女の存在には気付いていないみたいだし……。
一通り報告が終わったあと、今後の捜査方針と次回の捜査会議の開催日時を決め、合同会議は終了した。
陣頭指揮を執る和田一課長が私見を展開している間、可南子は自分なりに犯人像を推理してみた。
――和田課長のいう通り、犀川一家四人殺害犯と桜井心音殺害犯は、同一犯と見て間違いない。現場から検出されたDNAは、井の頭公園で他殺体となって発見された劉磊彪のモノと一致した。つまり、劉磊彪は真犯人の手によって口封じのため殺害された……。果たしてこの犯行が、女性である岡崎香織一人に出来るかな? ん? 仲間か? それも多分、男の仲間だ……。以前、あの女が弁護を引き受けた元犯罪者っていう線も考えられるよね……。
「比嘉警部補っ!?」
という彼女を呼ぶ和田の声で、可南子はハッと我に返った。
「あっ、済みません……」
恥ずかしさの余り可南子は双頬を赤く染め、頭を下げた。
「比嘉警部補、キミは本件の被疑者に付いてどう見ている?」
中村参事官が直々に質問して来た。
「状況から考えて、ひき逃げ事件を起こした遠山清志の依頼を受けた人物が、口封じのために目撃者を殺害したと考えるのが妥当かと思います」
「その人物とは?」
中村は覗き込むように身を乗り出し、可南子を見詰めた。
講堂に集まる捜査員たち全員が、可南子の口許に注目した。
「……お、おか……?」
可南子が、自分が考えている黒幕の名を口にしようとしたその時、緒川が彼女の言動を制するように人差し指を立て、唇に当てた。
――うん? ジュンちゃん、シーってどういうことよ……?
「どうしたのかね、比嘉君?」
「いいえ、その……。何でもありません。私が推測するには、プロの殺し屋かと……」
「プロの殺し屋だと? 何をいうんだ比嘉警部補、キミは素人か。私がキミに訊ねているのは、そのプロの殺し屋に付いてだよ、具体的にいってみなさい」
「いいえ、まだ、特定の被疑者まで辿り着いておりません」
可南子は面目なさ気に小声でいった。
舌打ちしたあと、中村は、
「柘植警部補? キミはどう考えている?」
と意見を求めた。
可南子の右隣に座る柘植が、徐に立ち上がった。
「……自分も、比嘉主任と同様、遠山清志の依頼を受けた人物が裏ルートを使い、第四者に目撃者の殺害を実行させたと考えております」
「なるほど、で、実行犯の名前は?」
「先日、井の頭公園で他殺体となって発見された中国籍男性劉磊彪が所属する中国マフィアの構成員の一人で、劉磊彪と同じ中国吉林省白山市出身の男性張作賢、年齢三十九歳……」
「張作賢か……」
「はい。間違いありません」
柘植は自信あり気に頷いた。
「その情報の入手先は?」
「嘗て自分が所属しておりました組対二課の松岡警部補からです」
柘植は、捜査一課に来る前、国際犯罪組織の捜査を主な任務とする組織犯罪対策二課にいた。そのコネを使い、国際社会の裏で暗躍する中国マフィアの構成員の一人張作賢の名を入手したのだ。
「猪瀬警部? キミはどう思う?」
中村は、森博一殺害事件を追っている八係長に意見を求めた。
猪瀬は一礼したあと、マイクを手に取った。
「……森博一が、文京区千石三丁目のT女子高校で死亡した七月一日金曜日当日に、四名の人物が被害者を訪ね、学校に訪れています。一人目は、『○□書房』の営業マン木澤雄一、二人目は、『○☓教材』の伊藤誠二、三人目と四人目が、『□△書店』の本多康人と佐野玲子です。なお、死亡したマル害の森が持参した水筒から微量のアコニチンとテトロドトキシンが検出され、我々は妻の由唯が怪しいと睨み、任意で事情を聴いておりました。ただ今回の一連の事件を受け、保険金目的のために妻の由惟が夫殺害を企てたと考えるには、些か無理が生じます……」
「被害者男性死亡当日、学校を訪れたという、その四人に付いてだが、裏は取れたのか?」
和田が訊ねた。
「何れも前科はなく、暴力団、半グレ、中国マフィア等の反社会勢力との繫がりも一切ありません」
「そうか……、もう少し、捜査の範囲を広げてくれ。例えば、当日学校を訪れた全ての人間や、教職員、保護者に至るまで……」
「はい、了解しました」
数秒の間のあと、
「麻生一係長? そっちはどうなっている?」
和田は、女子大生桜井心音殺害事件を追っている麻生警部に質問した。
一礼しマイクを手に取ると、麻生はゆっくりと口を開いた。
「渋谷の犀川一家殺害事件と同様、その残忍な手口から考えて、中国マフィアによる犯行と考えております」
各係長の報告の間、可南子は口を真一文字に閉じ、浮かない顔で思案していた。
――なんだよ、結局、四係も含めて各帳場全て、捜査が行き詰まり、暗礁に乗り上げているじゃない。やっぱり、突破口はあの女か。他の連中はまだ、あの女の存在には気付いていないみたいだし……。
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